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第1165回
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平成24年5月25日(金)公表
  ※6 報告事項(7) 平成23年度収支決算の速報 は平成24年7月13日公表

日本放送協会第1165回経営委員会議事録
(平成24年4月24日開催分)

第1165回 経 営 委 員 会 議 事 録

<会 議 の 名 称>

第1165回経営委員会

 

<会 議 日 時>

平成24年4月24日(火)午後1時00分から午後4時00分まで

 

<出 席 者>

〔委  員〕

  數 土 文 夫 浜 田 健一郎 石 原   進
    井 原 理 代   上 村 達 男 大 滝 精 一
    北 原 健 児   幸 田 真 音 作 田 久 男
    竹 中 ナ ミ   松 下   雋 渡  惠理子
  ◎委員長 ○委員長職務代行者(以下、「代行」という。)

 

〔役  員〕

  松 本 会 長 小 野 副会長 永 井 技師長
  金 田 専務理事 大 西 理 事 今 井 理 事
  塚 田 理 事 吉 国 理 事 冷 水 理 事
  新 山 理 事 石 田 理 事 木 田 理 事

 

 

<場   所>
放送センター  22階経営委員会室 21階役員会議室

 

<議   事>

 議事に先立ち、経営委員による経営委員会を開催し、平成24年度標準役員報酬について審議し、議決。また、評価・報酬部会を開催し、平成24年度経営委員会委員の報酬について審議後、経営委員会にて議決した。その後、數土委員長が開会を宣言し、本日の付議事項および日程について説明。第1164回(平成24年4月10日開催)の議事録を承認し、所要の手続きを経て、平成24年4月27日に公表することを決定した。

 

 

付議事項

1 平成24年度標準役員報酬について(資料1)(資料2)

 

2 平成24年度経営委員会委員の報酬について(資料)

 

3 委員長報告

 

4 監査委員会報告(資料)

 

5 議決事項

 (1) オリンピックロンドン大会に係る一部の競技の生中継映像をインターネットを通じて一般に提供する業務の実施について(資料1)(資料2)

 (2) 中央放送番組審議会委員の委嘱について(資料1)(資料2)

 (3) 地上デジタルテレビジョン中継放送局の設置計画について (資料)
参考1:北海道 参考1:東北 参考1:関東・甲信越 参考1:東海・北陸 参考1:九州

 

6 報告事項

 (1) 地上デジタルテレビジョン中継放送局およびFM中継放送局の開局について (資料)
参考1:東北 参考1:関東・甲信越 参考1:東海・北陸 参考1:近畿 参考1:四国
参考1:九州 参考2:沖縄

 (2) 「NHK情報公開」の実施状況(平成23年度)(資料)

 (3) 個人情報保護の実施状況(平成23年度)(資料)

 (4) 地方放送番組審議会委員の委嘱について(資料)

 (5) 視聴者対応報告(平成24年3月)について(資料)

 (6) 平成23年度契約・収納活動結果(資料)

 (7) 平成23年度収支決算の速報(資料)

 (8) 平成23年度第4四半期業務報告(資料)

 

 

議事経過

 

<経営委員による経営委員会>

 

1 平成24年度標準役員報酬について(資料1)(資料2)

 (數土委員長)
 平成24年度標準役員報酬について審議します。本件は第1164回経営委員会で執行部から提案があり、継続審議としていたものです。
 前回の経営委員会から2週間たちました。本日は、各委員の皆さんからそれぞれのご意見を聞きたいと思います。

 (浜田代行)

 私は、前回申し上げたことと変わりありませんが、役員報酬というものは、同業他社の水準も考慮し、それに業績を加味して決めるものだと思います。ただし、NHKの場合は、特殊法人という経営形態の性格も勘案しながら決定されるべきだと思っています。私は、同業他社と比べればNHKの役員報酬の水準は低いと思っていますので、24年度については、下げる必要はなく、収支差金も確保できそうだということを考えれば、現状据え置きで適当ではないかと思っています。

 (作田委員)

 浜田代行と同じ意見ですが、特に上げる理由も下げる理由もないと思います。特にこの3年間は中期経営計画の達成に向けて、本当に全力を尽くしていただいたことを踏まえると、23年度と同水準でよろしいのではないかと思っております。

 (松下委員)

 私も、今の報酬基準については、浜田代行がおっしゃったように、ほかの放送事業者に比べても、何ら高いこともないでしょうし、水準を下げる必然性はないと思います。ただ、国家公務員の給与を被災支援ということで減額するような状況を、多少勘案する必要があるのかどうかということ以外は、全く同意見です。

 (石原委員)

 NHKの役員報酬の水準は、決して高くないと思っています。ただ、上げるという話にはならないと思います。同時に、23年度の決算の速報資料を見る限り、大変すばらしい結果を出していますので、そういう点では現状維持が妥当だと思っています。

 (幸田委員)

 私も基本的には、皆さんと同じ意見です。東日本大震災への対応など、視聴者の皆さんから、NHKの報道に対して、非常に高い期待と信頼が寄せられています。さらには首都直下、東海、東南海地震などへの対応など、報道をはじめ公共放送としての役割に対する期待も高まる中で、それに応えていくことが、NHKに課せられています。そういう努力に対して評価できるような仕組みについても、これからの課題として考えなければいけないということも踏まえつつ、今回は、現状維持ということに賛成です。

 (北原委員)

 前回も申し上げましたが、この水準は妥当な数字だと思います。その理由は、浜田代行も言われたように、マスコミ、同業他社と比べても、特殊法人という性格を考えても妥当な数字ではないかということです。世間並みの相場感覚ではないかというのが、大ざっぱな意見で、結論を申し上げると、是とする考えです。

 (竹中委員)

 私も、NHKの公共放送としての使命から考えると、決して高い報酬ではないと思いますが、今皆さんがおっしゃたように、上げるということも、今の時節では考えかねます。国家公務員給与などについていろいろ言われていることに引きずられることなく、やはりNHKとしての使命を果たすに足る額ということで、決めるのがいいのではないかと思います。今回については、この水準で私は是認したいと思います。

 (大滝委員)

 皆さんがおっしゃっているとおりで、特殊法人としての性格や同業他社との比較という面から見ても、下げることは、たぶん議論に入ってこないと思いますし、妥当な報酬だと判断します。

 (渡委員)

 果たされるべき役割、職責、責任を考えると、決して高いものではないと考えています。また23年度の業績の結果を拝見すると、下げるべき理由もないと考えています。一方で、上げるのかというと、皆さんの言われたとおり、職責や客観的なものは別として、情勢からいって極めて難しいと思っており、結論としては、これで結構だと思っています。

 (上村委員)

 私も、皆さんと同じで、業績評価する際の業績は、財務上の数値もありますし、他社と比較ということもあると思いますが、やはりNHKとしてのミッションをきちんと果たすことに対する評価が、非常に大きいと思っています。経営委員になって日も浅いのですが、その点についてマイナスの評価はあまり聞かされていないということもありますので、私もこの提案に賛成したいと思います。

 (井原委員)

 基本的には、皆さんのおっしゃったとおり、同業他社の報酬額との比較からいって、高くはなく、また、NHKとして果たすべき役割を、経営計画の観点から申し上げますと、21〜23年度の経営計画は、おおむね達成できている状況であり、次の24年〜26年度の経営計画を実行するにあたっては、これまで以上の努力、あるいは尽力が必要だと考えます。東日本大震災の復興支援を行いつつ、受信料を値下げするという中で経営計画を実行していかなければならないからであり、その役割を果たしていただくためには、決して高い報酬ではないと思います。しかしだからといって、この厳しい経済社会の環境の中で、上げるという選択肢もなく、現行どおりで妥当と考えます。

 (數土委員長)

 私の意見も、皆さんと大体同じです。10%還元に対しては、若干下回るものの7%受信料を値下げして、災害等の対応に向けて予算的な措置も確実に取り、「プロジェクト810」の活動や、業務の棚卸しを行うなど、今後にむけて努力されています。また、番組や報道についても、視聴者の皆さまからいろいろな意見が寄せられていますが、今、変革しよう、脱皮しようと模索中だと感じています。そういうことを踏まえると、私は下げる理由はないと思っています。しかし、心しておかないといけないのは、世間一般ではデフレが厳しい中ですので、経営計画に掲げている国際放送の強化や業務の棚卸し、あるいは自己評価などをきちんと行っていただきたいということは、付け加えておきたいと思っています。
 以上、皆さんの意見をいただきましたので、この件について、議決したいと思います。執行部の提案に賛成の方は挙手してください。

 −全員挙手−

 

 (數土委員長)

 それでは、全会一致で原案どおり議決しました。

 (浜田代行)

