災害列島 命を守る情報サイト

これまでの災害で明らかになった数々の課題や教訓。決して忘れることなく、次の災害に生かさなければ「命を守る」ことができません。防災・減災につながる重要な情報が詰まった読み物です。

地震 教訓 知識

“デマ”に惑わされないで! 冷静に行動を

2018年、北海道で震度7の揺れを観測した地震をめぐり、ネット上では、ライフラインなどの状況に関する「デマ」や、不確かな「うわさ話」が飛び交っています。事態が刻々と動き、多くの情報が錯そうする時こそ、冷静な行動をお願いします。
(ネットワーク報道部記者 郡義之 伊賀亮人)

2018年9月放送の北海道胆振東部地震ニュースに関連する記事です

目次

    地震発生 あふれるデマ・うわさ

    6日未明に地震が発生すると、ツイッターやフェイスブックなどのSNS上には、デマや、根拠の乏しい投稿が朝からあふれました。

    投稿は「午前8時までにまた大きな地震が来る可能性ある」とか、「今回の地震は余震で48時間以内に本震が来る可能性が非常に高い」といった、さらなる被害に関するもののほか、「市内全域で断水が起きる(注:実際には起きていない地域についての投稿)」といったライフラインに関するものまで、さまざまです。

    こうした投稿には「自衛隊情報でー」や「消防士がー」、「NTTの呼びかけー」など、情報源の信用性が高いことを強調するかのような内容が含まれているものもあります。

    また、一見してそれとわかる「デマ」だけではなく、有効な災害対策の中に不正確な情報が紛れこんでいる投稿や、悪意があるとは思えない、一般の人が注意を呼びかけるメッセージの中に不正確な情報が混ざったものもあります。

    デマはこうやって流れた

    地震が発生した午前3時すぎ、私(郡義之)は就寝中でした。

    札幌市出身の私のスマートフォンには、北海道に住む友人から、現場の状況や無事を知らせる情報が次々と寄せられました。

    そんな中に混じって届いたのが「デマ」や「うわさ」でした。

    地震から4時間後の午前7時半すぎ。「恵庭市は13時から断水だそうです」という友人からのメッセージがLINEで届きました。

    2時間後の午前9時半ごろ、フェイスブックには、「苫小牧市は11時に水が止まるそうです。そして、最悪2日間電気止まるかもしれない」との書き込み。

    さらに午前10時には、NTTからの情報として「拡散希望!停電で電波塔にも電気がいかない状況なので、携帯電話も使えなくなる可能性」とのLINEメッセージが…。

    「拡散希望」という言葉に不安を覚えた私。そんな心配をよそに、時間を追って拡散する未確認情報。

    「情報源はどこか、確認したほうがいいよ」
    「デマかもしれないよ」

    私は情報が拡散して混乱しないよう、友人に冷静な対応を呼びかけました。

    過去の災害でも飛び交った

    過去の災害でも同じような「デマ」や、根拠の乏しい「うわさ」が広がったことがあります。

    例えば、平成5年1月に発生した釧路沖地震。マグニチュード7.8の地震によって2人が死亡、900人以上がけがをするなど大きな被害が出ました。

    この地震の1週間後、北海道釧路市では、ある「うわさ」が、まことしやかにささやかれました。
    それは「また大きな地震が来る」というものでした。

    今のようにインターネットが発達していなかったにもかかわらず、「うわさ」は瞬く間に町じゅうに広がり、気象台や市役所に問い合わせが殺到。
    「釧路が全滅するのではないか」などという声が寄せられました。

    こうした「うわさ」を打ち消すため、気象台は異例の記者会見を開き、冷静な対応を呼びかけた結果、次第に混乱は収まりました。

    当時、調査に当たった研究グループによりますと、「うわさ」の出どころを突き止めることはできませんでしたが、小中学生の間で拡散した情報が親に伝わり、それが拡散したとみられるということです。

