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北海道でハンセン病問題を考える

  • 2024年5月24日

アナウンサーの飯尾夏帆です。国の隔離政策によって元患者が差別を受けたハンセン病の歴史について考える市民集会が、今月11日(土)12日(日)に札幌市で行われ、取材しました。11日(土)のニュースで放送した内容をもう少し掘り下げてブログに書いていこうと思います。

私の大学の卒業論文のテーマはハンセン病。岡山と香川にある3つの国立ハンセン病療養所に通い入所者などにお話をうかがった経験から、差別の歴史を後世に語り継ぐためにいつかハンセン病のニュースを取り上げたいと思ってきました。

取材したのは、元患者が差別や偏見に苦しんだハンセン病の問題を検証しようと取り組む弁護士や当事者などでつくる「ハンセン病市民学会」が開いた集会。毎年1回、全国で開催してきましたが北海道での開催は初めてでした。

初日は、札幌市中央区のホールに200人余りが集まり、差別の歴史について改めて振り返るため、道南出身の元患者で去年亡くなった桂田博祥(かつらだ・ひろよし)さんが生前行った講演の映像が紹介されました。

桂田さんが語ったのは、病院で診察をうけたあと職場や自宅に帰るとすでに消毒されており家族が泣いていたことや、「罪を犯した人は刑期が終われば社会復帰できても、療養所に送られた人は一生帰れない」と言われた辛い経験。さらに療養所に入所したあとも、医師はいるものの看護師がおらず患者同士で看病せざるを得なかったことなど、劣悪な環境におかれたことについても力強い口調で話していました。
差別にさらされながら70年余りを過ごした療養所での暮らしについて桂田さんが語る映像を、集まった人たちは食い入るように見つめていました。

そのあと、いまも療養所で暮らす元患者でつくる「全国ハンセン病療養所入所者協議会」の屋猛司(おく・たけし)会長も登壇。講演後、お話をうかがいました。

屋会長は現在82歳。「自分が活動できるのは持ちこたえてあと5年だ」と言います。入所者の高齢化が進むなか、療養所を今後どのように維持管理していくのかが喫緊の課題になっています。屋会長は「これからも全国の療養所で多くの声を聞き取って国に要望を伝えていきたい」と考えています。
集会では、元患者の家族も差別に苦しんだ経験を証言した場面がありました。屋会長は「元患者やその家族への差別はまだ残っているので家族や当事者が安心して暮らせる世の中になってほしい」との願いも話していました。

2日目は、会場を4つに分け差別や偏見の解消をテーマにしたパネルディスカッションなどが行われました。

(許可を得て撮影しました)

この写真は、屋会長のほか、旧優生保護法国賠訴訟北海道訴訟の原告や、祖母がアイヌ民族の女性、生まれながらにして頚椎損傷の障害がある女性、それに薬害エイズ被害者をパネリストに迎えた会場の様子です。
「名前を変えなければならない」「どこで生活するかを自分で決められない」など共通する状況を共有し、差別を無くすために何が必要か話し合いました。

~取材を終えて~

私がはじめてハンセン病療養所を訪れたのは中学生の時でした。そのとき「療養所で暮らす元患者の高齢化が進み、差別の歴史をいかに若い世代に伝えていくかが課題だ」と教えていただきました。それから十数年。高齢化はさらに進み、認知症になる割合も増えています。北海道においても、道内出身の元患者はことし4月1日時点で13人、平均年齢は94歳になっています。差別の歴史をいかに語り継いでいくのか。これからもハンセン病問題に関心を持ち続けて、取材を続けていきたいと感じました。

👇「ハンセン病考える市民集会」のニュース記事はこちら

  • 飯尾夏帆

    アナウンサー

    飯尾夏帆

    2019年入局。大分局を経て昨年度から札幌局。現在は北海道で放送中のニュース・情報番組「ほっとニュース北海道」を担当。

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