 今、議決されましたが、附帯意見を付すことを提案します。議事進行の事前打合せの中で數土委員長と井原委員と相談し、事務局でまとめたものが今お配りしたものです。内容は、日ごろ経営委員会で議論していることですので、目新しいものはないと思っています。提案の趣旨としては、執行部に3か年の経営計画をぜひ達成していただきたいということと、今の計画では25年度は赤字予算になっていますが、努力の中で何とか黒字にしていただきたいという思いもあり、このような附帯意見を付けて、経営委員会としての姿勢を示したいということを、皆さまに提案させていただきます。

 (數土委員長)

 執行部との意思疎通、視聴者の皆さまに対するアカウンタビリティという点からも意見を付すことがよいのではないかと、浜田代行、井原委員と私の3人で考えました。

 (幸田委員)

 意見を付すことはよいことだと思いますが、逆に附帯した意見の中の条件をクリアできなかったときは報酬を下げるということもあるのですか。

 (數土委員長)

 そういうことはありません。

 (幸田委員)

 念のために確認させていただきました。

 (數土委員長)

 このあと、全体会議の場で、本件について議決した旨を報告し、併せて附帯意見を申し述べたいと思いますがいかがでしょうか。

 −異議なし−

 

 (數土委員長)

 どうもありがとうございました。

 

 

2 平成24年度経営委員会委員の報酬について(資料)

 (數土委員長)
 平成24年度経営委員会委員の報酬について、評価・報酬部会の審議結果を井原部会長から報告していただきます。
 (井原委員)
 平成24年度経営委員会委員の報酬については、経営委員会における平成24年度標準役員報酬についての審議に引き続き、いわゆる社会値と比較し、また、24年度は、執行部には非常に厳しい状況の下での業務執行が求められ、それを監督する経営委員会はいっそう重要な職責にあることも検討し、一方、現下の経済社会環境を踏まえて、平成24年度経営委員会委員の報酬を23年度と同額とする案を妥当と判断しました。評価・報酬部会として、本案を経営委員会にお諮りします。

 (數土委員長)

 ただいま、平成24年度経営委員会委員の報酬について、23年度と同額とする提案がありました。この件について、ご質問、意見等はありますか。なければ議決したいと思います。評価・報酬部会の提案に賛成の方は挙手してください。

 −全員挙手−

 

 (數土委員長)

 全会一致で議案のとおり議決されました。

 

<会長、副会長、技師長、専務理事、理事入室>

 

 

3 委員長報告

 (數土委員長)
 平成24年度標準役員報酬については、本日、経営委員による経営委員会で審議した結果、23年度と同基準とする議案のとおり議決しました。併せて議決にあたり、経営委員会としての意見を付することを決定しました。その附帯意見を読み上げます。
 「平成24年度標準役員報酬の議決にあたっての附帯意見」。
 平成24年度標準役員報酬を議決するにあたり、次の6点を執行部に求める。
 平成24年度は、震災を踏まえた公共放送の機能強化や受信料の値下げを実施する初年度にあたり、効率的な業務運営と改革を推進するために、次の項目の達成が不可欠である。
 1 平成24年度予算・事業計画で定めた事業収支について着実に実現すること
 2 「プロジェクト810」について、全役職員が積極的に取り組み、3年間で810億円の増収を達成すること
 3 積極的に業務の棚卸しに取り組み、効率的な業務体制を構築すること
 4 公共放送としての放送・サービスを通じて東日本大震災からの復興支援に取り組むこと
 5 公共放送としての役割の達成度を評価するNHK独自の評価・管理方法の一層の充実に努め、着実に運用すること
 6 放送と通信の融合時代における公共放送のあり方について、具体策を早急に示すこと
 以上です。
 委員一人一人の意見については、議事録に記載されますので見ていただきたいと思いますが、総体的に松本会長以下執行部役員の労を多としたいということが基調になっており、附帯意見についてもご確認いただきますようお願いします。また、同じく経営委員による経営委員会において、平成24年度経営委員会委員の報酬について審議した結果、経営委員会委員の報酬についても23年度と同基準とする議案のとおり議決しました。

 

 

4 監査委員会報告(資料)

 (井原委員)

 監査委員会は4月10日開催の経営委員会の際に、経営委員会委員へ準則の遵守について確認書の提出を依頼し、その結果がまとまりましたので報告します。実施内容は、放送法ならびに監査委員会規程に基づき、平成23年4月1日(就任日が当年度途中の場合は就任時)から平成24年3月31日までの経営委員会の職務執行につき、「経営委員会委員の服務に関する準則」の遵守についての確認です。経営委員会委員12人全員から、それぞれ「『経営委員会委員の服務に関する準則』」に基づき行動した」との確認書を受領しました。

 

 

5 議決事項

 (1) オリンピックロンドン大会に係る一部の競技の生中継映像をインターネットを通じて一般に提供する業務の実施について(資料1)(資料2)

 (木田理事)

 7月27日からのロンドンオリンピックでは、テレビ・ラジオでの放送のほかに、データ放送やインターネットなどのデジタルメディアでもコンテンツを提供して、これまで以上に魅力のあるオリンピック放送を検討しています。その1つが、いわゆるライブストリーミングといわれるものです。これはNHKも民放も中継放送をしない競技や種目を選び、インターネット技術を生かしてライブでご覧いただくものです。そのねらいは大きく2つあります。1つは放送の補完です。放送でお伝えできない多くの競技や種目をお伝えして、視聴者の要望や関心に応えたいということです。日本人選手が活躍する競技や種目でも、テレビ・ラジオでの放送は、どうしても準決勝とか決勝などが多くなりますので、このライブストリーミングで、予選の中継を実施して期待に応えたいと考えています。もう1つのねらいは、画質や安定性などインターネットによるコンテンツ配信に関するさまざまな知見を得られるということです。これによってハイブリッドキャストの実用化に向けたサービス設計や、通信技術を利用した新しい放送サービスの検討に役立つのではないかと考えています。
 これについて、放送法の第20条第2項第8号の「放送及びその受信の進歩発達に特に必要な業務を行うこと」の業務として総務大臣に認可を申請します。つきましては、経営委員会での審議、議決をお願いします。ライブストリーミングの詳しい内容は、編成局デジタルサービス部長の松村からご説明します。
 (松村編成局デジタルサービス部長)
 参考資料の3枚目をご覧ください。ロンドンオリンピックでのデジタルサービス全体のイメージ図(概要)を簡単な図でご説明します。テレビでは水色の矢印で示したロンドンのオリンピック放送機構が制作した映像・音声にNHK独自の映像を加えて放送します。インターネットでは、放送に比べると低い画質なのですが、赤茶色の線で送られてくる映像を切り出して、NHKのホームページで動画を見せるとか、そのままライブストリーミングで提供する形でのサービスを考えています。このライブストリーミングは、放送していないコンテンツですので、「既放送番組」にはあたりません。NHKの業務で放送していないコンテンツをインターネットで提供できるのは、災害情報などごく限られた分野だけですので、今回、放送法第20条第2項第8号の、「放送及びその受信の進歩発達に特に必要な業務」として総務大臣に認可を申請することにしました。
 インターネットでも盛り上がれば番組視聴にもつながることでしょうし、大勢にご覧いただく負荷のかかった環境で多彩な競技のライブストリーミングを実施することで、画質や送受信の安定性などインターネットによるコンテンツ配信に関するさまざまな知見を得て、ハイブリッドキャストの実用化に向けたサービス設計や、通信技術を利用した新しい放送サービスの検討にも役に立つのではないかと思っています。
 次に、5ページは、ライブストリーミング計画です。1日に数種目から多くても20種目程度を事前に選択します。そして、ロンドンから伝送されしだいそのままNHKオンラインで提供します。配信の手法としてはCDN(Contents Delivery Network)方式をメインにします。次のページの「CDNでの配信イメージ」図をご覧ください。NHKから出る画像や音声のデータは、多くのサーバーにコピーされ利用者は最寄りのサーバーに接続します。CDNは1か所のサーバーにアクセスが集中して配信ができなくなってしまうことを防ぐ方式で、商用サービスとして広く使われています。東日本大震災の際には、このCDNをフルに活用して大量のアクセスに対応できました。安定して多くの人に利用してもらえますが、利用があればあるほど配信費用がかさむというデメリットがあります。このCDNに加えて放送技術研究所が開発を進めているP2P(Peer to Peer)方式でも実験的に配信を行います。
 6ページに、P2P方式の配信イメージを記載しています。例えばNHKから出たデータを、まず赤のルートで最初の端末に、次にオレンジ、緑、青と、いわばバケツリレー式に端末から端末へとデータを配信していくというもので、リレーしていく分、遅延が発生します。しかし、配信コストはその分抑えられるというメリットがあります。大量のアクセスにも安定的に対応できるようにと現在研究開発が進められており、オリンピックのように一定期間多くのアクセスが期待できるイベントは、絶好の実験の機会になると考えています。
 著作権保護のためにCDN方式、P2P方式のいずれの方式もダウンロードはできないようにして、国内限定配信とします。外国からのアクセスでは見ることができません。
 このライブストリーミングでは、通常の放送と違い、競技映像に日本語のアナウンスやテロップなどを加えたりしません。競技場の映像と現場音をそのまま流しますので、実施によってかかる費用は、視聴するためのビューワーソフトの開発費や管理運用費、CDNの経費を合わせて、最大で5,000万円程度を見込んでいます。
 オリンピックは世界最高の力と技がぶつかり合う大会ですので、NHKや民放が生中継しない競技であっても、ライブストリーミングでトップレベルの競技の様子を提供することができます。日々練習に励む多くの若者を勇気づけ、ひいては日本のアマチュアスポーツの競技力向上のため役立つと思います。また、競技の予選種目を中心に伝えますので、中継放送やダイジェスト・ニュースなどさまざまな形で展開する放送本線の視聴、特にBS1の視聴促進にも寄与できるのではないかと考えています。この新しいサービスによって放送とインターネットの相乗効果を期待しています。

