JR木次線・奥出雲おろち号ラストラン たっぷり紹介
- 2023年12月04日
26年間ありがとう 奥出雲おろち号
「26年間ありがとう」。「みんなを楽しませてくれてありがとう」。「今まで走ってくれてありがとう」。
2023年11月23日午後4時すぎ。終着駅・木次駅に奥出雲おろち号が着くと数百人のファンから感謝の声があがりました。
NHKではラストランの様子を総力取材。1日を振り返ります。
朝焼けからはじまった1日
午前8時すぎ。奥出雲おろち号が出雲市駅に入ってくると早速ファンに囲まれました。
多くの人たちの見送りを受けラストランはスタート
おろち号の行程はこちら
沿線のいろんなところで見送りが!
1年以上前から沿線の取材を続けてきた私たち。
どうしても撮影したい駅がありました。
あの人気アニメのキャラにふんしたこの女性。8年前から駅の管理を担う南波由美子さんです。利用者を少しでも増やそうと駅でのイベントをおこなったり、ときにはこんな格好でお客さんを楽しませたり、話題作りを続けてきました。沿線ではちょっとした有名人です。
「感謝を込めてということで花束を渡しました。こんなにたくさんの人と一緒に見送りできると思っていなかったので今すごい泣いちゃいそう」
“救世主”としてデビューしたおろち号
松江市と広島県庄原市を結ぶ貴重な路線でありながら、
利用者の低迷で廃線もささやかれていた木次線。
その危機を打開するため“救世主”として
1998年にデビューしたのがおろち号です。
窓のない開放的な客車から望む絶景は子どもから大人まで
多くの観光客を魅了し毎年およそ1万5000人の乗客を呼び込みました。
沿線の人にとって大切な存在だったのです。
沿線の人たちからおろち号へ
子どもたちの頭にはおろち号のかぶり物。
出雲八代駅では
4月からオリジナルの歌と踊りで乗客を迎える
“おもてなし”を続けてきました。
♪「夢を乗せてトロッコよ走れ走れ。
旅は続くどこまでも。
楽しんでいかれますように。
やぁやぁやぁ八代だよー。
お越しくださいまして
ありがとう~」
最後のパフォーマンスを全力で披露しました。
名物のそば 店主の思い
旅の楽しみといえば食事ですよね。八川駅では“出雲そば”が手売りされています。おろち号には窓がないので、数分の停車時間でもサッと買うことができます。
駅前にあるそば店の店主、中津睦己さんです。
おろち号の運行開始当初から「そば弁当」を提供。沿線の名物のひとつになりました。
「やり遂げたなという感じはします。来年の春4月になっても何もこないとなると本当に終わったんだなと。またそこで改めて感じるのかなと思います」
スイッチバックを空から解説!
木次線を検索すると必ず出てくるのが「スイッチバック」というキーワード。説明するのが意外に難しいので、NHKのヘリコプターからの映像で解説します!
列車は矢印にそって出雲坂根駅(いずもさかね)に入り、1回2回と進行方向をかえ山を登ります。もしもおろち号の声がきこえるなら「山は坂道がきついなあ。よっこらしょよっこらしょ」と言ったところでしょうか。ちなみに出雲坂根駅と比べると、隣の三井野原駅(みいのはら)との“高低差”は160メートルもあります。急斜面を確実に越えられるよう工夫されているんですね。
そして終着駅 木次駅へ
備後落合駅をおりかえし列車はいつもどおり順調にすすみました。そしていよいよ終わりの時。終着駅の木次駅では、出迎えの人が大勢集まり入場制限がかかるほどのにぎわいになりました。
多くの人たちに笑顔を届けた26年間
その歴史に幕が下ろされました。
「こんな風にホームにたくさん人がいる風景がきょうで終わりじゃなくて今後も見られたらうれしいと思うんです」「おろち号に力をいただいたような、“これからもよろしく”と言われているような最後だったなと思います。たくさん思い出とか感動とか本当にありがとう」。
取材を終えて
奥出雲おろち号の引退は確かにさみしいのですが、それでも前を向いて、これからも木次線を守っていきたいという地域の人の思いが印象的でした。NHK松江放送局では今後も沿線の話題を伝えていこうと思います。取材に協力してくださったみなさま、本当にありがとうございました!