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第1142回
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平成23年5月27日(金)公表
  ※3 報告事項(7)平成22年度収支決算の速報 は平成23年7月15日公表

日本放送協会第1142回経営委員会議事録
(平成23年4月26日開催分)

第1142回 経 営 委 員 会 議 事 録

<会 議 の 名 称>

第1142回経営委員会

 

<会 議 日 時>

平成23年4月26日(火)午後2時00分から午後5時00分まで

 

<出 席 者>

〔委  員〕

  數 土 文 夫 安 田 喜 憲 石 島 辰太郎
    石 原   進   井 原 理 代 大 滝 精 一
    勝 又 英 子   北 原 健 児 倉 田 真由美
    幸 田 真 音   竹 中 ナ ミ 浜 田 健一郎
  ◎委員長 ○委員長職務代行者(以下、「代行」という。)

 

〔役  員〕

  松 本 会 長 小 野 副会長 永 井 技師長
  金 田 専務理事 大 西 理 事 今 井 理 事
  塚 田 理 事 吉 国 理 事 冷 水 理 事
  新 山 理 事 石 田 理 事 木 田 理 事

 

 

<場   所>
放送センター 21階役員会議室

 

<議   事>

 數土委員長が開会を宣言し、本日の付議事項および日程について説明。第1141回経営委員会(平成23年4月12日開催)の議事録を承認し、所要の手続きを経て、平成23年4月28日に公表することを決定した。

 

 

付議事項

1 監査委員会報告(資料)

 

2 議決事項

 (1) 日本放送協会定款等の変更について(資料)

 (2) 国際放送番組審議会委員の委嘱について(資料)

 (3) 地上デジタルテレビジョン中継放送局の設置計画について(資料)

 (4) ラジオ・FM中継放送局の設置計画について(資料)

 

3 報告事項

 (1) 地上デジタルテレビジョン中継放送局の開局について(資料)

 (2) テレビジョン中継放送局の廃局について(資料)

 (3) 「平成21年度業務報告書」に付する総務大臣の意見について(資料)

 (4) 地方放送番組審議会委員の委嘱について(資料1)(資料2)

 (5) 視聴者対応報告(平成23年2月・3月)について(資料1)(資料2)(資料3)

 (6) 平成22年度契約・収納活動結果(資料)

 (7) 平成22年度収支決算の速報(資料)

 (8) 平成22年度第4四半期業務報告(資料1)(資料2)(資料3)

 

 

議事経過

 

1 監査委員会報告(資料)

 (井原委員)
 平成22年度後期分の「経営委員会委員の服務に関する準則」の順守についての報告です。監査委員会は、放送法第23条の4に基づく監査活動の一環として、平成22年10月1日から23年3月31日までの経営委員の業務執行について、今回の確認の対象となる11名の委員から、「経営委員会委員の服務に関する準則」の順守について確認書の提出を求めました。確認した事項としては、全委員からそれぞれ「『経営委員会委員の服務に関する準則』に基づき行動した」との確認書を受領しました。なお、付記事項として、自由記述には、「経営委員会の運営にあたり、会長選任手順等も含め、ルールの一層の整備が必要ではないか」という意見があったことを記しています。今後、検討をお願いしたいと思っています。

 

 

2 議決事項

 (1) 日本放送協会定款等の変更について(資料)

 (石田理事)

 日本放送協会定款等の変更についてご説明します。今回の変更は、平成22年11月に成立した放送法の改正を反映させるものです。また、若干の字句修正を併せて行いました。「日本放送協会定款」のほか、「日本放送協会放送受信規約」と「放送法第9条第2項第2号の業務の基準」についても、法改正を反映した変更の大臣認可を得る必要があるため、本日はその3つについて一緒にご審議いただければと思います。この案で決定をいただければ、総務省と調整して、必要な書式を整えたうえで、速やかに総務大臣に認可申請を行います。では、変更内容について順にご説明します。
 法改正を反映した「日本放送協会定款」の変更点は4つです。1つ目は、「定義・用語の変更」です。改正放送法においては放送という言葉の定義が変わり、これまで放送と言えば無線のみを意味していたものでしたが、有線、無線を問わない放送へと意味が拡大されました。また、放送する主体は誰なのか。つまり、番組編集をしている者なのか、電波を発射している者なのかというところの考え方も変わって、受委託放送制度が廃止になりました。例えば、別紙1の「『日本放送協会定款』新旧対照」の第3条をご覧いただきますと、これまでの「国内放送」という言葉が「国内基幹放送」となります。放送の定義が変わったことで、「国内放送」のままですと、有線放送も含むことになりますが、NHKの業務はこれまでと変わらず無線に限定されていますので、そのことを意味する「国内基幹放送」という言葉に置き換わっています。こういう用語が出てくるところは、放送法の表現に合わせて変更しています。これらは法改正でNHKの業務が変わるという意味ではなくて、逆に法律上の用語の定義が拡大・変更されてもNHKの業務は現行のままで継続させるという趣旨に沿った措置です。加えて、放送の定義が変わったことで、「有線放送」、「電気通信役務利用放送」という概念がなくなりました。また、「一般放送事業者」という言葉は、これまでいわゆる民放を意味していたのが、全く別の事業者を意味するようになりましたので、それらについても法律に合わせて修正しています。2つ目は、「受信契約に関するみなし規定の追加」です。別紙1の8〜9ページの第55条をご覧ください。第4項に再放送、いわゆる同時再送信についても協会の放送とみなして受信契約の対象とするという、放送法に新たに規定された項目をそのまま追加しています。これまでも解釈上はそのように取り扱ってきた項目ですが、今回改めて法律上明確に規定されたため、定款上も同様に規定したものです。3つ目は、「番組審議会への諮問・報告に関する新たな義務規定の追加」です。別紙1の9〜10ページの第63〜65条、第67条をご覧ください。改正放送法では、個々の番組の種別(教養・教育・報道・娯楽等の区分)と、種別ごとの放送時間の合計を番組審議会に報告し、公表する義務が課されることになりました。また、番組種別の基準を定める場合は、番組審議会に諮問する義務も加わりましたので、それらについて法に合わせて修正しています。4つ目は、「法律の条文番号変更の反映」です。放送法改正によって法律の条文番号が大幅に変わっていますので、定款全体にわたって「放送法第何条の規定に基づき」といった表現における該当条文の番号を変更しています。併せて、若干の字句修正、例えば11ページの第76条の「又は」というところを「若しくは」というような形で、放送法に合わせて字句を修正したところがあります。
 次に、「日本放送協会放送受信規約」の変更について説明します。別紙2をご覧ください。放送法では、受信契約の義務について規定していた第32条が、改正後は第64条となることから、条文番号の変更を2か所反映させています。それから、第13条の2(個人情報の取り扱い)の中に、今では実際行っていないものがそのまま残っていましたので、その部分を削除しました。併せて、施行期日に関する付則を変更します。
 次に、「放送法第9条第2項第2号の業務の基準」の変更についてご説明します。別紙3をご覧ください。タイトルを含めて2か所、放送法第9条が改正後は第20条になることを反映しています。また、有線テレビジョン放送法は廃止になりますので、該当部分を削除し、併せて施行期日に関する部分等を修正しています。変更点は以上ですが、変更実施の期日は改正放送法の施行日になります。今のところは6月末日になると見込んでいます。ただし、改正放送法の施行は段階的に設定されており、先ほど説明した定款の変更点の3つ目に当たる「番組審議会への諮問・報告に関する新たな義務規定の追加」は、すでに3月31日に施行されています。そのため、それに対応して発生する業務については、定款変更の施行前でも実施できるという一項を定款の附則に入れています。具体的には、5月16日の中央放送番組審議会に「放送番組の種別の基準」を諮問する予定にしていますので、それを遺漏なく取り進められるようにという措置です。

 (石原委員)

 昨年の11月に放送法の改正があったわけですが、先ほど最初の説明にあったように、無線、有線ともにすべて放送という定義になったのですね。NHKから見た場合、経営的な観点での違いとしては、具体的にどういう問題が起きるのですか。

 (石田理事)

 NHKについては、今回の改正で業務は変わりません。これまで無線のテレビ放送や有線テレビジョンについて、それぞれ業界別に法律が定められていたのですが、今回改正された放送法は、それらを合わせて、ハードの部分やソフトの部分を、それぞれいわゆるレイヤー(階層)で規定して1つにまとめたような法律です。これまでの改正の論議をするときにNHKとNTTについては今回の見直しの対象にはしないということになっており、放送法の中身は変わったのですがNHKの業務変わらないということで、法律が改正されています。先ほどご説明したように、放送の概念は変わったのですが、NHKの行う業務は変わらないということで、逆に言葉の定義の変更に伴って法文も変わり、定款の表現も変わるというような形になっています。もちろん、先ほどご説明した放送番組審議会の部分などいくつか変わるところはありますが、基本的には変わっていません。ただ、このような形で放送がこれまでの業界別から横串の形に法制度が変わるということは、今後の放送と通信の融合などに進むための法的な基礎ができたということで、NHKとしてはすでに福地前会長が放送法改正について総務大臣に要望していますが、そういう要望を実現していくには、今回の改正は有効だと思います。

 (石原委員)

 分かりました。ありがとうございました。

 (石島委員)

 関連してですが、放送に関しては、キャストの方向というか、通常はブロードキャストが放送と言われているわけです。これまでの通信というものは、有線か無線かという物理的な違いはなくなったとして、キャスティングの違いというか、ユニキャストなのかそれともブロードキャストなのかという定義も一切なくなったと考えていいのでしょうかね。その辺が少しはっきりしないので、逆にその辺の規定がなければ、情報を伝達する行為すべてを放送と呼んでしまうのかということです。そうすると、放送を伝達する行為の中で、従来通信に該当していたものは何と呼ぶのかということがよく分からないのです。もし分かっていましたら教えていただきたいと思います。

 (石田理事)

 少なくとも放送法に関しては、先ほどご説明したように、無線という形でこれまで規定されていたのが、4つの法律をまとめる過程で無線と有線ということの区別をなくして、放送という言葉に統合したということです。通信においては、いろいろな法律が残っていますので、今回は放送法の中で放送に関する4つの法律をまとめたということです。

 (石島委員)

 そうすると、物理的な媒体の差をなくしたというのが第1段階だということでしょうか。また、自分でも調べてみます。

 (松本会長)

 民放は現在も以前もすべてのことができます。NHKは放送という概念の中でしかできません。放送関係の法律の中に、無線、有線などいくつかのものがあったのですが、概念として無線と有線を1つにまとめて、放送と呼ぶことになります。NHKの場合は、今までどおりですので、放送とは言わず基幹放送と呼ぶということです。現状、法律が変わってもNHKとしては何も変わらず、同じということです。

 (石田理事)

 少し補足しますと、現在の放送法第9条に、NHKが実施できることが限定的に列挙してあり、それ以外は実施できないということがその趣旨です。そこのところが結局、新しく放送法が改正されても変わっていないということです。民放はインターネットをどれだけ使おうが、不動産事業を行おうが何をしようが、それは自由ですが、NHKの場合はその第9条に掲げてある、限定されたもの以外は実施できないということです。今回の改正でもそこのところには手がついていないということで、変わっていないという意味です。

 (數土委員長)

 例えば定款の第48条と第49条で、協会の国際放送について受託や委託の文言を削除した部分などの意味をもう少し分かりやすく説明してもらったほうが親切なのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

