視聴者のみなさまと語る会〜NHK経営委員とともに〜一覧へ
平成27年度 第6回
視聴者のみなさまと語る会〜NHK経営委員とともに〜in沖縄
(平成27年12月12日(土))

 

<会 合 の 概 要>

 「経営委員会による受信者意見聴取」の平成27年度第6回は、沖縄放送局で実施し「経営全般」「放送」の2つのテーマについて、公募による32名の視聴者から意見を聴取した。

 

<会 合 の 名 称>

「視聴者のみなさまと語る会 〜NHK経営委員とともに〜」in沖縄

 

<会 合 日 時>

平成27年12月12日(土) 午後2時〜午後4時

 

<出  席  者>

〔参 加 者〕

視聴者の皆さま32名

〔経営委員〕

浜 田 健一郎  (委員長)

 

石 原   進  (委員)

 

佐 藤 友美子  (委員)

〔執 行 部〕

板 野 裕 爾  (専務理事)

 

福 井   敬  (専務理事)

 

細 田 聡一郎  (沖縄放送局 局長)

〔 司 会 〕

伊 藤 博 英  エグゼクティブ・アナウンサー

 

< 会    場 >

 NHK沖縄放送局 情報・公開番組スペース

 

< 開 催 項 目 >

 以下のとおり進行した。

 

1 開会あいさつ

2 経営委員による説明

  協会の基本方針、その他協会の運営に関する重要な事項について

3 意見の聴取

 (1) NHKの経営全般について

 (2) NHKの放送について

4 閉会あいさつ

 

 「視聴者のみなさまと語る会」終了後、「アナウンサーの仕事と番組制作の裏側」と題して、久保田 祐佳 アナウンサーによる講演会を開催した。

 

<概要・反響・評価>

  • 公募の結果、はがき、ホームページなどを通じて46名から参加の申し込みがあった。

  • 語る会には、32名が参加し、「経営全般」と「放送」の2つのテーマについて意見や提言を募った。

  • 参加者からは、「沖縄県の受信料支払率」「受信料制度の理解促進」「公平公正な報道」「インターネットサービスへの取り組み」「地域放送の拡充」など、多岐にわたる意見や提言が寄せられた。参加者からは、「沖縄県の受信料支払率」「受信料制度の理解促進」「公平公正な報道」「インターネットサービスへの取り組み」「地域放送の拡充」など、多岐にわたる意見や提言が寄せられた。

  • 語る会終了後に行ったアンケートには、29名から回答があった。主なアンケートの結果は次のとおり

    <参加者の満足度>
     「大変満足」7名、「満足」15名、「普通」3名 (未記入4名)

    <経営委員会の仕事について>
     「今回のイベントに参加して、経営委員会の活動について理解が深まりましたか」との質問に対し、「経営委員会の活動について理解が深まった」との回答が22名からあった。


◆協会の基本方針・重要事項の説明

 (佐藤委員)

 NHK経営委員の佐藤です。平成27年3月に経営委員に任命されました。 どうぞよろしくお願いいたします。
 まず初めに、経営委員会の役割についてご説明いたします。経営委員会の役割は、放送法に明文化されており、NHKの経営の基本方針などの議決や、会長以下NHK執行部の役員の業務の監督など、NHKの経営に対して重い責任を負っています。
 こうした役割を持つ経営委員会の委員は、衆参両議院の同意を得て、内閣総理大臣より任命されます。
 委員の選任に当たっては、教育、文化、科学、産業、その他の各分野および全国各地方が公平に代表されることを考慮しなければならない、と放送法で定められています。
 経営委員の任期は3年です。再任されることもあります。委員の定数は12名で、きょうはそのうちの3名が「視聴者のみなさまと語る会」に参加させていただいています。
 また、経営委員の中から監査委員が任命されることになっており、経営委員を含めた役員の職務の執行を監督する役目を担っています。現在その監査委員は、上田委員、森下委員、そして私の3名が務めています。
 そして、経営委員が、ただいま申しましたような重責を果たすために視聴者の皆さまのご意見を直接伺うということが、放送法に定められています。本日はその機会として、皆さまからNHKに対する忌憚のないご意見をお聞かせいただきたいと思っています。
 そのご意見を聞かせていただく前に、経営委員が協会の基本方針や重要事項を説明するということも、放送法に定められていますので、少しお時間をいただき、平成27年度から29年度、3か年のNHK経営計画と、平成27年度収支予算および事業計画について、簡単に触れさせていただきます。
 まず平成27年度から29年度、3か年のNHK経営計画についてです。NHKでは、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年を見据え、NHKが今後進むべき大きな方針を、「NHKビジョン 信頼をより確かに、未来へつなぐ創造の力」としてまとめました。
 世界から注目が集まる2020年に最高水準の放送・サービスを、視聴者の皆さまにお届けし、より身近で信頼できるメディアとなることを目指します。そして、2015年からの3か年を、このビジョンの実現に向けた第一ステップと位置づけ、経営計画として5つの重点方針を掲げました。
 重点方針の1つ目は、「判断のよりどころとなる正確な報道、豊かで多彩なコンテンツを充実」です。
 これは公共放送NHKの根幹となる放送・サービスを、視聴者の皆さまの幅広い期待やニーズにお応えして充実・強化させていくというものです。
 重点方針の2つ目は、「日本を世界に、積極的に発信」です。
 次期経営計画では、国際発信の強化に特に重点を置いて取り組みます。情報の国際化が進む中、日本の政治、経済、社会、文化などの正確な情報を、世界にお届けし、日本を正しく理解していただくことは、公共放送のとても大切な役割です。
 英語のテレビ国際放送「NHKワールドTV」は、「見たくなる国際放送」を目指して、ニュースや番組を充実・強化していきます。また、日本の豊かな自然や文化、暮らしなどを積極的に世界に発信し、多くの方に日本の奥深い魅力を知っていただきたい、と思っています。
 重点方針の3つ目は、「新たな可能性を開く放送・サービスを創造」です。パソコンやスマートフォンなど携帯端末でもNHKの情報や番組などに接していただくため、インターネットを活用したサービスを強化します。また、8Kスーパーハイビジョンについて先導的な役割を果たしていきます。
 重点方針4つ目は、「受信料の公平負担の徹底に向け、最大限努力」です。
 受信料支払率80%、衛星契約割合50%の達成を目指し、受信料制度の理解促進活動に取り組むとともに、営業改革を一層推進し、過去最高の受信料支払率の達成に努めます。
 最後の5つ目の重点方針は、「創造と効率を追求する、最適な組織に改革」です。放送・サービスの強化・充実を図るためには、創造と効率をともに追求する組織を目指す改革を進める必要があり、関連団体を含めたNHKグループ全体の業務体制改革を推進していきます。また、男性・女性を問わず、多様な働き方ができる職場改革にも努めてまいります。
 そして、3か年の収支計画については、受信料をはじめとする収入の増加を確保し、重点方針で取り組む放送・サービスの強化、そして放送センターの建て替えや2020年の東京オリンピック・パラリンピックなど、将来の備えに充てていきます。さらに、業務全般にわたる見直しにより経常経費を削減し、重点事項に充てていきます。
 以上が3か年経営計画の全体像です。今後は、この経営計画の着実な実行が何より重要です。経営委員会は、今後も執行部と協力し、よりよい経営の実現に向けて努力を積んでまいります。
 次は、27年度収支予算と業務計画についてです。平成27年度は、NHK経営計画2015〜2017年度の初年度として、経営計画に挙げた5つの重点方針に沿った事業運営を着実に遂行していきます。事業収入は、受信料の増収等により前年度予算に対して201億円の増収となる6,831億円を見込みます。事業支出は、国内放送・国際放送の充実、インターネットの活用やスーパーハイビジョンなどの新サービスの推進などにより、前年度予算に対して229億円増の6,769億円としています。
 以上により、事業収支差金は62億円を確保し、全額を東京渋谷の放送センターの建て替えなどに備え、建設積立資産に繰り入れることとしています。
 なお、26年度に過去最高となる受信料収入を確保したことなどにより、26年度決算の事業収支差金は、予算に対して306億円増の396億円となり、このうち386億円を建設積立資産に繰り入れました。
 放送センターの建て替えについては、現有地での建て替えが決まりましたが、これから1年かけて建設基本計画を策定することとしています。経営委員会としては、国民、視聴者の十分なご理解のもとで計画を進めることが重要であり、建設基本計画が出た時点で収支を見直し、直近の予算・事業計画から直ちにそれを反映した執行部案を示すことを求めています。
 以上、平成27年度の収支予算、事業計画などについて触れさせていただきました。
 ただいまご説明しました3か年経営計画、27年度収支予算と事業計画を着実に実行するためにも、視聴者の皆さまからいただくご意見やご要望は、大変貴重なものと考えています。
 本日、沖縄放送局にお集まりの皆さまから頂戴するご意見、ご要望は、経営委員全員はもちろんのこと、執行部とも共有して、今後のNHKの経営に反映させてまいりたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

