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長野市!りんご会議

  • 2023年11月17日

 

10月24日に長野市で行われた信州もぐもぐmeeting。
第3回となる今回のテーマは今が旬の「りんご」です。
長野ではおなじみの「りんご」ですが意外と知らない事も…。
おいしいりんごの見極め方から、りんごの栽培の現状までをりんご農家の方をはじめ、
長野市役所の職員や飲食店の方など様々な職業の方が語り合いました。

目次

  1.りんご農家が教える!おいしいりんごの見極め方
  2.どんどん早くなる収穫
  3.これからのりんご農園
  4.売り上げをもっとあげるアイデアとは?

りんご農家が教える!おいしいりんごの見極め方

参加者の自己紹介と好きなりんごの食べ方やりんごとの思い出を語り、場も温まったところで
りんごについてのシンプルな疑問がでてきました。

柿次郎さん

品種の違いはあれどおいしいりんごを見極める術(すべ)がないような気が
します。すいかは叩いた音でおいしいか分かる…みたいなそういう知恵って
ありますか?

おいしいりんごの見極め方を教えてくださったのは、
長野市で100年続くりんご農園の4代目 徳永虎千代(とくなが とらちよ)さんです。

徳永虎千代さん
虎千代さん

おいしいりんごはりんごのおしりの部分を見ると分かります!
赤いりんごは下のおしりの部分をみると赤く着色していない部分が見えるんですよ。人間でいうと地肌の部分みたいな…
その地肌の部分が成熟の方向へ向かっているかどうかが大事で
緑色より黄色、黄色よりオレンジ色の方がよりいいです。

きむらさん

りんごのおしりの際まで完全に赤が進んでいる方がいいんですか?

虎千代さん

その場合は農家さんがシルバーという日光を反射させるものを使って、おしりの部分も赤く着色させているので見極めが難しいですが…
他にも見極め方は色々あります!表面のざらざらが多い方がいいとか…

柿次郎さん

なるほど~
あと保存方法もぼけてしまって難しくないですか?
そもそもなんでぼけちゃうんですかね?

りんごのぼけについて説明してくださったのは、
りんご農園を所有し、今回ミーティング会場として貸して頂いた長野市往生地にある施設を経営する
荒井克人(あらい かつと)さんです。

荒井克人さん
荒井さん

品種によってぼけやすいもの、ぼけにくいものがあるのですが
今の季節でいうと中生種という「シナノゴールド」、「シナノスイート」、「秋映」の3品種とかはそんなに固くないのでぼけやすいです。「ふじ」とかは固めなのでぼけにくいです。

※中生種・・・9月から10月にかけて収穫される品種のこと

柿次郎さん

ぼけ方は品種によって違うんですね!
りんごを袋に入れて密封すると長持ちすると聞いたことがあるのですが
それは正しいですか?

虎千代さん

正しいです!
りんごは呼吸をして水分を外に出しているので湿度が高い方が長持ちします。

どんどん早くなる収穫

柿次郎さん

りんごの売れ行きはどうですか?
全国のりんごの消費量とか、広い範囲の単位は出ていると思いますが
生産者個人としての実感はどうですか?

りんごの売れ行きについてお話してくださったのは
上田市で果樹園を経営する 坂下浩(さかした ひろし)さんです。

坂下浩さん
坂下さん

僕としては年代が上の方がもちろん多いのですが、最近は若い方にも売れているイメージです。さっき出てきた3種類のりんごは25年ほど前に出始めて、だんだん認知されてきました。昔は収穫が早く終わることもあって、その収穫が終わってしまうと「ふじ」の収穫までメジャーな品種がなく、10月ってそんなにりんごが売れなかったんですよね。でも今は色んな品種が出てきて、手に取って頂けることが増えたと思います。

柿次郎さん

ちなみに長野で一番早くりんごを出せるのって何月頃なんですか?

荒井さん

8月頃かな?

柿次郎さん

それは昔に比べると早くなっているんですか?

