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第1117回
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平成22年5月28日(金)公表
  ※2 報告事項(7)平成21年度収支決算の速報 は平成22年6月25日公表

日本放送協会第1117回経営委員会議事録
(平成22年4月27日開催分)

第1117回 経 営 委 員 会 議 事 録

<会 議 の 名 称>

第1117回経営委員会

 

<会 議 日 時>

平成22年4月27日(火)午後3時05分から午後5時35分まで

 

<出 席 者>

〔委  員〕

  小 丸 成 洋 岩 崎 芳 史 井 原 理 代
    大 滝 精 一   勝 又 英 子 桑 野 和 泉
    小 林 英 明   飛 田 稔 章 野 間 光輪子
    深 谷 紘 一   安 田 喜 憲
  ◎委員長 ○委員長職務代行者(以下、「代行」という。)

 

〔役  員〕

  福 地 会 長 今 井 副会長 永 井 技師長
  金 田 専務理事 日 向 専務理事 溝 口 理 事
  八 幡 理 事 大 西 理 事 今 井 理 事
  黒 木 理 事 塚 田 理 事 吉 国 理 事

 

 

<場   所>
放送センター  21階役員会議室

 

<議   事>

 経営委員意見交換を実施。その後、小丸委員長が開会を宣言し、本日の付議事項および日程について説明。第1116回経営委員会(平成22年4月13日開催)の議事録を承認し、所要の手続きを経て、平成22年4月30日に公表することを決定。第1117回経営委員会(平成22年4月27日開催)議事録を第1119回経営委員会(平成22年5月25日開催)で承認することを確認。

 

付議事項

1 議決事項

 (1) 中央放送番組審議会委員の委嘱について(資料1)(資料2)

 (2) 地上デジタルテレビジョン中継放送局の設置計画について(資料)

 

2 報告事項

 (1) 地上デジタルテレビジョン中継放送局の開局について(資料)

 (2) テレビジョン中継放送局の廃局について(資料)

 (3) 視聴者対応報告(平成22年3月)について(資料)

 (4) 国際関係業務を行う新会社の発足について(資料)

 (5) 地方放送番組審議会委員の委嘱について(資料)

 (6) 平成21年度契約・収納活動結果(資料)

 (7) 平成21年度収支決算の速報(資料)

 (8) 平成21年度第4四半期業務報告(資料1)(資料2)(資料3)(資料4)

 (9) 「NHKワールドTV」の視聴実態調査の結果について(資料)

 

 

議事経過

 

1 議決事項

 (1) 中央放送番組審議会委員の委嘱について(資料1)(資料2)
 (日向専務理事)
 中央放送番組審議会委員として、平朝彦氏(独立行政法人海洋研究開発機構理事)を平成22年5月1日付で新規委嘱したいと考えますのでご同意をお願いいたします。略歴は別紙のとおりです。

 (安田委員)

 この方は人格的にも大変すばらしいし、学問的にも非常にすぐれた業績を出しておられ、かつ放送番組にも強い関心をお持ちですので、適任ではないかと思います。

 採決の結果、原案どおり議決。

 

 (2) 地上デジタルテレビジョン中継放送局の設置計画について(資料)
 (永井技師長)
 今回は検討を進めてきた中継局のうち、41都道府県の274地区のデジタル中継局の設置についての提案です。また、第1111回の経営委員会において議決した琴丘入通と、第1092回の経営委員会で議決した五木の2地区については、共同受信施設への加入により受信者が皆無となる見込みが得られましたので、中継局の設置を取りやめることといたします。これらの中継局の整備により、新たに8万世帯で地上デジタル放送が視聴可能となり、電波カバー率は計算上では98.0%となります。これらの経費は93億円と見込んでいます。既設設備の活用、民放との共同建設などによって引き続きコスト削減に努めていきます。今回、設置計画が承認されたら中継局の免許申請手続などの準備に入ることになります。

 (小丸委員長)

 アナログ停波まであと453日ですが、ほぼ順調にいっていると考えてよろしいでしょうか。

 (永井技師長)

 計画どおりにいっています。

 採決の結果、原案どおり議決。

 

 

2 報告事項

 (1) 地上デジタルテレビジョン中継放送局の開局について(資料)
 (永井技師長)
 これまで経営委員会において議決された設置計画に基づいて建設を進め、本年1月1日から3月31日までの間に開局した160地区の中継局の報告です。各局の送信出力、チャンネル、世帯数などはお手元にお配りした資料のとおりです。今回の160地区を加えると、21年度は606地区が開局して、平成22年3月までに1,391地区のデジタル放送局が開局したことになります。この結果、3月末全国視聴可能世帯数は4,835万世帯、電波カバー率で97.5%ということになります。建設に当たって、既設のアナログ施設の活用や共同建設などによってコスト削減を進めました。160地区の経費は62億円です。21年度の整備の数は、約600局を目標にして進めてきましたので、この目標をクリアしたということになります。

 

 (2) テレビジョン中継放送局の廃局について(資料)
 (永井技師長)
 次はアナログのテレビ中継局の廃局です。総合テレビ6局、教育テレビ6局を廃局しました。このうち4局は、NHKの単独です。いずれの局も開局当時は一定数の受信者がいましたが、自治体が運営する共同受信施設等への加入が進んだ結果、受信者が皆無となったということが確認され、さらに地元自治体からも承諾をいただいて廃局としました。

 

 (3) 視聴者対応報告(平成22年3月)について(資料)

 (今井副会長)
 資料に沿ってご報告します。4ページをご覧ください。3月にNHKに寄せられた視聴者の声の総数は、42万4,387件です。2月よりも5万6,000件余り増えました。これは、進学や転勤などで住所を変えたことによる受信料に関する問い合わせ、それから3月29日からスタートした新番組への問い合わせなどが増えたことによるものです。寄せられた視聴者の声の内訳は、「問い合わせ」が前月より5万件近く増えて、全体の72%になっています。苦情も含む「意見・要望」の92%は、コールセンターなどの一次窓口で対応を完了しています。残り8%は当該部局へ転送しています。このところ二次対応への転送が8%程度と、比較的低い水準が続いています。
 6ページは「3月のピックアップ」です。3月は新番組と地上デジタル放送を取り上げて、視聴者の皆さんの声をいくつかご紹介しています。新年度、朝の番組編成が大きく変わり、「おはよう日本」が8時で終了し、8時からは「連続テレビ小説」、そして8時15分からは大型情報番組「あさイチ」がスタートしました。「連続テレビ小説」が15分繰り上がったことについて、「放送時間が変わっていて見逃した」「放送時間が変わってとまどっている。生活のリズムがくるってしまう。元に戻してほしい」というご意見、ご要望が寄せられました。「おはよう日本」については、「阿部アナウンサーの『今日もお元気で!』という声が聞けなくなってしまいとても残念」というようなお声もございました。このほか、「みんなの体操」「テレビ体操」の放送時間の変更についても問い合わせや苦情などのご意見が寄せられています。7ページには、連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」についてまとめています。放送開始から1週間で482件の反響が寄せられました。「日本のよき時代の大家族を見ることができてうれしい」という声が寄せられた一方で、「大きな声で怒鳴り散らしている」などという厳しいご意見もいただいております。8ページは、大型情報番組の「あさイチ」についてです。放送開始から1週間で1,292件の反響が寄せられました。詳しくまとめたものが9ページの表です。情報番組ということもあり、「放送の内容」に関する問い合わせが最も多く寄せられています。その一方で、「民放のようだ」「うるさい」というご意見、そして、スタジオのセットについて「派手だ」というご意見も寄せられています。10ページをご覧ください。3月11日にデジタル放送完全移行まで500日となりましたが、それに関連して、3月20日に衛星ハイビジョンで「体感!デジタルパワーがやって来る」という長時間の番組を放送しました。この番組の一部は、総合や衛星第1、第2でも同時に放送され、これについて合わせて178件の反響が寄せられました。また、11ページですが、アナログ放送終了の注意を喚起する取り組みとして、3月29日から画面サイズの変更を行いました。3月29日からは地上アナログ放送の総合と教育で、ニュースや生番組を除く多くの番組で、画面サイズをデジタル放送と同じ16対9での放送を始めています。また、アナログ放送のBS1、2でも同様の形で放送が行われています。この画面サイズは、レターボックスと呼ばれており、画面の上下に黒い帯が見えるようになります。これについては、報道発表した3月17日の翌日18日から28日までと、実際に放送を始めた3月29日から4月4日までの1週間に分けてご意見をまとめていますが、いずれも厳しい意見が目立っています。11ページ下に、NHKの考え方をまとめてあります。デジタル受信機の普及台数が増えてきたこと、それから地上デジタル放送の世帯普及率が総務省の調査でかなり高い比率になってくることが予想されることなどで、こうした放送に切り替えています。7月以降はニュース、スポーツも含めてアナログ放送はすべて16対9を基本とする方針に決めています。
 続いて、12ページの「放送番組への反響」です。反響の多かった上位10番組はご覧のとおりです。最も反響の多かった歌謡スクランブル「話題のホットミュージック(2)」は、いつもはFMで放送していますが、この日は国会中継があった上に選抜高校野球があったため、FMでこの選抜高校野球を放送するということになったため、番組は休止になりました。そのために問い合わせが集中したものです。12ページの下には、バンクーバーのオリンピックに引き続いて行われたパラリンピックについてのご意見をまとめました。3月13日から22日までの10日間、教育テレビで午後8時から特設番組を設けて放送しました。また、このほかにアイススレッジホッケーの決勝、日本対アメリカ戦をパラリンピックの競技としては初めて生中継で放送しました。パラリンピックの期間中、433件の反響が寄せられました。また、いつもは「福祉ネットワーク」を放送している時間帯に特設番組を設けたことについては、「今の放送枠だと福祉というとらえ方になる。生放送でなくても良いので、スポーツとして、1つの競技を最初から最後まで放送してほしい」というご意見をいただきました。また、アイススレッジホッケーを生中継したことについては好評意見が寄せられています。パラリンピックの放送は、いろいろな条件があるため、放送時間がオリンピックと同様にはいきません。そのような趣旨を視聴者の皆さまにご理解いただきながら、今回の冬季オリンピックは前回のトリノよりも5時間多い27時間を超える放送を実施しました。
 14ページをご覧ください。放送記念日特集「激震マスメディア〜テレビ・新聞の未来〜」について、204件の反響が寄せられました。
 15ページは「再放送希望への対応」です。定時の再放送枠以外では「追跡!A to Z 『肥満は悪くない?』」が視聴者の要望に応じて再放送されています。
 16ページは、視聴者からのご指摘にどのように対応したかについてまとめました。選抜高校野球の甲子園球場のバックネット下の「第82回選抜高等学校野球大会」という看板が白い文字で書かれているために、ボールと重なって、球筋が見えにくいというご指摘をいただきました。そのため、主催の高野連、毎日新聞社等にお願いして、準々決勝からバックネット下の文字を小さくした上に、色をベージュに変えてもらうということで、ご指摘に対応しました。
 17ページは、「誤記・誤読などの指摘への対応」についてです。今回は固有名詞の間違いについて多くのご指摘をいただきました。また、視聴者からの指摘のあった“誤り”としては、高尾山のケーブルカーの斜度が一番高いのですが、別府のケーブルカーをそのように放送したということで、翌日の同じ番組で訂正した例を紹介しています。
 19ページは、受信料関係の問い合わせをご紹介しています。年度の切り替えということもあり、件数は前月よりもかなり増えています。
 20ページは、「経営関係についての意見」ということで、3月の最後の週に行われた衆議院・参議院でのNHKの予算審議についてのご意見が寄せられました。また、3月19日、札幌地方裁判所で受信料の支払督促の申立てに対するNHKの請求について、これを棄却する判決が出されました。これについてはコメントを発表し、ご意見をいただいた視聴者にご説明申し上げました。
 21ページ以降は、21年度の意見、問い合わせの総数をまとめました。平成21年度の意見・問い合わせの総数は464万7,700件でした。これについては、次回の経営委員会で2009年度の視聴者サービス報告をご紹介しますので、その際に詳しくご報告します。

