世界×おやき⁉ 世界の台所探検家 岡根谷実里さん
- 2023年09月04日
長野市出身で世界の台所探検家の岡根谷実里(おかねや・みさと)さん。
世界およそ60か国の家庭の台所にお邪魔し、一緒に料理を作り、家庭料理を学んできたそうです。世界各地の家庭料理の発信をしており、これまで学んだ世界の料理を、信州の食材を使って新しいものとして生み出していこうという活動もしています。
ブルガリアの家庭料理「リュテニツァ」
この日は、木島平村でおいしいパプリカを作っている
農家の竹内芳次郎さん(写真左)のハウスにお邪魔しました。
野沢温泉村でホテルやレストランを経営しているシェフの片桐健策さんと、竹内さんのパプリカを使ったブルガリアの家庭料理「リュテニツァ」(パンなどにのせて食べるパプリカを使ったペースト)の開発に挑んでいます。
土木工学からなぜ「食」へ?
岡根谷さんは高校時代に受けた地理の授業の楽しさをきっかけに、まだ見ぬ世界で働いてみたいという思いで東京大学に進み、発展途上国などでインフラ整備を行う土木工学を学びます。
なぜ土木工学から世界の台所に興味を持ったんですか?
土木工学を通して人の暮らしをよくできたらと思っていたんですが、
実際にプロジェクトでケニアへ行った時、ケニアの村に大きな道路が通ることになって、農家がアクセスできるようになって物も売れるようになって現金収入が増えるっていう論理はあるんですけど、実際目の前の人たちは道路のためにマーケットや学校をつぶさなければいけないことをとても悲しんでて。インフラが整うことで逆に人の生活が壊れてしまうという体験をしました。
国全体の発展のためには必要かもしれないけど、目の前の人が悲しんでしまうことを自分は本当にやりたいのか疑問に思えてきてしまって。
でもそんな悲しんでいる人たちも一日の中で必ず笑顔になる時があって、
それが夕飯の時だったんですよね。みんな思い通りにいかないことはあっても、ご飯を作って笑顔を作ることができる。
自分の手で幸せを生み出せる手段としての料理にすごく興味をもちました。
台所は社会の鏡
台所を探検する魅力って何ですか?
台所は社会の鏡で、例えばタイの山奥の村を訪れた時に山奥とはいっても
みんなスマホを使っていたり、子供もスマホに夢中になっていたりするんですけど家庭に入ってみるといろりがあって、山から野草を採ってきて料理をしたりしてまだ山とつながっているという暮らしが見えてきたり。
キューバでは外を歩いていると、1950年代のクラシックカーが走っていたり、牛が畑を耕していたりとあまり経済的に豊かではないとされている国なんですけど、毎日の料理の為に電気鍋があったりとか、外から見ているだけでは分からない社会の事情や本当の暮らしを知ることができるところが魅力です。
家庭の台所というのが観光名所では分からない本当の姿だったりするんですね。
そうですね。人間らしい場所ですよね。
料理やレシピを教えてもらいたいからというよりは、その国の人達の暮らしや社会を知りたいから数日間滞在させていただきました。
世界の台所から伝えたいこと
岡根谷さん
世界って楽しいよ。そして広くて多様だよ。でもみんなおんなじだよということを伝えたいです。人の行き来が中々しづらい状況の中で、より一層世界が遠く感じてしまう。
危険な土地って見えてしまうかもしれないけど、食を通して行ったことのない国の当たり前の暮らしっていうのを伝えることでもっともっと身近になっていったらいいなと思います。
世界と信州のコラボ
今後目指しているものはありますか?
世界の色々な家庭を訪れるなかで年々信州という故郷が自分の中で大事な存在になってきまして、世界の食と信州の食のコラボレーションも進めていきたいと思っています。今やっていることの1つに「おやき」があります。
「おやき」信州の名物の1つですね!
おやきの中に世界の家庭で出会った料理を入れてみています。
色んなものに合いそうですね!
世界中に小麦と合うものはあるので、おやきの中に入れることでおやきから
世界を伝えていく、長野の人も興味を持ちやすいし、おやき文化や地元の食文化にも興味を持ってもらえるっていう双方向ができたらと思います。
※情報は2020年9月7日(月)放送当時のものです。