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「カッパがいる」真相を突き止めるため私は川内川に向かった

  • 2023年05月23日

「川内川にはカッパがいる」

県内でニュース取材をしている報道カメラマンの私のもとに”ににわかには信じがたい情報”が飛び込んできた。なんでも”ガラッパと呼ばれ”川内川流域の町では親しまれているとのこと。

え?妖怪の?あの、1級河川に、なぜカッパがいるのか??どこに?なぜ??いや、そもそもいるわけ…。とにかく真相を突き止めるため、私は川内川に向かった。

(鹿児島放送局 報道カメラマン 末廣航)

長い流域のいったいどこに?

さて、探すといっても川内川は広くて長い。九州随一の1級河川で長さは137キロ。薩摩川内市やさつま町、宮崎県も含め「6市4町」にまたがって流れている。いったいどこを探せば…。

「まずは聞き込みだ!」

悩んでいてもしかたがない!とにかく流域の町でカッパの目撃情報を集めてみよう、まず向かったのは伊佐市菱刈地区にある「湯之尾滝ガラッパ公園」。

なんとこの公園は、いたるところに無数のそしてさまざま姿形のカッパの像が並ぶ一風変わった場所だった。

独特の声を出しながらカッパが海のほうに泳いで行くっていう伝説を小さいころから聞かされていました。

きゅうりをぶら下げてカッパを探して、釣ろうとしている人たちを見たことがあります。

どうやら、近くに住む人たちはみんなカッパの存在を信じているらしい。公園だけではなく、町を歩き回ってみるとあちこちにカッパの像やイラスト、川沿いにある旅館の名前にもガラッパが使われていた。

カッパのことならこの人に!

聞き込みを続けると、特にカッパに詳しいという男性の情報を得ることができた。伊佐市で生まれ育った中村周二さんだ。

小さいころに川ばっかり行ってるもんだからあだ名はガラッパでした。川内川ですから1000匹いるんじゃないかな。

なぜ、川内川にカッパがいるのか。中村さんによると「実はそこには川内川ならではの悲しい理由がある」のだという。

暴れ川に親しみをもって

ここが一番被害があったところですよ。

案内してくれたのは川沿いのある伊佐市菱刈の湯之尾地区。川内川はもともと暴れ川とも呼ばれていた。川幅が広いところと狭いところが連続していて、大雨で増水すると流れが悪くなりこれまで氾濫を繰り返してきた。

2006年 鹿児島県北部豪雨

どうにかして、地域を流れるこの川に親しみをもってもらいたいと考えた中村さん。目をつけたのが愛きょうがあって子どもにも人気のカッパだった。

カッパのイベントを開催

およそ30年前、商工会の青年部長だった中村さんは川内川でカッパのイベントを次々と開催。夏祭りやいかだ下りでは地域の人と一緒にカッパの仮装をしたり、県内外に呼びかけて小中学生を集め「ガラッパの学校」を開校。自然体験ができるキャンプを開催し、川の楽しみを広めていった。

次第に川に人々が遊びに来るようになり、いつしかカッパは川内川のシンボルになっていったのだ。

広がる川内川の町おこし

中村さんの活動をきっかけに、川を中心とした町おこしは流域全体の町にも広がっていく。

湧水町では川の流れを生かした「カヌー場」も作られ、ことしの”かごしま国体・かごしま大会”の会場に。

国体も行われるカヌー場

さらに薩摩川内市の大平橋のたもとの河川敷では定期的に地元の味を楽しめる屋台が軒を連ねている。

未来に続く取り組み

国による河川改修も進んで堤防もどんどん整備され、集う人たちの笑顔が広がる川になった。治水対策や堤防の整備など国による改修事業が始まっておよそ90年。

ことし3月、薩摩川内市に川内川流域の行政や川を利活用しているグループ、企業などの関係者が集まり、これからの川内川について話し合う、「川内川サミット」が開催された。そこで中村さんは基調講演を行い”川内川を活用したまちづくりを流域の町が一体となって取り組み、さらなる地域振興につなげていきましょう”と呼びかけた。

カッパがいて川は愛される。川があるからカッパは愛される。もちろん川内川にカッパはいますよ。

取材後記

取材を通じて、流域の人たちがさまざまな形で川を利活用し、川を中心としてまちづくりに取り組んでいることを知りました。そしてその象徴として”カッパ”が確かに存在していました。川を愛する豊かな心があれば、いつか会えるかもしれませんね。

  • 末廣航

    NHK鹿児島放送局ニュースカメラマン 

    末廣航

    2013年入局 広島局→山口局・下関支局を経て3年前から鹿児島局  

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