 (安田委員)

 資料の18ページに、「『ゲゲゲの女房』のホームページで、水木しげるさんの出身地が、鳥取県境港市でなく、島根県境港市になっている」という指摘を視聴者からいただいたということですが、若い人の中には、鳥取県と島根県などの位置関係がわかっていない人がいます。東京の人にはそれは大した問題ではないかもしれませんが、鳥取県と島根県の地域の人にとっては、それは重大問題なのです。今後はその辺もきちんと徹底していただければありがたいと思います。

 (野間委員)

 視聴者の声の受付窓口別の分析を見ますと、NHKに寄せられた視聴者の声のうち、全国各放送局へは1か月に13万1,429件となっています。これを単純に約50局で割って、30日で割ると、1放送局には、1日に80件以上も視聴者の声が寄せられている計算になります。拠点局に多く寄せられていると思いますが、それでも数十件は寄せられているのではないでしょうか。基本的には地域にかかってきたものは地域局で、身近な視聴者との接点として受けるべきだと思っていますが、各放送局には、専門の方がいらっしゃるのでしょうか。コールセンターを強化するということをお聞きしていますが、地域局の対応はどのようになっているのでしょうか。

 (今井副会長)

 地域局のハートプラザでは、局に訪問される方への対応と電話での対応をしています。電話での対応については、お答えする基本のデータはイントラネットで全部つながっていますので、東京のコールセンターがお答えする基本情報は全部そろっています。現在、地域放送局、拠点局で受ける視聴者の方からの電話は、それぞれの局単独で対応する形になっていますが、10月からの新しいコールセンターのシステムが稼働すると、全国で切りかえが自由になりますので、一次対応のやり方も、そのまま電話を切りかえるだけで東京のコールセンターで、よりきめの細かい対応ができることになります。

 (野間委員)

 ハートプラザで対応されているのですか。視聴者が地域局にお問い合わせやご意見を言ってこられたりする日常的な方法としては、電話の受け答えが多いと思いますが、それは仕分けして、例えば、全国的なものであれば東京のコールセンターにもっていくということでしょうか。

 (今井副会長)

 例えば、NHKの受信料について裁判の判決が出た場合は、ひとつひとつの局で対応し切れなければ、東京のコールセンターで対応することができます。当然、ローカルで対応すべきものについては、ローカルでの対応を大事にします。

 

 (4) 国際関係業務を行う新会社の発足について(資料)

 (溝口理事)
 国際関係の統合については、海外現地法人の統合と国内での統合という、2つの大きな柱から成り立っています。このうち、海外の現地法人については、まずニューヨークのほうですが、日本語放送事業を営むJNG(Japan Network Group,Inc.)と、制作業務を行っていたNEPアメリカ(NHK Enterprises America,Inc.)の2社を予定どおり4月1日に統合して、NHK Cosmomedia America,Inc.を発足させました。同様に、ロンドンでは、日本語放送事業を行っているJSTV(Japan Satellite TV(Europe)Ltd.)と、制作業務を行っているNEPヨーロッパ(NHK Enterprises Europe Ltd.)の2社を4月1日に統合して、NHK Cosmomedia (Europe)Ltd.を発足させました。会社の概要は、資料に記載してあるとおりです。
 また、国内では、(株)国際メディア・コーポレーション(MICO)を(株)NHKエンタープライズへ4月1日に吸収合併させました。また、MICOの持っていたスポーツ放送権事業については、(株)NHKグローバルメディアサービス(Gメディア)に4月1日に吸収分割を行いました。さらに、Gメディアが行ってきたNHKワールドプレミアムの関係業務を(株)日本国際放送(JIB)へ移行し、関係各社のドメインをより明確にすることができました。(株)NHKエンタープライズへのMICOの吸収合併については、4月10日からフランスのカンヌで開催された国際テレビ番組見本市(MIPTV)で、新生エンタープライズの事業説明を積極的にプレゼンテーションしました。対象は、各国の放送事業者、プロダクション等、さまざまでした。例えば、旧エンタープライズの番組の制作担当者が、番組販売や共同制作の呼びかけを自ら行い、商談にもより効果が出たと思っています。私もこのミッションに加わり、このあと、カンヌからロンドンに飛び、NHK Cosmomedia (Europe)Ltd.については、放送設備の更新や旧2社の合同スペース問題という経営課題について、現地の経営陣と協議しました。このとき、アイスランドの火山噴火によるヨーロッパ中の航空パニックが起こり、私も5日間ロンドンに足止めとなりました。ヨーロッパの飛行機が止まっていますので、大変な事態ということで、現地で行っている日本語放送では、日本人の旅行客、ビジネスマンのために、緊急に編成を行いました。例えば、領事館のコメントをとるとか、クレジットカードの限度額を変更するにはどうすればいいのかなどの情報です。また、NHKでは、19時のニュース等でヨーロッパのパニックを放送していましたが、非常にわかりやすい企画があったときには、これを毎正時、流して伝えました。現地法人との統合は、放送機能と制作機能を合体することが大きな目的でしたが、旧2社の社員が同じスペースで編成作業を行ったということで、図らずも統合効果の良い面が出ました。

 (井原委員)