坂下さん

早いですね!
しかもちゃんとおいしく食べられて日持ちもしてっていう品種が出てきています。
8月~12月までりんごの旬は長くなりましたね。

柿次郎さん

収穫が早くなった理由とかってありますか?

虎千代さん

「ふじ」っていうビックネームがあって、「ふじ」以外の時期を他の品種で埋めたからですかね。

柿次郎さん

りんごの収穫時期がだんだん早くなっていっているということですが
今の日本の気候とはマッチしていますか?

虎千代さん

そうですね…
うちは長沼でもりんごを作っているのですが、2019年の台風被害でりんごの木が9割近く水に浸かってしまって…
そうゆうこともあったし、霜の被害とか猛暑の影響もうけて、作りづらい年が
続いているなという印象です。

坂下さん

猛暑や台風、霜など…
自然栽培のりんごは必ず何かに当たってしまうので、何かあるという前提で対策を考えていくしかないですね。

これからのりんご農園

柿次郎さん

ここ数年の影響だけでも離農された方も多そうですね…
これから先も続けていくために工夫していることってありますか?

虎千代さん

将来的な対策としては、販路を見直すことですかね。
生食よりも加工したものを出していく方向を考えています。
気候の変動でりんごの出来もどんどん悪くなっていってしまうので…

坂下さん

自然とうまく付き合っていけるように災害への対策もしながら、
りんごができた時に買ってくださるお客様を増やすというのも大切かなと思います。

荒井さん

うちでは、地元の高校生を採用しようとしていまして、実際にここ何年かで3人採用しました。そういった形でうまくつないでいきたいですね。
その子供たちの中で違ったことをやりたいってことがあって、
例えばスマート農業で、消毒をまくにしても手でやるんじゃなくてドローンでやってみるとか楽しみながらやっています。

荒井さんの農園
スマート農業の様子
柿次郎さん

スマート農業でやっていることって他には何がありますか?

荒井さん

収穫マシンを今、作っていて…。

スマート農業の様子
柿次郎さん

作ってる⁉
自分たちでですか⁉

荒井さん

そうです!
夏の炎天下での草刈りや、物を運ぶなどの大変な作業をなるべく人に頼らず機械でやりたいと思いまして。
うちの畑は1番下から上までの距離が500メートルくらいあるんですけど、その距離を従来は人が運んでいたのですが、上と下に人を配置してその間を機械が自動で往復するというのをやっています。

スマート農業の様子
柿次郎さん

それはやっぱり効果的なのですか?

荒井さん

効果的だと思います!
スマート農業以外でも栽培方法を工夫するなどもしています。

坂下さん

栽培方法の工夫という点でいうと、北信は雪が多いので大きい木で栽培されている方が多いですが、上田市や松本市は高密植栽培といって海外と同じ栽培方法を取り入れるなどしています。

※高密植栽培・・・木を狭い間隔で植え、面積当たりの本数を増やす栽培方法

坂下さんの果樹園
坂下さんの果樹園
柿次郎さん

これがそうなんですね!
僕は北信にいるから新しく見えるのかもしれないですね。

荒井さん

長野県は今、高密植栽培を推進していますよね。

柿次郎さん

徳永さんは北信で農家をされていますが、この方法を取り入れていますか?

虎千代さん

そうですね。
4割くらい高密植栽培に切り替えました。

坂下さん

うちは100%切り替えました。

柿次郎さん

それはいつ頃切り替えたんですか?

坂下さん

全部終わったのは2年くらい前ですかね。
足掛けでも10年ほどかかりました。

一同:ええ~!!(驚き)

坂下さん

一気に全部の木を切ってしまうわけにもいかないので、新しく増やしてまた植えて、既存のところを植え替えてとやっていくので…
高密植栽培は苗木の本数がものすごく必要というのと設備をしっかりしておかないと重さで倒れてしまうんですよ。結構投資もかかりましたが…
なんとか全部終わりました!

柿次郎さん

高密植栽培にするとどんなメリットがあるんですか?
災害が防ぎやすくなるとか…?

