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  4. 炉端のあかり 再び

釧路の食文化を代表する「炉端焼き」。去年8月、釧路で70年以上続く老舗の炉端焼きの店が火事で焼け、廃業の危機に追い込まれました。店を守ってきた祖母と再建を決意した孫、2人の思いを取材しました。
(釧路放送局・早川裕貴) 

炉端焼きの老舗

「炉端」のちょうちんが目立つ釧路にある繁華街、末広町。いろりを囲んで、炭火で焼かれた新鮮な魚介や野菜などをさかなに、飲食や会話を楽しむ。「炉端焼き」は、釧路に根付いた食文化です。

70年以上続く、老舗の炉端焼きの店「炉ばた」は、地元だけでなく全国から多くの客が訪れる、釧路を代表する店でした。

長年、いろりの前で焼き手を担ってきた中島静子(なかじま・しずこ)さん。「炉ばたのおばあちゃん」として親しまれてきました。「お客さんがたくさん入ってお話ができて、おばあちゃん美味しいなという言葉が嬉しかったですよ」と話します。

火事で店が閉業に・・

去年(2022年)8月3日、午後6時すぎ。隣の飲食店から出火して店が火事に。店内はほぼ全焼し、鍋や食器類もほとんど失いました。再開するための資金も足らず、休業に追い込まれました。

再建へ

いろりの前で楽しそうに焼くおばあちゃんを、もう一度見たい。立ち上がったのは、孫の実亜(みあ)さんです。小学生のころ、学校が終わると店は遊び場に。中学校や高校の時には皿洗いや接客を手伝いました。いろりの前のおばあちゃんの姿を見て育った実亜さん。大学卒業後、違う仕事に進みましたが、今回、祖母の力になって店を再建しようと決めました。

実亜さんは「小さい頃から炉端と関わってきて、第二のお家っていうのもありますし、今ここで終わることはできない」と思いを語ります。

実亜さんは、ことし3月にクラウドファンディングを立ち上げました。厳しい店の現状を説明。再建するための支援を呼びかけたのです。一か月半で500人以上の支援が集まりました。

クラウドファンディングのページには支援とともに「ぜひ復活してください」「復活を楽しみにしています」など全国から多くの応援メッセージがよせられました。「毎日ほんとに嬉しかったです、がんばろうって」実亜さんは再建の決意を強くしました。

世代を越えて 継承

実亜さんは静子さんと一緒に改装中の店を訪れました。静子さんは改修工事が始まってから、いろりの前に座ったのは初めてです。

静子さんは実亜さんに「魚焼く場所が一番。仕事をしていて一日だって休むことはなかった。生きがいの場所」と炉端の焼き手としての誇りを伝えます。実亜さんは店が再開したら焼き方を教えてもらい、おばあちゃんの味を受け継ごうとしています。

“再建”。実亜さんにとって責任がかかる大きな仕事。いろりの前で、今まで誰にも言えなかった気持ちをおばあちゃんに伝えます。「おばあちゃんがやっていたように頑張ってできるか、喜んでもらえるかという不安もある。プレッシャーだらけ」涙を流しながら話す実亜さんに「大丈夫、気をつけて頑張ってちょうだい」おばあちゃんは優しく孫の背中を押します。
「おばあちゃんみたいに、腰が曲がるまで頑張るわ!」再建まであと少しです。

釧路の食文化、炉端焼き。再建への道のりは始まったばかり。世代を越えて、再びあかりを灯し続けます。

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