ページの本文へ

岩手取材ノート

  1. NHK盛岡
  2. 岩手取材ノート
  3. 大谷翔平 手術受ける 二刀流復帰は2025年の見通し

大谷翔平 手術受ける 二刀流復帰は2025年の見通し

  • 2023年09月20日

奥州市出身、大リーグ、エンジェルスの大谷翔平選手が19日、ロサンゼルスで右ひじのじん帯を修復する手術を受けました。
手術を行った医師によりますと、ピッチャーとしては再来年のシーズン、バッターとしては来シーズンの開幕から復帰できる見通しだということです。

“今後を見据えて…”

エンジェルスは19日、大谷選手の代理人を務めるネズ・バレロ氏の声明を発表しました。
それによりますと、大谷選手は19日の朝、ロサンゼルス市内の病院で右ひじのじん帯を修復する手術を受けたということです。具体的な術式は明らかになっていませんが、バレロ氏は声明で
「今後を見据えて最終的な判断と術式を決めた。翔平はこの先、何年にもわたって二刀流を続けることを希望した」と説明しました。
手術を行ったのは大谷選手が、大リーグ1年目の2018年10月に右ひじのじん帯を再建するトミー・ジョン手術を受けた時と同じ医師で、手術を行った医師によりますとピッチャーとしては再来年のシーズン、バッターとしては来シーズンの開幕から復帰できる見通しだということです。

大谷選手は8月23日に右ひじのじん帯の損傷が明らかになり、その後はバッターとして出場を続けていましたが、9月4日の試合前に行ったバッティング練習中に右脇腹を痛めました。
その後は欠場が続き、今月16日にけが人リストに入って今シーズンを終了したため、チームの遠征には同行せず右ひじの治療を進めると見られていました。
今後は、再来年のシーズンに向けて1年半以上、右ひじのリハビリを進めながらピッチャーとしての復帰を目指すことになりますが、バッターとしては来シーズンの開幕から出場できる見通しになりました。

大谷「一日でも早くグラウンドに」

大谷選手は、自身のSNSを更新し、復帰に向けた意気込みを投稿しました。

「早朝に手術を受け無事成功しました。
 不本意ながらシーズン途中でチームを離れることになりましたが
 残り試合のチームの勝利を祈りつつ、
 自分自身一日でも早くグラウンドに戻れるように頑張ります」

医師 “2025年開幕には二刀流復帰”

エンジェルスが発表した、大谷選手の代理人を務めるネズ・バレロ氏の声明の全文です。

翔平はけさ、ロサンゼルスにあるカーラン・ジョーブ整形外科クリニックで手術を受けました。
最終的な判断と術式は、今後を見据えて決めたものです。
翔平は、この先何年にもわたって二刀流を続けることを希望しました。
手術を担当したニール・エルアトラッシュ医師はこう言っています。
「翔平と協議を重ねて決めた最終的なプランは、ひじを今後も長く使うために患部を修復し、
 生体組織を加えて健康なじん帯を強化するというものです。
 私は完全な回復を期待しています。
 2024年の開幕には制限無く打てる状態になり、来たる2025年の開幕には二刀流として復帰できると
 思っています」
翔平は今、休んでいて気分も良く、これからの復帰への道のりを楽しみにしています。

新しい術式 採用の可能性も…

大谷選手が受けた手術の詳しい方法は明らかになっていないため断定はできませんが、執刀医の復帰の予測時期などから考えると今回の手術は、5年前に受けたトミー・ジョン手術ではなく人工じん帯などを使う新しい術式を採用した可能性が考えられます。

右ひじのじん帯を修復するには、主に4つの選択肢があります。

① トミー・ジョン手術
② 人工じん帯の移植手術
③ ①と②を合わせたハイブリッド手術
④ PRP療法

このうち、①のトミー・ジョン手術は、損傷したじん帯を切除して自分自身の主に手首のけんを患部に移植する方法で、大谷選手も5年前に受けています。
復帰までには1年から2年近くかかるのが特徴で、大谷選手もピッチャーとして試合に復帰したのは手術から1年9か月後、本格的な復帰は手術から2年半がたった2021年のシーズン開幕でした。
一般的には2回目のトミー・ジョン手術は1回目よりもさらに長いリハビリ期間が必要とされているため、今回の手術がトミー・ジョン手術を含む、①や③の術式だった場合は大谷選手の執刀医が予測している再来年、2025年シーズンでのピッチャーとしての復帰は難しくなります。
また、執刀医は「じん帯を強化する」とコメントしていますが、④のPRP療法は患部の再生を促す治療のため、じん帯を強化する効果を期待できるものではありません。
また、このPRP療法だけを行ったのであれば、通常は2,3か月程度で復帰が可能となります。

一方、②の人工じん帯を使った手術は①のトミー・ジョン手術よりも新しい術式で「インターナル・ブレース」と呼ばれる人工じん帯を患部に移植して損傷したじん帯を強化する方法です。
術後3か月ほどでスローイングを再開でき、復帰までの期間が7か月前後と早いのが特徴で、トミー・ジョン手術を含んだ①や③の方法のおよそ半分程度の期間で復帰できるとされています。
この方法なら、2025年にピッチャーとして復帰できるという執刀医の見通しと矛盾はありません。
人工じん帯を使った手術は、まだ症例が少なく、手術を適応できる損傷の種類が限られることがデメリットですが、大谷選手の代理人のネズ・バレロ氏は、これまでの取材で
▼今回損傷したじん帯は、5年前とは別の箇所であることと、
▼けがの程度が決して重くないこと、を強調していて、
今回の大谷選手にこの新しい術式が採用された可能性が考えられます。
現段階で、球団は詳しい術式はわからないとしていますが、代理人のバレロ氏はプランを検討していた段階で「さまざまな医師の意見を集めている」とも話していたことから、これらの方法以外のさらに新しい術式を採用した可能性もあります。
 