虎千代さん

どちらかというと収量が多く取れるようになるからですね。
災害を防げるようにはならないのでそれはまた別問題ですね。
ただひょうとかは防ぎやすそうですよね。

坂下さん

ひょうを防ぐネットは同じラインでかけていけばいいのでかけやすいですね~


売り上げをもっとあげるアイデアとは?

柿次郎さん

今あらゆるものの物価があがっているじゃないですか。
りんごもその影響は受けていますか?

虎千代さん

うちは価格を上げられていないです…

坂下さん

うちもそんなには…

柿次郎さん

どのくらいが相場なんですか?

虎千代さん

1個150円とか…?

柿次郎さん

これが1個200円になったら全然違ってきそうですよね…
買う側の皆さんは1個200円になったら高いなって思うのかな?

きむらさん

子供の頃は、りんごは安く買えるから親がいっぱい買ってくるみたいなイメージがあって…
昔のような感覚で買えるかっていうと難しい気がしますね…

柿次郎さん

りんごを販売するだけじゃなくて、
例えば大手飲食チェーン店に卸すなど、新しい市場を作るための動きができたら
売り上げももっと安定していきそうですね!

虎千代さん

そうですね。
価格も安定しそうだし、見た目があまりよくないりんごでもできるだけ正当な値段で買い取って頂いて加工して頂けたらりんご農家の状況は変わっていきそうですね!

柿次郎さん

物価が上昇している中で、まだ1個150円で買えるってすごいことですよね。
それはみんなりんごを食べる習慣があるってことで…。
僕は旅をする機会が多くて、旅先に行くと居酒屋でご飯を食べることが多くなって野菜不足になるんですよ。なので4泊だったら4つ持って行って1個ずつ食べたりしています!りんごは持ち運びしやすいし…。

永田さん

りんごを持ち運ぶ専用のカバンとかあったらよさそうですね!
長野県民はみんな持ってるみたいな…。

きむらさん

そしたら登山とかにもよさそう!

廣石さん

りんごそのものの活用ではないのですが、
りんごの木のオーナー制度というのがあると思うのですが、長野に近い人ではなく長野になかなか通えない方にオーナーになってもらえたらりんごももっと広がっていくし、単価が高めにできるので農家さんの収益的にも助かりそうだなと思いました!

柿次郎さん

オーナー制度って実際にありますか?

荒井さん

やってます!

荒井さん

スマート農業も組み合わせてやっています。オーナーは東京のレストランのシェフの方が多いんですけど、良いりんごができたらそれをお店でデザートに出したり、出来の悪いりんごはこちらでビールなどに変えてラベルをシェフのものにしてお渡しして、自分で作ったりんごでできたビールですよってことでお店で出したりとか。多少なりとも関わって頂きたいので機械を使って遠隔で収穫や消毒をまくなどの体験をしたり、シェフのオーナーに実際に来て頂いて、料理を振舞って頂いてお店の宣伝をして頂いたりなどもしています。

柿次郎さん

飲食店側としてはこの時期になると限定のりんごメニューがお店で頼めるということを発信できるんですね!

荒井さん

そうです!
オーナー希望は今年は5件ありました!

一同:おお~(驚き)

柿次郎さん

皆さん生産だけではなく、高密植栽培やスマート農業をやるなど、色々な工夫で付加価値をつけてりんご業界を支えていることが分かりました。りんごのおいしさをどう伝えるかというのはまだまだ可能性があると思います。
皆さんのりんごの活動を応援しています!


今回の会場となった荒井さんの施設から見た景色、長野市街を一望できます
グラフィックレコーダーの尾形望さんにもご協力頂きました

生産の苦労や栽培の工夫などりんごが身近にある長野県民でもなかなか知らない話題がたくさん出てきて、農家の皆さんの努力でりんごが当たり前に食べられる環境が支えられていることを知りました。今後どのように時代や環境に適していくのか楽しみです。
信州もぐもぐmeetingでは、これからもりんごだけではなく他の食材や食文化などもを通して深掘りしていきます!(もぐしんスタッフ)


執筆者
川浦 光流(ひかる)

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