 3月にロンドンの支局の監査にかかわって参りましたときに、JSTVへも行き、今、溝口理事がお話しになったような経営課題があるということを伺いました。放送設備の更新や、統合したNEPヨーロッパとかなり離れていて、どのような統合効果があるのか、大変苦労しながら取り組んでいるということでした。しかし、今のお話を聞いて、さまざまな可能性があると思いました。JSTVは、邦人に対する安全・安心な情報を届けることを大切な役割としていました。今お話しになったことはそれに対応することだと思いつつ、たくさん課題を抱えているということですので、ぜひ統合の効果を生かすべく、NHK本体としてもさまざまな支援をしていただきたいと思います。特に、ヨーロッパの場合、必ずしも市場が大きくない、契約率が高くない中での統合ですので、形だけではなく、実態として効果が出るよう今後の取り組みを期待したいと思います。

 

 (5) 地方放送番組審議会委員の委嘱について(資料)
 (日向専務理事)
 地方放送番組審議会委員として、関東甲信越地方で、金子仁氏(新潟交通(株)椛纒\取締役社長)を平成22年5月1日付で再委嘱いたします。近畿地方で、出川哲朗氏(大阪市立東洋陶磁美術館館長)を平成22年5月1日付で新規委嘱いたします。中部地方で、村本淳子氏(公立大学法人三重県立看護大学理事長、学長)を平成22年5月1日付で新規委嘱いたします。中国地方で、宇佐川弘子氏(広島市平和記念資料館ピースボランティア)を平成22年5月1日付で再委嘱いたします。九州地方で、平田トシ子氏(財団法人アバンセ生涯学習事業部長)を平成22年5月1日付で新規委嘱いたします。北海道地方で、久木佐知子氏(有限会社ギャラリーシーズ代表)を平成22年5月1日付で新規委嘱いたします。四国地方で、柳沢康信氏(国立大学法人愛媛大学学長)を平成22年5月1日付で新規委嘱いたします。なお、中部地方で鈴山雅子氏、九州地方で正野逸子氏、北海道地方で福居恵美子氏、四国地方で小松正幸氏は平成22年4月30日付でそれぞれ任期満了により退任されます。また、分野別の構成その他は基本的に大きく変わっていません。

 

 (6) 平成21年度契約・収納活動結果(資料)
 (大西理事)
 資料をご覧ください。21年度の契約総数は、訪問集金廃止に伴う委託契約収納員のパワーシフトを契約活動にシフトするとともに、事業所割引の適用に伴う事業所契約の増加に取り組みました。21年度累計の契約総数増加は、22.8万件となりました。見込んでいた25万件にはおよびませんでしたが、20年度を0.9万件上回りました。また、委託契約収納員の1人当たりの取次数は、20年度に比べて103%に向上しました。21年度の契約総数取次活動は、障害者免除の適用範囲の拡大や公的扶助受給世帯の増などによる有料契約から全額免除への変更が累計で18.1万件となり、想定以上に有料契約が減少したことが、契約総数増加が不足した主な要因になっています。
 次に、2ページをご覧ください。衛星契約増加は、22年度の当初目標60万件に対して69.3万件になりました。65万件を超えたのは、平成10年以来11年ぶりとなります。契約総数取次活動と同様に、委託契約収納員のパワーシフトの徹底や、ケーブル事業者、電器店などの部外戦力との連携強化、事業所契約の見直しに取り組み、また、デジタル機器の普及拡大もあり、年間を通して順調な推移となりました。
 3ページをご覧ください。21年度の当年度収納額は、年間累計で6,384億円となり、対前年度増収額は50.2億円となりました。対前年の同期比較で、年度の前半は減収が続きましたが、第3期以降は増収に転じました。また、前年度受信料の回収実績は、委託契約収納員のパワーシフトや郵便および電話による入金の督促・督励を行った結果、62.0億円となり、前年度の44.7億円に比較して17.3億円上回りました。また、前々年度以前の受信料については、24.1億円を回収しました。これは全額が雑収入として計上されます。3ページの下の図は、当年度収納額と前年度、前々年度以前の受信料の回収額をすべて含めた、年間累計の営業活動としての収納額を表しています。年間累計で、21年度は20年度と比較して72.2億円上回っています。
 4ページをご覧ください。支払い拒否・保留数は、21年度末で33.8万件になりました。17年度第4期末のピーク時の128万件からは94.2万件削減しました。また、未収数は、21年度末で231万件になりました。20年度末の243万件から年間で12万件を削減しました。最も未収が多かった17年9月末の398万件からは167万件削減したことになります。
 5ページをご覧ください。21年度末の口座・クレジット支払いの増加数は、累計で55.2万件の増加となりました。当初計画の85万件に対して65%の達成でした。なお、口座クレジットの増加についても、有料契約から全額免除への影響を受けています。
 最後に、この1年の契約収納活動を振り返りますと、21年度は、障害者免除の適用範囲の拡大や公的扶助受給者の増加など、有料契約から全額免除への変更が想定を超えて増加しました。また、景気悪化の影響に伴う口座振替率および継続振込の払込率の低下など、営業の活動環境は厳しい1年となりました。その中で、20年度下半期からスタートした訪問集金廃止に伴う委託契約収納員の契約・支払再開活動へのパワーシフトのさらなる徹底や、事業所割引の導入に伴う事業所契約の見直しを重点に取り組みました。また、年度の早い段階で、厳しい景気の状況を克服するため、文書による督促や電話による督励など、10項目の追加施策を6月以降展開しました。契約総数増加は、当初計画にはおよびませんでしたが、20年度を上回る増加数となり、衛星契約増加は、普及の拡大があったとはいえ、年度当初計画を大きく上回る業績となりました。いずれも委託契約収納員の1人当たりの取次数は20年度を上回り、このことはパワーシフトの効果だと考えています。当年度収納額は6,384億円となりました。前年度と比較して増減の状況は、年度前半こそ厳しい状況でしたが、下半期以降は増収になりました。前年度受信料の回収額や前々年度以前の受信料の回収額は、20年度を上回りました。これらは10項目の追加施策などの効果だと考えています。22年度は、3か年経営計画の2年目となります。景気の影響があったとはいえ、不足を来たした21年度の営業業績をばん回するためにも、重要な位置づけの1年だと考えています。そのため、今まで取り組んできた営業改革をさらに徹底して、業績を積み上げてまいりたいと考えています。

 

 (7) 平成21年度収支決算の速報(資料)
 (金田専務理事)
 現在、詳細にデータを点検、整理しているところです。本日は、現時点での取りまとめた概況について、速報としてご報告します。
 この後、5月18日に財務諸表としてまとめ、監査委員会および会計監査人に提出します。その後、5月25日の経営委員会に予算総則の適用についてご説明したあと、6月22日にNHK単体および子会社15社および関連会社2社を含めた連結決算について、経営委員会にご説明する予定です。
 本日ご説明する速報については、決算確定前ですので、資料と説明については、公開は6月の決算確定後とすることのご了承を賜りたいと思います。
 資料をご覧ください。事業収入は、業務の着実な実行により、6,699億円を確保しました。このうち受信料は6,442億円となり、20年度決算額、6,386億円に対し56億円の増となりました。事業支出は、放送サービスの充実を図りつつ、効果的・効率的な事業運営に努めたことなどにより、153億円の予算残となりました。この結果、事業収支差金は124億円となりました。

 (井原委員)

 今日ご報告いただいたこと、そのものについてのご質問ではありませんが、これから数字を固めて財務諸表をご説明いただきますので、ご検討いただきたいことがあります。昨年の速報の段階の数値を見直すと、事業支出が103億円の予算残となっていました。今年度は、153億円の予算残ということです。もちろん各年度の個別事情や特殊事情はあると思いますが、もしかしたら、いわば経常的に予算残になる部分と、まさに年度個別の特殊事情によって予算残になる部分の両方あるのではないでしょうか。これまでご説明いただいてきたことは、どれも大事なことですが、項目ごと、あるいは区分ごとの説明でした。経常的な予算残が、全体としてどれぐらいで、当該年度の状況がどうなのかというような、そういう分析をいただけないでしょうか。なぜそれを申し上げるのかといいますと、それによって、予算管理のやり方とか、あるいは予算管理の体制そのものを考えるきっかけになるのではないかと思うからです。今、トータル管理ということで、予算管理を効果的に考えることに取り組まれている状況ですので、今度、財務諸表のご説明をいただくときに、経常的な分析と年度個別の分析について、少し注意してご説明いただければ大変ありがたいと思います。

 (金田専務理事)

 確かに、予算を上回ることがあり得ないということで、それより少し下目でコントロールするという管理となっていますので、どうしても何らかの収支差が出ることになります。それを経常とおっしゃったのだと思いますが。予算との差の中で努力して下がったもの、あるいはいろいろな事情でスケジュール的にずれたもので説明がつく分の残りが恐らくそういうことになると思います。この次のご説明のときには、経常という言葉が当たっているのかどうかは別として、そのようなご説明を心がけたいと思います。

 

