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女性の生活困窮は「戦後最悪」70年以上支援してきた滋賀・大津市の支援団体が伝えたいこと

「家賃が払えない」「住む場所がない」
この夏以降、滋賀県大津市の支援団体には、生活に行き詰まった女性からの相談が1000件以上寄せられています。
この団体は、70年以上にわたって母子家庭の支援を行ってきましたが、今の女性を取り巻く状況は「戦後最悪」だといいます。
生活に困ったら、いつ、どのタイミングで助けを求めればいいのか。支援の現場で働く人の声に耳を傾けました。

(クローズアップ現代+ ディレクター 山浦 彬仁)

“コロナ離婚”で家を失う女性たち

滋賀県大津市にある社会福祉法人「滋賀県母子福祉のぞみ会」は、長年に渡って困窮した女性たちの相談に乗り、生活全般の支援を行ってきました。

その「のぞみ会」に、この夏以降「家賃が払えない」「住む場所がない」といった、女性からの相談が1000件以上寄せられています。

助けを求める理由はさまざまですが、新型コロナの影響で、夫も自分も収入が減った結果、夫婦関係が悪化したり、それが家庭内のDVにつながったりするケースが多く見受けられました。
また、夫と離婚した専業主婦からの問い合わせも増えています。結婚・出産を機に専業主婦になった女性が、離婚をしたとたん収入がなくなってしまい、家賃を払えなくなったり、新たに家を借りることが出来なくなったりしているのです。

新型コロナによって、女性が男性に比べて経済的に弱い立場にある現実が、改めて浮き彫りになったと感じました。

戦後70年以上のなかで最悪の状況が起きている

「のぞみ会」は戦後間もない昭和24年に戦争で夫を亡くした女性たちの互助組織として発足し、以来70年以上母子家庭の支援に取り組んで来ました。

「昔は離婚した女というだけで偏見や差別があったんよ」

実は、事務局長の坂下ふじ子さんも、夫と離婚し、シングルマザーとして子どもを育ててきた経験を持ちます。

「のぞみ会」を知ったのは、乳製品メーカーの営業の仕事をしているとき。営業先だった「のぞみ会」に、シングルマザーであることに負い目を抱え誰にも相談出来ない母親がたくさんいることを知り、自分と同じような境遇の女性たちを支えたいと考え、職員となりました。

以来、坂下さんは20年以上、母子家庭の支援を続けてきましたが、いまが最もひどい状況だといいます。「食べ物がない」「住む家を失う」ところまで追い詰められる人は以前はほとんどいなかったそうです。

坂下ふじ子さん(社会福祉法人滋賀県母子福祉「のぞみ会」事務局長)

「住宅を失って本当に行き場がない。周りに誰も助けてくれる人がいない。そういうつながりが、今の日本にはないんです」

家を失う女性たち “見えづらい”苦境

助けを求める女性たちのなかには、支援につながることに、ためらいを感じている人もいます。

「私のような人間が、福祉の助けを借りても良いのでしょうか…」
「のぞみ会のHPを半年前から知っていましたが、これまでメールを書いては消し、書いては消しを半年続けてきました。きょう勇気を出してメッセージを送ります」

さらに、相談を求めてきたにもかかわらず、「やっぱりまだなんとか自分で頑張ります」と自分から支援を断る人も少なくありません。なぜでしょうか。

坂下ふじ子さん(社会福祉法人滋賀県母子福祉「のぞみ会」事務局長)

「母子家庭の貧困は見えづらい貧困というか、本当にギリギリまで我慢して頑張りはるんですよ。ひとりでなんとかしようとして、病気になっても働きはるんですよ。だからSOS出してくれたというだけでいいんです。気軽に誰にも言えない愚痴を言うだけでもいいんです。なんとか対処できるので。それがなかったら、どこにどんな方が困っていらっしゃるのか、全然わからないんです。

これまで行政や福祉、家族や知人にも相談をしている人も多いと思うのですけど、大部分はそこで嫌な思いをして、声すらもかき消されていることがほとんどだと思うんです。だからなんとか自分で我慢をする中で、感覚すらも麻痺してしまう。生活保護や母子支援サービスすらも使えないものだと思いこむ。問題が大きくなる前に気軽に相談できる人がいないことで、見えない貧困は深刻な問題になっていくんだと思うんです。

『子どもに迷惑をかけてはいけない』と思って抱え込んでしまう人も少なくないんですよ。たとえば婦人保護施設などのシェルターに入るとするでしょう。すると引っ越さないと行けない。子どもの学校を変えないといけない場合にためらうお母さんはたくさんいはるんです」

それだけではなく、日本では世帯の収入で貧困が判断されるので、夫や父親に一定の稼ぎがあると、女性の貧困が見つかりにくいという問題もあると言います。

「助けて」といえないうちに、問題が雪だるま式にふくらみ、ようやく支援につながった時には、身動きが取れないほど追い詰められている女性たち。なんとしてもそうなる手前に救いたいと考える坂下さんたちは、「こまりごとがあったら聞かせて下さい」と、きょうもSNSに届く声に耳を傾け続けています。

社会福祉法人 滋賀県母子福祉のぞみ会

TEL:077-522-2951(9時~17時半まで対応可能)
https://nozomi-kai.com/※NHKサイトを離れます
相談料は無料。LINEやインスタグラムでは24時間相談を受け付けています。母子家庭のためのシェアハウス(3か月無料)も完備し、自立へ向けたサポートを行っています。

女性のための相談窓口

「生活が苦しい」「DVや性暴力を受けた」など、悩みを抱える女性を支援してくれる相談窓口を、国やNPOなどが設置しています。助けになる情報をまとめたサイトや、主な相談窓口をご紹介します。
https://www.nhk.or.jp/minplus/0020/topic030.html

みんなのコメント(2件)

メロディ
60代 女性
2021年12月29日
本当にコロナ禍になって、仕事も学校も生活もひっくり返りました。男女平等、いまだに女性は男性の扶養にならなければならない。結婚しないと女性として子供を産む権利も育てる事もできない。女性しか罹らない病気もある。ドメスティックバイオレンスやパワハラも仕事をしても、付きまとう。経済的に貧富の差も解消しないなら民主主義もやめてみんな同じ生活レベルにすればいい。
華蓮
40代 女性
2021年12月13日
社会は男女平等と言いながらも、まだまだ男性社会から抜け出せない現実があります。女性というだけで軽く見られ、切り捨てるのも女性が優先的になる。なかなか認めて貰えない世の中、専業主婦は立派な仕事です。子供がいたら家事育児に追われ365日休む暇もなく働いています。男性は同じようにできますか?と問いたい。それなのに、収入は最低賃金で働いて、専業主婦は収入もなし。同じ女性として悔しい気持ちで一杯です。