 (大滝委員)

 大変素朴な質問なのですが、これは、受信料支払いの対象になる放送と同じような扱いだと考えていいのですか。それとも、受信料の支払いに関係なく、いつでもどこでも、だれでも見られるという扱いなのですか。

 (松村部長)

 これは、NHKのホームページ「NHKオンライン」に、オリンピックの特設コーナーを作り、「ライブストリーミングでこの競技を次に配信します」というような番組表に似たような案内を付けようと思っています。その案内をご覧になって、視聴したい競技をライブストリーミングで見ることができるということです。ただし、テレビの本放送では、大きな大画面で映してもきちんと見えますが、今回の場合、テレビの本放送と違い、パソコンの全画面で見ると少しぼやける程度で、10〜20センチぐらいの画面であればきちんと見えるような低い画質で提供しますので、テレビとはだいぶん違うものになります。

 (數土委員長)

 大滝委員の質問に対する答えになっていません。木田理事からきちんと答えていただきたいと思います。

 (木田理事)

 これはホームページから入ることになりますので、無料のサービスになります。総務大臣の認可が必要なのですが、受信料で行う無料のサービスとして、ホームページでいろいろ展開しているサービスの1つになります。

 (數土委員長)

 今の質問は、私も含め経営委員の皆さん、それから受信者の多くの人にとって、素朴で基本的な疑問だと思います。無料サービスで、このオリンピックのライブストリーミングを実施すれば、アジア大会も実施するのか、国体も実施するのかなど、歯止めはどこでかけるのかということになります。かかる経費は5,000万円と書いてありますが、非常に大ざっぱな金額です。例えば、人件費はいくらかなど、もう少し精密な説明が必要ではないかと思いますし、本当にこれだけの経費しかかからないのかということもあります。また、総務大臣の認可が必要だということですが、事前に了解を得ているのかという基本的なことも話していただきたいということです。無料サービスであれば、明確な大義名分や、将来に備えた内容であることを説明していただかないとよく理解できません。

 (木田理事)

 これはオリンピックという競技でのみ実施するサービスとして考えています。やはり、国民の関心が非常に高い大会であるということと、オリンピックの放送権を巡っては、すべての競技はオールライツで権利を得る形になっていますので、その権利もなるべく使ったほうがいいのではないかということです。オリンピックに限ってということで、以前バンクーバー大会では、ごく小規模にトライアルとして実施しましたが、オリンピック以外の大会にそのまま適用することは考えていません。

 (數土委員長)

 例えば、日本が欧米を見習って、放送と通信の一体化を進めないといけないときに、総務大臣の裁量権のような形でなし崩し的に実施し続けると、放送と通信の融合に向けた立法が遅くなり、結局日本が遅れてしまうことになります。肝心なところを攻めないで便宜的なことだけを実施するのは、おかしいのではないでしょうか。立法と並行して実施するのであればまだしも、認可されたライブストリーミングだけの実施で、NHKが正当なことを行っているということになれば、本質的な問題に関わるのではないでしょうか。放送と通信の融合と言っているときに少しおかしな行動になりはしないかと思うのですが、いかがでしょうか。

 (松本会長)

 これは、もともと実験で実施するという話から始まっているのですが、実際には放送法第20条第2項第8号の業務として実施した方がいいということで、今回の説明になっています。基本的にライブストリーミングは現在実施できないのですが、今おっしゃったように、放送と通信の融合の問題については、放送を中心にしながら通信をいかに活用するかを考えていかなければいけません。今回、オリンピックだけに限定して、スーパーハイビジョンとライブストリーミングを実施することは、将来に向けた問題点の把握の要素や、技術的な観点での要素が入っているのです。また、今回のオリンピックの放送権は、インターネットで利用できる権利も購入していますので、その権利を全く使わないのはもったいないということもあります。したがって、技術的なことや将来のことなども含めて、むしろNHKの将来にとってはプラスになることから実施してみようという話です。

 (竹中委員)

 今までは、オリンピックの中で見ることができる競技、できない競技がありましたので、今回このような形でネットを通じて、どこにいてもだれもが無料で見ることができることについては、非常に期待感が高まります。オリンピックに対する関心もより高まるでしょうし、放送と通信の融合はこういうことなのかと目に見えて分かりやすいと思います。放送と通信の融合という言葉はありますが、それが目に見える形で感じられることは少ないので、このような形で関心の高いオリンピックを活用し、実験と同時に放送と通信の融合時代に向けた先駆けとして取り組まれることに関しては、大変期待感を持ってお話を伺いました。

 (數土委員長)

 総務省に対して、このようなサービスの重要性を分かってもらうのであれば、なおさら放送と通信の融合に適した、そして国民、受信者の理にかなう立法をお願いしたいということを、認可申請と同時に、同じくらいのエネルギーを持ってアピールするべきだと思いますので、よろしくお願いします。

 (石原委員)

 配信する時間が、のべ1,000時間というのは相当長い時間です。実際の開催日数が十数日ですので1日70時間以上になり、実験とはいうものの実況放送に近い感じがします。全体の放送権料の中にこの権利が入っているということは、付随的な話であり、国民の皆さんから見ると実際には放送と通信の融合に向けて実施するサービスになります。しかも、国民の皆さんは衛星契約や地上契約を締結していなくても、無料で見ることができます。契約している人は、自身が支払っている受信料の中で実施されているのだと思うのでしょうが、契約していない人も見ることができることについてはどうなのかなと思います。実際配信される映像の質は、テレビ放送で見る画質とほぼ同じような質なのですか。

 (松村部長)

 画質は相当程度悪いです。テレビの画面サイズで見るとぼやけてしまいます。放送とははっきり差をつけています。

 (石原委員)

 そうなのですね。画質がよければ、契約していない人も含め、今後継続して無料でライブストリーミングを実施してほしいという話になりますね。

 (松村部長)

 提供規模の1,000時間について若干ご説明します。17日間の会期で1日平均7チャンネル、最大10チャンネルぐらいまではライブストリーミングできるように、NHKに流れてきた映像を配信します。1日8時間7チャンネルの配信を掛け算すると952時間になるのですが、実際はそこまでにはならず、その半分程度だと思います。過去には、わずかな実験しか実施していませんので、最大でもこの程度ということで数字を出しています。NHKや民放が放送する競技がまだ決定していない中でシミュレーションするのは難しいため、最大の時間数を記載しています。

 (松本会長)

 もっと基本的なことを言いますと、NHKがインターネットで既放送番組等を提供する業務を、受信料を財源として実施する場合、40億円の枠内であれば実施してもよいということになっています。40億円をより広げるには大臣認可が必要になります。今回認可申請する業務は、既放送番組等の提供ではありませんので、40億円とは別に実施する話ですが、認可業務や調査研究を含め、現行制度の範囲内でできることは広く実施しておかないと、通信との融合になった場合にNHKは何の技術もノウハウもないということになりかねません。融合・連携が進むと、今後はもっと広い形での技術等が必要になります。今回の業務は、技術実験的な面もありますが、実験というよりは業務における検証・調査などを含めた形で実施したほうがいいということです。

 (數土委員長)

 私が最初に言ったように、放送と通信の融合は欧米などに比べると遅れていますので、法律の立法面でも追いつくよう努力していただきたいと思いますし、そちらが本質ではないかと思います。

 (松本会長)

 立法されれば、このような認可申請する必要はありません。

 (數土委員長)