 (8) 平成21年度第4四半期業務報告(資料1)(資料2)(資料3)(資料4)
 (福地会長)
 NHK3か年経営計画の初年度の平成21年度は、経営2目標の達成に向けて、一貫した目標・方針管理を確立し、部局目標、部・センター目標を設定して、四半期業務報告を軸にして、自らPDCAを回すことで計画を着実に実行してきました。したがって、この第4四半期業務報告は、1〜3月の報告にとどまるのではなく、年間の総括をして、22年度事業計画につなげていくための構成としました。なお、財務諸表については、まだ決算が出ていませんので、報告書には掲載していません。6月中には放送法に基づき、平成21年度業務報告書と財務諸表を総務大臣に提出することになっていますので、現在取りまとめの作業を進めています。以上、あらかじめご了承ください。
 (石田経営企画局長)
 資料の2ページをご覧ください。「21年度事業運営の総括」についてです。21年度は3か年経営計画の初年度として、経営2目標の達成を目指して、組織を挙げて計画を遂行しました。「接触者率の向上」については、11月の全国接触者率調査では、全体リーチが前年同期の76.1%から76.8%になりました。また、11月の全国放送評価調査では、「親しみ」が51%に上がって目標の50%を超えるなど、NHKの放送への評価が全体的に向上しました。また、「受信料支払率の向上」については、公平負担の徹底を目指した契約・収納活動や受信料制度への理解促進に全力で取り組んだ結果、年間目標の支払率72.2%を達成しました。受信料収入については、前年度に比べ56億円増加して、6,442億円の見込みとなりました。しかし、景気低迷の影響で生活保護世帯などの全額免除世帯が大幅に増加したことなどから、予算に対しては47億円下回る見込みとなりました。また、テレビ放送の完全デジタル化に向けて、21年度末にはデジタル中継局と共聴施設を合わせた世帯カバー率が98.6%となりました。今後も、小規模なカバーエリアの中継局や共聴施設の整備をきめ細かく進め、22年度末にはカバー率を99.5%まで拡大します。残りの0.5%の世帯についても、衛星セーフティネットを利用して、地上デジタル放送を全国あまねくお届けできるようにします。経営計画で掲げた「組織風土の改革」については、経営目標の達成に向けて組織全体でPDCAサイクルを回し、職員全員で情報共有しながら経営課題に取り組んでいく土壌ができたと思います。
 続いて3ページの「経営2目標の達成状況」です。まず、接触者率の向上に向けた取り組みです。NHK放送文化研究所では年2回、接触者率の調査をしていますが、その結果、平成21年度は全体リーチが、6月が76.1%、11月は76.8%でした。放送外リーチは、6月が18.1%、11月が18.2%でした。いずれも前年度と同程度で、統計的な有意差はありませんが、数値は上がりました。主な取り組みと分析評価についてです。21年度の番組改定では、報道の強化、日本と世界にインパクトを与えるパワーコンテンツの制作、幅広い視聴者層に向けたニュース・番組作りなどを基本方針としました。報道の強化では、報道ビッグプロジェクト「あすの日本」を設置し、深刻化する雇用危機や崩壊していく絆(きずな)の問題などを、ニュース企画や特集番組で集中的に取り上げました。大型コンテンツとしては、3年間にわたる大型企画「プロジェクトJAPAN」がスタートし、スペシャルドラマ「坂の上の雲」第1部が好評を博しました。また、NHKスペシャルの「MEGAQUAKE 巨大地震」は高い評価を得て、今後、世界各地で放送される予定です。また、語学番組のクロスメディア展開、46年ぶりの皆既日食やバンクーバーオリンピックなどで、いつでもどこでもNHKに接していただけるように積極的な“3-Screens”展開を行いました。NHK放送文化研究所が行っているもう1つの調査、放送評価調査については、3ページ下のグラフをご覧ください。赤い実線で囲んであるところが昨年よりも評価が上がった項目、赤い点線で囲んであるところは一昨年よりも評価が上がった項目です。「信頼」は一昨年よりも、そして昨年よりも数値が上昇しました。「満足」は昨年との有意差はありませんが、一昨年から比べると確実に数値が上がっています。そして、目標を50%以上とした「親しみ」は、11月には51%、3月には50%となり、年間平均は49%でしたが、昨年より数値が上がりました。新番組の開発や積極的な番組広報、戦略的な多角的展開とデータ分析などの取り組みが成果に表れてきていると思います。次は、「受信料の支払率の向上」です。支払率の21年度目標は72.2%に設定していましたが、組織を挙げて契約・収納活動の強化などに取り組んだ結果、年度末の推計で72.2%となり、年間目標を達成することができました。続いて、主な取り組みと分析評価です。21年度は、訪問集金の廃止に伴って地域スタッフの業務を契約・未収対策にパワーシフトするなど、契約・収納活動を強化しました。また、景気低迷の影響で受信料収入の確保が厳しい状況になったため、6月から法人委託の拡大など10項目の追加施策や、事業所割引制度などを活用した対策強化などに取り組みました。こうした取り組みの結果、契約総数は前年度に比べ23万件増加して3,685万件となりました。しかし、全額免除の対象となる生活保護世帯や市町村民税非課税の障害者世帯が増加し、当初4万件と見込んでいた全額免除の増加件数が18万件に拡大しました。このため、契約総数の増加は、年間目標としていた30万件には届きませんでした。また、未収件数は前年度に比べ12万件減少しましたが、景気低迷の影響で口座振替率などが低下して新たな未収が発生したこともあって、年間削減目標の25万件には届きませんでした。このような厳しい経済状況の中で、契約・収納活動に全力で取り組んだ結果、受信料の支払率は年間目標を達成できましたが、全額免除世帯の増加が当初の想定を大幅に超えたことなどから、受信料収入は予算を下回ることになりました。22年度は支払率の年間目標を73.4%に設定し、契約総数35万件増加、未収削減20万件を目標としました。地域スタッフの契約・未収対策へのパワーシフト、法人委託の拡大、受信確認メッセージの活用、民事手続きの拡大などの施策に全力で取り組んでいきます。
 4ページからは、経営9方針の年間総括です。方針1の組織風土改革についてです。「改革推進プロジェクト」を核とした改革の推進については、経営2目標の達成に向けて、各部局は年間目標,(放送局は「放送局のちから」)を設定し、四半期業務報告を軸に、自らPDCAサイクルを回す仕組みが定着してきました。組織全体でPDCAを回す一環として、「改革推進プロジェクト」や「ブロック経営会議」で目標達成状況の点検や課題解決に向けた検討を行い、新たな取り組みにつなげています。また、経営トップが直接現場の声を聞いてコミュニケーションを深めるとともに、意見交換によって風通しのよい組織風土を醸成するため、会長と職員の対話活動を全国の放送局で実施しました。広報番組「三つのたまご」には、毎月、会長をはじめとする執行責任者が出演し、NHKの取り組みなどを伝えました。「ふれあいミーティング」は、全国で2,112回開催し、5万3,721人と直接対話活動を実施しました。次に、組織横断的な人事と公共放送人・ジャーナリストの育成については、「風通しのよい活力ある組織の実現」と「高い専門性と広い視野を持った公共放送人・ジャーナリストの育成」に重点を置き、人事制度の運用を見直しました。職種、仕事の専門を越える異動や、部局を越えた複眼考課の導入による、より公正な評価の実施に努めるなど、組織風土改革を推進しました。
 次に、5ページ、方針2の放送サービスです。方針2では、毎年4回実施している放送評価調査の5つの指標、「信頼」「満足」「親しみ」「独自性」「社会貢献」について、評価の改善を目標に掲げました。平成21年度の平均は、「信頼」が65%、「満足」が55%、「親しみ」が49%と、前年、前々年に比べて数値が上がりました。また、「独自性」が58%、「社会貢献」は63%で、引き続き高い評価が得られました。特に「親しみ」は50%以上を目標としましたが、11月の調査では51%、3月の調査では50%と、2回続けて目標を上回ることができました。年平均は49%でしたが、22年度はさらにこれを上回りたいと考えています。また、報道局に生活情報部を新設し、政治、経済、社会などの枠にとらわれない、生活に密着したニュースや番組を積極的に発信しました。具体的な番組の取り組みについての説明は省略させていただきます。
 6ページ、方針3の新サービスです。全国接触者率調査結果ですが、放送外リーチは、6月が18.1%、11月が18.2%、全体リーチは、6月が76.1%、11月が76.8%でした。平成20年12月にスタートしたNHKオンデマンドは、当初は会員数、売り上げともに伸び悩みましたが、21年度は、見逃し番組の拡大と視聴期間の延長、無料視聴コーナーの設置、テレビ系プラットフォームの拡大、新たな電子決済の導入、さらに料金値下げなど、次々に対策を打ち出すことによって、徐々に利用者を増やしてきました。その結果、パソコン系会員数は10月以降、毎月4万人程度の増加を続けており、21年度末の会員数は41.3万人となりました。月ごとの視聴料収入もほぼ一貫して増加を続けていますが、3月末の累計で約3億円の見込みにとどまりました。主な数値については、資料を付けましたので、後ほどご覧いただければと思います。22年度からは、これまで見ることのできなかったパソコンの機種でもNHKオンデマンドを楽しむことができるようになりました。見逃し番組の視聴期間も10日間から14日間に延ばしました。今後も利用者のニーズに応え、普及を推進していきます。
 次は、7ページ、方針4の地域です。全国の放送局は、「地域を元気にする拠点」となるために、21年度の目標を「放送局のちから」として掲げ、番組やイベント、“3-Screens”展開、ふれあいミーティング開催などに積極的に取り組みました。「平成21年度『放送局のちから』総括と平成22年度『放送局のちから』」という資料がありますが、これは全国の放送局が21年度に掲げた目標について総括し、それを踏まえて設定した22年度の「放送局のちから」の一覧です。地域を元気にするための拠点となるよう、今後も「放送局のちから」を発揮していきたいと思っています。
 8ページ、方針5の国際放送についてです。「NHKワールドTV」の視聴可能世帯数を5年間で1億5,000万世帯、インターネットのホームページなどへのアクセス数を5年後に年間1億ページビューまで増やすことを目標に、受信環境の整備などに取り組んできました。平成21年度は、視聴可能世帯数が1億2,500万世帯、ホームページへのアクセス数が7,800万ページビューに達し、当初計画を上回る順調な成果が得られました。8ページ、右側の緑色の棒グラフがNHKワールドTVの24時間受信可能世帯数の推移を表しています。四半期ごとに確実に受信できる国の数を増やしてきました。下の水色の棒グラフは、「NHKワールド・オンライン」へのアクセス数です。動画配信やテキストと音声による配信、さらには、高速・高画質の動画再送信にも取り組みました。2月からは多機能端末(iPhone)への配信も始めました。こうしたことから、21年度末までの累計のアクセス数はおよそ7,800万ページビューとなりました。
 9ページ、方針6の完全デジタル化です。地上テレビ放送の完全デジタル化に向けて、21年度はデジタル中継局の建設やNHK共聴施設のデジタル化など送信設備の整備を着実に進めました。また、デジタル化により電波が届かなくなる地域への受信環境整備のため、自主共聴施設のデジタル化支援や受信環境調査に積極的に取り組みました。この結果、中継局と共聴施設を合わせた世帯カバー率は、計画どおり98.6%になりました。今後も小規模なカバーエリアの中継局や共聴施設の整備などをきめ細かく実施し、22年度末には世帯カバー率を99.5%まで拡大していきます。残りの0.5%の世帯についても衛星セーフティネットを利用して、デジタル放送を全国あまねくお届けできるようにします。
 10ページ、方針7の構造改革についてです。「コストに見合う成果」のVFM(Value for Money)を向上させる目標については、6月に「視聴者視点によるNHK評価委員会」の調査結果が公表されますので、それを今後の取り組みに反映させていきます。21年度は、放送サービスの質をより一層高めていくため、構造改革を徹底することによって、放送部門に経営資源(ヒト、モノ、カネ)をシフトし、取材制作体制を強化しました。また、番組改定においては、プランニング表をもとに要員、予算、リソースを検討し、初めて番組改定と単価の決定を同時に行いました。この結果、編成のねらいに沿って経営資源を重点配分することができ、コスト管理指標としても大変有効でした。グループ経営については、子会社の再編統合を行い、子会社の数は15社となりました。NHKと子会社等の取り引きについては、番組制作関連では、企画競争推進の目標達成にはなお努力が必要ですが、番組制作関連以外では目標を達成しつつあります。年金制度については、確定拠出年金の導入を柱とする年金制度改革を22年度から実施することを決定しました。また、NHKから子会社等への転籍を計画どおり4分の3程度に縮減しました。
 11ページ、方針8の受信料です。地域スタッフのパワーシフトなどにより契約・収納活動を強化した結果、21年度の年間目標としていた受信料の支払率、72.2%を達成することができました。しかし、営業経費率については、景気低迷などの影響で受信料収入が予算を下回ったことや、契約・収納活動の強化に向けた追加施策を実施したことにより、12%程度の見込みとなり、年間目標の11.5%には至りませんでした。受信料収入は、21年度予算で前年度実績に比べ104億円増の6,490億円としていましたが、年度末では56億円増の6,442億円にとどまる見込みとなりました。収入の増減を要因別で見ると、契約総数・衛星契約の増加と未収削減による増収額は175億円になりました。しかし、厳しい経済状況のもとで口座振替率や継続振込率が低下したことや、全額免除となる生活保護世帯や市町村民税非課税の障害者世帯が増加したこと、事業所割引や家族割引の減収額が当初の見込みを上回ったことなどによる減収額が119億円となりました。この結果、増収分の175億円から減収分の119億円が相殺されて、全体で56億円の増加にとどまる見込みとなりました。
 最後、方針9の環境経営です。番組やニュース・イベント等を通じて、地球温暖化をはじめとする、地球規模の環境問題について伝えるとともに、自ら排出するCO2削減を目指して環境経営に着実に取り組みました。24年度にエネルギー消費原単位(CO2総排出量/有形固定資産総額)を基準年の平成18年度比で12%改善する目標に対して、21年度は4%を超える改善を進めました。
 次のページからは1月から3月の報告ですが、説明は省略させていただきます。

