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十勝で介護福祉士養成校の定員激減!いったい何が?

  • 2023年5月26日

全国的に「なり手不足」が課題になっている介護。
介護人材を増やさなければいけないのに、実は十勝地方で、介護福祉士を養成する学校の定員が大きく減っているんです。
いったい何が起きているのでしょうか。

(帯広放送局記者 辻脇匡郎)


10年余りで定員が3分の1に!?

十勝地方には介護福祉士の養成校が短大と専門学校、あわせて2校あります。
2000年代までは定員はあわせて120人でしたが、2012年から定員が徐々に減っていきます。
そしてことしの春からの定員はあわせて40人。
なんと、わずか10年余りの短期間で、定員は3分の1に大きく減ってしまったのです。


「なり手不足」の理由

背景には何があるんでしょうか。
まずは「なり手不足」をうんでいる介護職場の現状について、現役の介護福祉士の方々に聞きました。

釧路市 道東勤医協 介護福祉士 伊東義光さん
「“給料が安い”っていうイメージがついちゃって、高校生の親が『進学でどこに行く』っていう時に『介護はやめときなさい』って、入り口のところでもう『ダメ』っていう風になっちゃっているんで、そこが課題だと思います」

帯広市 介護老人保健施設ヴィラかいせい 山本真也 介護係長
「3Kっていう(イメージが)いまだに根強くあったりとか、腰が痛くなったりとか、いまだにたぶん“介護イコールキツい”みたいな感じで。どうにかそのイメージを払拭して『そんなことないんだよ』って伝えたいですね」

伊東さんが指摘していた「給料が安い」というイメージ。
介護福祉士の給料は本当に安いのでしょうか。
厚生労働省が2021年に発表した調査結果を見てみましょう。
介護福祉士の平均月給は32万8720円。
一方、すべての職種の正社員の平均月給は32万3400円。
近年、介護職の給料は改善されていて「給料が安い」というのは当てはまらなくなってきています。


定員激減の専門学校 その理由は?

帯広市にある帯広コア専門学校は、1999年に介護福祉科を開設。
そこから20年余りで500人近くもの介護福祉士を輩出してきました。
施設からの介護福祉士を求める声は、依然として多いといいます。

帯広コア専門学校 畠山晴美 介護福祉科主任
「求人数っていうのはもう、100倍近くではないですけれどもそれぐらい、本州の方からもたくさん求人が届くようなものなので、本当に皆さん介護職員が欲しいんだろうなって感じています」

しかしことし、定員を40人から20人に減らしました。
定員を減らすのは、開設以来初めてです。
背景には文部科学省が実施している、授業料減免などの支援制度の変更があります。
国は要件を満たした学校で支援を受けられるようにしていますが、その要件を厳格化。
直近3年間すべてで定員充足率50%未満だと、再来年度から原則、支援の対象から外すというのです。
この学校の近年の充足率は50%を切っているため、苦渋の決断でした。

帯広コア専門学校 畠山晴美 介護福祉科主任
「学生の中にはアルバイトなどで一生懸命学費を自分で工面している子もいるので、修学資金の支援っていうのはすごく重要なものです。定員の充足率が低くなってしまうと、うちの学校が支援を受けられなくなってしまう可能性があります。それでは地元にある学校として将来を見据えた学生を育てられないということもあり、学生が不利益を受けないように今回、定員の削減ということで20名にしましたね」


頼みの綱は訓練生

厳しい状況の中、介護福祉士の人材をどう確保するか。
期待されているのが、社会人からの転職です。
社会人向けには、授業料が無料になるなど、わずかな自己負担で養成校に通える国の制度があります。

実は、この学校ではここ数年、入学生の3人に1人がこの制度を使った社会人です。
制度を活用している1人、川村玲子さん(45)は以前、福祉施設の調理員として働いていました。

帯広コア専門学校2年生 川村玲子さん
「お膳を配膳する車があるんですけれども、それを受け取りに来られる介護士の方の笑顔がみなさんすてきだったんですよね。この方たちって、すごく笑顔がすてきになれるような毎日を送っている職業の方たちなんだなっていうのがよくわかったんですよね」

しかし入学を目指した時に、川村さんは40歳を過ぎていました。
さらに子どもは当時、中学2年生と小学5年生。
同居する親には「これから子どもたちにもお金がかかるのだから、あなたは働かなきゃいけないじゃない。勉強している場合じゃないよ」と当初、反対されました。
その時に背中を押してくれたのは、息子の武也さんでした。

帯広コア専門学校2年生 川村玲子さん
「上の子には『おれも受験だから母さんも頑張れ。母さんが決めたことだったら、おれ応援する』っていう風に言ってもらいましたね。反対されずに背中を押してくれたのがすごく大きな力でした。もう中途半端なことはできないなっていうのが、応援された時の素直な気持ちでしたね」

2年生になった川村さんは、先週から本格的な現場実習を始めています。
心がけているのは、調理員時代に見た介護福祉士たちのような“笑顔”。
人生の先輩たちとの会話を心から楽しんでいます。

利用者
「福祉の仕事大変だけど、頑張ってくださいよ」

川村
「頑張ります!」

帯広コア専門学校2年生 川村玲子さん
「介護の仕事はたしかに大変な部分はあって、そこを考えて介護職に就くのを足踏みしてしまうと思うんですけど、大変なだけじゃないっていうのは言い切れます。得手不得手もあると思いますが、人に携わることが好きな方なら一生の仕事にできると思います。この仕事は、利用者の方が一番最後に顔を見るのが私かもしれないじゃないですか、家族の人ではなくて。利用者の方が『この人に介護されてよかったな』って思っていただけるように、小さな幸せ、小さな笑顔を届けられる介護福祉士になれるよう、頑張っていこうと思います」

今回紹介した、川村さんが活用している社会人向けの支援制度のほかにも、学費の一部を負担する施設や自治体もあります。
介護の職場に関心のある方は、ぜひ自治体などに相談してみてください。

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