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網走のバス会社 AIデマンドバスで2024年問題解決へ!

  • 2024年4月15日

バス運転手などの労働時間の規制が強化される「2024年問題」。勤務終了から次の勤務開始までの休息時間を、これまでよりも長く確保する必要があるため、全国的に運転手の数が不足し、バス事業者は運行本数を減らすなどの対応をとっています。こうした中、網走市のバス会社は、ある取り組みでこの苦境を乗り切ろうとしています。その取り組みとは。(北見放送局 新島俊輝)

2024年問題 対応迫られるバス会社

網走市を中心に路線バスなどを運行する「網走バス」。
会社は3月、運転手の休息時間を確保するため、市内や近隣の町を走る路線バス16便を減便したほか、1つの車両に割り振る運転手の数も増やしました。
この背景にあったのは「2024年問題」です。

働き方改革関連法に基づき、ことし4月から、バス運転手などの長時間労働などの規制が強化されました。
これにより、勤務終了と次の勤務開始の間は、これまでの「連続8時間」から、「最低でも9時間以上」確保することが求められるようになりました。
網走バスでは、新型コロナウイルスの流行に伴う運転手不足に悩まされていて、運転手希望者が面接に来る際の旅費を補助したり、採用した際に家賃の3分の2を補助するなど、全国からの採用を強化してきました。
しかし十分な人材は確保できていないのが現状です。
そこに2024年問題が重なり、状況は悪化したといいます。

網走バス 加藤仁 運行管理部長
「運転手は足りないのに仕事は増えていくという、反比例の状況になってしまったので、考えながら仕事を割りふる必要があります。運行ダイヤを組んでいる人間としては、運転手の労働時間も考えながら、お客さんの足を守っていかなくてはならないので、頭を悩ませていますが、お客さんの迷惑にならないようにダイヤをつくっていきたいと思います」

解決策はAIデマンドバス!

地域の交通網をどう維持していくか。
課題解決に向け、会社が強化しているのが、AIデマンドバスの導入です。
その名も「どこバス」。
運転手不足と路線バスの利用者減少に対応するため、去年から本格運行を始め、これまでに路線バス7台を、「どこバス」5台に置き換えました。

利用者は、電話やスマートフォンで乗り降りする場所を指定して予約すると、AIが自動で、最適な経路を導き出します。
乗客の有無に関係なく決められたルートを走る路線バスとは違い、「どこバス」は予約が入ったときに、乗客がいる区間だけを運行するため、むだが大幅に減少。
運転手の労働時間は、平均で3割削減することができました。
さらに路線バスに比べて車体が小さく、走行距離も少なくなったため、ガソリン代などの運行にかかる経費も削減できる見込みです。

網走バスの運転手
「運転手の高齢化も進んでいるので、2024年問題に対応するために、労働時間を短縮したり、休日を増やしたりする取り組みは大事だと思います。運転手としても、そうした取り組みはありがたいです」

「どこバス」は利用者にもメリット

さらには利用者にとってのメリットもあります。
会社では「どこバス」の導入にあわせて、路線バスの大きな車体では通行しにくい細い路地などに、専用の停留所を新たに100か所設置。
「どこバス」を乗り降りできる場所は、従来の路線バスの停留所とあわせておよそ300か所と、1.5倍に増えました。
利用者はスマートフォンで、乗車するバスの現在位置や到着時間もわかるため、効率的に動くことができ、必ず座って移動することができます。
料金は500円から700円と、路線バスよりは高いですが、タクシーよりはかなり安く乗ることができ、割安に乗車できる定期券や回数券もあります。

利用者
「路線バスだと時間が合わないこともあるので、車の運転をやめてからはみんな『どこバス』を使っています。とても楽で助かっています」

路線バスとタクシーの中間ともいえる「どこバス」。
会社では今後、「どこバス」のさらなる導入を検討していて、労働時間と運行コストの両方を抑えた、効率的な交通網を実現していきたいとしています。

網走バス 明神健太 専務
「これからは労働時間の規制をクリアしつつも利便性を落とさず、地域の足を守っていくということが大事になっていきます。路線バスを『どこバス』に置き換えて全体の運行台数や運転手の総労働時間を削減していく一方、利便性は落とさずに提供できる地域交通を目指していきたいと思います」

取材後記

今回の取材の中で話を聞いた運転手は「市街地から離れた場所に住む人の利用も増え、利用者の『すごく良くなった』という声も聞く」と話していて、利便性が向上していることを実感しました。
北海道運輸局によりますと、人口減少や運転手不足が進む道内のほかの自治体でもデマンドバスの導入は進んでいますが、網走バスのようにAIが配車やルート設定まで行うバスを本格運行しているのは珍しいということです。
会社では今後、普通免許でも運転できる一回り小さい車両を導入することも検討していて、採用のすそ野の拡大や人手不足の解消につなげたいとしています。
全国各地で運転手の人手不足が深刻化し、路線の廃止や減便などが相次ぐ中、最適な交通網の整備に向けて「どこバス」がどのような役割を果たせるのか、今後も継続して取材していきたいと思います。

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  • 新島俊輝

    北見局記者

    新島俊輝

    2020年入局 初任地の北見放送局で、北見市政やスポーツのほか、地域交通を担当

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