 (井原委員)

 経営計画に基づいて体系的にわかりやすく報告いただいて、改めて自分を省みるような感じで思ったことがあります。方針7の視点として、VFMを向上させることをポイントとして挙げておられます。VFMについては、確かに受信料の価値を量る上で評価される指標だと認識していますが、この1年間、VFMを強く意識しながら議論してきたかというと、それが希薄だったというふうに思います。この指標は、“約束”評価委員会が編み出して、今度は視聴者視点によるNHK評価委員会が公表することになっていますが、その結果を受けて、NHKの中でどのように内部化し、あるいは進化させておられるのでしょうか。あるいは、受信料の価値をこの指標で量るということをどのようにご認識、あるいはご理解いただいているのかということについて伺いたいと思います。“約束”評価委員会が出していたVFMは、視聴者の支払い意思額を事業支出額の割合としてとらえているわけですが、そういう視聴者の支払い意思額を、ある意味では客観的な数値としての妥当性、あるいは納得性みたいなものをどのように考えたらいいのだろうかと思った次第です。

 (金田専務理事)

 “約束”評価委員会を担当していましたので、私の理解を申し上げます。多分、執行部の中で、この話について、かなり深いレベルでの議論はしていないと思います。“約束”評価委員会の先生方はアウトカムというふうにおっしゃっていました。視聴者視点の評価も、その関係は同じだと思います。したがって、組織全体として実際にどんな価値をもたらしたのかということを、視聴者の見ていることを解釈して、いろいろな指標でわれわれに伝えていただくわけです。その中の1つとしてVFMがあります。非貨幣的なものを評価する1つの指標として確立されており、落ちたときにはよほど緊張しなければいけませんが、これを目標管理するというようなサイクルで組織は回っていません。市場のわれわれに対する目線の1つの視点として重要ではあるけれども、事業展開の目標管理には使うものではない、アウトカムのものであると評価しています。ただし、それが落ちるような状況があれば、われわれが何か責任をとらなきゃいけないところがあるという感じは持っています。

 (福地会長)

 人間が物を買う、あるいはサービスを買う行動をするときに、まず値段と値打ち、価格と価値を比べます。「これは払う値段以上に値打ちがある、価格以上に価値がある」となったら、購買活動は起こります。そこで人間が価格的価値の判断ができます。しかし、NHKの受信料については、放送を受信できる設備を持った途端に否応なしに契約の義務があります。お客様が、衛星放送を入れて2,290円の価値があるのかないのか、支払う価値があるのかないのかの選択の余地がありません。放送法の関係で選択の余地がないけれども、契約しなければなりません。そこで私たちは、お客様にとって2,290円以上の価値があるのかないのかということは、自ら判断しなければなりません。その1つの資料だと思います。だから、この数値を目標にすることは、間違いだと思います。それは、管理できません。また、VFMはひとつの定量的なデータではありますが、それは極めて定性的で、感性みたいなものが出てきます。その結果が、定量的にVFMという形で出てきます。この結果は、あくまでも参考資料です。しかし、これが下がって、2,290円の値打ちがないと判断されたら大変です。今のところはこれしかありません。接触者率もこれと似たものだと思います。受信料の支払率というのは、リアルタイムに出ている変化ですから、この数字を追いかけていかなければなりません。しかし、接触者率は、半年の時差をおいて出てくるわけですから、接触者率そのものが目標になりません。占有率も一緒ですが、私がよく言うのは、まずは競争相手を見るよりもお客様を見る、コンペティターを見るより、コンシューマーを見ろと言っています。その結果、お客様にとって、この番組の値打ちがどれだけあるのかということを判断するのが第二であって、その後に接触者率の対応になります。日曜日の同じ時間帯に競争相手の民放はどのような番組を放送しているのかということを調査しなければなりませんが、まずは視聴者が、この曜日のこの時間にどのような番組を求めているのかを考えることが一番先だと思います。そういったものを追求し続けた結果が、接触者率という結果に表れてくると思います。私は、VFMもそういった数字だと判断しています。