 法律が立法されたら、このようなことをする必要はないのに、そのことを全く言わずに、認可申請だけを行うというのは、経営委員会としては違和感を覚えますので、よろしくお願いします。

 (石原委員)

 映像の質が悪いということですが、今後、放送と通信が融合した際、質のいい映像をネットでは見られないということでしょうか。

 (北原委員)

 画質をよくしようと思えばできるけれども、そうはしないということではないでしょうか。

 (松村部長)

 受信料をいただいているテレビ放送との差をつけるということと、映像の質を高くすれば配信するデータ量が増えますので、配信コストを抑えるという点も考慮しています。

 (松本会長)

 できる限りコストを抑えて回線利用料が増えないようにしているのです。

 (竹中委員)

 パソコンやiPad程度のサイズであれば、画像はきれいだと思います。私の団体では、チャレンジドのお菓子作りをネットで映像配信しています。講師の先生が泡立て器を振っている場面までを大画面できれいに配信しようと思えば、テレビ局が放送するのと同じぐらいのお金がかかりとても手が出ませんが、パソコンやiPadのサイズであればきれいに見えるレベルということで配信しています。NHKもそのレベルで実施されるのであれば、経費が5,000万円以内に収まることは納得できますし、視聴者サービスとしても、非常にいいタイミングでの実施だと思います。ただし、アクセスが集中してパンクしてしまう可能性もゼロではありませんので、技術者魂といいますか、技術者の方のご努力が必要だと思います。期待していますので、頑張って成功してほしいと思います。これを実施することにより、次のステップへ進みやすくなるような裏づけを作ってはじめて、国に対して放送と通信の融合はますます必要ですということを強く言っていけるのではないかと思っています。

 (上村委員)

 国会の附帯決議にも放送と通信の融合が記載されていますので、本質的な問題は委員長がおっしゃったように、もう少し大きな観点で扱わなければいけないだろうと思いますが、まずは、テレビを持っておらずパソコンだけで見ている、あるいはスマートフォンで番組を見ている人にとっても、NHKの放送は公共財であり、われわれにとって必要だということを深く認識していただき、公共財は自分たちで支えるものであるというように発展的に物事を考えていくようになっていくべきだと思います。今委員長がおっしゃったように、もっと国全体や社会全体で考えていく対象ではないかと思いますので、受信料を支払っていなくても見ることができるということについては、確かに違和感はありますが、少しずつ踏み出していかないと結局は変わっていかないのではないかと思います。

 (松本会長)

 先日、フィンランドの公共放送の会長がいらっしゃいました。今のフィンランドの公共放送は、受信料で運営していますが、来年から税方式に変更する予定だそうです。税金として徴収して、全体の中から公共放送の財源を出すということで、公共放送の独立性を担保しながら、財源を安定的に確保できるように法律改正するそうです。

 (上村委員)

 ドイツなどもそのような方向だとお聞きしましたが、その前提には、「個」というものと、「コモンズ(公共空間)」や「公共財」に対する明快な認識が社会にあるということです。「個」を尊重するために必要なものは絶対守る、しかし、そのためには、「コモンズ」、「公共財」を大事にして、みんなで支えていくという社会的な意識が背景にあってはじめて、そのような法制度が可能になるのだと思います。日本は、まだそういう意識が弱いので、まずは、そのような考え方を普及していくことが重要なのではないかと思います。

 (渡委員)

 この施策自体は肯定的に考えているのですが、アクセスが集中してパンクするような事態が発生すると、ある意味、視聴者の方やアクセスを考えている方にとっては、NHKがサービスとしてコミットしたと受け取られていると、このような形で提供することが非難の対象になってしまう心配はないのかが気になりました。一方で、試験として実施するのであれば、もし何か不具合があって、パンクするという事態もあり得るということで、むしろ頑張って実施してみましたという説明は可能かと思います。普通のサービスとして提供すると、無料であっても有料と同じように期待されて、万が一のことがあったときに、これではだめではないか、約束と違うという議論が出てくるのではないかということも気になりますので、視聴者の方に対する説明のしかたを伺っておきたいと思います。

 (木田理事)

 今回の申請は、放送法第20条第2項第8号に記載されている、「放送及びその受信の進歩発達に特に必要な業務」という位置づけです。P2Pでの配信は、まだ実験という段階ですが、CDNによる配信は、ハード的にはかなり高いレベルになっています。ただし、1,000時間提供することになれば、視聴者から、この程度の画像ではどうなのかという反応もあると思いますし、どのような種目をどのように選べばよいかというソフト面での研究も必要になりますが、技術的には、配信が止まるということはないと思っています。

 (松村部長)

 補足させていただきますと、CDNサービスはインターネットラジオ「らじる★らじる」でも毎日安定的に運用していますし、例えば選挙の開票速報のように、一晩のうちに数百万の集中アクセスにも対応できます。また、台風などが日本列島を南北に縦断したりする際は、一晩で何百万というアクセスがありますが、安定的に配信できていますので、アクセスが多いからという面での心配は特段必要ないと思っています。

 (渡委員)

 視聴者の方に対して、このサービスをどういう見せ方にするのかについて伺いたかったのであり、実験の側面もあるということが含まれていれば、「頑張っているな」とういことで済むのでしょうが、「通常のサービスと同じく提供します」という伝え方が適切なのかどうかということです。

 (木田理事)

 このサービスはオリンピックでしか実施しないサービスですので、通常のサービスとは言わずに、「オリンピックに限って部分的にライブストリーミングします」というように、ホームページには掲載します。

 (松本会長)

 これはリスク管理の話だと思うのですが、「万が一、何かあった場合にどうなのだ」と言われた場合は、「通常の放送とは別の形で、特別申請して実施した業務です」とお伝えします。オリンピックで、ふだんは放送されないようなスポーツも紹介できますし、スポーツ界のためにもなればということで実施するということです。通常のサービスとは分けて説明したほうがいいと思っています。

 (石原委員)

 大々的に、このようなことを実施すると言えればいいと思うのですが、視聴者に対する告知はどうされるのですか。

 (木田理事)

 最終的には、認可がおりてからになりますが、中継放送されない種目をライブストリーミングしますので、そのような種目をいくつかホームページ上に掲載して、PRしていこうと思っています。しかし、画像はテレビと同じではありませんので、実情をきちんと説明してPRしていこうと思います。

 (石原委員)

 きちんと大臣認可を得て実施するのですから、このサービスを実施すると、堂々と、広く周知すればよいと思います。それが放送と通信の融合につながっていくのではないでしょうか。

 (松村部長)

 認可がおりたあと、会長会見や放送総局長会見などの機会がありましたら、その中で放送サービスと一緒にご紹介できればと思っています。

 (松本会長)

 お話のとおり、別紙の「3業務の実施計画の概要(5)その他」にも記載しています。また、検証・評価の結果については刊行物等を通じて公表します。

 (數土委員長)

 石原委員がおっしゃっているのはそういうことではなくて、このサービスを実施すると前もって伝えることで、「放送と通信の融合は皆さんに有益だと思いませんか」という問いかけになり、「思います」という答えが返ってくれば、放送と通信の融合法を立案してくださいというドライビングフォースをかけることにもなるので、事前にPRしたほうがいいのではないのかということだと思います。

 (松本会長)

 周知については十分実施します。

 (數土委員長)

 経費5,000万円の中身を、分かりやすく説明していただきたいと思います。できるだけ早く説明していただくことで、われわれもどこかでPRできますので、ぜひお願いします。

 (木田理事)

 分かりました。

 採決の結果、原案どおり議決。

 

 (2) 中央放送番組審議会委員の委嘱について(資料1)(資料2)

 (木田理事)

 中央放送番組審議会委員の委嘱について、平成24年5月1日付で、平朝彦氏(独立行政法人海洋研究開発機構理事長)に再委嘱したいと思います。定款第66条第2項の規定により、経営委員会の同意をお願いします。
 採決の結果、原案どおり議決。

 

 (3) 地上デジタルテレビジョン中継放送局の設置計画について(資料)
参考1:北海道 参考1:東北 参考1:関東・甲信越 参考1:東海・北陸 参考1:九州

 (永井技師長)

 今回は、11道県の33地区に地上デジタルテレビジョン中継放送局を設置したいと考えています。道県における地区名等は、お手元の表のとおりで、参考1に、各地域の場所を地図に示していますので、併せてご覧ください。33地区のうちの22地区は新たな難視対策地区で、4地区はデジタル混信対策の地区、7地区はローカル難視対策の目的で設置する中継局になります。いずれも、平成24年度または25年度に開局する予定です。今回の33地区の設置に要する経費は約13億円を見込んでいます。また、電波のカバー率は、24年3月末で98.0%になっています。設置計画については、今回の提案の33地区を加えると、これまで2,183地区の設置計画の提案を終えました。今後の新たな難視やデジタル混信の対策中継局については、検討を進めている途中です。諸条件が整いしだい、設置計画の提案を行っていきたいと思います。今回の設置計画が承認されましたら、各中継局の免許申請手続きなどの準備に入っていきます。ご審議を、よろしくお願いいたします。

