6度目の表彰!「かまいたち」弟は詐欺防ぐコンビニ名物店長
- 2024年02月03日
コンビニは最後のとりで
「以前にも来られませんでしたか?」
松江市内のコンビニで店長を務める山内剛さんは、レジに電子マネーカードを持ってきた50代の女性に声をかけました。
毎日多くの人が訪れるコンビニで、山内さんがこの女性を思い出したのには理由がありました。
2024年1月。山内さんは警察で表彰を受けました。前年に詐欺被害の防止件数が多かったコンビニエンスストアとして感謝状が贈られたのです。
この店舗では去年、県内で最多の3回の被害を食い止めました。
このうち2回は山内さん自身が被害を防ぎました。
特殊詐欺の被害を防いだとして警察から表彰されるのは個人を含めて今回が6度目という名物店長です。
防止や表彰の件数は気にしていない。
目の前の1件1件の詐欺を防ぎたい。
その活躍には警察も一目置いています。
コンビニは特殊詐欺を止めてもらう最後のとりでだと思っている。
詐欺被害防止に尽力して頂いている。
名物店長は……
島根県松江市出身で、名字が山内……これでピンと来る人もいるかもしれません。実は山内店長、人気お笑いコンビ「かまいたち」の山内健司さんの弟なんです!
弟の活躍に、健司さんはSNSで驚きの反応。
剛さんは兄と個人でやりとりもしたといいます。
何を言ってるのと思いましたが(笑)応援してくれているのでうれしい。
兄からも力をもらってこっちも頑張ってるよって。
どうやって詐欺を防ぐのか
そんな名物店長の活躍と裏腹に、島根県内では特殊詐欺の被害が急増しています。
2023年の年間の被害件数は71件で、被害額はここ5年間で初めて1億円を超え、1億5千万円あまりに上りました。
特に被害の件数が多いのがコンビニエンスストアで販売する電子マネーカードを悪用した手口です。必要のない支払い請求を行うなどして電子マネーカードを買わせ、その番号を伝えさせて銀行の振込などを経由せず電話1本でだまし取るのです。
2023年の発生71件のうち、「コンビニ」×「電子マネーカード」の手口は4割以上の30件にものぼりました。
では詐欺被害をどう防ぐのか。
山内さんに実際のケースを教えてもらい、そのヒントを探ることにしました。
3000円分の電子マネーカードを購入しようとレジを訪れた50代の客。
山内さんは、カードの種類に違和感を覚えたといいます。
ゲーム用のカードを高い年代の人が買われることがあまりないので、
「申し訳ございませんがどういったご利用目的ですか」と聞いたところ
“当選金を受け取るための手数料に使う”と。怪しいなと思い警察に通報しました。
2023年9月にはこんなケースも。
5000円分の電子マネーカードを購入しようとした客。山内さんは見覚えがありました。
以前同じような詐欺でだまされかけていたところを自分が止めたので、顔と買われるものを見て
思い出し、あっ!と気づきました。
「怪しいとは思っていたんだけど……」といぶかしむ客の背中を押し、警察に通報して被害を防ぎました。
山内さんが詐欺と気がつくポイント。それは「電子マネーマード」×「年長者」です。電子マネーカードを買おうとする年長者に必ず声をかけるようスタッフにも広めています。
2023年11月にはレジを担当していた従業員が被害を防ぎました。
ただ、コンビニエンスストアは警察ではありません。お客さんの中には、本当に買い物をしに来ているだけの人もいるため、その見極めは難しいといいます。
そこで剛さんが意識しているのが、スタッフが声をかけやすい環境をつくることです。
お客さんに怒られたりするかなとか、店にクレームが入って迷惑かかるんじゃないかとかスタッフは心配すると思う。お店として取り組みをしているので怒られたりクレームがあるのは大丈夫だよと伝えています。
山内さんはこうした積み重ねが広がり、社会全体で詐欺被害を防いでいきたいと考えています。
テレビや記事を見ましたと言われて、実際家族と詐欺について話をしたとか自分の祖父母にも注意できたというお話を聞いたりするので、自分の活動から詐欺の防止が少しでも広まればと思っています。
あなたも防げる特殊詐欺
島根県は高齢化が進んでいることもあり、特殊詐欺の防止は大きな課題の1つです。
今回紹介した山内さんが防いだ金額はあわせて8000円と、少額だと思われる人もいるかもしれません。
しかし、少額だからこそ自分がだまされていることに気づきにくいものです。
山内さんのように日常生活の中で特殊詐欺に気づいて誰かに「声かけ」をするのは難しいかもしれませんが、まずは自分がだまされないこと。
対策について家族で話し合い、不審な電話があればすぐに周囲や警察に相談しましょう。