ベトナム旧正月「テト」長野県でどう過ごす?何食べる?
- 2024年03月22日
正月を旧暦で祝う中国などアジア各国。2024年は2月10日に新年を迎えました。このうちベトナムで旧正月は「テト」と呼ばれ、多くの人たちが帰省して家族とすごします。一方で、長野県内の外国人は年々増え、2023年末時点で4万1000人あまりと過去最多になりました。日本に残って働く人たちも増えています。長野県で、どんな正月を迎えたのでしょうか。(長野放送局 橋本慎也)
大みそかに初の忘年会
旧正月の大みそかとなる2月9日の夜、長野県で新年を祝う催しが開かれました。県内3か所に会場が設けられ、長野市のベトナム料理店には、仕事を終えたばかりの技能実習生など約30人が集まりました。参加者が新年を祝うベトナムの歌を披露するなど会場は大いに盛り上がりました。
催しを開いたのは、2023年7月に設立された「在長野県ベトナム人協会」です。
長野労働局によりますと人手不足が進むなか、ベトナム人労働者は2023年10月時点で6200人あまり。5年前の倍近くに増え、外国人労働者の国別では最も多くなっています。協会は、ベトナム文化を日本人に紹介するイベントを開いたり、サッカーチームを作ってベトナム人どうしの結束を高めたりしようとしています。
協会のフアム・クアン・ダオ会長は、初めて開いた今回のイベントの意義について、このように話しています。
ベトナム人が増えるなか、この時期に一斉に帰国すると勤務する会社に迷惑をかけてしまいますし、日本では旧正月は休みとなっていません。帰省する交通費が高くなるため、帰国を断念する人もいます。今回のイベントは、ふるさとに帰れないベトナム人どうしで励まし合ってもらおうと企画しました。
ベトナムの「おせち料理」は
会場に設けられた祭壇には先祖へのお供え物として、一羽を丸ごとゆでた「にわとり」が捧げられました。また、人生の苦楽を分かち合うという「揚げ春巻き」、新年の祝福を意味するという「ベトナム風のハム」などが並べられました。いずれもベトナムの伝統的なおせち料理です。
こちらの「バインチュン」という料理は、もち米や、すりつぶした緑豆、豚肉などを入れたベトナム風の「ちまき」です。「ラーゾン」というバナナのような葉で四角く包まれ、豊かな大地を象徴するといいます。サイズによっては1つの重さが1キロ以上になることもあり、葉にくるんだ状態で10時間ほどゆでて作り、切り分けて提供されます。
参加者は「新年おめでとう」などと声を合わせて乾杯しました。会場の様子はSNSでもライブ配信され、ベトナムにいる家族や友人たちと一緒に新年を祝いました。伝統的な赤い服をまとった子どもの様子を撮影する人もいました。ふるさとの味や雰囲気に、参加者の表情も自然とほころんでいました。
ベトナムの家族も、きょうは旧正月のお祭りをして楽しんでいると思います。やっぱり、みんなですごすテトは楽しいですね。全部ベトナムの料理だから、とてもおいしいです。
みんなで話したり、特別な料理を食べたりして、遠いベトナムと同じような雰囲気を楽しんでもらい、日本にいても、みんなが寂しさを感じないようにしていきたいです。
ベトナム人も善光寺で初詣
こうして新年を迎えた、長野県にいるベトナムの人たち。実は、ベトナムでは日本と同じように初詣の風習があります。そこで、「在長野県ベトナム人協会」で副会長を務めるグェン・ハー・チュイさんたちは長野市の善光寺で初詣の催しを開催しました。当日は約150人が集まり、在日ベトナム仏教信者会のティック・タム・チー会長も特別に招かれました。埼玉県の寺の住職として、全国の困窮した技能実習生の支援活動もしていて、長野県のベトナム人にも広く知られています。参加者はベトナム語で書かれたお経を自分たちのスマートフォンで見ながら読経して、新年の幸せを願いました。
新年、明けましておめでとうございます。家族と離れた日本での生活で、つらいこともあると思います。それでも、いらだたず、信心を強くして乗り越える方策を見つけて頑張ってください。
訪れた人たちには、ティック・タム・チー会長や善光寺の僧侶から、袋に入ったコメと塩が渡されました。ベトナムではコメは「一年中食べるものに心配しないような豊かさ」、塩は「心の平穏・安定」を意味していて、家にまいたり飾ったりするそうです。
さらに「平安」や「健康」など、集まった人たちから依頼された願い事をティック・タム・チー会長が筆で書いて手渡していました。
お正月だからみんなで集まりたいと思って来ました。家族が元気で、日本での仕事がスムーズにできるようにお祈りしました。
長野に残っていても「新年を祝いたい」、「初詣をしたい」、という人たちがたくさんいました。こうしたイベントを通じてベトナムの人どうしで団結して、安心して生活できるようになればいいと思います。きょうは、みんなが楽しそうですし、子どもたちもたくさん来て、うれしかったです。
取材後記
ふるさとから遠い日本でベトナムの人たちも、思い思いに正月を楽しんでいました。文化は違えど、ベトナムの人たちの姿からは、日本人が新年を迎える気持ちと共通する部分もあると感じました。外国人の存在が身近になるなか、世界各国のさまざまな行事に触れてみてはいかがでしょうか。