 (數土委員長)

 地上デジタルテレビジョン中継放送局の設置計画および開局のどちらにおいても、中国地方の岡山や広島などの記載はないのですが、もう必要ないということなのでしょうか。

 (永井技師長)

 今回は、予定する地域には入っていないということです。

 採決の結果、原案どおり議決。

 

 

6 報告事項

 (1) 地上デジタルテレビジョン中継放送局およびFM中継放送局の開局について(資料)
参考1:東北 参考1:関東・甲信越 参考1:東海・北陸 参考1:近畿 参考1:四国
参考1:九州 参考2:沖縄

 (永井技師長)
 地上デジタルテレビジョン中継放送局およびFM中継放送局の開局についてご報告します。設置計画に基づいて建設を取り進めてきた地上デジタル中継局のうち、平成24年1月1日から3月末日までの期間に、9都県の14局を開局しました。この中で、志摩局はデジタル混信対策の中継局で、残り13局は新たな難視等を解消するための対策中継局になります。各局の送信するチャンネルは、資料の表のとおりです。また、各地域の中継局の設置場所については、参考1の資料に地図で示しています。平成24年3月末までに、累計で2,145局の地上デジタル中継放送局が開局し、全国の視聴可能世帯のカバー率は98.0%になっています。今回の建設にかかった経費はおよそ6億円です。また、同様に設置計画に基づいて建設を進めていたFM中継放送局を沖縄県で開局しました。この2局は、大規模土砂災害の対策として、石垣のFM局を移設し、既存のサービスエリアを確保するために、FM中継放送局を2局開局するものです。各局の送信出力、周波数等は、表のとおりです。また、各局の設置場所については、参考2の資料に地図で示しています。

 

 (2) 「NHK情報公開」の実施状況(平成23年度)(資料)

 (3) 個人情報保護の実施状況(平成23年度)(資料)

 (小野副会長)

 「NHK情報公開」の実施状況と、個人情報保護の実施状況について報告します。
 まず、NHK情報公開の実施状況については、資料の1ページに、23年度の実施状況の概略をまとめています。この1年間に、本部および全国の放送局へ来局、あるいは郵送で届いた情報公開の求めの件数は214件で、22年度に比べて94件増えています。開示の求めとして受け付けたものが、27人の視聴者から164件で、22年度より95件増加しています。窓口での対応や郵送で情報提供したものは50件でした。164件の内訳は、経営一般についての情報開示の求めは56件、営業関係は55件となっています。
 2ページは、「開示の求め」の結果です。164件のうち、134件について、検討を終えました。このうち開示したものは、83件、不開示は41件でした。不開示の理由は、求めに合致する文書がなかったものが、一番多く35件でした。対象外が10件ありましたが、NHKの情報公開は、編集権の自由を守るという観点から、番組の制作費など、放送番組の編集に関わる文書は開示の求めの対象外としています。今回、「NHK紅白歌合戦」やスペシャルドラマ「坂の上の雲」の制作費の開示等の求めがありましたが、対象外になっています。
 3ページは、「開示率」です。23年度の開示率は67%で、22年度の62%に比べて5ポイント上がっています。引き続き、開示率の向上を目指していきたいと考えています。また、23年度は開示の受付件数が急増していますが、全体の3分の2が、集中的に開示の求めをお出しになる4人の方からのもので占められており、今後このような状況が続くのかどうかについては、注視していきたいと考えています。
 4〜11ページは、開示の求めの概要、23年度下半期分を記載しています。上半期部分は昨年10月に経営委員会で報告しています。
 12ページは、NHK情報公開・個人情報保護審議委員会についてです。開示の求めに対して、不開示あるいは一部分しか開示しなかった場合再検討の求めが制度上できるようになっています。再検討の求めを受け付けたあと、NHK情報公開・個人情報保護審議委員会が中立的・客観的な立場から、NHKの判断をチェックする仕組みになっています。委員会は、元東京高裁判事の弁護士・大島委員長ほか、5人の委員で構成されています。
 13ページは、「再検討の求め」についてです。23年度に出された再検討の求めは27件で、これまでで最も多い件数となっています。そのうち3件は、委員会に諮問する前にNHKが文書を開示しました。審議会では、22年度から検討を持ち越した7件を加えて、31件について審議が行われました。その内訳は、表に記載しているように、NHKの当初の判断に対して、一部開示の判断を広げるか、すべて開示が妥当であると委員会が判断したものが2件、不開示の判断ではなく、「一部開示か開示」が妥当であるとしたものが1件、NHKの判断どおり「一部開示、あるいは不開示」が妥当というものが28件でした。14〜16ページに、「再検討の求め」の概要を記載しています。27件のうち78%にあたる21件は、同じ視聴者から寄せられたもので、このように若干少数の方に集中する傾向が出ています。
 続いて、平成23年度個人情報保護の実施状況についてご報告します。
 資料の1ページに、NHKが保有している個人情報の開示の求めの状況です。23年度は、合わせて19件の開示の求めがありました。求めの内容は、本人の受信契約書の開示の求めが15件と最も多く、次いで、ご本人の受信料の支払履歴について開示を求めるものが3件でした。検討の結果、そのうち12件は、求めのあった受信契約など、契約関係の個人情報を開示しました。また、古いもので記録が残っていないなどの理由で不開示だったものが4件、一部開示となったものが3件でした。
 2〜3ページに、個人情報の漏えい事案について記載しています。23年度に、個人情報の漏えいは、地方局などで20件発生しました。また、漏えいには至らなかった個人情報の紛失が5件発生しました。営業の現場等では、個人情報管理の対策に取り組んでいますが、20件すべては受信料関係の帳票の紛失で、受信契約書や口座振替利用届などが主なものです。ただし、この20件のうち17件は、委託先の法人あるいは契約スタッフなどが帳票1枚をなくしてしまったというケースです。営業現場では、個人情報保護の取り組みをいっそう強化し、受信料関係の帳票の管理を改めて徹底したいと考えています。
 4ページ、23年度に関係の各部局が行った個人情報保護の取り組みについてご説明します。まず、個人情報の保護に関する部内での周知・徹底への取り組みです。情報公開部、総合リスク管理室、情報システム局の各部局が協力して、NHKの職員あるいは関連団体の職員などを対象に、研修会やセミナーなどを開催しました。ことし1月から3月にかけて、すべての拠点局を回って、域内の担当者を対象に個人情報保護に関する講習会も実施しました。また、営業関係の帳票の漏えい事件が起きた放送局で、緊急の研修などを行い、再発の防止に努めました。さらに、新採用者の研修をはじめ、入社・入局7年目研修、新管理者研修などの機会に、体系的に個人情報保護の講義を改めて行い、コンプライアンスの強化に向けた取り組みも行いました。
 5ページは、防止策についてです。まず、情報システム局が中心となって、パソコンやシステム面での安全管理対策を実施しました。業務パソコンなどについては、セキュリティ対策の強化を図るとともに、管理体制の一斉点検なども行いました。関連団体についても、セキュリティ対策の状況を調査し、リスク低減に向けた改善策を指導しました。営業部門においても、全国すべての営業拠点で、年に2回、職場での討議などを通じて、業務管理の徹底を図りました。また、個人情報の管理状況や法人委託の拡充を踏まえて、委託事業者への講習の実施状況など、総点検活動を実施しました。
 6〜9ページに、参考として各部局等で行った研修の表を付けています。個人情報に関して、重要な事故には至っていませんが、国民の生命・財産を守るというNHKの使命を達成する観点から、適正な個人情報保護に引き続き取り組くんでいきたいと考えています。

 (上村委員)

 内容に係る質問ではなく確認なのですが、情報公開と個人情報保護に関する制度の根拠については、法律に基づいて行っているのか、あるいはNHKが独自のルールに基づいて行っているのかについてお伺いします。

 (小野副会長)

 NHKの自主的な制度として行っています。

 (上村委員)

 どこかにルールが定められているのですか。

 (春日視聴者事業局情報公開部長) 

 

 情報公開については、行政機関等は法律で義務づけられていますが、NHKの場合はあくまでも自主的な取り組みとして行っています。個人情報保護については、NHKも個人情報の取り扱い業者ですので、個人情報保護法に基づいて取り扱っています。ただし、法律では、放送の分野については法律の適用を除外されており、NHKは対象外になっていますが、営業や技術部門で扱っている個人情報については、個人情報保護法の適用を受け、NHKとしてきちんと法律を遵守しているという立場です。