《視聴者のみなさまからのご意見とNHK側からの回答》

 

第1のテーマ:NHKの経営全般について

【会場参加者】
 3か年の経営計画は、非常に大きな事業計画であり、NHKには、北海道から沖縄、海外までたくさんの組織がある中、どのようにして、この事業計画を3か年で組織全体に徹底させ、PDCAを回していくのか。具体的にどのように考えているのか教えていただきたい。

(福井専務理事)
 まず3か年経営計画には、5つの重点目標があり、目標遂行に当たって、毎年度、事業開始の前に各役員が年間の目標を設定します。その目標をもとに担当の部局長が目標を設定し、その下の部・センターでもそれぞれ目標を設定します。そして、部員それぞれが本人たちの目標を設定し、半年、四半期という形でPDCAを回し、事業を遂行していくという形になっています。
 全体的には、四半期ごとに経営委員会に実施状況を報告するという形で進めています。

【会場参加者】
 27年度収支予算の事業支出の項目で、給与の削減が記載されているが、経験上、給与の削減は、職員のモチベーションやモラールの低下につながる。給与の削減計画は、職員のモチベーションやモラールを低下させないような形で進めるよう留意すべきだと思う。

【会場参加者】
 受信料支払率の全国平均は約80%弱とのことだが、沖縄県の受信料支払率は、約40%程度と聞いている。この現状について、どのような感想を持っているのか。

【会場参加者】
 オートロックマンションの増加などにより、なかなかマンションの中に入れず、受信契約の締結に至らない状況があるとのことだが、今後、どのような対策をしていくのか。

(福井専務理事)
 平成25年度からおおむね5年間で基本賃金を10%引き下げる、という給与制度改革に取り組んでいます。
 35歳の職員のモデル賃金は、685万円です。また、放送事業の特殊性で他企業と比較して、時間外が非常に多いという現状があり、平均して165万円程度の時間外手当があります。
 給与制度改革は、給与を引き下げるということだけではなく、職員制度についても見直し、昇進、昇給、賞与の査定という、モチベーションが下がらない形で制度設計を行い、改革に取り組んでいます。

(石原委員)
 個人の給与を下げるこということを行うことは、モチベーションの問題につながり、企業としても得策ではありません。給与総額全体の人件費を減らしていくことが大事であり、例えば、IT化を進めることでの人員効率化に企業として取り組んでいく必要があります。NHKでも、そのような取り組みによって、毎年50名程度の人員削減を行っています。
 一方で、一生懸命働いた人が報われる給与体系にしていく必要があります。福井専務理事が言われたような給与制度に5年間かけて軟着陸させるかわりに、現在の給与が下がるということではなく、努力している人はより上がる、努力していない人は昇給の幅が少ない、昇進が遅れる、という体系につくり直すということであり、ご心配いただいているようなモラールの問題は、起こらないと思います。
 支払率の問題ですが、沖縄県は、全都道府県の中で最も支払率が低いところで、全国平均よりも約30%低くなっています。いろいろな原因や理由があると思いますが、受信料をお支払いいただくことは、公共放送の維持のために絶対に必要なことであり、お支払いいただきたい、ということです。
 ただし、お支払いいただくには、よい番組を制作する、あまねく受信できるようにすることによって公共放送が維持されている、ということを視聴者、国民の皆さま方にご理解いただくというNHKの努力が必要です。ご理解いただくために、イベントや放送でのお願いなど、さまざまな取り組みを行うことが大事であり、現在、取り組んでいるところです。
 また、沖縄放送局では、局長以下全体で受信料をお支払いいただく活動に一生懸命取り組んでおり、全国で一番低い沖縄県の支払率ですが、前年度から1.8ポイントの増加と、全国で一番高い増加率となっています。今後も、皆さま方のご支援、ご理解を得ながら、支払率を上げていく努力を続けていきたいと思っています。

(福井専務理事)
 オートロックマンションについては、いろいろな施策に取り組んでいるところです。
 分譲マンションについては、登記情報をもとに相手のお名前を入れて、ダイレクトメールを複数回、中身を変更しながら発送することで契約のお願いをしています。また、賃貸マンションについては、ポスティング業者に依頼し、受信契約の重要性やNHKの仕事、理解促進のパンフレット等のポスティングを大規模に行う対策に取り組んでいます。
 また、マンション以外に対する営業改革の取り組みとして、ガス会社に転居のお電話があった際に、NHKの受信契約の住所変更を一緒に取次いでいただく、電話料金のお支払いの際に、NHKの受信料も一緒にお支払いいただく、などの取り組みを行っています。今後も、公平負担の徹底に向けて、さらなる施策に取り組んでいきたいと思っています。

