火災から逃げ遅れないための行動 避難はどうする
突然の火災、どうしたら…。私たちが日々生活している住居をはじめ、地下街・地下鉄の駅といった地下空間、そして高層ビルにおける火災の特徴や防火対策を知り、避難はどうするのか、身を守るために何ができるかを考えてみましょう。
過去に放送された防災ニュースの内容をまとめた記事です
目次
住宅での火災
住宅火災の死者が9割近く
「消防白書 平成27年版」(2015年12月発行)によると、建物火災の死者が1,269人。そのうち住宅での死者が1,122人と全体の9割近くを占めました。さらに、その中で81歳以上の高齢者の死亡率が、全年齢階層の平均より4.8倍も高くなっています。
●原因はたばこ・ストーブ・電気器具・こんろ…
出火元として多いのは、たばこ、ストーブ、電気器具、こんろ。いわゆる失火から衣類・寝具などへ二次着火し、延焼拡大する例が住宅火災の典型です。深夜就寝中に火災が発生し、逃げ遅れて亡くなるケースが多く見られます。
●住宅の近代化も逃げ遅れの原因に
近年では建物の高断熱、高気密化によって、室内火災でフラッシュオーバー(後述)が起きやすい条件も整ってきています。また住宅内で、一人一人が一部屋で暮らすことが進んだ(個室化)ため、「におい」や「物音」の異変にも気付きにくくなってきています。
燃焼は急に広がります!
火災はゆっくりと広がるのではなく「急激に様相が変化」します。ごく初期には局所的だった燃え方が、ある時点を超えると急速に広がり、瞬く間に部屋全体が炎に包まれます。この現象をフラッシュオーバーといいます。このフラッシュオーバーを境に発生する黒煙には、毒性の高い一酸化炭素が含まれているので吸ったらひとたまりもありません。
火災を早期で抑えるために
火災にいかに早く気付くか、そして、初期の火災をどう抑制するかが、私たちの命や財産を守るうえでは非常に重要です。
●火災警報機の設置
2004年の消防法の改正で、住宅用の火災警報器の設置が義務付けられ、普及が進んできました。火災を早めに感知できれば、初期消火が功を奏します。
●防炎処理された調度品
ストーブやこんろから周囲の衣類・寝具・カーテンなどに着火し延焼することがしばしば起きています。特にカーテンなど、燃えやすい調度品に防炎処理が施されたものを使えば、延焼を遅らせ初期消火するチャンスが生まれてきます。
<防炎処理の有無によるカーテンの延焼拡大の違い>
「地下空間」での火災
地下という特殊性からさまざまな防火防災対策が立てられ、日本では幸いこれまでに大きな火災事故は起きていません。さらに、2001年の韓国地下鉄火災以降、わが国でも地下駅舎の煙対策の基準が一部見直されました。防火対策や設備を知り、各自の避難の際に生かしましょう。
蓄光式標識が避難口へ誘導
天井にたまった煙により、照明が覆い隠され暗くなってしまったり、出口の誘導灯が見えなくなったりして避難に支障が出る恐れがあります。このため現在、地下駅舎の床面や階段には、「明示物」と呼ばれる蓄光式の誘導標識が設置され、「命の道しるべ」として機能することになっています。
思わぬ事態にも戸惑わないように
地下駅構内や地下街では、避難経路上に「防火シャッター」や「防火扉」が設置されています。避難が遅れた場合、いつも使っている通路に「思いも寄らない壁」(閉じた防火シャッターや防火扉)が立ちはだかって混乱するかもしれません。こうした防火シャッターなどの横には、避難のために「非常口のサイン」がある「くぐり戸」が設置されており、そこから逃げられることも覚えておきましょう。
「広場」は避難時の機能スペース
地下街には、ところどころに「広場」があります。これらは、避難のための一時滞留スペースとしての機能も備えており、屋外への出口も充実しています。
「超高層建築物」での火災
超高層ビルの中に居る人数は私たちが想像する以上に多く、一斉に避難すると階段は渋滞し、全員が安全な地上に避難するまで1時間近くかかるといわれています。万一火災に遭遇したら、どうすればよいのでしょうか?
警報音が聞こえたら火災は近い
高層建築物には建物の安全を一元的に管理する防災センターが設けられています。原則として、自動火災報知設備が火災を感知すると、まずは出火階とその直上・直下階で地区音響装置(非常ベル、ブザー、スピーカー等)が鳴るので、警報音が聞こえたら火災は近いと考えてよいでしょう。その後、防災センターの要員が現場確認のうえ、火災発生場所、状況を放送することになっていますので、その指示に従って落ち着いて避難しましょう。
【監修】山田常圭 元消防庁消防大学校消防研究センター所長
2016年3月30日更新
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