 (上村委員)

 何かルールの全体像が分かるような文書などはあるのですか。

 (春日部長)

 「NHK情報公開・個人情報保護対応マニュアル」があります。

 (上村委員)

 分かりました。確認させていただきます。

 (金田専務理事)

 情報公開の法律ができたときに、NHKは政府の業務を行う機関ではなくジャーナリズムを担う機関であり、対象に含めるのは妥当ではないというご判断がありましたが、自主的な対応を促進するような意向も感じられましたので、NHKとして自主的な体制を整えた経緯があります。

 (數土委員長)

 NHKの情報公開の「開示の求め」の概要に、札幌放送局で3月28日に30件くらい受け付けたものが、全部「検討中」と記載してありますが、どういう意味なのでしょうか。回答するかどうかを検討しているのか、それとも回答の中身をどうしようかと検討しているのですか。

 (春日部長)

 ご質問いただいた30件ほどの開示の求めについては、3月に出されたもので、返答期間が1か月ありますので、今、文書を持っている部局で開示できるのか、開示できる文書があるかどうかを検討しているということです。

 (數土委員長)

 準備中ということですか。

 (春日部長)

 はい、準備中ということです。これらの結果は、10月の経営委員会で、上半期の報告の中でご報告します。

 (數土委員長)

 個人情報保護の実施状況で、資料2〜3ページの漏えい・紛失等の事例の中に帳票類の紛失がありますが、事務的にどこか欠陥があるためこのようになるのではないのかという意見は出なかったのですか。また、それに対する対策はほとんど書いていないように思います。

 (小野副会長)

 4〜5ページに対策を記載しており、6ページ以降に記しているように、さまざまな研修を行い、紛失を減らすために努力していますが、全国75拠点で4,000人を超す地域スタッフあるいは法人委託の方々が膨大な量の個人情報を持って活動していますので、減らす努力をしているもののまだこのように発生しているというのが実情です。

 (數土委員長)

 受領したときに、何か即座に管理する方法があるのではないでしょうか。

 (小野副会長)

 パスワードがかかっていて確認できない、あるいは明らかにシュレッダーにかけてしまったなどの理由で、その存在が確認できないものも含めて、厳密にカウントした件数になっています。

 (大西理事)

 営業現場では、受領した帳票や、その控えを収納するためのクリアファイルを全員に配っています。帳票を受領した際に、そのファイルに速やかに収納して日々管理し、報告書と一緒に提出することになっていますが、その中で1枚足りない、控えがないなどで紛失した事例です。あってはならないことですので、訪問時の授受管理の徹底に向けた研修を実施するなど、帳票を紛失しない工夫をさらに続けていきたいと思います。

 

 (4) 地方放送番組審議会委員の委嘱について(資料)

 (5) 視聴者対応報告(平成24年3月)について(資料)

 (數土委員長)

 報告事項(4)、(5)については、特段の質問等がなければ、資料配付のみで報告に代えさせていただきたいと思います。

 (塚田理事)

 視聴者対応報告について、報告方法の変更について補足説明させていただきます。これまでは、原則月1回、経営委員会で報告してきましたが、業務の選択と集中を進める観点などから、次回以降は、四半期に1度、3か月分をまとめて報告することにしたいと思います。内容については、よりいっそうの充実を図り、協会運営に資する報告になるように努めていきますので、よろしくお願いします。

 

 (6) 平成23年度契約・収納活動結果(資料)

 (大西理事)

 平成23年度の契約・収納活動についてご報告します。
 資料の1ページをご覧ください。当年度分収納額の結果です。第6期の収納額は1,157.8億円で、前年度同期と比較して24.7億円の増収になりました。年間累計では、6,659.4億円になり、前年比127.5億円の増収になりました。前年度分回収額は、第6期は7.3億円となり、年間累計では65.9億円、22年度を0.2億円上回ったものの、回収予定額66.6億円には0.6億円及びませんでした。また、前々年度以前分の回収額は、第6期は4.7億円となり、年間累計では37.5億円、前年度と比較して5.7億円下回っています。なお、23年度受信料収入としては、翌年度回収予定額も入れて6,725億円になり、23年度受信料収入予算の6,680億円を44億円程度上回ることができる見通しです。
 2ページをご覧ください。契約総数の増加の結果です。第6期は、前年同期を3.4万件下回るマイナス1.0万件になりました。年間累計では、東日本大震災やアナログ放送終了などに伴う解約の申し出が21.7万件発生し、22年度を10.4万件下回る35.4万件となっています。衛星契約増加は、第6期は前年同期を1.1万件上回る13.3万件となり、年間累計では、東日本大震災やアナログ放送終了に伴う解約の申し出が15.8万件発生したものの、事業計画の75万件を上回る78.9万件の増加を確保できました。
 3ページをご覧ください。未収者削減状況は、第6期は4.3万件の削減となり、年間累計では前年度を0.3万件上回る26.6万件の削減となりました。23年度末の未収現在数は180万件を割って177.7万件になっています。口座・クレジット増加も契約総数などと同様に、年間累計で、アナログ放送終了などの影響が14.1万件発生し、22年度を7.9万件下回る64.5万件の増加になりました。
 23年度の契約・収納活動の結果は、東日本大震災やアナログ放送終了に伴う営業業績への影響が大きく発生する中で、契約総数増加は事業計画に及ばなかったものの営業収納額や衛星契約増加、未収者削減については、事業計画を確保するなど、堅調に推移したと考えています。

 (數土委員長)

 口座・クレジット増加の増加件数は分かりましたが、今、口座支払は全体の何%なのでしょうか。

 (大西理事)

 口座とクレジット支払を合わせると大体86%ぐらいです。残りは継続振込支払となり、事業所などが多く利用していますが、請求書を送付して振り込んでいただく形のものです。

 

 (7) 平成23年度収支決算の速報(資料)

 (石田理事)

 平成23年度決算については、現在詳細にデータを点検、整理しているところで、金額については確定値ではありません。本日は、現時点で取りまとめた概況を速報としてご報告します。このあと、監査委員会や会計監査人の監査を受け、意見をいただくことになっています。4月10日の経営委員会で今後の決算スケジュールをご説明したとおり、一連の決算の資料と説明についての公開は6月の決算確定後となりますので、ご了承をお願いいたします。
 それでは、収支決算の速報について、ご説明します。資料「平成23年度収支決算の速報」をご覧ください。まず、予算との比較でご説明します。事業収入は6,997億円となり、受信料の増加などにより70億円の増収になりました。事業支出は6,773億円になり、テレビジョン放送がデジタルに順調に移行できたことや、効率的な事業運営に努めたことなどにより、113億円の予算残になりました。以上により、事業収支差金は予算より183億円改善して223億円の黒字になりました。なお、この収支改善額183億円については、6月21日の経営委員会で決算を議決していただいたあとに、24年度の予算総則を議決していただいて、建設積立金に繰り入れたいと考えています。次に、22年度決算との比較で説明します。事業収入は、受信契約件数の増加等により、157億円の増収になりました。事業支出では、東日本大震災関連の放送やテレビ放送のデジタル化対策を強化したことによる支出増がありましたが、22年度に計上した固定資産撤去費用引当金繰入れがなくなったことにより、28億円減少しました。この結果、事業収支差金では、22年度に対して185億円増加しています。

 (數土委員長)

 今までの報告のあり方についてですが、一般の企業では、先週から一気に決算報告がされており、NHKは決算確定が遅いという点では、企業会計において非常に非効率なことが起こると思います。決算が遅いということだけで、企業の評価、例えば社債の評価なども下がるくらいですから、やはり来年度から早く実施してもらいたいと思います。だれかがチェックする際も、技量を上げて処理していくような効率性のよさが今は求められているということを注意喚起しておきたいと思います。また、ここには記載されていませんが、企業年金の積立不足は、非常に大きな数字になっているはずです。経営委員と執行部との間で、問題の大きさと今後どうするかを共有するためにも、決算報告時、あるいは半期ごとに確認し合えるように、別紙でもかまいませんので報告していただきたいと思います。

 (井原委員)

 非常に厳しい経済環境下で、しかも、デジタル化への移行や東日本大震災という特別な事情の中で、収入を上げ、かつ経費も抑制し、非常に好ましい結果になったことに対して敬意を表しつつ、事業収支のポイントとして分析されている内容について、もう少し、ふかん的な観点から、お尋ねしたいことがあります。21年〜23年度の経営計画で最終形として到達しようとした収支構造に、23年度の決算ではなったと理解してよろしいのでしょうか。収入がこれだけ増えた、支出をこれだけ削減できたということではなくて、収支構造として、前経営計画で求めたような収支構造になった結果の決算だと理解していいのかどうかを確認したいと思います。

