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函館バスが運賃値上げ申請 背景や課題は?

  • 2023年9月11日

食料品など生活に身近なものが次々と値上がりする中、路線バスの運賃もついに値上げが行われる見通しになった。道南の路線バスで大きなシェアを占める「函館バス」です。 函館バスの運賃値上げは、消費税の増税に伴うものを除けば29年ぶり。 なぜ今?背景にあるのは…? 
(NHK函館放送局  白野宏太朗)


12月1日~  片道40円値上げ方針

8月28日、函館市内で開かれていた会議で、函館バスが函館市内の一部区間について、運賃の値上げを国に申請したことを明らかにした。ことし12月1日から片道40円、運賃を値上げしたいというもので、函館バスが運賃を値上げするのは、消費税の増税に伴うものを除けば、1994年以来、29年ぶりになる。

地図に示した緑色の丸い円は、今回の値上げの対象となる路線のエリアだ。具体的には、産業道路周辺から西部地区や湯の川方面を走るエリアが対象となり、値上げが検討されている路線はあわせて100路線に上る。また、通勤や通学の定期についても値上げするとしていて、学生など利用する人にとっても影響は少なくない。
函館バスは、すでに北海道運輸局に申請。審査を経て10月下旬にも認可される見通しだ。


値上げ方針にさまざまな利用者の声

函館市内で取材すると、利用者からはさまざまな受け止めの声が聞かれた。

70代女性
「やっぱり影響は大きい。買い物も減らすようになるかもしれない」

20代女性
「1人で移動となったら結構使うので、正直上がるのはつらいけどしかたがないと思う」

50代女性
「函館バスは路線が複雑で利用しにくい。運賃を上げる前に、路線も整理してコスト削減を図るべきじゃないか」

80代男性
「利用する側にとってはきついだろうけど、値上げはやむをえないと思う」


利用者の減少… 補助金頼み…

函館バスは、今回の値上げ方針を決めた理由について、▼バス利用者の減少や、▼燃料費や修理費用の高騰、さらに▼人手不足のなか安定的に人材を確保するための人件費の増加などを挙げている。

大きな理由の1つが利用者の大幅な減少だ。このグラフは、函館バスの乗客数の推移だ。
5年前にはおよそ850万人が利用していたが、コロナ禍を経て、昨年度はおよそ700万人と、150万人ほども落ち込んでいることになる。
会社としては、大幅な減収となった上に、燃料費の高騰なども重なり、経営圧迫に拍車をかけた形だ。

しかし、函館バスをはじめ、全国の多くのバス事業者は、実は「慢性的な赤字構造」にある。
国土交通省によると▽全国のバス事業者のおよそ7割が赤字、▽特に地方のバス事業者のおよそ9割が赤字という状況で、行政からの補助金でなんとか成り立っている、いわば「補助金頼み」というのが実態だ。

函館市は、函館バスに対して、令和4年度、およそ5200万円を補助している。ここ数年は補助額を下げていたが、コロナ禍の長期化などで会社が多額の赤字を出していることを受けて、市役所内部で検討を進めた結果、増額することになった。市によると、令和5年度もほぼ同額の補助ができるよう予算を準備しているという。一方、函館バスへの財政支援は、函館市だけではない。国と道もそれぞれ年間、数億円規模の補助金を函館バスに投じている。
補助金は、つまり「税金」であり、多額の税金を投入してでも公共交通を維持していかなければならないという厳しい現実があるのだ。


専門家「抜本的な対策を  今後また値上げの可能性も」

交通政策に詳しい専門家は、今回の値上げに一定の理解を示しつつ、背景には函館バスが抱える特有の事情もあると次のように指摘している。

北海道教育大学函館校  奥平理 准教授
「函館バスは長大路線を非常に多く抱えている。函館~長万部間のバスのほか、函館~せたな間、それに函館~熊石間もある。こうした長大路線の経営維持するためのコストの大きな負担に加え、新型コロナなどで利用者減少が進み、経営を圧迫する大きな存在になっていった。
また、函館バスではバスターミナルに相当する営業所が複数あり、行き先が重複しているなど複雑な路線体系になっていることも課題だ。利用者にとっては『どこに連れて行かれるか分からない』という印象もあり、市民や観光客などの利用を遠ざけ続けてきた点もある」

その上で、奥平准教授は抜本的な対策を講じない限り、さらに広範囲での値上げの検討もありうると強調する。

北海道教育大学函館校  奥平理 准教授
「今回の値上げにより、人件費を上げたり乗務員を新たに雇ったりするための原資になったりと多少は良い影響を与えるかなとは思う。ただ、今回の値上げだけで、それが継続的にやっていけるかというと疑問で、何年かすると再度値上げという話も出てきてもおかしくはない」


公共交通をどう維持していくか  対策が急務

地方の路線バスなどの公共交通をめぐっては、国もことし「地域公共交通再構築元年」と位置づけて抜本的な改善に向けて議論を進め、大きく動き出したいと考えている。しかし、事業者や自治体はそれぞれ置かれた状況なども異なることから、一筋縄には進んでいない。

路線バスなど地方の公共交通の維持に向けては企業努力だけではもはや限界だという実態にある中、いつまでも課題に手を打たず先延ばしし続ければ、路線の減便や廃止など、遠からず利用者にとって一層深刻な事態にもつながりかねないと思う。利用促進への取り組みや知恵だしが、今まさに急がれている。

2023年9月11日

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