【会場参加者】
 沖縄県の受信料支払率が非常に低いという話を聞いているが、沖縄県は27年間政権が離れていて、公共放送といっても、恐らく沖縄県民にとっては、「なぜ、テレビを視聴するのにお金を支払わなければならないのか」という疑問があると思う。

(浜田委員長)
 沖縄県の支払率が低い事由については、昭和47年度まで受信料制度がなかったこと、大小さまざまな島があり、契約収納活動を行う地域が、非常に広範囲にわたっているという地理的な事情があると、経営委員会も執行部も理解をしています。
 そして、地道に受信料制度についてご理解いただくために努力し、放送番組を充実・強化することを基本に、公平負担の徹底に向けて、沖縄県の受信料支払率を上げていきたいと思っています。

(細田放送局長)
 NHKの前身であるOHKよりも先に民間放送による放送が始まっており、「紅白歌合戦」や夜7時のニュース、大河ドラマを沖縄テレビなどでご覧いただいていた時代がありました。その後、NHKとして受信料をお願いしたということで、ご理解いただけなかった事情もあると思います。
 ただし、何十年も前の話を、支払率が低い事由にこれからも言っていくわけにはいかず、あくまで視聴者の皆さまに、この受信料制度についてご理解いただく努力を重ね、制度をご説明し、皆さまにお支払いいただくということしかない、と思っております。
 平成26年度末で46.8%の方しかお支払いいただいておらず、残りの53.2%の方はお支払いいただいていないということは、お支払いいただいている方からは、非常に不公平感が強いと思います。NHKは皆さまがお支払いいただいている受信料で成り立っていますので、よい放送を出させていただくためにも、皆さまに受信料をお支払いいただきたい、と思っています。
 そのためには、何よりもNHK沖縄放送局が「皆さまにとって必要」だと思っていただけること、そして、まず「NHKをちょっと見てみようか」という気持ちになっていただくことが、大事だと思っています。
 台風や夏の高校野球のときなどは、NHKをよくご覧いただいていても、日ごろからNHKをよくご覧いただいているかというと、残念ながらそうでもない、という事情があります。民放が楽しい番組を放送しており、苦戦している部分もありますが、少しでも「いざというときはNHK」「少しはNHKも役に立つ」と思っていただき、それが受信料につながるようにしていかなければいけない、と地元沖縄放送局の局長として思っています。

【会場参加者】
 放送法で「受信機を設置したら、NHKを見ようが見まいが、受信料を支払ってください」と定めている、と理解しているが、その点を詳しく説明していただきたい。

(福井専務理事)
 放送法では「協会の放送を受信できる設備を設置すれば、NHKと受信についての契約をしなければならない」という条文があります。そして、受信規約という規約があり、その中でNHKと受信契約をした人には、支払い義務の規定があります。法制度上、NHKを見る、見ないにかかわらず、受信できる設備を設置すれば、契約をしていただき、受信料をお支払いいただくということになっています。

【会場参加者】
 その点について、一般の国民がなかなか理解できていない。「NHKは嫌い、見ない、民放だけしか見ない」という人もいると思うが、受信料制度について、もう少し広く浸透させる必要があるのではないか。

(板野専務理事)
 NHKの受信料制度というのは、世界に冠たるすばらしい制度だと思っています。「特段の罰則規定がないにもかかわらず、全体の75%の方にお支払いいただいている」という話をBBCなどヨーロッパの公共放送の組織の方にすると、大体の方は驚かれます。BBCもNHKとよく似た「受信許可料」制度を持っていますが、受信許可料を支払わなければ、年間何十人という方が監獄に入るという非常に厳格な罰則規定があり、90%を超える支払率となっています。
 一方、私たちの制度は、法律制度上は、受信機を設置されている世帯から受信料をいただくということにはなっていますが、罰則もない制度の中で、今現在、全国で75%の方にお支払いいただいています。
 3か年計画の中で「支払率80%の達成を目指す」とあるように、支払率をさらに上げていく努力をしなければならないと思っていますが、この制度は、大変すばらしい制度であり、まさに日本の視聴者、国民の方々の良識に支えられている制度だと思っています。
 ただし、沖縄県の場合は、まだ制度そのものをよくご理解いただいていないという状況にあります。私たちもさまざまなPRをすると同時に、放送の責任者としても、沖縄のさまざまなニュースや沖縄を舞台にしたドラマなどを制作し、皆さま方にもお役に立てる放送局だということを理解していただいて受信料支払いの割合を増やしていきたいと思っているところです。

【会場参加者】
 今の若い人や学生を見ていると、テレビよりもインターネットで情報を仕入れていることが多い。NHKのサイトは内容が充実しており、例えば「ためしてガッテン」のサイトは、「録画して後で見るよりもサイトを見たほうが早い」と思うほど、非常に充実した内容になっている。
 例えば「受信料を支払った人は、より充実したインターネットのコンテンツを利用できる」という形にすることは、支払率を上げる方法の一つではないか。
 今後、世代が変わっていくと、恐らくテレビ離れの時代が起こり、民放、NHKの区別なく「インターネットで見れば十分」となる。今後のインターネットを利用した取り組み、インターネットと連動したコンテンツの充実や視聴者へのサービスについてどのように考えているのか。

(浜田委員長)
 経営委員会は、以前から「放送と通信の融合」時代のNHKは、「世界の潮流に遅れることなく、放送事業全体の一層の発展に向けて、積極的な役割を果たすべき」と言ってまいりました。
 これからの3年間は、インターネット同時配信の研究段階だと理解しています。執行部には、課題を洗い出し、利用者の利便性向上の観点からも、公共放送としてふさわしい対応を検討していただきたい、と考えています。

(板野専務理事)
 大変貴重なご意見をありがとうございます。確かに、インターネット上での展開やアピールがまだまだ足りないと思っています。
 私たちは、放送法に基づき、受信料とは別に料金をいただく形で「NHKオンデマンド」というオンデマンドサービスを展開しており、多くの方にご利用いただいていますが、ホームページも含めて、さらにいっそう充実させ、インターネットを見ている方々に放送も見ていただけるよう、誘導していく方法について、考えているところです。
 今、日本の国内では、放送法の制約もあり、放送と通信を完全に同じ形で放送することができません。例えばイギリスBBCは、何年も前から放送と通信が完全に融合していますが、私たちは、法律の許す範囲内でインターネットにもさらに力を入れ、放送波をもっとご覧いただくようにしていきたい、と思っているところです。