 (石田理事)

 受託協会国際放送ということについてですが、これまでは放送というのは電波を出す側が主体だということだったのです。NHKの国際放送の場合、衛星放送を出しているB−SAT社に委託して、そこが衛星を通して放送し、それぞれの家庭に送るということです。NHKがそこに委託しているという考え方だったのです。放送している主体はそのB−SAT社がハード部分で実施しているという考え方だったのですが、今回の改正ではコンテンツを出す側が放送を出す主体だということで、放送の建て方が変わったということです。まず国際放送において、受託や委託という言葉がなくなっており、協会国際衛星放送という、この場合の「協会」はNHKという意味ですが、NHKが行う国際衛星放送だという書き方に変わっているわけです。

 (數土委員長)

 それは分かりますが、もう少しそういうことを要領よく説明していただきたいと言っているわけで、このままですと、委員の皆さんは改定の趣旨や何に基づいて変更しているかということが、理解しにくいのではないかと思って申し上げました。

 (石田理事)

 改定の趣旨と言いますと、先ほどご説明したように、放送法は定義等が変わったので、定款を含めてこういう形になっています。基本的に言うと、NHKの業務はこれまでと何も変わっていないということです。

 (數土委員長)

 分かりました。ありがとうございます。この件につきましては、定款の大切な部分ですので、理事の方々と意思の疎通を図りながら、お互いに理解を深めさせていただきたいと思います。

 採決の結果、原案どおり議決。

 

 (2) 国際放送番組審議会委員の委嘱について(資料)

 (今井理事)

 国際放送番組審議会委員として、平成23年5月1日付で株式会社全国新聞ネット代表取締役社長の今井克氏に再委嘱したいと思います。別紙の略歴に記載のとおり、社団法人共同通信社で海外部長や国際局長を歴任された方です。よろしくご審議をお願いします。
 採決の結果、原案どおり議決。

 

 (3) 地上デジタルテレビジョン中継放送局の設置計画について(資料)

 (4) ラジオ・FM中継放送局の設置計画について(資料)

 (永井技師長)
 最初に、地上デジタルテレビジョン中継放送局の設置計画について審議をお願いします。資料の表に記載がありますように、設置に向けて諸条件が整った8都県の9地区の地上デジタルテレビジョンの中継放送局を設置したいと考えています。9地区のうち、三重県の志摩地区はデジタル混信対策の地区で、そのほかの8地区はデジタル放送移行に伴う新たな難視対策地区です。いずれも平成23年度に開局する予定です。各都県における地区名等はお手元の表のとおりです。今回の9地区の設置に要する経費は3.2億円を見込んでいます。既設のアナログ施設の活用や民放との共同建設などを通じてコスト削減に努めていきます。世帯カバー率は、23年3月末で97.9%になっています。これに加えて、有線でつながっている辺地共聴1.6%と衛星を使ったセーフティネット0.5%を合わせると100%になります。設置計画については、今回の提案の9地区を加えると、これまで2,136地区の設置計画の提案を終えました。新たな難視やデジタル混信の対策中継局については、現在も検討を進めているものがあります。諸条件が整いしだい、設置計画の提案を行っていきます。今回、設置計画が承認されましたら、各中継局の免許申請手続きなどの準備に入っていきます。
 次に、ラジオ・FM中継放送局の設置計画についてご審議をお願いします。まず、ラジオ中継放送局ですが、夜間における外国電波の混信の改善を図るために、高知県の早明浦地区にラジオ中継放送局を設置したいと考えています。平成24年3月に開局する予定です。この計画により約3,000世帯が夜間の外国電波混信から改善されます。次にFM中継放送局の設置計画です。沖縄県の石垣島付近にある既設のFM中継放送局を、台風等の自然災害の影響が少ない場所に移転することに伴い、電波が届かなくなる川平地区と多良間地区にFM放送中継放送局を設置したいと考えています。いずれも23年度中に開局の予定です。

 (數土委員長)

 地上デジタルテレビジョン中継放送局の設置に関する費用は3.2億円ということですが、ラジオ・FM中継放送局の設置に関する投資額はどれくらいなのでしょうか。

 (永井技師長)

 ラジオが1.2億円、FMが2局で5,000万円ぐらいです。

 (數土委員長)

 償却年数は何年ぐらいになっているのですか。

 (永井技師長)

 送信装置については6年、アンテナ等の構築物は、長いもので40年程度になります。

 (數土委員長)

 既存のものにも相当に残存簿価があるということですね。

 (永井技師長)

 あります。通常ですと、アンテナ部分は一度建てると、構造の部分は100年ぐらいもちます。ただし、ラジオのアンテナを支えるために3方向で引いている金属については、25年ぐらいで交換します。それは補修工事ですので、事業費で対応しています。

 (北原委員)

 永井技師長が説明したこととは直接は関係ないのですが、1つ質問があります。今度の震災ではNHKも民放も大きな損害が出ていて、恐らく経営を非常に圧迫するような数字になっていると思います。そういう状況の中で、総務省は岩手、宮城、福島の3県はアナログ放送を延期してほしいと要請しているということです。ということは、完全にデジタル化にならずに、サイマル放送になります。今もそういう状況なのですが、アナログとデジタルの両方の波を3県には届けなければいけないということです。NHKもそうだと思いますが、民放にとっても非常に頭の痛い問題なのですよね。だめだと言うわけにはいかない問題です。電波法も改正される方向です。そういう状況の中で、NHKはどれくらいの新たな費用発生を見込んでいるのでしょうか。また、そういう国の方針に対して、どういう対応をされるのでしょうか。国から放送事業者に要請が来ているわけで、当然国策の変更ですから、国に対して、放送事業者のみが一方的に費用を負担するのではなくて、当然支援策というものを要求していくことになると思うのですが、その辺のところは、現時点ではどのように考えておられるのですか。

 (永井技師長)

 おっしゃるとおり、総務省からは、新聞報道にあったように、3県についてはアナログ放送の終了を延期し、ほかの地域については7月24日までに、予定どおりアナログ放送を終わらせたいという話がありました。われわれも具体的に費用がいくらかかるのかということについて、今検討している段階ですので、この場では、まだ費用の数字をお話できる段階ではありません。全国的にアナログ終了を遅らせた場合、1年間でいくらぐらい費用がかかるかということについては、これまでいろいろ検討していまして、地上放送で約40億円、衛星放送を入れると約60億円という数字は試算したことがあります。ただし、今回の3県についてはまだ数字が出ていませんので、ご返答は差し控えたいと思います。また、国への対応をどのように考えるのかということですが、ご指摘のとおり国策ですので、国としての判断を受けて検討しなければいけないと考えています。そこで発生する経費については、われわれも延期がどういう位置づけなのか、また、受信料でそれを賄えるものなのかどうかは検討しなければならないと考えています。

 (北原委員)

 当然、国もお金を出すべきであるというような考え方は持っているわけですね。

 (永井技師長)

 内容によっては、そのように考えています。

 (勝又委員)

 この東北3県のデジタル化に向けて設置してきたもので、壊れてしまったものや、追加でやり直さなければならないものなどの状況についても教えていただければと思います。

 (永井技師長)

 デジタル中継放送局については1局が流失しました。

 (石原委員)

 総務省がこの東北3県のデジタル化を今回遅らせると言ったそもそもの判断についてですが、NHK、あるいは民放も、地上デジタルの設備が相当に破損していて、デジタル化ができないということなのでしょうか。設備がきちんとしていれば、むしろあれだけ大きく家屋が破壊されていますので、あとは受像機の問題じゃないかと思うのです。もしそうであれば、大量に、場合によっては無償で配給したらいいのではないでしょうか。総務省がそもそも判断した理由は何なのかを教えていただけますか。先ほどこれから検討とおっしゃっていましたが、アナログ放送とデジタル放送をダブルで対応するというのはものすごくお金がかかると思います。

 (松本会長)

 全部聞いているわけではありませんが、地元の県からそういう要請があって、それを受けて総務省が判断したということを聞いています。ただし、私が東北3県の局を回ってきた中では、今、石原委員がおっしゃったようなことが現実的かもしれないという意見もありました。というのは、実際に被害に遭われたところは全部家屋が流失していて、受信機そのものがないわけです。避難所のテレビはデジタル対応です。新しく家を建てる方もたぶんデジタル対応のものを買われるだろうと思います。家もテレビもない状態ですからそれまでは視聴できないわけです。デジタル化に向けた送信の設備は民放・NHK含めて準備していますので、受信機の問題であり、それをどう判断するのかというのが今回の問題だと思います。

 (永井技師長)

 補足します。先ほど1局流失していると言いましたが、われわれ放送を送る側の設備が流失していても、そのエリアはすべてのものが同じように流失していますので、そのエリアのご家庭でのテレビの設置と同時にわれわれも設置すればいいと考えています。被災地はそういう状況ですので、基本的には一緒に対応すればいいということで、あまり問題はないと思っています。3県の中でも被災地ではない地域がたくさんあるのですが、その地域でデジタル化に向けて最後の詰めの調整を行っています。例えば新たな難視対応というように、先ほど置局という話もありましたが、それを自分たちのところでどのようにしていくのかということについて、役場が中心になって地元と相談しています。むしろ総務省にお聞きしますと、その地域がデジタル化どころではないという状況で対応ができないため、延期したいというのが理由と聞いております。

 (石原委員)

 NHKとしては、総務省のこの提案について了解したのですか。新聞記事ではそのような感じに読み取れましたが。

 (永井技師長)

 国の施策で、もし延長することになった場合、その前に何か問題があれば出しなさいということで、民放と一緒に総務省にいろいろ打ち返しました。

 (石原委員)

 問題を出してほしいというように事前の相談はあったわけですね。

 (永井技師長)

 はい、今後、その政策を進められた場合、われわれにとって何が問題としてあるのかを、今調整している段階です。

 (數土委員長)

 東北3県でこういう災害があったときに、全体から見れば、今回の議決事項(3)と(4)に関しては、大した建設費ではないのですが、それでも、アナログ放送の終了延期への対応を優先して、今回の提案はもう少し待ったほうがいいのではないかという声が、視聴者から上がらないでしょうか。

 (永井技師長)

 基本的には、7月24日までにほかの地域ではデジタル化を進めていかなければいけないということで、先ほどご提案した地上デジタルテレビジョン中継放送局の設置計画については、それ以降も必須の条項ですので、これを行っていくことについては、問題はないと思います。

 (數土委員長)

 全然問題ないということですか。

 (永井技師長)

 問題はありません。

 採決の結果、原案どおり議決。

 

 

3 報告事項
 (1) 地上デジタルテレビジョン中継放送局の開局について(資料)

 (永井技師長)

 地上デジタルテレビジョン中継放送局の設置計画に基づいて建設を取り進めてきた地上デジタル中継放送局のうち、今年1月1日から3月末までの期間に、12府県の21地区で開局しました。いずれの地区も新たな難視聴を解消するための対策中継局になります。各局の送信するチャンネル、申請世帯数などについては、資料の表のとおりです。この結果、平成23年3月末日までに累計で2,114局の地上デジタル中継放送局が開局し、全国の視聴可能世帯カバー率は97.9%になっています。今回の建設にかかった経費はおよそ6.1億円です。既設のアナログ施設の活用、民放との共同建設などを通じて、コストの削減に努めました。

