シマフクロウ道外初の繁殖へ ~釧路市動物園の課題と展望~
- 2023年10月5日
2023年9月21日 18時30分。秋田市の大森山動物園に釧路市動物園から1羽のシマフクロウが運ばれてきました。道外では初めてとなる動物園での繁殖を目指すためです。しかしなぜ秋田の動物園でシマフクロウを繁殖させるのか? その理由は釧路市動物園が抱える問題にあります。(釧路放送局 伊東悟)
シマフクロウ飼育のパイオニア
昭和50年に開園した釧路市動物園。動物園を代表するのが開園当初から飼育する天然記念物のシマフクロウ。
平成7年には世界初となる飼育下繁殖に成功したシマフクロウの飼育繫殖のパイオニアです。しかし近年、問題を抱えています。
天然記念物シマフクロウ
受け入れ困難
環境省の保護事業で、野生のシマフクロウは現在200羽ほどに増えました。同時に、交通事故などで収容される個体もあとを絶ちません。動物園ではケガをして野生復帰できない個体を受け入れ飼育していますが、19個あるケージが足りない状況です。
ケガをしたシマフクロウの飼育ケージ
さらに問題なのが集団感染などによる大量死です。釧路市動物園では平成11年、1か月の間にシマフクロウ5羽が立て続けに死にました。現在、国内の動物園で飼育されているシマフクロウは28羽。そのうち15羽を釧路市動物園で飼育しています。ウイルスなどによる感染を避けるためにも飼育の分散が望まれます。
釧路市動物園 園長補佐 藤本智さん
釧路市動物園 藤本智さん
「(全国の)動物園で飼育しているシマフクロウの数は釧路市動物園にほぼほぼ集中しているような状況です。ここで何かが起こったら全部に影響してしまいます」
シマフクロウの分散飼育
そこで釧路市動物園は大量死のリスクを減らすため、飼育しているシマフクロウを道外の動物園に貸し出すことを決めました。貸し出すのは動物園生まれのオスの「ココラ」です。
貸し出される「ココラ」
車と飛行機を乗り継ぎおよそ9時間。到着したのは秋田市大森山動物園です。大森山動物園は絶滅危惧種のイヌワシを50年以上飼育。繁殖の実績と経験も認められシマフクロウの繁殖先に選ばれました。実は「ココラ」を受け入れる以前に、釧路市動物園から「愛花(あいか)」というシマフクロウ1羽を2019年から4年間借り受け飼育の経験を積んできました。(現在、「愛花」は長野県の茶臼山動物園で飼育)
「ココラ」の繫殖相手は旭川市の旭山動物園から貸し出されたメスの「R青(あーるあお)」。飼育下では30~40年生きるシマフクロウにとって、共に5歳という若くて健康な2羽がつがいを目指す個体として選ばれました。
新しい施設で受け入れ
飼育ケージは広く改修され、暑さが苦手なシマフクロウのために涼しい風が出るクーラーも設置しました。ケージ内にはカメラを取り付け繫殖に向け2羽の様子を24時間観察できるようにもしました。
改修された飼育ケージ
秋田市大森山動物園 シマフクロウ担当 佐々木祐紀さん
秋田市大森山動物園 シマフクロウ担当 佐々木祐紀さん
「秋田での初のシマフクロウの繁殖ができるように、近いうちにヒナのふ化を目指して行きたい」
釧路市動物園 藤本智さん
「事故もなく移動できたので一安心です。今回1羽だけですけども飼育場所が確保できたということは有意義なことだと思います。ゆくゆくはもっと違う場所へも出していって、日本全体でシマフクロウを保護増殖していければいいかなと考えています」
現在、オスの「ココラ」とメスの「R青」は隣り合ったケージで別々に飼育され、すでにお互いを意識し始めているということです。今後、鳴き交わしをするなどお互いの相性が良いと判断したら、一緒のケージで飼育し繫殖を目指すということです。秋田からシマフクロウのヒナ誕生のニュースが届くのが楽しみです。