あなたもクスッとさせませんか? 0755DDチャンネルweb
- 2024年4月26日
共感が人を呼ぶ"SNS時代の展示会"が札幌市で開かれました。その名も「いい人すぎるよ美術館」と「切ないすぎるよ博物館」。17日間で1万5千人が“共感”した人気の秘密はなにか、仕掛け人のひとり、滝川市出身の明円卓さんを追いました。
初回放送 4月27日(土)午前7時55分〜 総 合 NHKプラス見逃し配信予定
「いい人すぎるよ美術館」と「切ないすぎるよ博物館」とは?
その展示会は、3月中旬、札幌市の中心部にあるファッションビルで開かれていました。タイトルは「いい人すぎるよ美術館」「切ないすぎるよ博物館」。なぜ2つあるのでしょうか。
もともと小規模なギャラリーを借りて開催していた「いい人すぎるよ展」が評判となって、全国展開が決定、せっかくやるなら、もっとコンテンツを増やして楽しんでもらいたいと、できあがったのがこの形なのだそうです。
まずは「いい人すぎるよ美術館」から見てみると…。
例えばこの作品。『「縦でも撮りますね~」と言ってくれる人』
スマホで写真をとってもらうように頼んだ時の一コマを彫刻作品にしました。これ、わたしもやります!!
続いては、イラスト作品。『タクシーのうしろに3人で乗った時、真ん中で細くなってくれる人』
あ~、いますいます。わたしの周りでは、細身の音声マンがその人です。
自分の身の回りには、いい人多いんだな‥と実感することができました。
ここから一気に「切ないすぎるよ博物館」へ移動します。
奥に進んで、ベージュのカーテンの仕切りの先は「切ないすぎるよ博物館」。わたしがもっとも切なさを感じた作品はこちらです。
『指定席を買ったのに自由席もがら空きだった時』。
学生時代、予習しながら試験にいけるよう指定券を買ったのに、ガラガラの自由席を見た瞬間を思い出しました…。
地方都市開催ならではのご当地「切ない」はこちらです。
「いい人」と「せつなさ」を感じる、イラストやテキスト、立体彫刻が、150点。ぐるっとまわると、クスッとしたり、ニヤッとしたり、特定の固有名詞を頭に思い描いたりする、小一時間を過ごせます。
40代女性のお客さん
「そこか!みたいなのが多かった。気付かない日常に視点を向けているのが面白かったです」
この展示会は、東京の池袋から始まって札幌まで、5会場で開かれ、来場者の合計は8万5千人に達する盛況ぶりです。
仕掛けたのはどんな人?
この展示会を手掛けたのはクリエイティブチームentaku、チームの中心人物は、滝川市出身の明円卓さん(みょうえん・すぐる)です。大手広告代理店勤務を経て独立、34歳のいま、さまざまなクリエイターたちとチームを組んで、東京を拠点に体験型展示イベントを開いています。
明円卓さん
「できれば世の中にポジティブな発信をしたいなと思っていて、強い共感があった時にグッと面白くなったり、自分の記憶と掛け合わせることで面白くなっていく、そういうのを作りたいと思っています」
明円さんの「アソビゴコロ」を探るべく、これまでの仕事ぶりを取材してきました。そのひとつは、2023年に東京・原宿にオープンさせた『友達がやっているカフェ/バー』です。
入り口から入ろうとすると、いきなり—
「やっほー!元気しとった?」
店員が友だちとして接客してくれるカフェなんです。久しぶりのあった友だちが、終始タメ口で話しかけてくる…。通っているうちに、本当の友だちになる人もいるそうです。
恵比寿で大人の秘密基地を作りました。一見すると、コーヒースタンドのこのカウンターで、とある謎を解いて見せると…。
おしゃれなバーに入ることができるんです。1920年代、禁酒法時代のアメリカにあった、表向きは店舗や事務所、裏は酒場の「スピークイージー」をオマージュしました。ちなみに、コーヒースタンドとしても営業しています。
明円卓さん
「僕は自分の人生のテーマとして「人が一生忘れられない体験をつくる」っていうことをチャレンジできたらいいなと思っています。実際に体験する場所に行って、自分の目で見て体感できるものは、記憶の中に定着して心の中にずっと残り続けるものかなあと」
見て楽しむだけじゃない
「いい人すぎるよ美術館」と「切ないすぎるよ博物館」に話を戻します。この展示会、“美術館”と“博物館”なのですが、おしゃべりOK、撮影OK、SNS発信し放題になっています。
会場内を見渡すと、確かにそのような人たちの姿がすぐに見つかります。
みなさんお気に入りの作品を撮影しては投稿していますが、いったいどんな投稿をしているのでしょうか。見せてもらいました。
20代、男性が投稿したのは、わたしもお気に入りの『「縦でも撮りますね~」と言ってくれる人』です。しかも、横には一言、「これ私だ」。 わたしもです(笑)。
「友だちに共有したら話のネタになるかなと思って」
仕掛け人の明円さんは、こうした投稿から目を離せないと明かしてくれました。
明円卓さん
「これ楽しかったって、素の声で発信した投稿が、人を呼ぶんだなと実感しています。一番信じられる情報は、お客さんが発信してくれるものだなって思います」
わたしもクスッとさせてみたい
なるほど! SNSで投稿された「素の声」が、人を呼ぶんですね。となると、わたしもクリエイターの端くれ、作ってみようじゃありませんか!
ということで、人を呼ぶ動画作りに挑戦してみました。職業柄、何が人を呼ぶのか、気になります。1分の動画を1時間かけて制作、字幕もつけて、明円先生にご指導願いました。
わたしが作った動画見てもらっていいですか?
マジレスしていいですか?
上手すぎます。これだと多分バズんないなと思っちゃいました。
・・・・・・。
どうやら、きれいに整っていることよりも大事なことがあるようなんです。明円先生、どうして「上手」じゃだめなんですか—????。
明円さん
生活者としての自分を考えると、SNSを見ているとき、きれいなものよりも雑に撮ったものとかのほうが見ちゃうじゃないですか。そちらに僕たちが合わせなきゃいけないんだなと、すごく実感しています」
「いい人すぎるよ美術館」と「切ないすぎるよ博物館」の会場で“共感”を撮影してSNSに投稿、そこに思ってなかった以上の「いいね」が返ってくる…。それこそ、明円さんが、お客さんに体験してもらいたいことのひとつと教えてくれました。
明円さん
「自分たちじゃなくて、お客さんが話題になってくれたらいいなと」
編集後記
わたしが作ったSNS動画、果たしてこれはウケるのか?と思いつつ明円さんに見てもらい、返ってきた「もっと下手でいい」という言葉は、正直、目からうろこでした。思わぬ動画に注目が集まることが、わたしの日常でも多々あります。それは、こういうことだったんですね。
SNS時代のトップランナーの表現を掘り下げた分だけ、わたしの仕事もパワーアップ(の予定です)!