 

 (2) テレビジョン中継放送局の廃局について(資料)

 (永井技師長)

 アナログテレビジョン中継放送局の廃局については、平成22年度において、共同受信施設への加入などによって受信者が皆無となった、17都道県の77局を廃局しました。なお、廃局にあたっては、いずれの地区も地元自治体から承諾をいただいています。

 (數土委員長)

 廃局したときの、資産廃却は、いくらぐらいなのでしょうか。今、分からなければ後で教えてください。

 (永井技師長)

 分かりました。

 

 (3) 「平成21年度業務報告書」に付する総務大臣の意見について(資料)

 (石田理事)

 NHKの「平成21年度業務報告書」については、経営委員会の議決をいただき、昨年6月に総務大臣に提出しました。これに総務大臣の意見が付されて、今年の4月12日、内閣を経て国会に報告されましたので、この「平成21年度業務報告書」に付する総務大臣意見の内容についてご報告します。
 別紙の「日本放送協会平成21年度業務報告書に付する総務大臣の意見」の1つ目の段落で、「平成21年度決算において、収支予算どおりに事業収入6,699億円を計上するとともに、事業支出においては、当初予算よりも153億円削減し、結果として収支予算で29億円の赤字を計上していたのに対し、124億円の黒字となったことは評価できる」としています。このように収支予算と決算に対する具体的な評価が述べられたことが21年度の業務報告書に付する大臣意見の1つの特徴です。また、次の段落では事業運営について、「おおむね平成21年度事業計画等に沿って実施されており、妥当なものと認められる」としています。そのうえで、21年度にNHKが実施した業務について特記すべき事項が記述され、「事業計画等に沿って実施したものと認められる業務」と「事業計画等に比し、一層の取組が望ましいと認められる業務」の2つに分類したうえで、それぞれ具体的内容が述べられています。
 「事業計画等に沿って実施したと認められる業務」では、受信料支払率の向上、業務の合理化、地上テレビジョン放送のデジタル化、地域放送の充実等、国際放送の充実の5項目について、それぞれ目標が達成されたことなどが挙げられています。
 「事業計画等に比し、一層の取組が望ましいと認められる業務」では、4項目が挙げられています。職員のコンプライアンス意識の徹底では、研修などを実施しているが、不祥事がなお生じていること、それから、契約収納関係経費の比率の削減、放送番組への字幕付与等でもまだ目標が達成できていないこと、番組アーカイブの活用では事業計画に比して赤字額が大きくなっていることなどが、それぞれ指摘されています。

 (數土委員長)

 「事業計画等に比し、一層の取組が望ましいと認められる業務」については、4月12日に国会に報告されていますが、21、22、23年度と続けて、理事の方あるいは事業全体として、どのように反映しているのですか。タイミングは失しているが、もうやっているということなのか、それとも、これらについては、また業務に反映するように心がけているのかなど、どのようになっているのでしょうか。

 (松本会長)

 これは当然取り組んでいかなければいけないことだと思います。23年度の予算が国会承認される際にも同じような内容の附帯決議が採択されており、同様に取り組まなければいけないということです。

 (數土委員長)

 国会に提出した23年度の予算・事業計画にこのようなことは含まれているということですか。

 (松本会長)

 そうです。附帯決議でも同じような内容については指摘されています。

 

 (4) 地方放送番組審議会委員の委嘱について(資料1)(資料2)

 (木田理事)

 地方放送番組審議会委員として、平成23年5月1日付で5名の方に委嘱します。東北地方の、佐藤瀏氏(岩手大学名誉教授)は再委嘱ですが、残りの4名の方については新規委嘱です。中国地方の木原康樹氏(広島大学大学院医歯薬学総合研究科循環器内科学・教授)は、CTやMRIなどの分野の第一人者です。九州地方の内柴正人氏(九州看護福祉大学客員教授)は、皆さんご存じのようにアテネ五輪、北京五輪の柔道の金メダリストです。北海道地方の佐々木政文氏(北海道新聞社論説委員)と四国地方の加藤令史氏(愛媛新聞社編集局長)は、それぞれ地元を代表する新聞社の幹部の方です。なお、中国地方の岡田光正氏(放送大学教授)、九州地方の小山敬子氏(ピュア・サポートグループ代表)、および北海道地方の山田英和氏(株式会社とかちアドベンチャークラブ代表取締役社長)は、いずれも任期満了により平成23年4月30日付で退任されます。参考資料の「番組審議会の委員構成」で色を付けているところが今回新たに委嘱をする方々です。各地域で、大体同じ分野かそれに近い分野であることや、あるいは年齢を考慮して選考しており、各審議会のバランスが崩れないような形でメンバーを選任しています。

 

 (5) 視聴者対応報告(平成23年2月・3月)について(資料1)(資料2)(資料3)

 (塚田理事)

 視聴者対応報告は、放送法に基づいて、視聴者の皆さまからの苦情やご意見、それに対する対応の結果の概要を経営委員会に報告するものです。ポイントを絞ってご説明させていただきます。
 別冊として資料が2部ありますが、平成23年3月の報告をご覧ください。3月は東日本大震災に対するNHKの取り組みと視聴者の反響をまとめました。
 2ページは、反響の全体をまとめています。震災の発生から3月末までに寄せられた震災関係の視聴者の声の総数は6万2,324件になっています。反響の内容別内訳は4ページをご覧ください。寄せられた声をキーワードで分類した結果、最も多かったのは番組予定の問い合わせや要望などで、折れ線グラフの青色の線で示しており、3万2,000件あまりにのぼりました。次いで、原発に関するものが赤色の折れ線で2万件あまりとなっています。計画停電については緑色の折れ線で6,000件あまりの声が寄せられています。この計画停電については、実施初日の14日には、1,500件を超える声が寄せられています。
 5ページは、震災報道全般についての具体的なご意見を紹介しています。「原発についての解説が分かりやすい」、「被災した方々に寄り添う番組内容が本当にありがたい」といった好評のご意見の一方で、「津波の被災地に比べ内陸部の情報が少ない」、「原発報道ばかりでなく被災地の情報ももっと放送してほしい」といったご意見もいただきました。
 6ページからは、総合テレビなどメディア別に、視聴者の反響と対応について詳しくまとめています。放送関係については3月29日の経営委員会で会長から報告しましたので、ここでは新しい試みであるソーシャルメディアの活用についてご説明をさせていただきます。16ページをご覧ください。今回の震災では、電話がなかなか通じない中で、パソコンやスマートフォンなどのインターネットサービスを使って、安否を確認したり、首都圏の帰宅困難者のために情報が提供されるなど「ソーシャルメディア」の動きが注目されました。NHKでも、番組等のツイッターアカウントを使って、毎日さまざまなニュースや情報を発信しています。例として、報道局科学文化部のツイッターを紹介しています。中段にツイッターの例がありますが、視聴者からの問いかけに答えている様子が分かります。それぞれツイッターの真ん中あたりにある「RT@」以下の部分が視聴者からの問いかけで、その前の部分が科学文化部からの回答という形になっています。4件掲載していますが、一番下のツイッターでは、「なんで早く石棺にしないのか」という視聴者からの問いかけに対して、「現時点では石棺にすると熱がこもりやすく、かえってやっかい」という専門家の見解があることを科学文化部から答えているというような形でやり取りをしています。この科学文化部のツイッターのアカウントについては、フォロワーと呼ばれる利用者の数が9万件を超えています。17ページは、電通バズリサーチというシステムを使った調査を紹介しています。地震発生以降、「原子力」と「原発」という2つの単語が入っているツイートを発信したアカウントの影響力を調べたものです。楕円の中の文字が大きいほど影響力が大きいということを示しています。ご覧いただきますと、地震発生翌日の3月12日には、「nhk_kabun」(報道局科学文化部のアカウント)が真ん中に記載されていますが、この影響力がすべてのツイッターの中で最も大きかったことが分かります。以上が3月のご報告ですが、4月に入り、大震災に対するNHKの取り組みについては、会長をはじめ役員が番組に出演して直接視聴者の皆さまにお伝えしました。総合テレビ日曜日午前10時台の「NHKとっておきサンデー」という番組のコーナーで、4月10日は松本会長、17日は今井理事、24日は小野副会長と3週連続で出演しています。
 別冊1は、震災のために3月にご報告できなかった2月の視聴者対応報告です。1点だけ説明しますと、4ページの2月のピックアップでは、岐阜放送局の開局70周年記念ドラマ「恋するキムチ」を特集しました。この番組は、中部7県向けのドラマでしたが、韓国の人気アイドルグループ「超新星」のユナクさんが出演するということで、放送の3か月も前から全国放送を希望する声が多数寄せられて、全国放送が決まりました。さらに、続編を要望する声なども寄せられています。6ページに、そのほかの地域放送局が22年度に取り組んだドラマ制作についてまとめています。このうち、先ほど申しました「恋するキムチ」と福岡放送局制作の「見知らぬわが町」は、4月29日の午後に全国放送する予定ですが、国会中継等で編成が変更になる場合がありますので、その場合は放送日時が変更になる可能性があります。

 (大滝委員)