(石原委員)
 インターネットがこれだけ発達してくると、若い人はインターネットやさまざまな端末でテレビ番組を視聴する時代になり、「放送と通信の融合」というのは、絶対に必要な社会のすう勢だと思っています。そういうすう勢の中で、「公共放送の受信料制度をどうするか」という話が出てくるわけです。
 一方的に電波を出し、受信するのが放送ですが、インターネットは双方向であり、通信です。今、放送についてのみ受信料をいただける法律になっていますが、つい最近、法律が一部直され、実験的にインターネットで番組を流すことが認められ、今、試験放送を行っているところです。
 試験放送の実施により、経費や問題点など課題を洗い出し、今後、この時代のすう勢に合わせて、受信料制度などをどのようにしていくのかを検討している最中です。「放送と通信の融合」については、「相当力を入れて取り組んでいかなければ、社会のニーズに追いついていけないのではないか」と考えています。

 

 

第2のテーマ:放送について

(司会)
 放送や番組について、「日ごろ、番組を見ていてこのように思う」「こういう番組を制作してほしい」というようなご意見があれば、全国放送、地域放送にかかわらずお聞かせいただきたい、と思います。

【会場参加者】
 全国放送では、12時以降に終夜放送で台風情報を伝えるが、沖縄の場合は、県域放送だからか終夜放送で伝えていない。字幕で台風の位置を表示し、ところどころでニュースが入ることはあるが、なぜ沖縄で台風が発生した際は、全国放送と同様の体制をとらないのか。

(細田放送局長)
 基本的に沖縄に接近してきた場合も、沖縄放送局としての対応はしています。しかしながら、台風が東京に直撃する場合のように、全国ニュースで24時間放送し続けるということはしていません。
 終夜の時間帯で10分ずつ放送し、新しい情報を入れていくために、情報更新の間は、台風の進路を表示させていただき、間を置いてから10分程の特設ニュースを放送するという形で、沖縄に接近した場合も必ずお伝えするようにしています。

【会場参加者】
 ことしの「紅白歌合戦」のテーマについて、「戦後70年」がメインテーマになると思っていたが、違うテーマだった。
 沖縄放送局では、戦後70年に「さんご」というユニットをつくり、 「いのちのリレー」という取り組みをしており、戦後70年の「紅白歌合戦」には、「さんご」が当然出場すると思っていた。
 どのような「紅白歌合戦」になるのか楽しみだが、「戦後70年」を、もう少しメインテーマとして前面に出すことができなかったのか。

【会場参加者】
 NHKの報道で「国内で唯一の住民を巻き込んだ地上戦のあった沖縄」という表現をされているようだが、中国の留学生から「サハリンや硫黄島でもありましたよね」「NHKは、沖縄の報道をするときに『国内で唯一の地上戦を経験した』ということを言っているが、実際は違いますよね」と、指摘され、調べたところ、史実に反するということがわかった。
 また、「沖縄に在日米軍専用施設の74%が集中している」と言うが、中国や韓国の留学生から「『在日米軍基地22.5%という表現』と、沖縄県の知事公室基地対策課が出している『沖縄の米軍及び自衛隊基地の中には在日米軍基地の22.5%、専用施設の73.7%』という表現は、どう違うのですか」という非常に鋭い質問をされて困っている。もう少し公平で客観的な報道をしていただきたい。
 特に在日米軍基地の説明には、「在日米軍基地の22.5%、専用施設の74%」という表現にしないと、国際政治を論じる学生から「ちょっと沖縄問題はおかしいのではないか」と指摘されており、ぜひ報道に気をつけてほしいと思う。

(石原委員)
 米軍専用施設の話は、米軍専用の施設のうち、沖縄に所在するものの割合が74%だったと思います。ところが、米軍が使っている施設には、佐世保や三沢、横田など自衛隊との共用施設があり、そのような施設を含めるとたしか22.5%程度になるのではないでしょうか。
 この数字の違いは大きいものであり、74%となると驚いてしまうかもしれませんが、実際は約22.5%です。NHKは事実を伝えなければいけませんので、「2つの捉え方がある」ということを、もっとはっきり言ってはどうか、と思います。

(板野専務理事)
 台風の件については、細田局長からもお話がありましたが、決して沖縄だけを特別扱いしているということはありません。
 ことしの「紅白歌合戦」は、「ザッツ、日本!ザッツ、紅白!」というテーマを掲げており、明示的に「戦後70年」ということは申し上げていませんが、「戦後70年」を意識したさまざまな人選や企画を考えています。
 例えば総合司会に黒柳徹子さんをお迎えしていますが、テレビの草創期からNHKにご出演いただいているという戦後のテレビ史を代表するような方を総合司会にお願いしていること、「戦後70年」をテーマにした夏の特集番組に出演されたMISIAさんに、そうした思いを込めた歌声を届けていただくなど、「戦後70年」のことしの締めくくりにふさわしい「紅白歌合戦」にしたいと考えています。
 また、「紅白歌合戦」には、出場者の選考基準というものがあり、例えば、全国5,000名の方を対象にした電話世論調査や、あるいはCDやDVDの売り上げ、有線やカラオケのリクエスト等について調査を行い、総合的に勘案して出場歌手を決めています。
 沖縄のグループ「さんご」さんについては、今後、ご活躍される中で、いろいろなデータをもとにして決めてまいりたいと思います。

【会場参加者】
 「唯一の地上戦」という言い方に関しては、通信社の第三者機関で「サハリンでも激しい戦闘があり、市民も大分巻き込まれた。どうして自分たちのことは忘れているのですか」という質問があり、「今後、その報道に関しては細心の注意を払う」と答えている。また、政府答弁でも「沖縄だけが地上戦を経験して市民が巻き込まれた、という表現は正確ではない」ということが答弁されている。

【会場参加者】
 先ほどの質問の内容について私も承知しているが、「日本では米を1粒も輸入していない」という中でも、沖縄では泡盛の原料となる米をタイから輸入しているという話で同様の指摘があった。
 確かに県内でも、いろいろな方から指摘があり、議論されたと承知しているが、最近は、断定するような「唯一の」という表現を用いた報道はない、と記憶している。

(板野専務理事)
 確認しましたところ、「住民を巻き込んだ本格的な地上戦」という言い方をしており、「唯一の」という言い方はしてない、ということが現状です。ただし、ご指摘のように、かつてそのような言い方で、誤解を招くことがあったとすれば、私たちとしても本意ではありませんので、今後、注意してまいりたいと思います。
 サハリンでの戦闘を我々が取り上げない、ということでは決してありません。例えば、ニュース、番組の中でもお伝えしています。ただし、「沖縄戦だけが唯一」という言い方は、誤解を招く表現であろうと思いますので、そのような言い方をすることがないよう、十分注意していきたいと思っています。