 (石田理事)

 完全にそういう収支構造にはならなかったということだと思います。確かに23年度について言えば、事業収支差金が183億円改善しました。ただし、予備費50億円は手をつけないで残り、受信対策費については81億円の残が出たこと、受信料収入は23年度予算より44億円増収となり、これらを合わせると170億円くらいになるわけです。24年度以降はどうかというと、24年度の予算では、予備費は、23年度予算で50億円だったものが30億円になっています。受信対策費については、23年度予算では287億円だったのですが、もう峠を超えたということもあり74億円に減らしています。24年度決算の段階で、23年度のように受信対策費で大幅な残が出ることは考えにくいのです。24年度からの3か年経営計画では、受信料収入は、値下げしても契約を増やして増収を図るという計画です。副会長がトップになって「プロジェクト810」を推進しますが、810億円の増収は相当高い目標ですので、23年度決算のように44億円程度の受信料収入増を達成できるかどうかは非常に厳しい環境だと思います。23年度決算のような大幅な収支改善額を、24年度も達成できるというような構造にはなっていないということです。また、これまで国内放送費は継続して残が出ていたのですが、3か年経営計画では、24年度は残の分を全部削減した予算を組んでいますので、残は出てこない計画になっています。業務の棚卸しについても、613億円削減というかなり高い目標になっています。受信料を7%値下げしましたが、当時言われていた10%還元ができる収支構造にはなっておらず、24年度はぎりぎりこのような形になっているということです。加えて、会長もいろいろなところでおっしゃっているように、3か年経営計画では25年度予算は赤字になっており、何としても赤字を収支均衡まで改善していけるように努力しなければいけないと思っています。また、放送センターの建て替えの財源確保、国際放送の強化、大震災に向けた設備投資など3か年経営計画で先延ばしたものもありますので、そういうこともこれから一生懸命実施していかないといけないということです。経済・社会情勢の変化や、東日本大震災が発生したことによる影響などを含めると、この3年間の中で、当時考えていたような収支構造の前提とは違った環境変化があったと私は認識しています。

 (井原委員)

 ありがとうございます。決算の数字そのものは、ご説明にもあったように、あるいは先ほど申し上げましたように、結果として望ましい状況になっていますが、構造的に考えると、非常に厳しい状況にあるのではないかと私も認識しており、今、お答えいただいたとおりだと思います。たぶん執行部も経営委員会も同じ認識のもとで今後を考え取り組んでいかなければいけないと思い、お尋ねしました。細かいことになりますが、もう1つ、予備費の扱いについて確認させていただきたいと思います。23年度は22年度に比べて、20億円ほど増やしたと思います。特にアナログ終了の影響があるかもしれないということで、不測の事態に備えて予備費として計上したのは23年1月の時点です。それ以降、予備費として処理する事項そのものがなかったということでしょうか。予備費の扱いは、事項をベースにするのか、あるいは金額をベースにするのか、そのあたりの考え方は統一したものがあるのですか。

 (石田理事)

 特に決まっているわけではありませんが、国会で承認を得ているのは、国内放送費や国際放送費については、項の単位ということです。それが支出の限度ということで国会の承認を得ているということからは、まず、その範囲で納めることができるのであれば、項の範囲で対応して、足りない場合には予備費を使うということです。22年度は、予備費を29億円ぐらい使っています。22年度は、181億円を固定資産撤去費用引当金へ繰り入れましたので、当時国内放送費は100億円程度残があったのですが、それでも足りないため予備費を使わざるを得ない状況だったと認識しています。

 (井原委員)

 分かりました。予備費の扱いについて、会計処理の明確化のため、基本的な考え方を確かめさせていただきました。

 (石原委員)

 監査法人の監査はこれからですか。

 (石田理事)

 はい、今後、監査法人の監査を受ける予定で、法律上は3か月以内に、決算や業務報告書について経営委員会で議決していただいて、総務大臣に提出するということになっています。今回もそのように進めるのですが、委員長がおっしゃるように、なるべく早い時点で、決算の動向がどうなっているかを知ることは、24年度からの新しい年度計画を進めるときに重要なことですので、今回速報という形で、執行部で確認し、経営委員会にご説明しています。まだ監査は受けていませんので確定していませんが、数字は多少変わることはあったとしても、ほぼこの形で決算を確定する予定です。

 (數土委員長)

 一般の株式会社でも、最終的には株主総会で確定されるわけですが、決算報告は4月の第1週から第2週までに公表している状況です。それはなぜかというと、企業として、経理の迅速性や正確性を証明する体質になっているからです。そのように努力していただきたいということを申し上げていますので、よろしくお願いします。

 (松本会長)

 同様のことを内部でも話しています。

 (數土委員長)

 分かりました。よろしくお願いします。

 (上村委員)

 今、委員長が言われたことに、全く異論はないのですが、一般の企業の場合は、決算短信など証券取引所上のルールが適用されますので、株価への影響なども含め、経理上も早く確定したほうが望ましいということだと思います。しかし、NHKと一般企業とでは、要請の根拠が違います。ただし、委員長や会長がおっしゃっている趣旨は、経営的な観点からNHKの特性に沿った形で少しでも早く確定したほうが経営判断の形成において有効であるということだと理解します。

 

 

 (8) 平成23年度第4四半期業務報告(資料)