 私は、3月11日に仙台で地震に遭いまして、皆さま方に本当にご心配いただき、ありがとうございました。私が申し上げることは特別新しいことでもないのですが、実際、震災に遭ってみて、どんなことを感じたかということについて、いくつか気が付いていることがありますので、お話ししたいと思います。3月11日は、大学に夜7時くらいまでいまして、それから歩いて2時間半かけて自宅に帰りました。周りは真っ暗闇で、家に帰ってからは、懐中電灯とラジオが頼りでした。これほどラジオの価値を身にしみて感じたことはありませんでした。とにかく真っ暗闇の中で何日間か過ごすということもありましたので、周りから全然情報が入ってこないのです。そのときの不安は大変大きなもので、しかも同時に、ガソリン、食料、水などが不足してしまい、翌日か翌々日だったと思いますが、ガソリン10リッターを入れるのに2時間半並んで、ようやく入れることができたというような状況でした。事実上、車も使えなくなってしまい、徒歩で行ったり来たりするという生活をかなり長く続けました。勤務先まで片道3時間かけて通わなければなりませんでした。ラジオの持っている価値を、情報が入ってきたということをはじめ、いろいろな意味で強く感じました。それから、やはり肉体的だけではなく、精神的にもすごく大きなダメージを受けるのです。先が見通せなくなってしまうので、非常に厳しい状況になってしまい、震災に遭ってから2週間ぐらいはなかなか元の状態に戻れないのです。けがなどはなかったのですが、それでもそういう状態でした。津波に遭った地域では、すぐにFM放送が立ち上がって、このFM放送の力がすごく大きな役割を果たしました。特に石巻のように、FM放送によってコミュニティのいろいろな情報がどんどんつながっていくということがあり、このFMをはじめとする放送の意味や価値について、震災に接してみてつくづく感じました。これは阪神・淡路大震災のときにもよく言われたことだと思いますが、今回、実際に体験してみて、そのような感じを受けました。
 もう1つは、先ほどご説明があったソーシャルメディアの話です。いろいろな部分で大きな役割を果たしたと思いますし、いろいろな関係者からその後聞いた話でも、特に動画だとか、資料に紹介があるいろいろな企業との間で非常に素早い連携ができ、そのことについて提携した企業自身も驚いていました。NHKがこんなに早く対応するとは思わなかったというようなことを何度か耳にしました。恐らく、震災の前からそのような対応をきちんと取っておられたということが、今回のような震災時にいろいろ威力を発揮したのではないかと思っています。私自身はもともとNPOの仕事などをしていましたので、仙台にもNPOとかNGOなどのいろいろなタイプの支援団体が、特に東京や神戸、関西からもたくさん来ました。そのような団体でも、ツイッターとかソーシャルメディアは、震災のいろいろな支援や救済活動に大きな力を発揮したと思っています。そういう意味では、今回のNHKのいろいろな動きについては、実際に震災の現場の近くにいて、自分自身も大変感謝しており、お礼を申し上げたいことがたくさんあります。
 一方で、これはNHKだけではないのですが、震災から1か月以上たってみると、だんだん報道されている内容と現場で起こっていることとの間で、少しずつかい離が出てきているようにも思います。理由はいろいろあると思います。例えば、現在の被災地の状況というのは千差万別です。岩手、宮城、福島と一言で言うのですが、実はそれぞれ3県が置かれた状況は非常に異なっています。福島は原発の問題がありますので、そのインパクトは圧倒的で、復興というような状況ではありません。しかし、宮城県の、特に仙台の周辺などを見ていると、だんだん様子が変わってきているということで、沿岸部でそれぞれの自治体の置かれている状況も違ってきています。対応が難しいとは思いますが、報道されている内容やスポットライトが当たっていることが何となくどこかに偏っているのではないかという印象は否めません。この視聴者対応報告の厳しいご意見の中に、あるところだけが非常にスポットライトを浴びていて、ほかのところはあまり報道されないのではないかということがありましたが、そのような感じ方をされるのも無理もないと思うところもあります。また、これは、ニュースや報道の宿命かもしれませんが、なかなか変化が起こらないところがかえって報道されず、何か変わったことが起きるとそれがニュースに取り上げられるということが起こるので、むしろ復旧が遅いところは思いのほかに報道されない、またニュースとして取り上げられないというような、変なことが現実には起こっているということがあります。この視聴者対応報告に書かれているかなりの部分について同意できることがたくさんあります。ぜひこういう部分について、なかなか民放でできないことがたくさんあると思いますので、特にこれからもNHKとして目配りをして、長く粘り強い報道をしていただきたいということをお願いしたいと思います。
 最後に、私自身がNPOとかNGOの活動をしているということもあると思うのですが、もう1つお願いがあります。ボランティア活動はとてもたくさん取り上げられており、東北をはじめとして、いろいろなところに非常に専門性の高いNPOやNGOの団体が世界中から集結しています。今回は、阪神・淡路大震災や新潟県中越地震のときのいろいろなノウハウが蓄積されていて、非常にすばらしい活動が、沿岸部をはじめとして展開されています。私自身も、そういう活動をするNPOやNGOを、地域と世界でつなぎ合わせるという、復興連携センターのような活動をしているのですが、いろいろなNPOのネットワークなどを使って、非常にきめ細かく、専門性の高い活動がかなり幅広く展開されるようになってきています。ぜひそのようなことについても報道の中で取り上げてほしいと思います。言葉では世界が支援していると言うのですが、実際にNPOやNGOがどういうことを行っているのかということは、これまでの震災とは大変異なった姿ではないかと私は思っています。特に若い人たちから中堅の人たちの持っている力というのは、すばらしく、それがこれからの震災復興に大きなエネルギーを提供していくのではないかと考えており、一般の個人的なボランティアだけでなく、そういうところにもぜひスポットライトを当てて報道していただければと思っています。

 (勝又委員)

 今の大滝委員の話にもつながることなのですが、国際的にいろいろな援助グループが各国から来ましたが、その中で、例えば医療関係の救援隊が分かったことは、今までの災害と日本の今回の災害は全く違うということだったようです。今までは、地震などで建物が潰れたりする被害で、いわゆる外科的処置が必要でしたが、今回は生き残られた、あるいは亡くなってしまったかのどちらかで、生き残られた場合、特に東北は高齢者の方が多くいらしたため、成人病などに対しては、自分たちの持ってきた医療器具が全く役に立たなかったという感想を持たれたことがあったようです。こうした新しい災害についてどのように対応したのかというようなことも、例えばNHKの国際放送を通じて、いろいろな国の方たちに知らせていただくことも1つのNHKの役割ではないかと感じました。

 (安田代行)

 今回の災害で、もう1つ原発の問題がありますが、やはり福島の風評被害は非常に大きくて、福島では、倒産する会社も続出するのではないかと恐れております。それで、福島のイメージをアップするためにも、NHKは何かできるのではないかと思います。例えば、ドラマなどで、そういう地域のイメージを図る戦略を、NHKとして視野に入れていっていただけるとありがたいなと思っています。

 (數土委員長)

 NHKは、地震だとか、例えば鳥インフルエンザだとか、風評被害に影響を及ぼす事故が起きたときに、報道を速く、正確にという一方で、風評被害のリスクはどれくらいあるかということも考慮し、やはり内部での体制をできるだけ早く取って、タイアップした報道を進めていってほしいと思っています。今、安田代行がおっしゃったのと同意見で、私も先ほどのような提案は検討していただけないかなと思います。事実を伝えるということが風評被害になっていってしまうということもあります。きのうも私は上海で日中韓3国の会議に出ていたのですが、いろいろ風評被害と言うけれども、日本のテレビが言っているではないかというニュアンスで話す人が非常に多くいるのです。もし可能であれば、できるだけそういう体制を取ってほしいと思います。

 (石島委員)

 少し違う観点からですが、塚田理事からご説明いただいた、ソーシャルメディアの活用ということでNHKが果たした役割として、おもしろいなと思ったのは、ブロードキャストとユニキャストのことです。ネットの世界というのはユニキャストを中心にしているので、公共性という概念はほとんどなかったのです。ソーシャルメディアをこのような形で活用することによって、NHKが通信の世界で“公共放送機関”としての役割を担う可能性があるのではないかと思っています。NHKには優秀な研究所もありますので、この辺をどのように今後のNHKの事業の中で展開していけばいいかということを、ぜひ考えていただきたいと思います。今回の件は、将来の経営に1つのヒントを与えてくれているのではないかという気がしましたので、お願いしておきたいと思います。

 (塚田理事)

 今回は特に停電が相次いでいましたので、どのような形でも、とにかく被災者に届くと思われるツールとして、放送はもちろんインターネットなどさまざまなものを手がけました。ソーシャルメディアについては、情報の信頼性がいろいろ議論されていますが、今回ご紹介した科学文化部のツイッターは、ある意味ではNHKブランドとして出すということで、そこでの信頼性を視聴者の方や利用者の方にも持っていただけたのではいかと思っており、今後も大事な役割かと思っています。

 (竹中委員)

 前回の経営委員会でも申し上げたのですが、このソーシャルメディアとの連携については、今回のNHKは本当によかったと思います。民放の技術者の方に知人が多いのですが、それまではNHKがこういうことをしようとすると警戒するような声もあったのに、今回は本当に脱帽だったと言っています。NHKがあのような動きをしてくれて、逆に自分たち自身も動くことができたというような声が非常に多かったので、とてもうれしく感じました。不確かな情報が流れるというのはネットの宿命のようなものなのですが、今塚田理事がおっしゃったとおり、NHKブランドとして出たことで、それに信頼性があるということは、他のメディアにも自分たちも信頼性のあるものを出さないと読んでもらえない、見てもらえないという流れができてきますので、震災に限らず、ぜひこの分野を今まで以上に推進していただきたいと思います。

 (石原委員)

 2月の視聴者対応報告の11ページに、受信料関係のご意見、ご要望への対応として、「苦情などへの対応の内訳」という表があり、そのあとに「業務改善に向けた取り組み」が記載されています。2月の1か月間で3,181件の苦情があり、その中身はいろいろ千差万別だと思います。まさにお客さまのほうがどうかと思うようなものもあると思いますが、NHKの職員ならびに業務委託のスタッフへの教育が極めて不行き届きで、見るからにお客さまが受信料を払いたくなくなるような対応をしているようなケースも恐らくあるのだろうと思います。こういった苦情などへの対応のしかたなのですが、基本的には当然のことながら、各局の営業部・センターで対応することになっていると思いますが、どのような対応をしているのでしょうか。どのようなケースがあるのでしょうか。明らかにこれはよくない対応というようなものもかなりあると思うのですが、そういったことを本部で捉えているのかどうかです。この3,181件という数字はものすごく多いと思います。数をきちんと把握していることは大変すばらしいことなので、これをいかに捉えて、対策を取っていくかということが、当然ですが受信料の支払率に一番影響することなので、これについてはいかがでしょうか。

 (大西理事)

 委託契約収納員が、全国で4,500人ぐらいおりまして、1人が1日に50件から60件ぐらい訪問しています。そういった中で、訪問の態度については、新人教育も併せてですが、ロールプレイングを実施する、あるいはドアのところでの訪問のしかたや言葉使いについて日常的に訓練をしています。3,181件のうち、委託契約収納員の訪問状況や説明不足等による苦情が1,251件というのは、相当減らしてきたのですが、さらに徹底していきたいと思います。委託契約収納員は月に3回程度、放送局に来てもらっています。その中で研修あるいは事例報告等を含めて改善を図っていきたいと思います。訪問状況や説明不足等による苦情については、営業部・センターから直接お客さまのところにお伺いするなどして、改めて説明をさせていただいています。訪問の態度で悪いところがあれば、一緒に委託契約収納員とお伺いするなど、対応をいたします。ゼロを目指すべきだと思いますので、研修等を実施していきたいと思います。

 (石原委員)

 この種の報告では、お客さまからいただいた苦情の件数が上がってくるわけですが、営業に行ったNHKの職員ならびに地域スタッフから、こういうことがあったとか、自分で申告するというものもあるのですか。

 (大西理事)

 委託契約収納員に対してはそのような制度はありませんが、法人委託事業者等では、ご契約をいただいたときの態度についてどうであったかということを、電話をして確認するということなども現在行っています。

 (石原委員)

 3,181件という件数はものすごく多いと思うのです。通り一遍の教育だけではなかなか減らないのであり、いろいろなやり方があると思うのですが、私どもJRの現場においても、お客さまとの接点は非常に多くあります。いろいろなノウハウや経験がありますので、もし参考になるのであれば、また別途ご説明したいと思います。やはりまず、地域スタッフが、本当に視聴者をお客さまだと思い、お客さまの立場になって考えることが大切なのです。そうすると、目つき、笑顔、あいさつなど、いろいろなところが違ってきます。それがいいとトラブルにならないということがあります。ひょっとしたら目つきだけでトラブルになってしまうこともありますので、お客さまを大切にする心の教育をしなければいけないと思います。お客さまにしてみれば、NHKの職員なのか、あるいは委託契約のスタッフなのかは分からないのです。地域スタッフから自己申告する制度はないということですが、それではやはりだめなのです。

 (大西理事)

 業務の報告日を活用してDVD等で研修をしたりしていますが、営業部・センターではそれぞれ工夫をしながら研修を行っているところもあります。それぞれの営業部・センターで講師をお招きするということもしています。件数を少なくするよう、ご指摘の点は改善していきたいと思います。

 (數土委員長)