【会場参加者】
 スポーツの中継の中で、国民体育大会やインターハイの放送時間が非常に短い。高校野球の場合、全試合、全イニングを放送しているが、国民体育大会とインターハイは、Eテレで録画放送となっている。
 国民体育大会やインターハイは、試合会場が散らばっており、非常に多くの放送時間がかかると思うが、できるだけもっと多くの種目を放送していただきたい。

(板野専務理事)
 大変ごもっともなご指摘だと思います。国民体育大会やインターハイの開会式、閉会式は放送していますが、「中継する競技を増やしてもらいたい」というご要望は、常々いただいているところです。
 放送の枠に制限があり、特にスポーツ中継は、比較的長い時間をとるものが多く、野球やサッカー、大相撲というメジャースポーツの中継が中心になることは否めないことだと思っていますが、現在、取り組んでいる来年度の番組改定作業では、2020年の東京オリンピックという世界的なイベントを数年後に控え、競技種目が多岐に富んで幅広く、新しい競技も加わるオリンピックに向けて、今まであまり取り上げていなかった種目などについても、番組やニュースの中で取り上げていきたい、と考えています。
 また、高校生の選手の活躍が話題を呼んでいることは、ご承知かと思います。陸上競技の短距離種目などで高校生の中から2020年の東京オリンピックでメダル候補になるかもしれない有力な選手が出てきています。私たちは、そのような選手をいち早くニュースや番組で取り上げたり、今まであまり放送されていなかった競技種目の選手にもスポットライトを当て、2020年に向けてさまざまなチャンネルで放送していきたい、と考えています。
 一挙に増やすということは、簡単なことではないとは思っていますが、個別の競技、特に若い選手の方々を紹介していくこと、特にインターハイは、私たちも放映権を持っていますが、まだ未開拓の宝の山のようなところがあります。もっと積極的に取り上げていきたいと思っています。

(石原委員)
 電波には限度があり、「視聴者の皆さまの関心の度合いが高いか」ということを優先して放送せざるを得ないだろうと思います。
 国民体育大会やインターハイなど、いろいろな競技を放送してもらいたいとは思いますが、「実際に放送するのは、正直大変ではないか」と感じています。それが、インターネットであれば伝えることができると思います。その辺りがこれからの解決の方法ではないか、という感じがしますがいかがでしょうか。

(板野専務理事)
 貴重なご意見をありがとうございます。確かに、「NHK杯国際フィギュアスケート」を同時配信したように、インターネットで取り上げるというやり方もあります。 
 例えば、サッカーも今から20〜30年前は、マイナーなスポーツでしたが、今や野球、大相撲と並ぶようなメジャースポーツになりました。そのような場合、放映権の高騰という問題があります。
 メジャーリーグベースボールやヨーロッパのサッカー、オリンピックの放映権は、高騰していますが、受信料を頂戴して運営していく立場からすると、やみくもに巨額のお金を投じることは、許されないことです。今はあまり知られていないけれども、今後、大きく注目されるような競技を取り上げていきたい、と考えています。もちろん、ご指摘のように枠には限度があるということも、十分に考えながら取り組むとともに、インターネットの活用も考えていきたいと思っています。

【会場参加者】
 私は、視覚障害者です。ラジオ番組をよく聴いているが、テレビ番組でも、よいと思う番組を録音し、パソコンに打ち込んでいる。「視覚障害者もテレビを見る」ということで、アナウンスの方法に配慮いただきたい。
 私たちにとって、台風の進路情報は非常に大切な情報ですが、ことしの夏に注意して聞いていると、台風が相当先の進路に進んでいるはずが、前にアナウンスしたものがそのまま読まれていることがあった。原稿を書く人と読む人が異なっていて、アナウンサーは原稿に書いてあることをそのまま読んでいるのだと思った。
 また、よい面では、気象衛星が発達し、竜巻情報などが的確に出されて非常に助かっている。

(板野専務理事)
 以前の「視聴者のみなさまと語る会」でも、「ラジオの原稿がわかりづらい」というご指摘がありました。テレビ放送は昭和28年に始まりましたが、その前は、ラジオの放送でした。私がNHKに入った昭和52年頃は、テレビのニュースにだいぶ切り替わっていましたが、研修では「ラジオの原稿を基本にして原稿にするように」と言われていました。
 つまり、「視覚的な情報がなくてもわかるような原稿を書くように」ということを、私たちの世代は、非常に厳しく教えられてきました。その後、テレビの時代が進み、今の現場の記者やディレクターが書く原稿は、ラジオのことをあまり考えずに書いているという部分はあると思います。そのような部分は、少し考え直す必要があるのではないかと、ご意見を伺って思ったところです。
 例えばニュースでも、見出しに出てくる映像で見れば一目でわかるわけですが、以前に「視聴者の皆さまと語る会」で出されたご指摘は、「最初にニュースの主題が出てこず、聴いていてわかりづらい」というものでした。以前は、それが何のニュースかということが、聴けばすぐにわかるような原稿を書くことを教わってきましたが、最近は、映像を見ただけで大体何のニュースかわかるような場合は、先に述語が出てきて、主語が後に来てしまうような表現になってしまうことがあります。
 例えば台風の進路でも、今は気象衛星の映像が非常に鮮明で、さらに動画で見ることができるようになってきましたので、進路予報について言葉では伝えていない部分があるかもしれません。
 私も昔、山登りをしていましたが、朝起きるとラジオの気象情報を聞きながら風速とか風向、自分で天気図を描いたりしていました。そうしたところが少しおろそかになっているのではないか、ということを、私自身も感じているところです。
 今、テレビからインターネットの時代に入ってくるという状況になっていますが、いろいろな方々のニーズに応えるようなものを伝えていかなければなりません。そのためには、どのようなやり方があるのか、ということを考えていきたいと思っているところです。

(司会)
 東日本大震災発生直後のラジオの緊急報道を担当していましたが、実際には、ほとんど原稿を読んでいませんでした。
 新しい情報は伝えていきますが、先輩アナウンサーとして後輩には「想像力」だと伝えています。「今、この緊急報道をどういう人たちがどういう状況で聞いているのだろうか」「子供たちは今、学校に行っている時間であり、もしかしたら留守宅に自由に出歩けない障害者の方が残っているかもしれない」「働き手の方たちは港で働いているかもしれない」「こたつ、ストーブがついているかもしれない」「津波でストーブに水が入ったらどうなるか」ということを想像し、その想像力がある意味、視聴者との共通の理解を生み、情報がもっと伝わる、ということを考えて放送をしていました。
 ただ出てきたものを伝えればよい、のではなく、「皆さんが避難し、警戒することにつながっていけるかどうか」ということを、これからも研修を行い、若い世代に引き継いでいきたいと思っています。