 (井原委員)

 この数字の考え方の大切さというのは、私もそのとおりだと思います。今回のご報告では、方針7の目標として、これだけを表示していますので、こういう位置づけにあったのだと認識し、自戒の意味を込めて読み直したので、執行に当たっても、これをどのようにとらえられてきておられたのかということをお伺いしたかったというのが意図です。

 (金田専務理事)

 NHKの価値ということでいうと、この前の“約束”評価委員会の評価で、非使用価値のほうが大きいという結果がありました。この調査が、視聴者視点のときにどうなるのか、私はまだ存じておりませんが、そういうことから見ると、NHKの番組がよかったから価値があるというのではなく、存在そのものやNHK全体のイメージを視聴者が評価しているということになります。NHKが達成するものは、社会的な価値みたいなところがむしろ大きいということでした。したがって、このVFMは、そういうことを含んだものを数字で置いた結果なので、非常に複雑で、非定量的なものを定量的に置きかえた数字です。したがって、落ちたときは心配しなければなりませんが、ある数字以上に伸びているときは、われわれのやっているPDCAを回すことが、まあまあうまくいっていると解釈する、そのように使えばいいのではないかと思っています。

 (井原委員)

 これを方針7の目標として掲げてますので、経営委員会も含めてもう少し議論ができたらいいと思っています。また、「視聴者視点によるNHK評価委員会」の調査結果を今後の取り組みに反映させるということですので、取り組んでいただけたらありがたいと思います。

 (石田経営企画局長)

 「視聴者視点によるNHK評価委員会」の評価は、作業の最中で、今、アンケートをとったりしています。VFMのほかにも「放送の信頼性」や「経営の信頼性」という指標を立てて、まとめて、6月の下旬に報告書をまとめることになっています。どういう形で報告書がまとまるのか、これから見てみないとわかりません。それを見て、分析した上で、今後の経営に生かしていくことができればと思います。

 (日向専務理事)

 NHKの場合、効率性の評価がしにくいので、VFMというものを導入しています。BBCもやっていると思います。VFMは、方針7の指標としています。この結果がネガティブに出た場合に、いろいろな構造改革の施策がうまくいっていないということを知るためのものであって、基本的にこれを上げるためにすべてのことをやるという話ではないと思います。方針7の構造改革や効率性を追求するための1つの指標とお考えになったほうがいいと思います。

 (大滝委員)

 私は、VFMが改革を進めていくという話とダイレクトに因果関係があって、きれいにつながっているということを必ずしも想定しているわけではありません。広い意味での視聴者満足というものがあることがいいのかどうかわかりませんが、そういうものを全体として表しているということなので、その満足が継続的に下がっていくことが起こるとすれば、それは明らかに構造改革がどこかで失敗しているという流れを示しているものと考えるということでいいと思います。また、前に“約束”評価委員会の説明を伺ったときには、個別のところがとても面白いと思いました。例えば、信頼性がどのように上がったり下がったりしているのかとか、何がここで効いているのかとかというところが非常に面白いと思います。構造改革をやっているということが、どんなところに効いているのかを知る上でも、間接的には役立っていると思います。したがって、“約束”評価委員会の報告はとても面白いと思っていますし、かなり有用なものだと思います。VFMというのは、それの最後に集約された数値みたいなものなので、その数値だけを見て議論するというのは生産的なこととは思っていません。そこまで出てくる過程をしっかりと見ることが大事だと思います。

 (勝又委員)

 私たち非営利のセクターでも、この頃は、VFMという言葉が非常によく使われるようになっています。VFMという場合、定量的に目指したものがどれだけ達成されたのかという指標が基本としてあるかと思いますが、それ以上に質的な達成度が問われると思います。しかし、その場合客観的指標を示すのは難しく、主観に頼ることが多くなります。必要なのは大きなビジョンであり、視聴者にとりNHKがどれだけ価値があり、結果として受信料を支払う価値があると判断するかということだと思います。NHK自身が提供している放送の金銭的価値を決められるものではないと思います。NHKがそれぞれの方針の中で何を目指しているのか、構造改革で何をしようとしているのかということをより具体的に提示していく必要があるのではないかと思います。

 (深谷委員)

 21年度の収支決算速報の資料の棒グラフでは、15年度の6,478億円の受信料収入が21年度は6,442億円となり、元の数字に近いレベルに来ています。それから、四半期報告の3ページでは、契約件数が15年度3,690万件から21年度は3,685万件となり、これもほぼ同じような数字に戻ってきています。しかし、支払率は77.2%から72.2%と5ポイント下がっています。今、VFMの議論がありましたが、不祥事で下がった信頼が回復し、公共放送の理解と期待をしっかり回復させ、「NHKの番組いいじゃないか」という声をたくさん聞きますが、実は、衛星契約が増えたから受信料収入が回復し、また、支払率が回復していないということなのではないでしょうか。この数年で周りの何が変わり、NHKは何を回復したのかが整理できればと思います。

 (小林委員)

 NHKグループ経営の最適化の問題については、民間企業のグループと同じように最適化または合理性、効率性だけを考えるのでは足りない、という議論があった上で、経営委員会は3か年経営計画を議決したと記憶しています。今回の報告書を読むと、子会社の再編統合がうまくいっているという話になっています。民間企業のグループであれば、こういう方向でひとつひとつ進んでいるという評価でよいのかもしれませんが、NHKグループの場合は、もっと根本的に検討すべき問題が置き去りにされていると思います。非営利法人であるNHKが、営利法人である株式会社を子会社に持つという特殊性をきちんと理解して、それに基づく指針を与えないと、NHKのグループ会社の問題はうまく対応できないと思います。関連会社の方々もそういう視点、あるいは疑問を持たれていて、混乱していると聞いています。今問題となっているNHKと関連子会社との取引関係、つまり随意契約がいけないのかどうかという問題、またはNHKと関連会社の人事交流、つまり天下り的であるという批判を受けるべきものなのかどうかという問題、こういう問題を解決するためには、今申し上げた考え方を整理することが必要だと思います。それは、経営委員会で議論するべきだと思いますし、また執行部で子会社等の整理、再編等をする際に、まずもって十分検討すべきだと思います。以前、経営委員会でも発言したことがありますが、NHKのグループは、2つの子会社群に分けるべきだと思います。NHKと一体的に運用すべき子会社群と、そうでない子会社群を分類して、NHKと一体として運営する子会社群は、NHKとの取り引きは特殊な契約でもよく、また、人事政策も天下り等の批判を受けるべきではなく、一体的な人事異動をする。それによって、NHKは公共放送としての価値を高めることができる。私は一経営委員としてこのように考えています。それを参考にする等して、ぜひ、この問題を議論していただきたいと思います。また、関連会社の問題で、今、NHKが大きなリスクに直面していると思う点がありますのでお話しします。公共放送たるNHKにとって生命線とも言うべきものの1つが、コンテンツの制作部門だと思います。これがグループ子会社に委ねすぎているのではないかということを懸念しています。民間のグループ会社であれば、株式会社同士ですから、本体と子会社というのは本体の意向でいつでも本体に戻せます。子会社に分離しても、合併等をすればよいのですから、親会社の意思ですぐ戻せます。そういう意味で、経営戦略上、子会社に重要な部分を分離し、委ねるというのは、民間グループ企業であればそれほどリスクはないという判断でよいと思いますが、NHKの場合はそうはいきません。NHK本体は非営利法人ですから、株式会社である子会社にいったん移したものをNHK本体に戻すことは、そんなに簡単なことではないと思います。そういう点で、NHKの将来を考えて、どうしても必要なコンテンツは、グループ会社に委ねていいのかという点を十分考えるべきです。そして、本体にどうしても持っておかなければならない部分は本体に維持し、すでに子会社に移転してしまった部分があれば、それを戻すという考え方も大事だと思います。今は、それほど深刻な問題になっていないと思いますが、今、政府で「事業仕分け」で行われているようなことがNHKにおこらないとも限らないと思います。そうすると、NHKというのは非営利法人ですから、非営利法人が営利法人の子会社を持っていいのかという疑問を呈されたり、子会社との取り引きであっても営利法人との取引であるから、随意契約が全く許されずにすべて競争契約にすべきだというような議論が起こる可能性もゼロとも言えないと思います。そういう事態になったら大変です。NHKの将来に大きなリスクをもたらさないように、今言ったような点を考慮して、NHKに絶対必要だと思われる部分はNHKに維持して、将来もNHKがきちんとした形で価値を維持できるように、今から考えるべきだと思います。

