ページの本文へ

にいがたWEBリポート

  1. NHK新潟
  2. にいがたWEBリポート
  3. 学校の給食から牛乳が消えた日、背景には記録的暑さが 新潟

学校の給食から牛乳が消えた日、背景には記録的暑さが 新潟

  • 2023年09月22日

牛乳と聞いて学校の給食を思い浮かべる人もいると思います。新潟県内の一部の小中学校などでは、今月、この給食での牛乳が提供されない日がありました。
なぜ、牛乳が提供されなかったのか。
背景を取材すると、ここにもこの夏の記録的な暑さの影響がありました。
(新潟放送局 豊田光司記者 木村信哉カメラマン)

新潟市中央区にある新潟小学校です。
今月13日の給食の時間、子どもたちが飲んでいたのは、コーヒー牛乳。
ふだん提供されている牛乳ではありませんでした。

コーヒー牛乳を飲んだ児童
「(コーヒー牛乳は)おいしかった」

コーヒー牛乳を飲んだ児童
「(牛乳がないと)ちょっと悲しい。ちょっと嫌と思います。牛乳になってほしい」

この小学校の給食で牛乳が提供されなかったのは、今月13日と20日の2日間。
期間は限られますが、栄養教諭は牛乳がなくなってその大切さを痛感したといいます。

渡邊恵 栄養教諭
「仕事をしているなかで初めてのことなので、とても大変なことだと感じました。子どもたちが成長していく上で大事な栄養がたくさん入っているのでやはり飲んでほしいと思っているので」

給食で牛乳が提供されない日があったのは、新潟市や長岡市などのおよそ130の小中学校や特別支援学校です。生乳が不足したとして、牛乳を提供している会社が出荷を見合わせたことが理由でした。

なぜ、牛乳が出荷できなかったのか。背景にあるのが生乳の生産量の落ち込みです。
その大きな原因が、相次ぐ酪農家の廃業です。

ロシアによるウクライナ侵攻の影響で、牛の飼料代などが高騰しています。
県内でも酪農家の経営は圧迫されているといいます。県内産の生乳を乳業会社に販売している酪農業の団体によりますと、去年春には県内に141戸あった酪農家のうち、18戸がこの1年で廃業しました。

北陸酪農業協同組合連合会 児玉耕司さん
「顔見知りの生産者もいて、10頭未満の生産者もいたし、40頭から50頭を飼っている人、県内の平均的な飼育頭数を超える人もいたし、若い生産者も離農した中にいたし、非常に悔しい思いでいっぱいですね」

廃業で県内の生乳の生産量が低下する中、追い打ちをかけたのが、この夏の記録的な暑さでした。

暑さで牛が弱り、乳が出にくくなっているといいます。こうした影響もあり、先月の県内の生乳の生産量は2500トン余りと去年を15%下回り、過去最低まで落ち込みました。

三条市の酪農家、村山喜隆さんも暑さで牛が弱る事態に直面しました。

三条市の酪農家 村山喜隆さん       
「生きているだけで精いっぱいだったと。えさも食べないし、呼吸も速くて、かわいそうですね」

暑さを和らげようと、牛舎ではこれまでにない対応に追われています。

酪農家 村山喜隆さん
「牛舎の周りに水をまいて、入ってくる風をなるべく冷やしてあげたくて」

冬場に雪をとかすために使う消雪パイプで打ち水をします。このほか、窓には直射日光が入らないように遮光カーテンを重ねたり、大型の扇風機16台を24時間、稼働させたりしています。経費はかかりますが、少しでも牛の負担を軽くしようと暑さ対策を重ねてきました。

酪農家 村山喜隆さん 
「正直、収入より経費がかかっているのは確かです。実際、貯蓄を切り崩しながら何とか牛を飼っている状態なので」

それでも暑さの影響で、飼育している40頭余りのうち、多くの牛の体調が悪化したといいます。この夏の生乳の生産量は、例年の半分ほどまで落ち込みました。最近はようやく暑さが和らいできて、牛の体調も回復傾向にあります。ただ、先の見えない飼料価格などの高騰に加え、温暖化への危機感が高まるなか、村山さんは今後も安定して生乳を生産できるか、不安を抱えています。

酪農家 村山喜隆さん
「牛乳が好きな人たちとか必要としてくれる人たちに県産の牛乳が行き渡らないというのはとても心苦しいというか、酪農家として申し訳ない気持ちでいっぱいです。牛たちにとってよい環境を作って消費者のみなさんに牛乳を届けたいと思っています」

牛乳の販売などを行っている会社によりますと、最近は暑さが和らぎ、生乳の生産量も回復傾向にあるため、今のところ、今月21日以降は県内の学校で牛乳の提供を見合わせる予定はないということです。
一方、酪農業の団体によりますと、今後も酪農家の廃業や温暖化が進めば、県内での生乳の生産量が減少するおそれがあるとしています。このため、学校の給食に牛乳の提供を優先するよう、販売会社に呼びかけていきたいとしています。

  • 豊田光司

    新潟放送局 記者

    豊田光司

    2017年入局。大阪局を経て2020年から新潟局に。文化などを担当。給食で余った牛乳をじゃんけんで勝ち取った子ども時代。給食の牛乳がコーヒー牛乳になると聞き、いてもたってもいられず取材しました。(コーヒー牛乳も好きです)

  • 木村信哉

    新潟放送局 カメラマン

    木村信哉

    2010年入局。
    2020年から新潟局に。

    海や川の生き物が好きで潜水業務などに携わる。生き物大好き。牛も大好きで毎日牛乳飲んでいます。

ページトップに戻る