 この件については、毎月あるいは2か月に1回、繰り返し議論していく時間が十分にありますので、2月・3月の視聴者対応報告についての意見交換はここで終了させていただきます。

 

 (6) 平成22年度契約・収納活動結果(資料)

 (大西理事)

 1ページをご覧ください。まず、放送受信契約総数の増加状況です。22年度は、新しい委託契約収納員の体制の定着や法人委託の拡大など、契約・支払い再開活動へのさらなるパワーシフトに取り組んできました。増加数は45.8万件、進捗率は130.8%となり、事業計画の35万件を達成しました。これは平成元年度以降、最も高い業績水準になっています。契約総数取次は、委託契約収納員が年間平均で前年を132人下回る中で、1人当たりの生産性の向上を図り、前年度と同水準を確保しました。また、法人委託等の取次は前年度比で7.4万件の増加を確保するなど、契約総数取次合計では、前年度と比較して14.9万件上回りました。一方、減少数は、口座振替の促進効果などによって、前年度と比較して8.1万件抑止しました。その結果、差し引きで前年度と比較して23.0万件上回る契約総数増加が確保できました。なお、障害者免除や公的扶助受給世帯などの増加による有料契約から全額免除への変更は、前年度とほぼ同水準の17.9万件となりました。
 2ページをご覧ください。衛星契約増加については、完全デジタル化の準備による衛星受信設備の普及拡大に連動した新規の衛星契約対策や地上契約から衛星契約への変更対策に重点的に取り組みました。セーフティネットによる衛星契約から地上契約への契約変更が1.2万件発生したものの、衛星契約増加は前年度を18.2万件上回る87.5万件、進捗率は134.6%となり、事業計画の65万件を達成しました。衛星契約取次数についても、委託契約収納員をはじめ、法人委託等や自主申出のいずれも前年度を上回っています。
 3ページをご覧ください。22年度の当年度収納額は平成15年度を超えて過去最高の6,531億円となり、前年度と比較して147.6億円の増収となりました。前年度受信料の回収額実績は65.7億円となり、年間計画の58.8億円を6.8億円上回りました。また、前々年度以前受信料の回収額実績は、前年度を19.1億円上回る43.2億円になりました。なお、前年度受信料回収額の当初計画を超えた6.8億円は特別収入、前々年度以前受信料回収額はすべて雑収入に計上されます。
 4ページをご覧ください。支払い拒否・保留数は22年度末で19.9万件となり、17年度第4期末のピーク時の128万件から108.1万件削減しました。未収数については26.3万件の削減となり、事業計画の20万件削減を達成しました。契約総数増加に未収削減数を加えた支払数の増加は72.1万件となり、前年度を36.8万件上回っています。
 最後に5ページをご覧ください。口座・クレジット支払いの増加数は前年度を17.3万件上回る72.4万件となり、事業計画40万件を達成しました。

 (數土委員長)

 先ほど報告いただきました「『平成21年度業務報告書』に付する総務大臣の意見」では、21年度の結果は効率的ではないとの意見でしたが、22年度は効率的になったということでしょうか。22年度の結果を総務大臣に提出するとした場合、「よくやった」と言われるということでしょうか。

 (大西理事)

 委託契約収納員の取次数は増加しましたが、それに伴い振替の手数料などを含めた手数料も増えています。経費率は現在の速報では11.9%になるのではないかと推計しています。

 (數土委員長)

 受信料の支払率は2つの大きな経営目標の1つに挙げられていますね。大変重要な報告をしていただいているわけですが、よりメッシュの細かな数字を執行部と経営委員会で共有することが必要なのではないかと思います。そうすることで、執行能力と経営能力の両方を高め、視聴者の皆さまに対して、より公平性・公正性を確保することを目指すべきだと思います。

 (大西理事)

 ご指摘のように、より細分化した情報を、今後ご報告できるようにしたいと思います。

 (數土委員長)

 総務大臣は、未払者、未契約者への契約収納活動を強化しつつも、契約収納関係経費の比率はまだ努力目標に達してないと言っておられるわけですから、どのように情報を共有し取り組んでいただけるか、もう一度検討していただきたいと思いますのでよろしくお願いします。

 (大西理事)

 分かりました。

 

 (7) 平成22年度収支決算の速報(資料)

 (石田理事)

 平成22年度決算につきましては、現在詳細にデータを点検・整理しているところです。本日は、現時点で取りまとめた概況を速報としてご報告します。この後、監査委員会や会計監査人の監査を受け、意見をいただくことになっています。4月12日の経営委員会で、今後の決算スケジュールをご説明したとおり、一連の決算の資料と説明についての公開は6月の決算確定後となりますので、ご了承をお願いします。
 資料をご覧ください。事業収入は6,839億円です。このうち、受信料は受信契約数の増加等により6,598億円となり、21年度決算額6,442億円に対して155億円の増となりました。事業支出は、効率的な事業運営を徹底しつつも、23年度の完全デジタル化に向けてデジタル追加経費を増額したことや、受信料確保のための取り組み強化を行ったことなどにより、226億円の増となりました。この結果、事業収支差金は37億円となりました。

 (幸田委員)

 長期資金の運用について、格付けの変更とそれによる運用のアロケーションの変更についての判断などはどのようになさっているのかをお伺いしたいと思います。

 (石田理事)

 長期資金については、NHKの場合は基本的には信頼性の高い債券の満期保有という形で運用しています。

 (數土委員長)

 定款でも、NHKは一般企業会計に準ずると書いてあります。一般会計基準であれば、時価会計、減損会計でどのような評価になっているというのも、確認が必要ではないかと思います。

 (幸田委員)

 時価評価については決算期にそのつどされるのでしょうか。

 (福井経理局長)

 保有する債券について、毎年、時価評価をして、決算書に銘柄を含めて記載しています。

 (幸田委員)

 時価評価をしていれば、そこで含み損が出る場合がありますね。

 (福井局長)

 そのとおりですが、現状では含み損は出ていません。

 (石田理事)

 これは監査委員会で全部チェックしていただいています。

 (井原委員)

 少なくとも会計基準に基づけば、保有目的に応じてその評価基準が定められており、満期保有目的の場合はその取得原価ということになっています。この処理は監査法人からも聞いています。監査委員会として、会計監査人ともう一度確認させていただきたいと思います。

 (數土委員長)

 今の議論についてですが、監査委員会で整理して提出をお願いします。それを踏まえて、執行部と経営委員会で議論の場を持ちたいと思います。

 (井原委員)

 今回の決算速報のご説明をお聞きして伺いたいのは、速報をどこまで今後出そうとしておられるのかということです。どこまで出すかというのは、この速報をどう活用するのかということと関係すると思うからです。このような状況になりますということの提供だけなのか、これに基づいて執行部、あるいは経営委員会で、何らかの経営判断をこの段階でしてくださいということなのかをお伺いしたいと思います。もし後者ならば、例えば予算との比較では、絶対額よりむしろ昨年のように増減率が示されたほうが経年的に分析しやすいなど、速報の出し方に関わります。もとより細かいことを指摘することが目的ではなく、この速報値によってどういうことを判断させようとしているのか、あるいは、どのように活用しようとして、この速報段階で出すべきだとお考えなのかをお伺いしたいと思います。

 (大西理事)

 ご承知のように、20年の秋にリーマンショックがあり、3か年経営計画は、それ以前に策定した計画としてスタートしました。21年度については10項目の追加施策で30億円の収入増を目指し、22年度のスタートにあたっては経営委員会からも、支払率あるいは収納額を高めるために、さらなる追加施策を打ち出すように言及され、経営計画に近づけるようさまざまな工夫をしてきました。一つ一つの施策を数年かけて実施してきたのですが、生活保護等の免除世帯も当初は年間4万件増加していくという予測で3か年経営計画を作りましたが、結果的には、今の状況でいくと3か年累計で50万件を超える有料契約から全額免除への変更があり、契約者が減ってきている状況を補完しながら増収構造を目指してきました。経費については議論があろうかと思いますが、その点だけはぜひご記憶していただけたらと思います。

 (井原委員)

 了解しているつもりです。私はいつも申し上げるように、事柄そのものがよかったとか悪かったとかの判断は数値の次だと思うのです。その数値によって何が分かるかということを、できるだけ明確な形で出していただきたいという意味です。速報値とはいえ、実際に決算値が出るのは6月の末ですのでその前に、この段階で判断材料となるような速報値に、さらに充実してくださいというのが、私が申し上げたかったことです。

 (石田理事)

 ご指摘については、大変よく分かります。例えば、今、営業でも営業経費率をどう下げていくかということはいろいろ検討していますので、それに向けてきっちりと対応していかなければいけないと思っています。完全デジタル化についても、ことし7月というゴールが決まっていますので、デジタル化のいろいろな対策を打っていかなければなりません。その部分に関しては、22年度を通じてデジタル化への対策が進んできているのだと思います。まだ十分でないところがあるので、7月に向けてきっちりと行わなければいけないということですが、3月に大震災があり、いろいろな施策が事実上中断しています。政府の方針が出て、3県については地デジ化を延期することが決まりましたが、逆に言えばほかの地域については予定どおり7月24日にアナログ放送を終了するということなので、もう一度ねじを巻き直して、7月24日の完全デジタル化ができるように全力を尽くしたいと思っています。

 (松本会長)

 要するに、これは速報値なので、赤字なのかそうではないのかは早く分からないといけませんので、早く作ったということです。前回の経営委員会でも數土委員長からそういう指摘がありました。これはあくまでそういうことで見ていただいて、分析についてはさらに行っていくつもりです。

 (井原委員)

 私もそのように理解しているつもりなのですが、傾向値として使えるところは早く使ったほうが効果的だと思っています。

 (金田専務理事)

 前任の立場から発言します。大きい要素は基本的には受信料収入です。これは予算を作ったときの前提より大きく上振れしています。それと同時に、受信料収入には計上していない21年度以前の受信料の収納分が特別収入、雑収入、合わせて50億円あります。ことしは大変景気も厳しいし、それから災害の免除もあって、予算よりも数字は相当下振れを覚悟せざるを得ないという状況の中で、この数字が出てきました。収入は確定数字まで動かないと思いますので、そういう意味では経営的には1つの安心材料だと見ていただけるのではないかと思います。もう1つは、固定資産撤去費用引当金の計上です。180億円ぐらいの規模だろうという大体の推定はついていたのですが、費用処理したときに黒字にできるかどうかということが大きなところだと思っていました。そういう意味では、完全に地デジ化したときに発生する181億円という費用を、将来経営的には若干苦しい方向に行く中で、今期で費用処理したうえで、黒字決算になる見通しだということです。この2つの大きなことがクリアできた決算になったということを速報で確認いただければよいと思います。

 (倉田委員)

 非常に基本的な質問なのですが、長期の運用資金について、どの商品をどれだけ買うというのはどこが決めているのでしょうか。特定の証券会社が入っているのでしょうか。

 (福井局長)

 経理局でいろいろ金融機関と相談をしながら決めています。

 (倉田委員)

 では、最終的には経理局の方々の判断で決めるということなのですか。

 (福井局長)

 そうです。

 (數土委員長)

 一般的な企業では、ファイナンシャルアドバイザーがいて、経理の人と相談して決めています。NHKの場合も執行部の了解で決めているのではないかと思います。

 (倉田委員)

 了解しました。

 (數土委員長)