【会場参加者】
 NHKは、公共放送として、常に国民を主導する立場でいてほしい。
 沖縄では、沖縄経済を論じる番組がほとんどない。一括交付金で成り立っている沖縄経済を厳しく指摘し、ぜひ自立経済を促す番組を制作、放送し、県民を導いてほしい、と願っている。

【会場参加者】
 テレビのアナログ放送が終了し、完全デジタル化から4年が経過したが、「テレビの画質がよくなった」と感じる程度で、テレビとインターネットが自宅でつながっていないこともあり、デジタル放送の双方向性をあまり感じていない。
 「あさイチ」では、生放送で視聴者の意見や質問を受け付け、その場で答え、ラジオでも夕方の番組で視聴者の意見に答えているように、生放送で視聴者の意見や質問に答える番組を制作してほしい。

(佐藤委員)
 私は関西出身ということで、いつも「地域の放送を頑張ってほしい」と言っている立場です。
 NHKのよさというのは、全国に拠点を持っているということだと思っています。そこにニュースを伝えるための記者、アナウンサー、ディレクターの方がいて、地域の課題を的確に捉えることが可能な放送局であり、地域の視点に立って意見を表明するということが、NHKの業務そのものにも影響がある、という認識をしていただきたいと思っています。
 また、地域の課題だけではなく、「地域のよいところをもっと全国や海外に向けて放送していただきたい」ということも、いつも要望させていただいています。
 皆さまのご意見で成り立っている放送局ですので、地域の放送局に対するご意見や地域の情報をお伝えいただくなど、皆さまにひとりの記者のような視点を持っていただいて、いろいろなご提案をいただけるとうれしく思います。

(板野専務理事)
 私は、経済記者として地域経済の番組も担当していました。東京や大阪では経済番組を放送しています。もちろん、沖縄放送局でも「沖縄の経済が現在どのような状況にあって、どのような問題点があるのか」「沖縄経済の自立に向けて一体何ができるのか」という視点でニュースを放送していると思っていますが、「もっと力を入れてほしい」というご意見を受けとめて、考えていきたいと思います。

(細田放送局長)
 基本的にニュースは、なるべく幅広いテーマを扱い、深く掘り下げていくことが大事だと思っており、ご指摘いただいたような経済や文化、福祉などのテーマを、より取り上げていかなければいけない、ということを痛感しているところです。
 例えば沖縄では、製糖業がかなり厳しい状況にあって、会社の統合が行われたりしています。農業や漁業など皆さまの暮らしにかかわるようなニュースも、もっと出していかなければいけない、と思っています。
限られた人数でニュースを制作していますので、大きなニュースが続く場合などは、力を割かれてしまうことがありますが、大きなニュースばかりではなく、「経済の自立はどうするのか」など、視聴者の皆さまが知りたいと思うことを「もっと放送で取り上げてほしい」ということもあると思いますので、ニュースの中でも取り上げていきたいと思っています。
 また、「沖縄の魅力の発信」という意味で言うと、沖縄には本当にすばらしい文化、自然、いろいろな魅力があり、「全国や海外に発信してほしい」という声をよくいただきますので、BSや国際放送などでも沖縄の魅力を発信できるようにしたいと思っています。例えば来年10月に開催される「世界のウチナーンチュ大会」をきっかけに、世界と沖縄の関係や沖縄の文化を、もっと世界に発信できるのではないか、と思っています。
 ぜひ、これからも皆さまからご意見やご要望をお寄せいただきたいと思います。よろしくお願いします。

(板野専務理事)
 双方向性の問題は、大変重要なご指摘です。デジタル化されたことで「ハイブリッドキャスト」という新しいサービスも始めています。テレビとインターネットをつなげて、場合によっては、さまざまな方々からのご意見をリアルタイムで取り入れていく取り組みは、もっと広げていかなければならないと思っています。
 寄せられたメールを画面の下に表示し、その中から鋭い質問などをアナウンサーが取り上げ、コメンテーターが話を広げていく「NEWS WEB」という番組を午後11時台に放送しています。このような取り組みは、民放も含めて私たちは早くに取り組んだと思っていますが、「NHKスペシャル」や「あさイチ」などの番組でもメールやファックスも使って、双方向性をさらに強化し、広げていこうという試みに取り組んでいるところです。
 ご指摘を参考にさせていただきながら、来年度の番組改定にも生かしていきたいと考えています。

【会場参加者】
 NHK経営計画に「より日本を世界に積極的に発信」とあり、ITを使って情報の双方向通信をはじめ、時代の最先端を突き進んでいく姿が見受けられる。
 私は25年前から約20年間、海外に駐在していたが、当時は衛星放送も入らず、短波ラジオを持って情報収集に努めていた。天安門事件の際、中国にいたが、現地の情報は一方的な発表ばかりで正しい情報が伝わらなかった。そのとき、短波ラジオからNHKの情報を聴き、事件が起きたという情報を得た。衛星を使ったハイテクノロジーの放送も大事だと思うが、最後の決め手は乾電池1つで動くラジオであり、海外の邦人に対して危機が起こった時に向けた取り組みにも力を入れていただきたい。

【会場参加者】
 きょう配られた資料の中にNHK沖縄放送局の情報誌「ゆんたく」が入っているが、このような情報誌を紙1枚でもよいので、新聞の折り込みチラシのように入れ、裏面に受信料のお願いや地域番組を紹介することで、ふだんNHKをあまり視聴しない人にも役立つ番組や情報を伝えることができるのではないか。
 受信料のお願いに個別訪問すると、初めから拒否されてしまうことも多くあると思うが、そのようにならないためにも、紙媒体での情報発信をしたほうがいいのではないか、と思っています。

【会場参加者】
 私は「おきなわHOTeye」が大好きでよく視聴しているが、「この番組はニュース番組ですか」ということを伺いたい。
 番組の最初にニュースを伝え、その後、沖縄の地域の情報を少し取り上げた後、また同じニュースを放送している。事前アンケートでも「地域の小さなニュースを複数回放送する意味が理解できない」と書いている方がいるようだが、私も同じように感じる。
 また、宮古や石垣など離島関係のニュースが取り上げられることが多いように感じている。もっと本島の地域の情報を取り上げてほしい。

(板野専務理事)
 3か年の経営計画の中にもありますように、国際放送については、最も力を入れて拡充を進めているところです。
 「日本を世界に、積極的に発信」ということで、日本のさまざまな情報、あるいはアジアの情報といったものを国際的に発信し、日本と世界をつないで国際社会の日本への理解を促していきたい、と考えています。
 今までも取り組んできましたが、放送法が改正され、2009年に24時間完全英語放送を開始しましたので、さらなる拡充を進めていきたいと思っています。
 短波ラジオで日本の情報を得られていたお話がありました。テレビでも「NHKワールドプレミアム」という在留邦人向けの放送をしていますが、ラジオも国際放送の業務の一つです。国内も同様ですが、大きな事件や災害が起きたときは、ラジオが大変有効な伝達手段ですので、力を入れています。
 私も天安門事件発生の数カ月後に取材で北京に入りましたが、戒厳令が敷かれていて、外国のマスコミは全く外に出ることができず、なかなか全貌がわからない状況でした。非常に取材することが難しい事件だったと思いますが、私たちも海外のネットワークを拡充していますので、在留邦人の方々にも、情報を積極的に流していきたいと思っています。

