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誰もが参加できる選挙とは? 函館の支援学校で模擬投票

  • 2023年1月25日

今年4月に控えている統一地方選挙。身近な私たちの代表を選ぶ選挙ですが、障害のある人にとって1票を投じることは必ずしも簡単なことではありません。また初めての選挙に行く若い世代にとっては、なかなか足が向かないこともあると思います。こうしたなか、函館市の高等支援学校で「小さな投票所」を設けた選挙の出前講座が開かれました。(函館放送局 毛利春香)


初めての選挙にそなえて

函館市では今年4月に北海道知事選挙と道議会議員選挙、函館市議会議員選挙、そして函館市長選挙が行われる予定です。こうしたなか、知的障害のある生徒が通う函館高等支援学校で開かれたのが、選挙の出前講座です。講座を受けたのは来年の春以降に18歳になる高校2年生の17人の生徒で、もちろんまだ1票を投じたことはありません。

はじめに函館市選挙管理委員会の担当者から、選挙のルールや投票のしかた、期日前投票などについて学びました。室内には実際の選挙で使われている記載台や投票箱を準備した「小さな投票所」を設置。ここで「函館をよりよい町にしてくれる人」を選ぶ模擬投票が行われました。

立候補者は事前に生徒たちに伝えられていて、4人の中から1人を選びます。
立候補したのは…

函館  観光氏(無所属)
訴え:「少子高齢化に歯止めを!」
学校をつくって若者を増やし子どももお年寄りも暮らしやすい街にします!
学生を増やしその力を生かした街づくりをします。
街をバリアフリーにしてお年寄りの住宅をつくります。

五稜郭  桜氏(○○党)
訴え:「自然を大事に!はこだてをエコシティに!」
函館に自然エネルギーを普及させ、環境に優しいまちにします!
風力と太陽光発電所を整備します。各家庭の小規模発電の導入に助成金を出します。

函館  夜景氏(□□党)
訴え:「国際観光都市として一層の発展を!」
人が集まる古くて新しい街づくりをします!
お祭りやフェスティバルを開催して函館に人がたくさん集まるようにします。函館の魅力を積極的に宣伝します。

湯川  温泉氏(無所属)
訴え:「函館の経済を活性化します!」
経済を活性化するため働く場所を増やします!
大きな会社や工場に来てもらい若者の働くところを支援します。
大きな店に来てもらい駅や空港からのアクセスを整備します。


模擬投票

立候補者を確認してから実際に投票へ。
生徒は受け付けも担当し、名前などを確認した後に投票用紙を手渡します。
そして1人目の投票者となる生徒には実際の投票の時と同じ特別な役割が与えられます。
投票箱の中が空っぽであるかどうかを選挙管理委員会の担当者と一緒に確かめるのです。

その後、次々と投票する生徒たち。記載台で悩んでいる人もいましたが、順調に投票が進んでいきます。
投票が終わった後は開票作業も体験しました。投票箱から取り出された投票用紙の上下や裏表の向きをそろえ、書かれている名前ごとに仕分けをしていきます。そして、候補者の得票数を何度も確認しながら数えます。

果たして結果は…?

市の担当者
「『函館夜景さん』が8票で当選しました。函館がよい街になるように函館夜景さんに頑張ってもらいたいと思います」


模擬投票の結果

 函館  観光氏 5票
 五稜郭  桜氏 3票
 函館  夜景氏 8票
 湯川  温泉氏 1票 


講座を受けた生徒の感想は。

「とても緊張しました。ネットやニュースや新聞を見て、立候補した人がこれをやりたいんだっていうのを1つ1つ聞いて自分でこの人にしようというのをしたいなと思いました。緊張しながらですけど本番でも頑張ってできると思います」

「けっこう簡単に投票できるから、今度の函館の市長選挙に行ってみようかなと思いました。書く人をどういう目線で選ぶかが一番難しかったです。出前講座をもっと積極的にやってもらえたら投票する人も多くなるんじゃないかなと思います」

支援学校の生徒たちにとっては、体験したことがないことへの不安が大きく、一歩を踏み出せなかったり、行きたいと思っても誰に投票していいかわからないといった声があるといいます。
学校は、こうした模擬投票を経験してもらうことで、投票への後押しをしたいと考えています。

函館高等支援学校  進路・支援部  脇澤敏美さん
「特別支援学校の生徒だからというだけではないんですけれども、やはり体験してみないと不安だったり、どうしたらいいのかなというのはあると思う。模擬投票の形でやることで自信を持って、本物の投票所に行くことができたらいいんじゃないかなと思っています。社会の1人として選挙に関心を持ってもらい、たくさんの生徒が投票に行ってくれるとうれしいです」


知ってもらい励ますことが大切

誰もが参加できる選挙にするにはどうすればいいのか。
投票の問題や選挙に詳しい立命館大学大学院の法務研究科の倉田玲教授は、さまざまな障害のある人でも投票ができるようバリアフリーにしていかなければならないと話す一方で、その難しさを指摘します。

「障害はひとくくりにできず、さまざまなサポートが必要な中、知的障害がある人への支援の充実は遅れていると感じる。自身で選挙の意味を理解して候補者を選び投票をすることが難しい場合に、それを他の人が助けることは非常に難しい。お手伝いはもちろん必要ですが、無理をすると本人の投票の秘密や自由な意志を侵害してしまうことになりかねないので限界があると言わざるを得ない」

だからこそ、選挙について事前に知る機会を設けることや、投票の疑問に丁寧に答えることが大切だといいます。

立命館大学大学院法務研究科 倉田玲教授
「投票所での支援に先んじて、まずはきちんとルールやしくみをわかりやすく伝える事前のサポートが効果的で、特に若い人には18歳以上であればどなたでも参加できるんだということ、決して臆することはないんだという形で知らせることが大切です。
投票率が低いと、みんなの選挙と言いながらもごく一部の人が投票に出向いていることになります。当選者は皆さんの代表として仕事をするわけですから、めぐりめぐって自分に関わります。そうした日常の暮らしに関わる選挙で、投票に参加しようという考えを励ますこともとても重要だと思います」

2023年1月25日

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