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韓国で不当に商標登録された高級ぶどう「ルビーロマン」のいま

  • 2023年08月11日

石川県が開発した高級ぶどう「ルビーロマン」の韓国における商標登録問題が、馳浩知事の訪韓で改めて注目されています。一時は韓国で不当に登録されていた「ルビーロマン」の商標は、どうなっているのか?
現状を整理するために、松岡アナウンサーが片山記者に質問しました。
(記者 片山晏友子 アナウンサー 松岡忠幸)

馳知事訪韓で“ルビーロマン”問題クローズアップ

先週、馳知事が訪韓した際に印象的だったのが、「ルビーロマン」の韓国における現状を、強く嘆いていたことでした。

韓国でルビーロマン流出問題に言及した馳知事

馳知事は現状に対して「“ルビーロマン”は県や生産者の血と汗と涙の結晶であり、こうした偽物が販売されている状況はブランド価値が損なわれてしまうと言わざるを得ない」と話しました。やはり、県が14年もかけて開発したブランドが流出したことには悔しさがあるのだと思います。

見た目も味もまったく違う!

ルビーロマンは、私も近江町市場で1粒だけ購入して食べたことがあります。
糖度はもちろん、粒の大きさや色など厳しい基準を満たしたものだけが「ルビーロマン」として販売されるということで、味も見た目もさすが高級ぶどうだなと感じました。

松岡アナが個人的に近江町市場で購入した
ルビーロマン1粒と訳アリもも5個どちらも300円

一方で、韓国で「ルビーロマン」として流通していたものを馳知事が試食していましたが、見た目からしてまったく違いましたね。

「偽ルビーロマン」を口にする馳知事


 

馳知事はかねてから韓国の「偽ルビーロマン」を実際に食べてみたいと言っていました。
そこで、今回の知事としての初めての韓国訪問に合わせて県の職員が探し出したんです。
ソウル近郊のスーパーマーケットで1房およそ2000円で販売されていたということです。

まず、色が全く違います。ルビーロマンは名前の通り「ルビー」のようなつややかな赤い輝きが特徴ですが、韓国のものは緑ですね。

味はどうだったんですか?

試食した馳知事は「本物よりも水っぽくて甘さがまったく及ばない」としたうえで「石川県の本物と比べてもらっては困る味だ」と言い切りました。

私も試食させてもらいましたが、甘みがうすく、粒にも張りがなかったように感じました。

苗の流通は止められないの?

石川県が開発した品種であるルビーロマンは、苗なども厳重に管理されていたんですよね?
なんで韓国にあるんですか?

ルビーロマンは本来、石川県と契約を取り交わした限られた農家しか栽培ができません。
県は苗木が流出したとみて、これまで流出経路を調べてきました。
しかし、去年、現地調査において生産者が「仲買人から購入した」と話したことまでは確認できましたが、仲買人の特定はできず、これ以上の詳しい状況の把握は難しいとして調査は一旦、終結している状態です。

その苗の韓国での流通は止められないんですか?

今となっては止められないんです。「品種登録」という制度が関係しています。
新しい品種を開発して国に品種登録を行うと、種や苗などを独占的に利用する権利を持つことができます。罰則もあり、勝手に栽培されたり持ち出されたりを防ぐ効果があります。
石川県は国内では「ルビーロマン」の品種登録を行っていました。

あれ、品種登録したのに止められないの?

はい。海外ではやっていなかったんです。
品種登録は国ごとに行う必要がありますが、手続きは国ごとに条件が違い、ノウハウがないと難しかったり、多額の費用がかかったりと高いハードルがあるんです。
しかも、出願は国内での流通から6年以内にやらなくてはならないという国際的なルールがあり、ルビーロマンはもうその時期を過ぎてしまいました。
ルビーロマンの苗木を使った栽培や販売を止めるのは、韓国でも、どこの国でも、もうできないんです。

韓国で不当に商標登録されたことも

じゃあ、せめて「ルビーロマン」を名乗るのを止めてほしいところです。
ただ、一時はまったく別の人が韓国で勝手に商標を登録していたんですよね?

そうなんです。残された手段は「商標登録」という手続きで名乗る権利を守ることです。実は韓国では、ルビーロマンの販売に関係があるとみられる個人が商標登録を行っていました。

それが無効になったと去年のニュースで読んだ記憶があります。

その通りです。
韓国でルビーロマンを栽培して、この名前を使って販売したいと考えたとみられる別の業者が現れたんですね。「ルビーロマンの名前をよこせ」と。
そして、韓国の特許庁に無効を訴えたらそれが通りました。
しかし、無効になったからといって、訴えた人に商標が認められたわけではありません。
韓国国内のごたごたで、いま、誰も商標登録を持たない状況に戻ったんです。

ということは石川県のものになる可能性も?

はい。この思いがけないチャンスを逃さず、石川県は商標の登録を出願しました。韓国の特許庁が無効とした理由が「日本の高付加価値品種の名前と認識されていたとみるのが妥当」というものですから、本家本元である石川県のものになる可能性も十分あると思います。

馳知事は県が商標登録の対応について遅れをとったことについて「県が責められるべきだ。恥じ入るばかりであり関係者に申し訳ない」と話していました。
県では、今後「ルビーロマン」を守っていくために、現在韓国を含む48の国と地域で商標登録を出願しています。

石川県が苦労して開発した本物のルビーロマンを、きちんとした形で世界中の人に味わってもらえるようになって欲しいですね。

  • 片山晏友子

    金沢放送局・記者

    片山晏友子

    2019年入局。
    大分局を経て金沢局へ。
    県政取材を担当。

  • 松岡忠幸

    NHK金沢 アナウンサー

    松岡忠幸

    出身地 長崎県長崎市
    単身赴任生活3年目に突入しました。
    毎日、基本的に三食自炊を続けています。

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