大谷選手の2023年シーズン(日付は現地時間)

今シーズンの大谷選手は、開幕前の3月にWBC=ワールド・ベースボール・クラシックの日本代表で投打の大黒柱として活躍し、日本を優勝に導くとともに大会MVP=最優秀選手に輝きました。
アメリカと戦ったWBC決勝のわずか9日後には、エンジェルスで開幕投手を務め、そこから文字どおり
投打のフル回転でほとんど休むことなく出場を続けました。

6月と7月には驚異的なペースでホームランを量産し、2か月連続で月間MVPを受賞。7月27日には、タイガースとのダブルヘッダーでの第1試合で先発登板し、1安打に抑えて大リーグで自身初の完封勝利を挙げ、その45分後に始まった第2試合では指名打者として2打席連続でホームランを打つ離れ業をやってのけました。
しかし、この試合をきっかけに筋肉のけいれん、いわゆる「つった状態」を理由に試合途中で交代する場面が増え、右手中指のけいれんで4回でマウンドを降りた8月3日の試合後には「一番の理由は疲労じゃないかと思う」と珍しく疲れを口にする場面もありました。
そして、先発登板した8月23日のレッズ戦で異変を訴えて、2回途中でマウンドを降り、MRI検査で右ひじのじん帯損傷が判明。ピッチャーとしての今シーズンを終了しました。
その後は志願してバッターとしては出場を 続けましたが9月4日に新たに右脇腹を痛め、その後は欠場が続いていました。
WBCの優勝に続いてエンジェルスでも「このチームで優勝したい」と初のプレーオフ進出、そしてワールドシリーズ優勝を目指した1年は、投打ともにシーズン終盤のけがによって不本意な形で終えることになりました。
それでも、大谷選手がここまで投打に残している成績は圧倒的なものです。バッターとしては、135試合に出場して打率.304、ホームラン44、95打点、20盗塁をマーク。ホームラン数はリーグトップで打率と打点はともにリーグ4位で、すでに規定打席に到達しています。
アメリカンリーグのホームラン王争いでは、2位につけるホワイトソックスのロバートJr.選手が35本で、大谷選手に追いつくためには残り14試合でホームランを9本打つ必要があるため(9月16日時点)、
大谷選手の日本選手として初のホームラン王になることが有力視されています。
一方、ピッチャーとしては、23試合に登板して10勝5敗、防御率3.14の成績をマークしました。132イニングを投げて167奪三振、規定投球回には到達できなかったものの、大リーグで史上初めて2年連続で
「2桁勝利、2桁ホームラン」を達成しました。
アメリカのメディアは、毎年11月に発表される今シーズンのMVPについても、アメリカンリーグは大谷選手の受賞が確実だと伝えていて、受賞すれば2021年以来、2年ぶりとなります。

<今季振り返り>

3月21日
WBCで日本代表の3大会ぶり3回目の優勝に貢献。決勝では9回にマウンドにあがりエンジェルスのチームメート、トラウト選手と対戦。フルカウントから最後はスライダーで三振を奪い試合を締めくくった。大会MVP=最優秀選手に輝く。

3月30日
大リーグ、エンジェルスで2年連続の開幕投手。

6月22日
大リーグ、オールスターゲームのファン投票の1次投票でアメリカンリーグ全体のトップとなる264万票余りを獲得し、最終投票を待たずに3年連続3回目の先発出場が決まる。
6月30日
日本選手初の3シーズン連続ホームラン30本を達成。6月のホームランは自身月間最多の15本。

7月3日
アメリカンリーグの野手部門で6月の月間MVP受賞。月間MVPは2021年7月以来で日本選手最多の3回目の受賞。6月は打者として27試合すべてに先発出場し、打率.394。ホームラン15本、打点29とリーグトップの成績。盗塁も4個。

7月11日
2番指名打者で、3回目のオールスターゲーム出場。1打数ヒットなし。フォアボール1つ。

7月27日
タイガースとのダブルヘッダー2試合に出場し、第1試合で大リーグで自身初となる完封勝利で9勝目をあげたあと、第2試合で2打席連続ホームランを打つ。
8月2日
アメリカンリーグの野手部門で7月の月間MVP受賞。2か月連続、4回目の月間MVP。2か月連続の月間MVP受賞は、シーズンMVPとなった2021年の6月と7月に続いて2ぶり。7月は23試合すべてに先発出場し、打率.282。ホームラン9本(リーグトップ)。打点14。

8月9日
ジャイアンツ戦で今シーズン10勝目をあげ、ホームラン40本とあわせて2年連続で「2桁勝利、2桁ホームラン」を達成。2年連続の達成は大リーグ史上初の快挙。
8月23日
レッズとのダブルヘッダーの第1試合に先発登板し2回途中でマウンドを降りる。その後、右ひじのじん帯損傷がわかり、投手としての今シーズンは終了。


9月4日
試合前の打撃練習中に、右の脇腹を痛める。試合は欠場。
9月16日
10日間のけが人リストに入り、今シーズン終了

大谷の今季成績

【打者】
ホームラン 44/打点 96/打率 .304/得点 102/盗塁 20 
【投手】
10勝5敗/防御率 3.14/投球回 132/奪三振 167

ページトップに戻る