NHK札幌放送局

AIの自動音声ニュース どう作っているの?

シラベルカ

2023年6月13日(火)午後6時10分 更新

最近、テレビなどでAI自動音声がよく使われていると感じる方も少なくないと思います。NHKの道内ニュース「ほっとニュース北海道」でも今年度から、各地の話題をコンパクトにまとめたフラッシュニュースを毎日お伝えしていますが、その際に読み上げているのはAIによる自動音声です。今回は、この“AIニュース”がどのように作られているのか、制作現場の裏側をお見せします。(札幌局記者 中山あすか/尾國将大)

視聴者の関心も高い!?

NHKではこのAIによる自動音声ニュースについて数多くのお問い合わせやご意見を頂戴しています。シラベルカ取材班も「どのように作っているのですか?」(70代男性)という質問を受けて、札幌放送局のメディアセンターで取材を開始しました!

5月某日、午後3時。夕方のニュース番組「ほっとニュース北海道」の放送開始まであと3時間と迫る中、制作作業も追い込みに入ってきました。その頃、ニュースフロアの一角で、制作担当者の1人がおもむろにパソコンを開きました。

聞けば、この職員がこの日のAIニュースの担当者とのこと。さっそく、作業の内容を教えてもらいました。
まず驚いたのは、AIを使った自動音声ニュースの制作は、目の前にあるノート型のパソコン1台だけで行うということです。このパソコンからNHKが開発した専用のシステムにアクセスすることができるそうです。


そうだったのか! 制作風景 覗いてみました

作業手順は、いたって簡単。記者が取材して書き上げた原稿をこのシステムに入力すると、カタカナの文字と、アクセントなどを表す記号に自動で書き換えられます。そしてAIが、アナウンサーが読むのと同じイントネーションを推測し、再現したうえで、文字を読み上げてくれるというのです。

ただ、AIも完璧というわけではありません。例えば、「貝殻島コンブ漁の漁業者に出漁証明書が渡された」というこの日のニュース。
北方領土にある歯舞群島の「貝殻島」は、「かいがらじま」が正しい読み方なのですが、制作段階でAIは「かいがらとう」と誤って読んでいました。
そういう場合は、原稿にある「貝殻島」を「貝殻じま」と、ひらがなで打ち直します。特に道内には難しい読み方の地名が多いので、固有名詞の読み方を修正するケースが少なくないそうです。

アクセントの位置を修正することによって、正しいイントネーションに近づけることもパソコンで簡単に行えます。下の画像にある赤い丸印🔴のところを“強く”読むようにAIに指示するんです。

また、単語や文章の「間(ま)」も自在に変更できるようになっています。

例えば次の文章。

道内有数の名所として知られるオホーツク海側の遠軽町の藤園で、藤の花が見頃を迎えています。

AIの自動音声は、前半部分をひと息で読んでしまいました。しかし、「道内有数の名所として知られる」と「オホーツク海側の遠軽町の」はいずれも「藤園」にかかるので、間を置いた方が聞きやすくなります。
この場合、「道内有数の名所として知られる<間>オホーツク海側の遠軽町」というように、一拍、間をおくようにパソコンで修正します。

このほか、原稿を読み上げる際の音声は、男性口調と女性口調を選択することができます。
制作担当者によると、数本のニュースを立て続けに伝える際は、男性口調と女性口調を交互に使うことにしているそうです。口調が切り替わることで、ニュースを聞いている人にも、別のニュースになったことがすぐに分かるほか、単調な印象にならないようにする効果もあるということです。


「放送の質」 さらなる向上を目指して

AIは定期的に学習しているので、音声化の精度はさらに向上していくことが期待されます。そうなれば必然的に、人の手による修正は減っていくことになり、業務の効率化も進むというわけです。
一方で、視聴者の方からは「自動音声になって聞きづらくなった」というご指摘もいただいています。制作の責任者に話を聞きました。

NHK札幌放送局 佐藤博行ニュース制作統括
「今年度から『ほっとニュース北海道』でもニュース枠を拡大しています。その中で増えている業務を少しでも効率化しようというのが1番の目的です。ただ私たちもこれがベストだとは思っていません。様々な方からの声を聞いて、修正すべきところは修正していくつもりです。“新しいことをまずやってみる”、“走りながら考えていく”というのが、今私たちがやりたいことですし、求められていることなのではないかと思っています」


AIをどう活用? キャスターにも聞いてみた

今後、ますます活用が広がりそうなAIによる自動音声ニュース。本職のアナウンサーがどう受け止めているのかも気になりますよね。「ほっとニュース北海道」の看板キャスターである、神門光太朗アナウンサーと是永千恵アナウンサーが生放送の番組の中で熱く語ってくれました。

「AIの自動音声で伝えることのメリットは何か考えてみました。私たちが普段ニュースを読み上げてお伝えする場合、手元の原稿を見ているので、映像の方はそんなに見られないんですね。だから、フラッシュニュースでAIが読んでくれると、その間、私たちは視聴者の立場になって一緒にニュースを見ることができます。『そうですか~。昆布漁が始まりましたか!』とか、『さっきの子ども、頑張っていましたね~』などと、いわゆる“後受け”コメントができるんです」

「本番前に練習で原稿を読む“下読み”がなくなるので、業務の効率化にもつながっていると思いました」

「一方で、AIにはまだまだ負けないぜ!と率直に思っています。今後、AIの技術がどんどん進歩していっても、『どうですか!テレビの前のあなた!』なんて熱をもって言うことは絶対にないんですよ。人間がAIにまさるところはそこだと思います。勝ち負けじゃないですけどね」

「熱意ですよね~。それに、『ほっとニュース北海道』という番組は視聴者の皆さんと情報を“ばくりっこ”(=北海道の方言で「交換する」という意味)する番組でもあると思っているので、原稿にないところでいかに人間味のある発言やお話ができるかを頑張っています。私も、AIに負けないぞ!と思っています」

技術の進歩に伴い、ニュースの伝え方も変わりつつあります。NHKは今後もAI技術をうまく取り入れながら、放送の質の向上を目指して取り組みたいと思っています。

放送の裏側についてはこちらもどうぞ
2022/11/24 シラベルカ「北海道の地名アクセントって?」


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