 改めて申し上げますが、この件は、先ほど幸田委員から質問があった長期資金の運用について、監査委員会と石田理事でよくお話しいただいて、皆さんの納得できるような適切な形でこの場で報告していただきたいということが1点です。もう1点は、この決算の速報については、できるだけ経時的な変化が分かるように、しかもそれが経営としてできるだけ早くアクションを取れるように、示していただきたいと思います。経営委員会は経営の状況をより早く、より細かいメッシュでキャッチできるように、そしてそれによって執行部とよく話ができるように、両方が努力していきたいと思います。

 

 (8) 平成22年度第4四半期業務報告(資料1)(資料2)(資料3)

 (松本会長)

 決算の見込みについては、速報としてご説明したとおりで、今後精査していきます。また、営業の話題も議論されていますが、収入に関して言えば、関係者全員がよく頑張ったと思います。きのうも営業の会議を開催しましたが、頭の下がるような苦労をしています。22年度分はもちろんですが、その前年度、前々年度の未回収分も回収しながら、全体の収入を高めていくというように、大変努力していると思います。経費率の問題はありますが、収入のトータル額は非常に努力しています。受信料収入の決算は6,598億円の見込みとなっています。業務はどのような状況になっているのかというのが次の報告です。資料本編の1ページに目次がありますが、経営2目標である「NHKへの接触者率の向上」と「受信料の支払率の向上」を図り、これを踏まえた9つの経営方針の総括をしています。また、3月に東日本大震災が起こり、第4四半期のまとめを、「東日本大震災への対応」として別項目で総括しました。接触者率については、全体リーチの数値を記載しています。目標は3年後80%ということですが、現在は75%近くになっています。ただし、震災のときの接触者の広がりは91%〜92%台ということで、NHKに皆さんが圧倒的に依存されているという状況が見られます。受信料の支払率ですが、3年後75%を目標にしている計画で、22年度は73.4%を目標にしていたわけですが、これに対しては73.6%ということで、年間目標を達成し、収入が前年度に比べてかなり増加しています。それでは、報告書に沿って、石田理事からご説明します。
 (石田理事) 
 資料本編に沿ってご説明します。目次1は、「22年度事業運営の総括」、目次2は「経営2目標の達成状況」、目次3が、「経営9方針の年間総括」、目次4は、「東日本大震災への対応」に絞って取りまとめています。
 それでは、「22年度事業運営の総括」についてご説明します。3か年経営計画の2年目となる22年度は、「接触者率の向上」と「受信料支払率の向上」という経営2目標の達成を確実なものとするための重要な1年と位置づけ、取り組みを強化してきました。こういう中、年度の最後に未曽有の大地震が発生し、文字どおりNHKの総力を挙げて対応にあたっているところです。この東日本大震災では、災害時における公共放送の使命の重さ、それから新しいメディア環境下での情報の伝え方などを改めて考えさせられるものとなっています。経営2目標のうち「接触者率の向上」については、朝の「連続テレビ小説」を午前8時スタートとするなど、大幅な番組改定を実施したほか、NHKスペシャル「日本と朝鮮半島」のシリーズなど多彩な大型番組を放送しました。また、大河ドラマ「龍馬伝」やスペシャルドラマ「坂の上の雲」第2部などが、視聴者の皆さまから高い評価を得ました。22年度は参議院選挙、沖縄・普天間基地移設問題、それから宮崎県の口てい疫の問題など、地域を巻き込んだ大きな課題が相次ぎ、本部と地域放送局が緊密に連携し、報道を展開しました。この結果、接触者率は、11月の調査で、放送と放送外も含む全体リーチが74.9%となりました。このうち放送外リーチは21.2%となり、前年同月比で3ポイント上昇しました。次に、もう1つの経営目標の「受信料支払率の向上」ですが、22年度の目標を73.4%と設定し、契約・収納活動の強化に努めました。その結果、22年度の支払率は推計で73.6%となり、目標を達成しました。契約総数の増加は、目標の35万件を大きく上回る46万件でした。一方、完全デジタル化に向けては、22年度末までに、総務省が公表したロードマップで示された2,070局すべての中継局の開局を完了しました。しかし、今回の東日本大震災で中継局や共聴設備に被害が出るなどの影響が出ています。その後、政府は、岩手、宮城、福島の3県について、アナログ放送終了の延期を決めました。今後も震災の影響を十分に踏まえ対応していきます。3か年経営計画の最終年度となる23年度は、経営目標の達成に向けた仕上げの取り組みを進めることに加え、震災で明確になってきたさまざまな課題にしっかり応えていくことが求められています。
 次に、2ページの「経営2目標の達成状況」です。「NHKへの接触者率」は、NHK放送文化研究所が6月と11月の年2回調査し、公表しています。このページに接触者率の推移を表にして掲載しました。直近11月の数値は、表の一番右側に示したように、全体リーチが74.9%、放送外リーチが21.2%でした。全体リーチは1年前の11月と比べ若干低下しましたが、統計上の有意差はありませんでした。放送外リーチは、録画再生、NHKオンライン、動画配信サイトなどへの接触が増え、1年前に比べ3ポイント上がりました。23年度はBSの2波化と地上テレビ放送の完全デジタル化という大きな節目になります。テレビ4波の役割を明確にし、接触者率の向上を図りたいと思っています。また、東日本大震災でのネット活用の実態なども踏まえ、より多くの方にNHKの情報や番組に接していただけるよう工夫していきたいと思っています。「受信料支払率の向上」については、22年度末の支払率は73.6%となる見込みで、22年度の目標73.4%を超えました。受信料については、後ほど方針8の総括でご説明します。
 続いて、3ページの「経営9方針の年間総括」です。経営計画で掲げた9方針ごとにポイントを絞ってご説明します。方針1は、「視聴者のみなさまの信頼を高めるため組織風土改革に全力をあげます」です。ページの右側に記載していますが、22年度はより身近なお客さま窓口となることを目指して、新たに「NHKふれあいセンター」を開設し、運用を開始しました。一方、10月には大相撲取材をめぐる不適切な事案が発覚しました。これを受けて全国の報道現場で緊急討議を実施し、報道局全記者を対象にした倫理研修も実施しました。コンプライアンスの徹底に関しては、引き続きさまざまな角度から再発防止に向けて取り組みたいと思っています。
 続いて4ページの方針2「日本の課題、地球規模の課題に真正面から向きあいます」です。方針2からは、方針ごとに設定した数値目標を中心に総括しました。各方針の冒頭の赤い枠で囲んだ部分に目標の達成状況を記載しました。方針2では、NHKの放送に対する評価の5つの指標の改善を目標に掲げています。22年度の平均では、特に「親しみ」の肯定的な評価が53%となり、経営計画の目標としている50%を上回って、調査開始以来最高となりました。この間の放送の取り組みについては概要を記しています。23年度は、4月から2波化された衛星放送のBS1とBSプレミアムの定着を図り、地上波と合わせたテレビ4波の個性を発揮し、接触者率80%の目標達成を目指したいと思っています。
 次に、5ページの方針3「放送・通信融合時代の新サービスで公共放送の役割を果たします」です。この方針3の数値目標は、接触者率の向上です。これについては、すでにご説明したとおり放送外リーチは着実に上昇しています。NHKオンデマンドは、特選見放題パックの導入など、年度を通じてさまざまな施策を実現した結果、売り上げ、PC会員数ともに右肩上がりで増加し、売り上げは前年度の約2倍の5.5億円となりました。しかし、番組の配信に要する権利処理関係の費用などを賄うには足りず、目標としていた24年度の単年度黒字化は、25年度に1年先延ばししました。
 次に、6ページの方針4「地域を元気にするための拠点となります」です。全国53放送局は、この1年間、「放送局のちから」としてそれぞれ目標を掲げ、報道、番組やイベント、3-Screens 展開などに積極的に取り組み、地域での存在感を高めてきました。中段の項目で放送番組を軸とした取り組みを記載していますが、札幌放送局では知床の豊かな自然や人々の暮らしを伝えるキャンペーンを展開、仙台放送局はふるさとの食材を使った料理対決番組を全国に広げました。各放送局は23年度もそれぞれ「放送局のちから」として目標を掲げ、地域に密着したサービスの実現に向け動き出しています。
 続いて、7ページの方針5「日本を、そしてアジアを、世界に伝えます」です。方針5の数値目標は、「NHKワールドTV」の視聴可能世帯数の増加です。22年度は、24時間視聴可能世帯が1億3,655万、それから一部時間視聴可能世帯が7,700万に達し、目標を上回りました。NHKのコンテンツを海外に届ける取り組みは順調に推移しています。
 続いて8ページ、方針6「円滑な完全デジタル化に向けて重点的に取り組みます」です。冒頭でご報告したとおり、デジタル中継局の整備は総務省のロードマップに記された2,070局のすべてを開局させました。中継局と共聴施設を合わせた世帯カバー率は、当初計画した99.5%を達成しました。また、ページ右側の中段以降に記載しましたが、アナログ終了に向けた周知活動についても、年度を通じて段階的に強化してきました。東日本大震災はこのデジタル化にもさまざまな影響を与えています。今後もこうした影響を見極めながら、国や民放連などと連携して対応していきたいと思っています。
 次に9ページ、方針7「構造改革を推し進め効率的な体制で受信料の価値をより大きくします」です。昨年6月に「視聴者視点によるNHK評価委員会」が、コストに見合う成果をどの程度実現しているかを示すVFM(Value for Money)という指標の調査結果を公表しました。経営計画ではこの指標の向上を目標としていますが、前回調査の19年度1.66に対し21年度は1.71に改善しました。22年度については、6月に結果が出る予定です。また、経営資源のシフトについては、放送サービスの質を高めるため、放送部門にヒト・モノ・カネの経営資源のシフトを着実に進めました。23年度も計画に沿って、報道・ジャーナリズムの強化や地域の取材・制作体制の強化など、放送の充実に向けた経営資源のシフトを進めることにしています。
 続いて、10ページの方針8「受信料を公平に負担していただくための取り組みを強化します」です。前段でもご説明したとおり、22年度末の受信料支払率は年間の目標を0.2ポイント上回る73.6%(推計)となりました。一方、営業経費率は、21年度末と同じ11.9%程度となる見込みで、目標の11.4%には至りませんでした。受信料の契約については、中段の表のとおり、22年度は訪問集金廃止後の新たな契約・収納体制の一層の定着と強化を図り、契約総数は年間増加目標の35万件を大きく上回る46万件の増加となりました。衛星契約についても、65万件の増加目標に対し87万件と、大幅な増加となりました。この結果、受信料収入は予算を大きく上回り、前年度に比べ155億円増加し、6,598億円となる見込みです。
 最後は、11ページの方針9「環境経営に着実に取り組みます」です。NHKではCO2削減について、24年度に、基準となる18年度実績より12%改善することを目標にしていますが、22年度は7%改善する見込みとなっています。東日本大震災による原子力発電所の事故などで、この夏の電力需要のひっ迫が予想されています。放送機能の確保と節電施策について検討を進めているところです。22年度の年度を通じた業務報告は以上です。
 続いて、12ページ以降に22年度1月から3月の業務報告として、東日本大震災に対するこの1か月の対応についてご報告します。まず、13ページは、地震発生当初の報道についてです。左の下の表をご覧ください。NHKでは、地震発生直後にテレビ・ラジオの全8波で緊急地震速報を伝えました。発生から2分後には地震と津波に関するニュースを全8波で開始し、午後6時台には教育テレビとFM放送で安否情報の放送を始めました。総合テレビ、衛星第1、ラジオ第1では、地震発生から8日間、24時間体制で震災報道を続けました。総合テレビで放送した震災関連のニュースや番組は、1か月でおよそ572時間に達しました。ページの右側に2つの表を掲載しています。上の表は、地震発生から1週間でどのような放送サービスを行ったのか、国内放送の8つの波と国際放送について概要を示したものです。下の表は、データ放送やインターネットなど放送外のサービスについてまとめたものです。
 続いて、14ページをご覧ください。「安否情報」は地震発生から1週間放送し、放送時間はおよそ57時間、紹介した情報はおよそ1万件にのぼりました。放送だけでなく、データ放送でも情報を伝えました。障害のある方々に向けた放送については、地震関連のニュースにできる限り字幕を付けて放送し、地震発生から1週間で通常の2倍にあたるおよそ41時間、字幕を付けて放送しました。また、教育テレビの「NHK手話ニュース」の放送枠の拡大なども行いました。続いて、ページ右側の震災関連番組です。3月19日以降、定時番組を段階的に再開した後も、「NHKニュース7」や「ニュースウオッチ9」などのニュース番組は放送枠を拡大し、震災関連情報を伝えました。また、「NHKスペシャル」はそれまでの取材をせき止める形で毎週放送したほか、「クローズアップ現代」も時間を拡大して放送しました。さまざまな番組を通じ震災報道や被災地に向けた情報発信を今後も続けていきます。続いて、国際放送の対応です。国際放送でも、地震発生直後からほぼすべての時間帯で震災関連のニュースを放送しました。世界の主要な放送局が、「NHKワールドTV」を引用したり映像を活用したりして報道し、海外からも高い評価を得ました。
 次に15ページでは、まずインターネットの活用をまとめています。被災地などでテレビを見られない方々に災害情報をお届けするため、今回初めて総合テレビのライブストリーミングを実施しました。「ユーストリーム」、「ニコニコ生放送」、「ヤフー」といった動画配信事業者を通じて、総合テレビや教育テレビの放送がインターネットでも視聴できるようにしました。インターネット配信を通じた視聴は、3月末までの推計で延べ3,630万回にのぼりました。このページの右側は被災地での地域放送についてまとめています。仙台放送局では、地震の揺れで放送会館の一部が被害を受け、水道・ガスの供給が止まるなど、厳しい状況となりましたが、地域放送の枠を大幅に拡大して、東北ブロックや宮城県域に向けて被害の状況や避難所情報、生活情報などを伝え続けました。福島放送局では、地震や津波による被害の情報に加え、東京電力福島第一原発の状況や各地の放射線量などを詳しく伝えたほか、県外に避難している方も多いことから、県域向けのラジオ放送をインターネットのオンデマンドサービスで提供し、県外からも聴けるようにしました。
 続いて、16ページです。取材・放送体制、関係施設の被害については説明を割愛します。ページ右側の中段に示していますが、今回の大震災の報道に対する視聴者からのご意見・お問い合わせは、3月末までにおよそ6万2,000件でした。「不安をあおることなく、公正に報道している」、「原発事故に関する解説委員の説明が分かりやすい」といったご意見がありました。また、ライブストリーミングを利用した方からは、「停電でテレビが見られない中、インターネット経由で情報が提供され役立った」など、今回の対応を評価するご意見が寄せられました。今回の経験をもとに、災害時に公共放送が果たすべき役割の重さを改めて認識し、緊急報道にインターネットなどの新しいメディアをどう活用していけばよいかなどをしっかり検証していきたいと思っています。
 (松本会長)
 この第4四半期は、先ほどの決算の速報と同様に、年度末の追い込みということですが、それぞれの項目に沿って実施していたところに災害が起こったということです。災害発生後は、それに対応を集中していましたが、それについてはいろいろと各方面からの評価を受けています。NHKに対する信頼というのは、通常の業務を行っている以上に、このような対応に集中することによって評価が上がったと思います。また、例えばアナウンサーの場合、現場に行って取材して放送するアナウンサーや、実際にこの放送センターで対応しているアナウンサーのそれぞれが、先ほどの事柄について、視聴者がパニックを起こさないように、あるいは風評被害をどのように防止するかなどを考えて対応しています。今度の災害は単なる災害ではなく、被害が大きいことと同時に、それから派生するさまざまな形態へと続いていきます。原発の問題は別としてありますが、最終的には経済の問題、それから風評被害は、日本だけではなく世界にも広がっているということがあります。それからもう1つ、先ほどこういうところを見逃してはいけないというスポットについての話がありましたが、実際にそういうところですごく困っている方がいると、一人でも何とかしてあげたいということで、アナウンサーがアナウンサーの立場でそういうことを考えながら放送しているのです。そういうような中で、職員一人一人が考えながら対応しているということが、今回の第4四半期について総括的に言えることではないかと思います。