 (野間委員)

 今の意見と全く同じ思いでおります。放送局の役割は、国民が必要とする正しい情報を的確に伝えること、質の高い番組を提供し社会に貢献することにあると思います。子会社に制作を委託することによって、今までNHKが放送文化人の育成として主軸に置いていた、NHK独自の人材育成システムが崩れていっていないかということが非常に懸念されます。番組制作だけでなく、報道部門まで子会社に委託しているという現状であります。子会社をNHKの総合力と考えるのであれば、NHKの基盤を支えるために、子会社が抱えている多くのプロパーの社員もNHKの一員として教育していく必要があると思います。競争入札の強化や予算の削減などにより、プロパー社員の育成がなされていない状況と察しております。また、本体から子会社に、子会社から競争入札により他社へ、つまり下請に行き、ときによってはまた孫請に行くことで価格の競争がなされると、民放が行っていることに近くなってしまうのではないかという懸念もあります。放送局は、人が命です、財産です。一貫して、時間をかけて経験を積ませ、プログラムディレクターを育て上げて、質の高い番組を作るというのは、NHKの生命線だと思います。人材を育成する上で、いろいろな意味で本体との関係を懸念するところがありますので、ご説明いただける機会をお願いしたいと思います。

 (福地会長)

 今出た問題点は、極めて大きい問題だと思います。NHKが、(株)NHKエンタープライズや(株)NHKエデュケーショナルをなぜ作らなければならなかったのか、いろいろな歴史的な問題や経営上の問題があったのではないかと思います。20年間、受信料は値上げしていません。値上げをしない中で、人を減らし、コストを減らしていったのではないでしょうか。それが、そういった形になって出たのではないかと思います。中枢のコンテンツを制作する部分を社外へ出さなければならない、その会社を作らなければならないというところに大きな問題があったのではないかと思います。そこから議論をしなければならないと思います。私は、子会社と一体になるのが一番いいと思います。しかし、それを阻害する要因がいろいろとあります。まずはコストが大変な問題になります。人件費が大変な問題になってきます。しかし、いずれにしてもなぜそうなったのかということをきちんと検証しておくことが、関連団体の問題を検討するときに必要になると思います。

 (溝口理事)

 制作系子会社ができた経緯ははっきりしています。NHKの中から切り出したものではありません。NHKが、衛星事業という新しい新規事業を付加料金で目指すときに、衛星放送は、子会社を設立して子会社にその業務の大部分を任せるという明確な方針がありました。そして、NHKは、それをコントロールするプラットフォーム事業に専念するという役割分担が出来ています。そのために制作子会社は誕生しました。しかし、その後、NHKが大量に退職者を抱えたため、この人たちを子会社に行かせるということで、地上の番組も委託として出すことになりました。こういう経過です。衛星放送がここまで伸びたのは、子会社の働きです。子会社設立の意義は、はっきりあると思います。小林委員がお話しになったように、NHKが特殊法人、子会社が株式会社という中で、NHKグループという特殊なグループの形をどう目指すのかだと思います。小林委員の考え方は1つの考え方だと思いますが、NHKグループにとって理想的な本体と子会社との関係、グループの形づくりがあると思います。そういう時期に来たということだと思います。

 (小林委員)

 今ある関連子会社がどういう性質のものか、どこに位置するものか、それを明確に示すことが必要だと思います。溝口理事が、NHKグループが民間の企業グループとは違う特殊なグループであるというご認識を十分されているということを伺い、非常に心強く思いました。ぜひ、その特色を踏まえて、民間の企業グループとは違うという認識の下に、民間の企業グループとは異なる、いろいろな対応をしていただきたいと思います。

 (岩崎代行)

 そもそも経営委員会が、NHKに構造改革の必要性を訴えました。前の橋本会長時代の5か年経営計画の提案は、構造改革への踏み込みが不十分ということで、議決しませんでした。今の3か年経営計画の議論のときに「構造を変えましょう」と言ったのは、既存の延長から少し変えたことで構造が変わりましたということを言っているのではなく、既存の延長でいいものは残し、そのやり方ではもう限界に来てしまっているようなものは根本的に見直すということです。そういう中において、関連会社の話も、一番いい放送を出すためにどのようにしたらいいのかというような観点から、きちんと見直すべきだと思います。また、営業については、契約率を高めるための方法として、全く新しいやり方がないのかどうか。構造改革は最重要項目でありながら、9方針の中の7番目という後の方の順番になっています。その指標としてVFMがあるということですが、VFMの手前で、もっと構造改革すべきそれぞれの項目について議論することが必要だと思います。

 (安田委員)

 NHKは、いい番組を作り、その番組を作る人々を育成するということが生命線であるにもかかわらず、それを子会社に譲って、いつの間にかNHKは子会社に発注する立場になりかねないということですが、それはものづくりが基本生命であるにもかかわらず、安い海外に発注して、自分たちはソフトだけをやっている現在の日本の企業にも似ています。これは、日本の抱えた大きな構造的問題です。自分たちの組織の何が根幹なのかということをきちんと意識する必要があるのではないでしょうか。それを忘れると組織は瓦解していくのではないかと心配です。

 (日向専務理事)

 確かに、番組はNHKにとって大事なものです。しかし、現実には、インターネットの環境は昔とは全然違いますし、NHK本体ではパッケージソフトは作れません。放送番組は作れますが、それ以外のコンテンツは作れないというのが、NHKが抱えている状況です。そういう中で、例えば、美術番組は、NHKの中で放送番組としての生産量はそんなに多くありませんが、今はNHKの本体よりもグループにいたほうがいろいろな展開ができ、いろいろな形でノウハウの蓄積ができるという状況があります。職員の間でも関連会社へ出向するというのは外へ出されたみたいな意識がまだあるのは確かですが、グループとしてどのぐらいの制作能力を維持するのかというふうに考えなければならないと思います。メディアがどんどん変わっていて、さまざまなコンテンツが世の中に出ているような状況の中で、今われわれに与えられている条件の中でいろいろなことをやろうとすれば、グループ全体として考えるという方向にしか、今はなりえません。しかし、NHK本体がやっていいということになれば、制作セクションを本体に引き上げるというのは1つの選択肢だと思います。

 (小林委員)

 先ほどの子会社群を2つに分けると言ったのは、まさにその問題を認識しているからこそ言いました。なぜNHKが株式会社を子会社に持てるのかという、その制度の趣旨に照らして2つに分けるべきだと申し上げました。今、NHKが株式会社を子会社に持てるのは、NHK本体ではコンテンツの二次使用を直接できないため、子会社である株式会社が行うということがあります。その目的に照らして、どうしても必要な子会社をNHKと一体とした子会社群という分け方をして、NHK本体と同じように対応する。一方、それ以外の子会社群は、今話した目的とは直接関係ないので、一般企業と同じように競争的なものを導入するという意味で、2つに分けたほうがいいと申し上げました。もう少し丁寧に言うと、NHKが株式会社を子会社に持てるということになった目的に照らして子会社群を2つに分け、その目的に沿うものは、NHKと一体的な子会社として、NHKとの間の取引などが特別なものであっても、それを是認すべきだと思います。しかし、全部の子会社にそれをしようとするのは適当でなく、また、国民から批判を受ける恐れがあります。そういう意味で2つに分けて考えたほうがいいと思いますので、ぜひご検討いただければと思います。

 (野間委員)

 できたときの使命やミッションがあって、それが現在どうなのかということを再認識するのは非常に大事なことですし、そのうえで、今のNHK全体の総合力として子会社をどのように位置づけるのかということ、取引関係や人事、人材の育成を考慮し、組織として適材適所を見極める構造改革が、NHKの将来のために急務と考えます。視聴率の競争や効率性の追求を余儀なくされる民放にはできない、NHK的な放送文化人育成システムで、幅広い見識のある優秀なプロデューサーを育て続けていくということ、そこだけは死守していただきたいと視聴者として切に願います。NHKが守るべき最も重要なことはどこにあるのかということを経営委員ともども考えていくべきと思います。

 (桑野委員)

 グループ経営の最適化ということもわかりますが、今までの時代背景とこれからどうしていくのかということについては、一度立ち止まって整理していくときではないかと思います。放送と通信の融合の中で、グループ経営をどのように見ていくのかを、中期的にやらなければならないときに来ているのではないかと思います。また、子会社の方が専門性を持って番組を作っているというのは十分わかりますが、それを今後どうするのかも、じっくり考えるときではないかと思います。

 (野間委員)