(細田放送局長)
 地域放送についてご意見をいただき本当にありがとうございました。また、「おきなわHOTeye」をご覧いただきありがとうございます。「おきなわHOTeye」は、「ニュースを中心にほかの話題も含めて、なるべく楽しくご覧いただこう」ということで毎日50分間の番組を、放送させていただいています。
 「同じようなニュースが何回も出てくる」というご指摘をいただきましたが、最初に主なニュースを順番に伝え、午後6時50分ごろの天気予報の前に「きょうの主なニュース」という形で3つぐらいの項目を紹介しています。
 ずっとご覧いただくことが一番うれしいのですが、この時間帯は「ザッピング」といって、チャンネルを変えながらご覧になっている方が多く、また、午後7時前からチャンネルを合わせていただく方が多くいらっしゃいます。なるべく重複感は避けたいと思っていますが、一方で、途中からご覧になる方のために、再度、番組の最後にお伝えしています。
 また、「地域の話題をなるべく出してほしい」というご要望もいただきました。「おきなわHOTeye」の中で「ふらり見つけ旅」というコーナーを放送しています。リポーターが地域を訪ね、地域の話題を幾つか取り上げながら歩いていくという旅物のリポートになっています。最近では、嘉手納町や南風原町を回らせていただきました。本島の中でもたくさん魅力のある自治体、地域がありますので、なるべくお伺いして地域の話題を、発掘していきたいと思います。宮古島と石垣島には支局がありますので、島しょ部の話題もお届けしていますが、本島の話題も積極的に出していきたいと思っています。
 NHK沖縄放送局が毎月発行している広報誌「ゆんたく」を新聞チラシのような形で活用してはどうか、というアイデアをいただき、ありがとうございます。この「ゆんたく」は、大きな施設や駅などに置かせていただき、自由にお持ち帰りいただくようになっています。確かに新聞は非常に多くの方にお読みいただいていますので、受信料をご理解いただくようなPRを行っていくことを考えてみてもいいのでは、と思っています。

(司会)
 「おきなわHOTeye」の稲塚アナウンサーは、大変沖縄を愛している男で、自分で三線を弾き、沖縄民謡を歌い、沖縄のお酒も料理も大好きという男ですので、ぜひ応援していただければと思います。

【会場参加者】
 午後2時台、3時台の番組で各地方の表情が見えなくなってきているような気がする。昼のワイド番組を復活させて、被災地の現在の状況などを取り上げていただきたい。

【会場参加者】
 アナウンサーが「日本の朝鮮の植民地時代」という表現をすることがあるが、不正確な表現であり、極めて偏った誤解を招くような表現をするべきではないと思う。
 また、個人的に「紅白歌合戦」は、やめたほうがいいと思う。例えば「SONGS」の質の高い映像を活用し、1年間の総決算という形でジャンルごとにまとめて紹介するなど、もっと質の高さを追求したほうがよいと思う。
 私は、NHKのニュース番組を重視しているが、ニュースが延長された場合、予約録画に失敗することがある。ニュースを延長する場合、裏番組に移して放送するなど、技術的な対応は可能なのか知りたい。
 また、アナウンサーが番組で「おやじギャグ」を出すのは、やめたほうがよいと思う。

【会場参加者】
 一部報道によると、「クローズアップ現代」を3月いっぱいで打ち切るとされているが本当か。また、「やらせ」はあったのか、なかったのか。どうなっているのか。

【会場参加者】
 高校野球沖縄大会の中継を見ていた際、沖縄放送局の澤田彩香アナウンサーの実況が野球を熟知したもので、とても好感を持った。沖縄は、歴史的にも女性のパワーや質の高いところであり、このような人材発掘にこれからも取り組んでいただきたいと思う。

(板野専務理事)
 午後2時台、3時台の地域の話題を伝える番組がなくなったのではないか、というご指摘がありました。今、午後3時台に「ろーかる直送便」という番組を、総合波で放送していますが、「地域発のニュースや情報をもっと出すべきだ」という声は、私たちも非常に強く感じており、地域の情報やニュースの全国発信については、来年度も引き続き力を入れていきたいと思います。
 また、来年は東日本大震災から5年目を迎える節目の年ですので、さまざまな特集番組、大型番組、減災報道、防災報道に取り組んでいきたいと思っています。
 用語の問題、これは大変重要な問題、ご指摘だと思っています。用語については、くれぐれも正確を期し、特に外交問題、国際問題につながりかねないことについては、正確な用語を使っていきたいと思っていますので、参考にさせていただきたいと思います。
 「紅白歌合戦」は、かつては大変高い視聴率を記録していましたが、今でも40%前後の視聴率を取る看板番組です。「もう、やめたほうがいい」というご意見は、ご意見として伺いますが、音楽番組のあり方については常に検討を進めているところであり、「今の視聴者の方々のニーズに合った形に直せないのか」ということについて、私たちも心を砕いているところです。
 「紅白歌合戦」ではありませんが、来年度の新番組では、音楽番組でも大幅なリニューアルをしていきたいと思っています。
 また、マルチ編成について、私たちは「2階建ての編成」と言っていますが、引き続き活用していきたいと思っています。
 「クローズアップ現代」については、来年度に向けてどのような形になるか、ということを検討している最中ですので、この場でのお答えは差し控えさせていただきます。
 「やらせ」の問題については、第三者委員会を設け、放送に詳しい弁護士を交えて調査を行い、私たちの番組基準における「やらせ」には該当しないという結論を出しています。BPOから「非常に重い放送倫理違反があった」という指摘がありましたが、一方で「やらせ」については判断しない、という形でした。ただし、私たちは、引き続き「重大な放送倫理違反があった」ということを重く受けとめ、番組の改善を図っていきたいと思っています。

(細田放送局長)
 澤田アナウンサーについてお褒めの言葉をいただき、ありがとうございました。女性のプロ野球実況中継ができる、将来を担うアナウンサーとして育てていきたいと思っていますので、ぜひ応援くださいますよう、よろしくお願いいたします。

(司会)
 きょうは2時間にわたり、皆さまからいろいろなご意見やご要望、ご指摘をいただいてまいりました。皆さまからのご意見を受けとめた経営委員から、一言ずつ感想を述べさせていただきます。

