自分のふるさとが消える? 消滅可能性自治体って?
- 2024年05月10日
ことし4月、民間の有識者が「最終的には消滅する可能性がある」として公表した「消滅可能性自治体」。まさか、自分のふるさとが消えるなんていうことが…?どういうことなのか、そしてこれから何をすればいいのか。専門家の意見も交えて解説します。 (NHK名古屋 取材班)
消滅可能性自治体って?
民間の有識者グループ「人口戦略会議」が、この10年間で「20代から30代の女性の数=若年女性人口」がどれだけ減ったかの分析をもとに、今後の減りを予測しました。そして2050年までの30年で、「若年女性人口」が今の半分以下に減少すると予測されたところが「消滅可能性自治体」とされています。
有識者グループは10年前も同様の分析をしているんですが、今回、あらたに「消滅可能性自治体」に分類された自治体のひとつが、津島市です。
なぜ津島市で「若年女性人口」が減少しているのか、取材しました。
名古屋市のベッドタウン津島市が…
愛知県西部に位置する津島市。名鉄津島線を使えば名古屋駅に30分前後で到着することもあり、名古屋で働く人たちのベッドタウンになっています。
津島市が「消滅可能性自治体」と分類されたことについて、まちの人に話を聞いてみました。
仕方がない。こんな津島市にわざわざ来る人は今、いない。
ほとんど何もないし疲弊していくばかり。消滅するんじゃないの。
決して地盤がいいところでもないし、名古屋からの距離も若干あるけど、
やれることはいっぱいある!
市の人口の推移を見てみると、平成22年には6万6800人余りですが、右肩下がりに減っていって、ことし3月に6万人を切りました。
人口が減っていることについて、津島市の担当者に話を聞きました。
津島市企画政策課まちづくり戦略グループ 犬飼将太 統括主任
今回「消滅可能性自治体」となったことについて、まだしっかりとした原因がわからない状態ですが、近隣の名古屋市などに特に若年層と呼ばれる方たちが転出してしまっている傾向があります。市では今回の分析が公表される前から、人口減少については強い危機感を持ち、さまざまな施策に取り組んできました。
津島市では、昨年度から駅前の再開発などのまちづくりや、子育て支援策として、18歳以下の子どもの医療費無償化や、小中学校の給食の無償化などを実施。今年度からは定住を促進するために、マイホームを新築した人には、固定資産税相当額を補助するなどの施策を行っています。
政策の効果はすぐに見えてこないと思うが、現状、市民にすら浸透していない。PRを進め、次回の分析では消滅可能性自治体といわれないようにしたい。
周りの自治体は?
この尾張西部の自治体のうち、前回10年前は、津島市も含む6つの自治体で「若年女性人口」の減少率が、30%台と比較的高い状態でした。
その後、津島市では、さらに悪化して、今回、50%を超えましたが、同じ尾張西部でも減少率が緩和している自治体が多くあります。
このうち、津島市の北に位置する稲沢市では、減少率が改善しました。稲沢市の担当者に聞いたところ、特に子育て支援を中心にさまざまな助成制度を設けたことや、10年ほど前から始まった駅前の再開発によって、大型マンションが完成したことなどが要因ではないかということでした。
県も対策に乗り出す
この人口減少対策に、市町村だけでなく、県も本腰を入れることになりました。愛知県の大村知事は、5月1日の記者会見で、人口が減少する地域の対策を、県内全体で検討する会議を、近く、立ち上げる考えを明らかにしました。
大村知事
愛知県の場合、働く場所はある。三河地域の山間部から時間がかかると言っても、1時間かければ、西三河の企業に行ける。津島市も名古屋のすぐ近くだし、南知多、美浜も働く場所ある。どういうふうに人の流れ、交流人口をつくり、定住人口を増やしていくのか一緒に考えたい。
どうすれば?専門家の意見は
今後の対策の方向性について、人口減少対策に詳しい愛知大学地域政策学部の駒木伸比古教授は、この分析をきっかけに実態に目を向けるべきだと話しています。
駒木伸比古教授
大切なのは、ことばに引っ張られないということです。「消滅可能性」という強いことばが使われていますが、あくまでも命名しているだけなので、そのなかの数字や実態がどうなっているのかをちゃんと見ることが大事だと考えます。それぞれの自治体は、IターンとかUターンといった小さな動きで、数は少ないけれども、地元に戻ってきてくれる人を丁寧にサポートしていくことが必要だと思います。
この問題を取材して
この分析自体が「若年女性人口」にポイントを当てたものなので、結婚をするか、子どもを持つかどうかそれぞれが選択できる多様な生き方の中で、その指標のみで人口を語ることに対しての疑問の声もあります。私自身この「若年女性」にあたる年齢ですが、「この年代の女性は子どもを産む人たち」と定義されているような気がして、少し違和感を感じる部分があります。
ただ「消滅可能性」ということばはやはりインパクトがあるため、10年前にこう指摘されたことで、地域が一丸となって対策に取り組むことができて、若年女性人口の増加につなげた街も、全国には存在します。
この分類に一喜一憂して終わるのではなく、住みよいふるさとを後世に残していくために、自治体や地域の取り組みを見直す一つのきっかけになればと思います。