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岩手取材ノート

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猛暑による秋・冬野菜への影響は?

  • 2023年11月09日

記録的な暑さが続いたことしの夏。市場でも野菜の高騰が続いていましたが、11月に入って気温も落ち着いてきました。今の時期、秋・冬野菜への影響はどうなっているのか。現場を取材しました。

(盛岡放送局 ディレクター 大北啓史)

夏の猛暑 農家への影響は?

岩手町で50年近く農家を営む宮崎安見さん(67)。
3ヘクタールの土地でネギや大根など7種類の野菜を栽培しています。
ことしの猛暑で、ある野菜が特に影響を受けたといいます。

 

ダイコンを収穫する宮崎さん
宮崎さん

ニンジンが全然なりませんでした。畑に結構隙間があって、2割から3割ぐらいがやられたんじゃないかと思います。

この時期は通常、畑にびっしりとニンジンの葉が茂っていますが、畑の3割近くが葉が出ていない状況でした。
ニンジンの芽が出るお盆頃に暑さが続き、うまく成長できなったそうで、できたニンジンも、個性的な形が多く、売りに出せない物も多かったと言います。

一方でほかの野菜ではこんなことも。

岩手町では例年9月頃までに収穫するピーマン。宮崎家の主力野菜でもあります。収穫のピークを過ぎると、例年霜が降りて、なっている実はだめになってしまうのですが、ことしは霜がおりる時期が遅く、11月に入っても立派な実がなっていました。

宮崎さん

これも暑さの影響だと思います。こんなことはあまりみたことがない気がします。収穫すれば出荷できると思いますが、他の作業もあってなかなかそこまで手が回らない状況です。

こちらは、冬は特においしい、ダイコンです。種をまく時期の暑さがひどく、うまく育つか不安に思って植える量を3割に減らしました。
まもなく収穫をむかえるダイコンは立派に育っていました。

宮崎さん

ダイコンはいいできあがりになったのでよかったです。暑い日が続くときは日中の作業を避けて朝や夜に作業してきました。自分が作った野菜をおいしく食べてもらえればそれが一番なのでそのために頑張っていきたいです。

野菜の価格高騰 原因は?

猛暑で打撃を受けた農家。市場でも価格の高騰が起きていました。
盛岡市中央卸売市場では10月の野菜の値段は例年に比べておよそ3割ほど上昇。
なぜここまで高くなってしまったのか。卸売を担当している川村千伸部長に話を聞きました。
 

川村さん

10月は産地の移行期なんです。
品種によって異なりますが、岩手県でスーパーに並ぶ野菜は年間を通して
6月~10月は北海道や東北産、
10月~5月は関東産や九州産などのものが多いんです。
例年は10月に産地が入れ替わることになっているのですが、ことしは猛暑の影響で関東産がなかなか入荷してこなかった。そのためぽっかり穴が空いてしまい野菜不足から価格が上昇してしまいました。

川村部長によると、11月に入り、徐々に関東産の野菜も増えてきたといいます。
確かに市場の中には関東産の野菜も多く見かけました。

川村さん

白菜やネギ、ほうれん草も高かったんですけど、今は潤沢な入荷になってきています。これから寒くなるので、鍋商材としては値ごろ感のある価格で購入できるのではないかなと思っています。

その他の野菜では、

・キャベツや春菊など:関東産が順調に入ってきているので価格が落ち着いてくる予想
・タマネギやジャガイモ:北海道産の貯蔵物が少ないままなので堅調な相場が続く
・トマト:絶対量不足から高値が続くが、関東産のものが増えてきている

とのことでした。

川村さんも10月の価格高騰はここ10年ほどでは見られなかった現象だといいます。ことしは台風の影響が少なかったことが幸いだった部分もあります。来年以降も猛暑が続き、台風も重なるようなことがあれば農家も大変な上に消費者も今まで以上に苦しい状況になる可能性もあるといいます。

私たちは家計に優しい野菜を選ぶと同時に、消費者として野菜を買って農家を支え、この状況を乗り切っていくことが必要かもしれません。

取材後記

生産者である農家の方は温暖化への対応が喫緊の課題だと思います。しかし、農家の宮崎さんは、暑さ対策に関してはなかなか手のうちどころがないと話していました。同時に何十年とやってきた作物をやめて暑さに強い野菜の栽培も検討しなければいけないかもということも話していました。
普段スーパーで野菜を見かける中で、「あ、きょうは○○がちょっと高いな」「きょうはこの野菜がちょっと安いな」と私が何気なく感じる背景には産地の移行による空白の期間や農家の方の苦闘があることを改めて感じました。私自身、野菜を買って支えることしかできませんが、価格の変動の中に産地の変化や農家の方の思いも含まれていることを心に留めておきたいと思いました。

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