(浜田委員長)
 全体を通して、大変重要な問題について、ご発言いただいた皆さまと登壇者との間で創造的で、冷静な議論ができたと思っています。
 経営委員会では、「国際放送の充実」と「放送と通信の融合時代への対応」という大きな2つの問題意識を持っていますが、きょうは皆さまからこの2つともご指摘をいただきました。
 「放送と通信の融合」については、特にさまざまな観点からご意見をいただいたと思います。受信料制度の問題、若い人のテレビ離れに絡めたご指摘など、さまざまなご指摘をいただきましたので、執行部ともども持ち帰って、今後の経営に反映させてまいりたいと思っています。
 また、沖縄県の受信料支払率の問題についても、さまざまなご意見をいただきました。この問題は、公平負担の徹底という意味からも支払率の向上を図っていきたいと思っています。ただし、過去の歴史などさまざまな経緯がありますので、丁寧な進め方で皆さまのご理解をいただきながら、支払率の向上を図るべきだと、思っています。
 また、番組について、当事者でないとなかなかご発言いただけないような貴重なご発言をいただき、大変有意義な意見交換ができたと思っています。
 最後に「クローズアップ現代」の問題についてご発言がありましたが、放送法において「経営委員会は個別の放送番組の編集について口出しできない」という定めになっていますが、「放送倫理上の重大な問題があった」という指摘は、真摯に受けとめる必要があると思っています。

(石原委員)
 受信料の問題について、沖縄の皆さまの関心が大変深いということがよくわかりました。ネットとの関係も含めて非常に重要な問題だと思っています。
 また、NHKの役割として防災、特に沖縄では、台風情報の放送が極めて大事だということを改めて感じました。
 地元の情報や経済に関する番組を充実させ、同時に全国ネットでも放映してほしい、という話も全く同感です。また、「いざ」というときにラジオの国際放送が大事だというご意見も大変すばらしいご意見だと思いました。

(佐藤委員)
 本日は、初めて「視聴者のみなさまと語る会」に参加し、大変緊張しましたが、地域の皆さまの課題に向き合うことの大切さを、皆さまのご意見から理解することができました。
 きょうの貴重なご意見を、経営委員会のほかの委員とも共有していきたいと思いますので、今後ともご協力のほどよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

(司会)
 時間の都合上、まだご意見を伺えなかったところがあるかもしれません。
 この後、アンケートにご記入いただきましたら、持ち帰り、読ませていただきます。どうもありがとうございました。

 

 

 

<視聴者のみなさまと語る会in沖縄>参加者当日アンケート

※全表の単位はすべて人数

質問1:性別

男 性 女 性
22 7

質問2:年齢

20代 30代 40代 50代 60代 70代 未回答
1 2 6 3 14 2 1

質問3:今回のイベントを何でお知りになりましたか(複数回答)

放送(テレビ) 放送(ラジオ) ホームページ 新聞 知人 その他
14 1 3 2 8 1

質問4:今回のイベントに参加していかがでしたか

大変満足 満足 ふつう 不満 大変不満 未回答
7 15 3 0 0 4

質問5:一番印象に残ったコーナーはどこでしたか(複数回答)

経営重要事項 経営など全般 放送について 講演会 特になし 未回答
1 7 17 10 1 1

質問6:NHK経営委員会の仕事を知っていましたか

よく知っていた 知っていた 知らなかった その他
0 10 18 1

質問7:今回のイベントに参加して、NHK経営委員会の活動について理解が深まりましたか

理解が深まった 特に変わらない わからない その他 未回答
22 6 0 1 1

 

 

<アンケートに寄せられた主なご意見>

 

経営全般について

  • 沖縄県の受信料支払率の低さに驚き、少々、不公平を感じた。
  • 受信料の大切さがわかった。公平公正な放送のためには、企業等に頼る財源では言いたいことも言えなくなってしまう。
  • イベント申込時に受信料支払いの確認をしているとのことだったが、イベント開催時に確実に手続きをすればよいのではないか。
  • NHK会長の定例会見をテレビで放送してもらいたい。
  • 放送と通信の融合を早く進めるべき。

 

放送について

  • NHKの取り組みや番組に興味を持つことができた。きょうから、もっと番組を視聴したい。
  • 国際発信するだけでなく、国際情報をもっと紹介してほしい。
  • たまご型のマークのように、国民の栄養になる番組を放送してほしい。
  • 今後ともよい番組を制作してほしい。期待している。
  • 高齢者をテーマにした番組は必要。これからも多方面から情報を集め、放送してほしい。
  • 人間模様の多様な番組(「サラメシ」「ドキュメント72時間」等)の放送時間を延長してほしい。
  • 紅白歌合戦は、出演者や制作する側の番組になっていないか。
  • 司会者の実体験に基づいた緊急報道対応の話に感動した。
  • 民放のニュースは、自分の考えを押し付けているようで見ていて嫌気がさす。NHKは、政治的中立の立場で放送するということでよいと思う。
  • 民放に比べて普天間、辺野古のニュースが少ないように思う。
  • 最近、画面上に表示される文字が大きく、画面の妨げになっている。以前のような表示に戻すか、文字のサイズをコントロールできるような機能を追加してほしい。
  • ツイッターなどの表示を煩わしく感じる時がある。視聴者側で表示ON/OFFの切り替えができるようにしてほしい。
  •  2020年の東京オリンピックに向けて、国体やインターハイの中継をしてほしい。
  • 「ブラタモリ」で沖縄を取り上げてもらいたい。
  • 沖縄県(出身者含め)のオリンピックに出場できそうな選手を取材、放送してほしい。
  • PM2.5について、データ放送だけではタイムリーさに欠ける。沖縄に  影響がある場合は、天気予報で放送してほしい。
  • 番組の中で簡単に作れる琉球料理を紹介するコーナーを設けてほしい。
  • 「おきなわHOTeye」の出演者は、がんばっている。キャスターの成長ぶりが楽しみであり、アナウンサーは全国放送で活躍してもらいたい。
  • 「おきなわHOTeye」の「イヤササ!しまくとぅば」のコーナーをDVD化してほしい。

 

運営、その他について

  • 参加して、NHKをより身近に感じることができた。
  • 1問だけではなく、もっと質問したかった。
  • 考えながら番組を視聴し、次回の開催があれば、意見を述べたいと思う。
  • 司会進行が素晴らしく、有意義なコミュニケーションができた。
  • 登壇者の真摯な対応がよかった。
  • この「視聴者のみなさまと語る会」が番組になればよい、と思う。
  • いろいろな意見があることがよくわかった。
  • 登壇者の冷静な答弁がよかった。
  • 経営委員や理事に直接質問できる機会があることはよいと思う。このような形式で質問できる機会を番組でも作ってほしい。
  • NHKのあり方、役割、公共放送などついて様々な視点から考えることができ、大変勉強になった。