 (數土委員長)

 5ページにある方針3の「放送・通信融合時代の新サービスで公共放送の役割を果たします」は、非常に重要なことだと思います。放送外リーチは6月20.9%が11月21.2%で、着実に数値が上がったという記載がありますが、2ページのNHKへの接触者率では、1年前よりも下がったのに有意差はなかったとあります。これは統計的に少し欺まんがあるのではないかと思います。都合のいいときだけ有意差があって、そうでないときは有意差が認められなかったというのはいかがかと思います。もし、放送外リーチに有意差があるのであれば、接触者率のほうは下がっていたと言うべきではないかと思います。

 (勝又委員)

 四半期業務報告についてのことではないのですが、発言します。方針3の放送・通信融合時代の新サービスに関連して、オンデマンドの話もありますが、NHKのアーカイブをもっと放送に有効に活用されてはどうかと思います。きのう、BSで「桜紀行」という番組が夜中に3時間にわたって放送されており、大変すばらしい番組でしたので、ずっと見続けてしまいました。今放送している「NHKスペシャル」のような番組は、目まぐるしく動く世の中のいろいろな事象に対してスペシャル番組を作っておられ、それはそれで重要ですが、10年くらい前の放送には、もっと日本人の精神性に根づいた、ゆったりとした余裕のある番組もあったように思います。今回の震災のとき、海外の方が日本についてどういう感想を持ったかというと、日本人の精神の中にある復活や再生に向けた力強さや精神というようなものだったのではないかと、きのうの「桜紀行」を見ていても思いました。山間地の桜を、27戸ぐらいしかない人たちが大切に守って、歳時記のように桜とともに大切に生きている姿に感動しました。オンデマンドは自分から何か探していかないとなかなか難しいのですが、BSプレミアムで、NHK自身がこのような番組をもう少し定期的にアーカイブの時間のような形で放送されるといいのではないかという感じを持ちました。

 (新山理事)

 BSでは、今年度の編成で、夜間ですが、いろいろとアーカイブで放送するコーナーを特別に設けていますので、内容によっては、いろいろな問題への対応が必要となる場合への枠は確保しています。それから、今おっしゃったように過去にいろいろな番組を作っていますが、それを今の視点で見つめ直して、もう一度編成し直すということは非常に大切だと思っていますので、その仕組みは早急に作っていきたいということで、現場は動き始めています。また、昔の大河ドラマをもう一度放送するというようなことも検討しています。例えば「樅の木は残った」のような大河ドラマですが、これは視聴者の方が持っていらっしゃったテープをまた集めて、NHKに残っていた総集編の前編と後編をそれに挟みながら放送していくというような、双方向性のアーカイブスの在り方というのを模索しています。

 (數土委員長)

 NHKオンデマンドは、もう少し収入を増やさないとだめだと思います。

 (松本会長)

 NHKオンデマンドの収入は伸びてはいるのですが、まだ伸びは少ないですね。3,000本ぐらいアーカイブを集積しているのですが、1本1本、全部に権利処理が必要なのです。すでにお亡くなりになられた方もいて、相続者とも交渉しなければならないなど、民放でも大変困っていて、権利処理の問題がもう少し単純になると、もっと違うと思います。

 (數土委員長)

 オンデマンドで提供するということが、30年前から分かっていれば、権利処理をきちんと行っていけたのでしょうから、その辺が少し至らなかったところではないでしょうか。これから新しいビジネス展開を考えていくときに、どういう著作権を持つかということも本当に考えてもらわないといけないと思います。

 (松本会長)

 そうですね。これから作るものは、事前にそういうものを包括して契約できればと考えています。そうすると、最初は権利料が高くなるのですが、あとの権利処理は楽になるということです。今のアーカイブというようにNHKが今まで作ってきたものは、過去の資産であり、価値のあるものだと思います。権利処理の問題がありますが、さらに付加価値を高めるということは、重要なことです。

 (數土委員長)

 そういうことを事前に考慮して経費を計上することが、将来の一層のNHKの事業運営の健全化につながり、視聴者の要望に応えることだと思います。視聴者はやはりそういうことを望んでいると思います。

 (倉田委員)

 4ページにある、「無縁社会」などは、私もとても興味深く拝見しています。書籍でも読んだのですが、NHKが作った「無縁社会」を書籍化した本なのに、NHK出版ではなくて、違う会社から出版されていたと思います内容的にもすばらしいですし、時代を象徴する造語として独り歩きするような内容でNHKのせっかくいいコンテンツなのに、書籍にするときになぜ全然関係ない会社から出版されているのかなと思いました。「ワーキングプア」なども確かそうだったのではないかと思うのですが、以前から少し疑問に思っていたことです。

 (冷水理事)

 実は、多数の会社から出版化したいという要望がありまして、コンペを実施して、最も効果的に価値を最大化していただくということでその出版会社と契約しました。

 (幸田委員)

 そういうときは、出版社から、著作権の二次使用に対する使用料は徴収されているのですか。

 (冷水理事)

 もちろんいただいています。

 (幸田委員)

 それはどのくらいですか。

 (冷水理事)

 それぞれ規定の使用料がありますので、その制度に則した形でいただいています。ちなみにコンペにはNHKの関連の出版会社からも応募をいただいたのですが、今回の場合は、より魅力的な提案があったということで他社と契約させていただきました。そういう透明性・公開性も重要だと認識しています。

 (井原委員)

 業務報告のあり方について少しご検討いただけたらと思うことがあります。業務報告については、どのように四半期ごとの報告を行えばいいのだろうとこの制度導入の当初にずいぶん執行部と経営委員会との間で議論しました。試行錯誤を重ねながら分かりやすいものになっていると認識しています。そういう意味で努力し、工夫していただいていると、期待値がどんどん大きくなっていきます。これまでと比べて、22年度総括で、方針ごとの達成状況と併せてそれぞれに課題・今後の取り組みを記載していただいています。今後の取り組みは、恐らく1月に議決した事業計画の骨格となるものであると同時に、まさに今後の取り組みとして、東日本大震災に絡んで今後こういうことが課題になるという内容も織り込まれていて、非常によくご検討いただいていると思います。ただ、先ほどもの総務大臣からの意見などにもありましたが、営業経費について、今後、収納体制について75%の達成に向けて努力するということは記載されているのですが、課題としてその比率削減については何も触れておられません。字幕付与については、あちこちで言及されているのですが、目標が達成できていないことを課題にするというような付言がありません。恐らくここに記載しなくても実行していただけるものとは思っているのですが、せっかく1年間を総括して、課題や今後の取り組みを今回初めてここに記載するようになったのだとすれば、網羅して触れていただきたいと思います。