    このほか、平成28年の熊本地震でも、「動物園からライオンが逃げた」とか、「原発が火災」などのデマがツイッターで広まり、逮捕者が出る事態に発展したケースもありました。

    まずはホームページや公式アカウントで確認を

    それでは正確な情報を入手するにはどうすればいいのでしょうか。

    まずは、「自衛隊の情報でー」、「消防局がー」といった言葉に惑わされず、公的機関の実際のホームページやSNSの公式アカウントの情報を確認することが重要です。

    多くの場合、参考になるのが自治体のホームページです。

    例えば、札幌市のホームページには「緊急時暫定版トップページ」として災害情報の特設ページが作られ、避難所の開設状況や学校の休校情報、それに鉄道や水道などのライフラインの状況などがまとめられています。

    また、ツイッター上の札幌市広報部公式アカウントでも、給水情報や携帯電話の充電サービスなどの生活情報を提供しています。

    このほかの道内の多くの自治体もそれぞれのホームページで地震に関する情報を提供しています。

    また、道内各地に店舗を持つスーパーの「コープさっぽろ」が、ホームページで営業情報を提供しています。

    不正確な情報の打ち消しも

    不正確な情報を訂正する呼びかけを行っている自治体もあります。

    函館市は、ホームページやSNSで「一部地域で断水しているため臨時給水を行っている」としたうえで、「ツイッター等で『6日午前10時から大規模断水』との情報が拡散しているがそのような予定はありません」と注意を促しています。

    また、札幌市水道局も「SNS等で水道に関する誤った情報が拡散されていますが以下の情報が正しい情報です」として、断水地域の正確な情報を掲載しています。

    真偽を見分けるポイントは

    災害時の情報の真偽をどう見分けるのか。

    災害と情報の関係に詳しい国立情報学研究所の北本朝展准教授は、情報を受け取る側と発信する側の双方の努力が不可欠だと言います。

    北本准教授は「ネットに出回る情報に接した時に、それが本当の情報なのかを、役所や企業のホームページで確認することが大事だし、情報を出す側も、すぐにデマを打ち消すことが求められる」と話しています。

    停電・アクセス集中が原因で…

    取材を進めるなか、実際に公式ホームページを確認していると、道内全域が停電になったり、地震後にアクセスが集中したりした影響もあって、サイトによっては情報が確認しにくい状況になっていることに気付きました。

    このうち、JR北海道は「停電の影響で、当面の間、全道で運転を見合わせています。停電のため、ホームページの更新もできない状況です」と掲載しました。

    また、北海道電力の「停電情報」のページはアクセスが集中したせいか、「メンテナンスのため公開を停止しています」となっていました。

    自治体のホームページの中にも、アクセスできないところが出ています。

    情報がほしい時に入手できないと、あやふやな情報を信じそうになるかも知れませんが、こういう時だからこそ、十分な注意が必要だと感じました。

    停電中の生活 ここに注意を

    一方、地震の影響で停電が続く地域では、どのような点に注意して過ごせばいいのでしょうか。

    地域の防災対策について研究している災害リスクアドバイザーの松島康生さんは、停電したまま夜を迎えると、照明や街灯がつかないため、周囲が真っ暗になり、危険だと指摘しています。

    そのうえで、「家の中を歩き回らなくてもよいように、食料や飲み物、小型のライトなど夜間に必要な物を近くに集めておくとともに、倒れやすい物から離れ、今後の地震に備えることが必要だ」と話しています。

    また、松島さんは、「緊急時に携帯電話を使えるよう、不用意な使い方は控え、ラジオなどの情報を周囲の人と共有してほしい」と呼びかけています。

    NHKでは、ラジオやテレビのニュース、スマートフォンの「NHKニュース・防災アプリ」などで地震に関する情報をお伝えしています。停電している地域の方は、ラジオで最新の情報をご確認下さい。


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