 (松本会長)
 まず、今回の報告の位置づけについて、お話しします。第4四半期報告は、前の3か年経営計画の最終四半期となりますので、今回の業務報告では、前経営計画で掲げてきた経営2目標9方針について、冊子前半に23年度1年間のまとめ、後半にこの3か年の総括を記載しています。従いまして、今回の業務報告は、21年度〜23年度までの3か年経営計画そのものの総括としても位置づけています。前3か年経営計画では、接触者率と受信料支払率を経営目標として掲げ、取り組んできました。この間、テレビ放送の完全デジタル化や、衛星放送の2波化など、テレビの歴史にとって節目となる出来事がありました。経営計画2年目の終わりには、東日本大震災という未曾有の災害が発生し、こうした課題にNHKとして総力を挙げて取り組んだということです。また、この3か年は、リーマン・ショック以降の経済状況の悪化や、東日本大震災の影響などで、非常に厳しい財政運営を迫られました。特に、受信料の全額免除は、毎年、計画策定時に想定した4〜5倍発生するなど、大幅に計画を上回りました。このような状況のもと、収入確保に向けて営業活動を強化した結果、受信料収入は、3年連続して対前年度で増収になりましたが、結局3か年の計画値については、3年とも届かなかったということです。また、収支差金については、経費節減努力などで抑制して、黒字を確保することができました。
 こうした経営環境を踏まえ、受信料収入の還元について、経営委員会の皆さんとも議論をさせていただいて、前提条件である、その後の社会・経済情勢の変化も踏まえたうえで、災害に備えるための必要最低限の機能強化を進めるとともに、昭和43年以降では初めて、受信料収入の7%の値下げをするという形で整理したということです。今後は、これまでの経営計画に区切りをつけたうえで、公共放送の原点に立って、新しい時代に向けたNHKの役割と今後の方向性をしっかり見定めて、4月スタートした新しい3か年計画を着実に実行していきたいと思います。
 なお、業務報告書の表紙の下のほうに記しましたが、財務諸表については、ことし6月末に、23年度事業報告書と併せて、総務大臣に提出するということになっており、現在取りまとめ中ですので、ここには記載していないということをご了解ください。
 (石田理事)
 報告書に沿ってご説明いたします。冊子前半に記載された23年度1年間の総括は省略させていただき、23年度も含む3か年全体の総括についてご説明します。
 後半の19ページをお開きください。このページから3か年の総括になっています。このページでは、「3か年の事業運営の総括」として、経営計画全体の評価と課題についてまとめました。冒頭に会長からも話がありましたように、「いつでも、どこでも、もっと身近にNHK」と題した、この経営計画では、接触者率と支払率という2つの数値目標を経営目標に掲げ、各職場が視聴者を明確に意識して業務にあたってきました。2目標のうち、支払率は目標を達成しました。一方、接触者率は、若者層など幅広い世代に接触の幅を広げる努力を重ねてきましたが、目標達成には至っていません。ただ、この間接触者率は安定的に推移しています。事業収支については、厳しい経済情勢の中、営業活動を強化し、受信料収入は、対前年度で3年連続の増収になりましたが、3年ともに当初の計画には達しませんでした。一方、事業支出は、業務効率化などによって抑制を図ることで、収支差金は当初見込みの赤字を出すことなく、3か年ともに黒字を確保することができました。
 次の20ページに記しましたが、経営計画に明記された受信料収入の還元については、東日本大震災を踏まえ、どうしても必要な機能強化を実施したうえで、受信料収入の7%の値下げに踏み切ることになりました。
 次の21ページ以降、目標、方針ごとに、ご説明します。
 まず経営2目標の最初に掲げた「接触者率の向上」です。下段にある表をご覧ください。一番右側の列が最新のデータです。平成23年11月調査での全体リーチは76.7%になっています。目標の80%には届いていませんが、3年間、安定的に推移しました。一方、表の一番下の欄の放送外リーチは着実に伸び、27.9%と目標の25%を超えています。録画再生やデータ放送、公式・提供ウェブサイトへの接触が大きく伸びました。また、ページ一番下の棒グラフで示しましたが、NHKの放送に対する視聴者の評価を調査した「放送評価調査」の結果です。「親しみ」の項目は右肩上がりで伸び、経営目標としてきた50%を連続で超えて55%となりました。そのほかの項目も、すべて前の年度の平均を上回っています。新しい経営計画では、こうした3か年の成果や課題を踏まえ、接触者率に加えて、複数の質的な指標を使い、より質の高い番組、より正確で迅速な報道など、公共放送にしか出来ないサービスの提供に努めます。
 続いて、次の22ページは、もう1つの経営目標「受信料支払率の向上」です。経営計画では、23年度末に75%とすることを目標にしました。この間、訪問集金を廃止し、新たな地域スタッフ体制を構築して、契約収納活動を強化したほか、事業所割引や業界団体取りまとめの導入、家族割引の導入、契約収納業務の外部委託の促進など、さまざまな営業改革を進めてきました。その結果、下の折れ線グラフにあるように、23年度末の支払率は、推計で75.2%となり、75%の目標を超えました。一方、営業経費は、右下の最後の表に記しましたが、厳しい経済情勢が続く中で、業績を確保するため、追加の施策を実施したことなどから、計画値を達成できませんでした。今後、法人委託の促進など、効率的な営業活動を推し進め、抑制に努めていきます。
 23ページからは9つの方針について、それぞれ3か年の総括を記載しています。
 方針1は、「視聴者のみなさまの信頼を高めるため組織風土改革に全力をあげます」です。過去の不祥事を反省に、この課題を経営方針の最初に掲げました。経営改革の推進、開かれたNHKの実現、人材育成、コンプライアンス強化などに取り組みました。視聴者のみなさまの声を直接伺う、NHKふれあいセンターのシステムの改善と体制の強化も着実に進めました。コンプライアンスについては、この3年間、組織的な重大事案は発生していませんが、個人的な不祥事をいかになくすかが今後の課題です。
 続いて、24ページ、方針2「日本の課題、地球規模の課題に真正面から向きあいます」です。ここでは、東日本大震災の対応、ジャーナリズムの強化、大型コンテンツの展開などに取り組んできました。報道では、東日本大震災や原子力発電所事故のニュースや番組のほか、深刻化する雇用危機、社会の絆の希薄化、ギリシャから始まった世界的な経済危機などをニュースや特集で伝えました。また、ページ中央に写真を掲載しましたが、無縁社会やシリーズ日米安保50年などの番組、それにスペシャルドラマ「坂の上の雲」などを放送し、大きな反響を呼びました。さらに、この3年間は、朝の連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」「てっぱん」「おひさま」「カーネーション」など、いずれも高い視聴率を獲得しました。衛星放送は、この間、従来の3波から2波化がスタートし、スポーツと国際情報のBS1、本物志向の教養・娯楽のBSプレミアムへの再編を円滑に軌道に乗せることができました。今後は、こうした取り組みを引き継ぐと同時に、公共放送に求められる質的な要素についても、四半期単位で把握し分析できる仕組みを確立し、より幅広い視聴者に、多様で質の高いコンテンツを届けていくよう努めます。
 25ページ、方針3「放送・通信融合時代の新サービスで、公共放送の役割を果たします」です。テレビ、パソコン、携帯端末の3-Screensで、情報やコンテンツを提供することを初めて経営の目標に掲げました。接触者率の項目でご説明したように、放送外リーチは、昨年11月の調査で27.9%と、経営目標の25%を超え、この3年間増加を続けてきました。グラフにお示ししましたが、NHKの公式ホームページである「NHKオンライン」へのアクセス数は、3年前と比べ大幅に増加しました。また、平成23年9月からは、ラジオ放送をネットで配信する「らじる★らじる」がスタートしました。また、NHKオンデマンドは、右下の緑色の棒グラフにあるとおり、この3年間、右肩上がりで収入を伸ばしてきています。ただ、当初の目標には及ばず、平成25年度の単年度黒字を目指して、今後も取り組みを強化します。
 26ページ、方針4「地域を元気にするための拠点となります」です。この3年間、全国の53の放送局は毎年度、重点目標を「放送局のちから」として定め、独自の取り組みで、地域への貢献を目指してきました。地域を舞台にしたドラマの制作や、地域に密着した課題を取り上げた番組などに力を入れてきました。各地域での取り組みは、このページ以降にブロックごとに写真とともに記しましたので、後ほどご覧いただければと思います。
 29ページは、方針5「日本を、そしてアジアを、世界に伝えます」です。NHKの国際放送の充実強化は、英語による外国人向けテレビ国際放送「NHKワールドTV」を軸に大きく進展しました。左下のグラフをご覧ください。NHKワールドTVの視聴可能世帯の推移を示しています。当初の目標だった、「24時間受信可能世帯を5年間で1億5,000万世帯」を3年で達成しました。
 30ページ、方針6「円滑な完全デジタル化に向けて重点的に取り組みます」です。ことし3月31日に、岩手・宮城・福島の3県でテレビアナログ放送が終了し、およそ60年にわたるアナログ放送の歴史を終え、放送は新しいデジタルの時代に入りました。このページの下段に、3か年の主な取り組みをまとめましたが、ことし3月末までに累計で2,145局のデジタル中継局の開局を完了するなど、デジタル化に向けて総力をあげて対応し、計画どおり対応を進めてきました。今後は、暫定的に対応している施設の恒久対策や、デジタル化の特性を活用したサービスの提供を進めていきます。
 次のページ、方針7「構造改革を推し進め効率的な体制で受信料の価値をより大きくします」です。この3か年経営計画では、放送サービスへの経営資源シフトを進めることや、グループ全体の最適化、取引の透明性の向上に取り組みました。このうち、取材・制作現場へのパワーシフトについては、3か年で放送部門に107人を増員し、技術、営業、事務の各部門については217人を減員し、全体では110人を純減しました。グループ経営に関しては、計画的な再編・統合を進め、「5年間に12〜13社にする」という目標を達成し、17の子会社の数を13にしました。
 続いて、32ページ、方針8「受信料を公平に負担していただくための取り組みを強化します」です。ご説明したとおり、支払率については、目標75%を達成しました。2つの表に記しましたが、この3年間、地域スタッフの数を3年間で1,000人削減する一方で、公開競争入札による法人委託を拡大させるなど、営業活動の効率化を進めました。また、未収者や未契約者に対する民事手続も進め、22年度には全都道府県で支払督促の申し立てを実施し、3か年で2,014件の支払督促を申し立てました。しかし営業経費率については、目標達成には至りませんでした。今後、より効率的な営業活動の実現に取り組みます。
 次に、33ページ、方針9「環境経営に着実に取り組みます」です。地球規模の環境問題をニュース・番組・イベントなどで積極的に取り上げるとともに、NHKみずからもCO2の削減に取り組みました。棒グラフにお示ししたとおり、削減は進みましたが、目標達成にまでは至っていません。
 以上が経営2目標9方針それぞれについての3か年総括です。
 最後に、35、36ページをお開きください。2ページにわたる一覧表は、この3か年経営計画で掲げてきた、60項目を超える各方針における具体的目標と、その達成状況を表にしたものです。詳細の説明は省略させていただきますが、いくつかの項目は目標に届いていませんが、ほとんどの項目で達成することができました。24年度スタートした新しい経営計画では、これまで掲げてきた、これらの目標の多くを引き継ぐとともに、それをさらに発展させ、新しい時代に対応した公共放送の役割を確実に果たしていきたいと思っています。

 (數土委員長)

 平成23年度第4四半期業務報告ならびに3か年の総括を、簡潔明瞭に説明していただきました。どうもありがとうございました。

 

 (松本会長)

 きょうの標準役員報酬議決にあたっての附帯意見について、全役員が効率的な業務運営、改革の推進に向けて努力していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 

 

 上記のとおり確認する。

 

 平成24年7月10日    

浜 田 健一郎

 

井 原 理 代