 NHKは今までの歴史の中で、番組を制作し、時代を報道し続け、時が経っても見るに耐え得るような非常に質の高い番組をたくさん作って来られました。視聴者にそれを再認識していただき、NHKを理解していただく上で、オンデマンドを成功させることは非常に大切なことだと思います。そのために、来年、デジタル化を迎えるにあたり、NHKがどのように変わるのかということを視聴者の皆さんに知っていただく中で、オンデマンドの活用を幅広くお知らせしていただきたいと思います。例えば、お試し期間というのがありますが、思い切って半年間は無料にするというのはいかがでしょうか。そういうことで、デジタル化の機会に、若い方だけではなく一般の方にも、オンデマンドに前向きになっていただけるのではないかと思います。デジタル化と合わせてオンデマンドを宣伝していってはどうかと思います。

 (日向専務理事)

 オンデマンドについては、区分経理や放送法などの制度上の縛りがあるので、半年間無料にするのは、現実的にできません。放送法を変えるというレベルの話になってしまいます。また、放送を通じて宣伝することができないという制約の中でやっていますので、お話しになったようなことをやってみたいとは思いますが、今はできません。現状では、4月以降もかなり伸びていて、初年度と比べてずっとよくなっていますので、見直した計画に対しては、そんなに大きな齟齬(そご)はなくなると考えています。当初の計画とは1桁以上違うというようなことにはならないと思います。

 (小林委員)

 確かにオンデマンドも放送法の縛りがあります。しかし、これは、国会で法律を変えればよい問題だと思います。今国会で、NHKのガバナンスについて、放送法の改正が提案されているぐらいですから、放送法の改正はハードルがそれほど高くないと言える面もあると思います。私は、受信料増収を図る上での立法的な対応の必要性について、前々から経営委員会でも言っていますが、それと合わせて、NHKの将来を考えて、今お話しになった点も、放送法で禁止されているからダメだとあきらめるのではなく、それをよりよい方向に改正していただくための働きかけをNHKがすべきだと思います。ぜひ努力していただきたいと思います。

 (日向専務理事)

 そのとおりだと思います。

 (大滝委員)

 今、NHK出版から出ている「フリー」という、クリス・アンダーソンが書いた本を読んでいます。アーカイブの事業は、まさにそういう世界ではないかと思います。しかし、「フリー」のビジネスモデルで成功するのは難しくて、だれでも成功できるというものではないと思います。デジタルアーカイブを使ってやるビジネスモデルというのは、どこかにそういう余地を作って、ビジネスモデルを克服していくということができないとだめなので、放送法でがんじがらめに縛られているという世界の中では、大変狭い道を行くしかないと思います。現在、そういう状況だと思います。放送と通信が融合するような世界の中で、新しいビジネスモデルを作っていくというようなことであれば、これほど厳しい放送法の縛りがあるということ自体が、アーカイブのビジネスを小さくしているのではないかと思います。そういう意味では、NHK自身が一人勝ちして、一人利益を上げるというのではなく、デジタル産業やアーカイブ産業を育て、全体のパイを広くしていくという意味でも、NHKとして言うべきことは言ってもいいと思います。そういう状況が、世界でも広がってきているということは、もう少しいろいろな場面で主張していいと思います。もちろんアーカイブ事業自体は、世界中ですべてうまくいっているわけではありません。苦労しながらどこでもやっていると思いますが、いい番組や素材もあるということなので、そのようなことを進めていかれるといいのではないかと思います。

 (金田専務理事)

 予算と相当落差がありますので、値段の調整、Mac利用者への対応、コンテンツの面など、現段階でできる対策を打ちました。もちろん法制度という話もありますが、来年度予算を考える直前の段階で、短期の判断があります。それともう1つは、あまりIPだけでやってしまうと、時間を遅らせればNHK番組を全部見ることができることになりますので、受信料制度の慎重な検討も含めて考えなければならないと思います。短期的には、8月ぐらいまでの実績を見た上で、来年度について、相当思い切ったことを検討しなければならなくなる可能性があるということだと思います。

 (日向専務理事)

 経営委員会の皆さんも一丸となってやっていただければと思います。放送法の改正は、長くやっていてもなかなかうまくいかないところがあります。相当強くやらないと、足らないような気もしています。そういう意味では悲観的です。また、視聴者に対してどんどん説明していくこともやらないと難しいと思っています。

 (小林委員)

 放送法の改正はそれほど高いハードルのものではないし、国民・視聴者のためにやるということであれば、国会もわかってくれると思います。当事者であるNHKがこういうことで困っている、こういうことをすればよりよくなるという情報を国民・視聴者に提供しないと、国民・視聴者はよくわからないと思います。そういう情報発信を国民・視聴者の皆さんにし、お願いすることが必要だと思います。頑張ってください。

 (小丸委員長)

 営業経費率が、年間目標11.5%から12%に上がりました。収入目標が達成できないということで、足元が非常に厳しい中ではありますが、今期はもう一段頑張っていただきたいと思います。

 

 (9) 「NHKワールドTV」の視聴実態調査の結果について(資料)
 (今井副会長)
 視聴可能世帯数を増やすという目標については、受信環境の整備を進めて、21年度末で1億2,500万世帯まで到達しました。NHKでは、NHKワールドTVの受信環境の整備が進んだ地域を対象に、どれだけの人々がNHKワールドTVを知っているのか、どの程度視聴しているのかなど、視聴実態の調査を行っています。今回は2つの調査をご紹介します。1つは、英語圏ではないフランス、イスラエル、バンコク、いずれも昨年の秋から今年の初めに視聴できるようになった地域ですが、そこの認知状況について調査を行いました。もう1つが、PAX調査と言いまして、BBC、CNNなどに比べてNHKワールドTVがどの程度見られているのか、知られているのかなどを調査しました。今回は、バンコク、香港、ジャカルタで調査を行いました。
 まず、フランス、イスラエル、バンコクでの調査結果です。フランスでは、昨年の秋に、IPTVを通じて見ていただけるようになりました。フランスの認知は、12.2%でした。イスラエルでは、同じく昨年の9月からですが、7.0%の認知です。また、バンコクでは、41.8%と高い認知が出ました。この調査は、「放送を始めたが気がついたか」という、第1回の調査ですので、今後さらに新しい調査をしていきたいと思います。バンコクは、41.8%と高い数字が出ていますが、バンコクでは日本の番組がいろいろな形で輸出されて放送されていますし、それからNHKワールドプレミアムという日本語の邦人向けの放送も非常に視聴率が高いので、これらの混同があって高くなっているということも言えるのかと思います。バンコクで「認知している放送の言語」の「日本語」のところが11.4%ですので、NHKワールドTVが英語の放送ではなく、他の日本語の放送を一緒に考えている人がおられるということは間違いないと思います。今後は、英語を母国語としない国での視聴頻度の上昇に努力してまいりたいと思います。
 次は、PAXという調査についてです。外部の市場調査会社が、アジア太平洋地域の主要都市で、主として高所得者、それからビジネスの意思決定にかかわる人たちを対象に実施しているメディア調査です。昨年の6月から9月にかけて、バンコク、香港、ジャカルタで調査を行いました。それによると、バンコクでは国際チャンネルとしての認識が6番目程度ですが、割合明白に有意差を持って存在が認められているという感じがします。香港では、IPTVを通じて非常に多くの世帯をカバーする形で行われていますので、CNN、BBC、ブルームバーグ、CNBCに次いでの存在ということになってまいりました。また、放送が開始されたばかりのジャカルタでも10番以内に入っているということで、こうした国々での存在をより確かなものにしてまいりたいと思います。
 これから先、2つのことがより必要になってくると思います。1つは、アメリカを中心として、まだ受信環境が整備されていない国にさらに整備を進めていくということと、それから、視聴者の拡大ということであります。アメリカについては、現在、姿がまだ完全に見えてきていませんが、アメリカの非商業放送局のネットワークであるPBSが、自分たちの作っている放送の代わりに外国の放送を流すという中で、NHKワールドTVをひとつの重要な番組として認識しているという情報があります。また、24時間全部ではなく、プライムタイムの時間にアメリカに届く「ニュースライン」という30分のニュースを放送しようというところが出てきたりしています。こうしたことで、受信環境を整備して定着を図っていきたいと思います。また、視聴の拡大については、さまざまな方法でPR活動を続けることが大事だと思っています。デジタル放送ではEPGで番組を紹介していますので、それを活用したり、IPTVなどではプロモーションのチャンネルがありますので、そこにその国の言葉で広告番組を出していく準備もしていこうと考えています。それから、機会をとらえて、インターナショナル・ヘラルド・トリビューンやフィナンシャルタイムズに広告を打ったりもしています。そして、コンテンツの開発が大事です。現在は4時間をひとつの枠として、ニュースはできる限り更新をしながら、番組を1日6回放送していますが、この中でコンテンツのあり方についてのいろんなトライアルを募集しながら新しい番組の開発を重ねていこうと考えています。それから、国際テレビ見本市や国際テレビショーにも出しながら、NHKワールドTVの存在感を高めていこうと考えています。

 

 

 以上で付議事項を終了した。

 

 上記のとおり確認する。

 

 平成22年5月25日    

小 丸 成 洋

井 原 理 代