 (松本会長)

 四半期業務報告としてこれだけ詳しいものはほかにないと思います。それはそれでいいのですが、その辺はポイントを絞ったほうがいいのではないかというのが私の印象です。それから、読まれる経営委員の方もなかなか大変ではないかという気もするのですよね。どういう書き方にしていくかということですが、どんどん増えていって、これだけが膨らんできたということですので、必要なものを必須に書くという形がいいのではないかというのが私の意見です。

 (井原委員)

 私の理解では、さらにブラッシュアップしたらいいと思うのです。ここまで試行錯誤を重ねて経営計画に基づき整理されてきたと思います。ただ、書き込み方として、ここまで詳しい必要があるのかどうかということは、次の課題だと思います。私が今申したのは、今回の記載として、課題・今後の取り組み部分は、次に向けて何をするのかという大事なことですので、ここのところはぜひ、きちんと記載していただきたいという希望です。

 (松本会長)

 やはり経営計画は年間を通して実行していくというわけですから、例えば、半期、半期で実績はきちんとトレースしないといけません。

 (石田理事)

 この第4四半期業務報告は、22年度の1年間をまとめて記載したということです。今、会長が説明したように、あまり詳しくても、作業ばかりで大変ではないかなど、いろいろあるのですが、会長の職務の執行状況を3か月に1回以上、経営委員会に報告するということが放送法で決まっています。もう1つは、ホームページで公開していますので、視聴者の皆さんにNHKとしてどういう業務を行っているかということの説明責任を果たす役割があります。さらに、NHKの職員にとって、自分たちがどういう目標を立てて、どれだけ物事が進んでいて、PDCAサイクルが回せているかという観点で、1つの文章にまとめていますので、その全部を満たすのに、あまり細かくしても、簡単にし過ぎても視聴者のためにならないということで今回はこういう形でまとめています。これが完全ではないと思いますので、ご意見を聴きながら記載方法をさらに研究していきたいと思っています。あんまり膨大になるのはどうかとは思っています。

 (松本会長)

 経営委員会はやはりこの業務報告を見ていろいろな判断をするということで、委員の皆さんには、十分な時間がおありになるわけではありませんので、そういう方々に分かるような資料で説明したほうがいいと思っています。問われることは必ずどこかに記載してありますということであれば、どのようにでも書けるのですが、多分消化不良になると思いますので、分かりやすくまとめようということも話しています。

 (數土委員長)

 私の感じるところでは、テレビ放送を主体とする事業者の業務報告にしては文章が多過ぎるという印象です。今説明していただいたものは、文章が多いのです。NHKなのに、どうしてニュースの解説などのように簡明に書いてもらえないのかと思います。就任して本当に不思議に思ったのですが、執行部の皆さんの説明ももう少し視点・論点をまとめて、ニュースのように15分ぐらいで行ってもらいたいと思います。また、9つの方針がありますね。これはやっぱり方針として掲げる以上は、できるだけ定量化してもらいたいと思います。それはなぜかと言えば、経営2目標にある接触者率というものは、NHKがどう思われているのか、どのような評価を受けているかということは定量化できないので、こういう調査を導入することによって定量化しているわけですね。ですから、9つの方針についてもできるだけ目標を定量化ができないものだろうかと思います。定量化しないのであれば何を行っているのかを記載しないとだめで、われわれとしては、定量化されてないことにより、もうひとつ信用できないということです。それで、言葉で有意差があるとかないとかいうことになると、それは困るということです。したがって、目標に掲げるのであれば、やはり定量化してもらったものをコンパクトな図で示すなど、1つの方針について1つか2つのグラフを経時的に示してもらえば、それで十分なのだと思います。文章を書き直してはまたチェックしてまとめるのはもう大変なことで、相当苦労して作っておられると思います。こんなところで苦労しても、何も収益や評判に影響がないということは、貢献していないのではないかと思ってしまいます。数字で表すということを、検討していただけたらと思っています。

 (塚田理事)

 1点よろしいでしょうか。今の経営計画を作るとき、私は経営企画局長で、当時の経営委員会とかなり議論した結果、こういう形での報告となりました。当時の経営委員会からは、細部にわたって毎回報告してほしいという項目の要請があり、その結果、こういう形になっています。本来どういう形がいいのか、今後にふさわしいのかというのは、ぜひまた率直に議論したうえでまとめていけたらいいのではないかと思います。

 (石原委員)

 要点だけ、箇条書きにしたらいいのではないでしょうか。それをできるだけ数字で記載して、言いたいことを箇条書きにするなどです。

 (金田専務理事)

 NHKの番組系は6か月クールと言いまして、6か月での管理なのです。民放は3か月管理が結構多いのですが、NHKは6か月で回しています。3か月以内に報告しなさいと放送法には書いてあるのですが、報告は、月次あるいは2か月に1回ではどうかと思います。例えば、営業だと1か月分の1,345円を集めていなくて、2か月分の2,690円を集金しているわけです。そうすると、数字自体が1か月では不確実だったりしますので、3か月以内ということでは、NHKの場合はオペレーションでいうと2か月に1回が適切かなという感じがしています。3か月以内に報告しなさいというのが、四半期報告という形になってしまったのは、経営委員会と議論のうえでなったのですが、実際のオペレーションサイクルが6か月か2か月であるということからすると、もう少し簡明なものにするのが適切だと思います。それから、実務の報告は、今、石原委員がおっしゃったように、もう少しポイントを絞って、数字もきちんと入れて報告すべきということです。今の段階では、業務報告をもって法的に対応するということになっていますので、方向としては、6か月と12か月という方法もあっていいと思っています。3か月というより、やはり2か月に1回ぐらいで、今の形ではない何らかの報告に、話し合いをしながら少しずつ変えていくのがいいのかなと思っています。

 (石原委員)

 今回の東日本大震災もそろそろ復旧から復興に入っていくわけですが、日本は震災以外にも、多くの難しい課題を抱えています。例えば年金あるいは財政問題あるいは経済が成長しないことや、教育などいろいろなことがあります。これだけの災害が起こって増税論も出ていますが、ある意味でこれは貴重な機会なのだと思います。論説が社説と考えれば、NHKの論説として、この大災害の復興に合わせて日本の今までのいろいろな難しい課題をすべて解決していくのだというようなスタンスに立つべきではないかなと思うのです。つい最近、某新聞にそういう話が掲載されていましたが、全く賛成で、NHKがこれからどう考えていくのか、復興についてどう取り組んでいくのかについて説明をいただきたいと思います。

 (浜田委員)

 監査委員会のヒアリングでも会長にお伝えしたのですが、震災関連については、NHKには、かなりの事実の集積があると思うのです。そういう中で、特に原発についてはいろいろな問題点も指摘されているわけですが、NHKはジャーナリズムとして、検証に取り組んでいただきたいと思っています。日本は今いわゆる閉塞状況にあって、何とかしないといけないということについては、たぶんコンセンサスが取れていると思います。ある意味では、ピンチをチャンスに変えて日本を何とかしていきたいというコンセンサスがあるのではないかと思います。そういう意味では、ジャーナリズムの原点に立って、検証番組みたいなものに早目に取り組んで、議論に資するような形で提供していただくということも考えていただけたらどうかと思います。石原委員のご意見と少し違うところもありますが、同じ視点での意見です。

 (冷水理事)

 今、いただきましたご意見は、まさにそのとおりだと認識しています。私どもは、これからはやはり徹底した事実の検証、それに基づく提言、そしてそれを世界に発信していくというスタンスで臨んでいきたいと思っています。これはNHKを挙げての取り組みになる部分もあると思うのですが、まずそのコアになるプロジェクトを局内ではすでに立ち上げています。これからが正念場だと思って取り組んでいきたいと思います。

 (新山理事)

 制作局内でももう議論が起こっていまして、今まで報道局、制作局のそれぞれが問題にあたってきていますが、例えばエンターテインメント番組を制作しているチームも、今回の震災を経験して、われわれの役割は何だろうかということも含めて議論していますので、一緒に束ねる形のプロジェクトになっていくと思います。ぜひご期待ください。

 (金田専務理事)

 本当に歴史的分水れいというか、大きく時代、精神が変わるところに来ていると思います。すでに弾込めしてしまっている部分もあるわけですが、新しい目で検証したうえで放送していくことや、もう1つは、先ほど検証や提言ということがありましたが、NHKのグローバルな認知度は、CNNが湾岸戦争のときにブランドイメージが上がったくらい、いい方向で大きく動いたと思っています。同時に、今回起こったことを通して次にお役に立てるのは何かという議論をしっかり起こしていくためには、やはり事実の確認から始まるのだと思います。報道局、制作局、編成局もそうなのですが、放送総局の中で、全体として何かプロジェクトというものを今後考えていき、NHK全体でそういう体制を組んで議論することが必要ではないかと思っています。創意というか知恵を集められるような仕組みを作りたいと思っています。

 (幸田委員)

 日向専務理事がいらっしゃるときに、「ジャパンシンドローム」というシリーズ番組を作るというお話をされていましたよね。あのときも、期待していました。まさに今おっしゃっている日本が抱えている根本的な問題が、すべて根っこはつながっていること、財政や年金問題も、今回のエネルギー問題もそうですが、そういう意味で今おっしゃったことは大変ありがたいと思います。と言うのは、コメンテーターとして番組に出演したり、いろいろなところで発信するときに、非常にヒステリックになっている世の中の状況があります。でも、視野狭窄や、思考停止になってはいけないと思うのです。むしろ、ここから大きく日本が変わらざるを得なくなっていて、これを前向きな転機と捉えていくことが非常に大事なことだと思っています。一方で、例えば環境産業を見れば、3月の都内ホテルの稼働率が50%を切ってしまったことなど、原発被害が日本経済に与える二次被害みたいなものが現実化してきています。例えばNHKのニュースで都内の風景が放送されるとき、マスクをする習慣のない国では、原発の放射性物質の問題がこんなに深刻だから、マスクをしないと生きていけないのだと受け止める人がたくさんいるわけです。日本人の感覚だと、インフルエンザの予防や花粉症対策かもしれないのに、それをそのままの映像で海外に伝えた場合には別の見方をされるわけです。これは1つの例なのですが、日本の国内に向けてだけでなく、世界に向けてこれが日本の現状ですとNHKが伝えるとそれが日本を評価するひとつの尺度になってしまうので、そういう自覚のもとに、これを機に日本を変えていくというリード役にぜひNHKがなっていただきたいですし、それによってわれわれも本質的な議論ができるようになるので、その辺はぜひお願いしたいと思います。

 (松本会長)

 みんなが日本のためにという気持ちで考えているということはまさにそのとおりです。やはりNHKは日本の公共放送ですので、頂いたご意見も受け止め、公正・公平ということを念頭に置き、冷静にいろいろ議論しながら、NHKの役割を果たしていくことが必要だと思います。そういう意味では、今回の震災などを通して、みんながNHKの役割というものをきちんと自覚しつつ、今後いろいろ取り組んでいきたいと思います。

 

 

 以上で付議事項を終了した。

 

 上記のとおり確認する。

 

 平成23年6月28日    

數 土 文 夫

 

井 原 理 代