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卵が不足!鳥インフルエンザは予防できないのか?

  • 2023年5月17日

皆さんから寄せられた疑問に答える「シラベルカ」。 今回は私たちの生活に大きな影響を及ぼしている鳥インフルエンザに関する質問をいただきました。 

「鶏卵の価格が上昇しています。人間の場合はインフルエンザの予防接種で発症、重症化、感染拡大を予防できると思いますが、ニワトリでも同じことができないのでしょうか?」

確かに最近、スーパーやコンビニで卵を買おうとしても、値段がいつもより高かったり、売り切れていたりして買えなかったという人も多いのではないでしょうか。卵不足の実態と鳥インフルエンザの予防接種はできないのかどうか調べてきました。
(札幌局記者 小栗高太)

私が訪れたのは札幌市手稲区にあるスーパーです。このスーパーではこの日入荷した卵はわずか20パック。卵不足は今も続いているようです。

値段も10個入りで1パック税込みおよそ300円。去年より100円程度高くなっていると店は言います。

それでも卵は飛ぶように売れていきます。開店からわずか5分で売り切れました。

男性「ずっと買えなくて困っていたのですが、今日ようやく買うことができました」

女性「買えました。少ししか売っていなかったので、ラッキーでした。今日はたまたま他の用事があって早めに外出していたので、スーパーに寄ってあったら買おうと思っていました」

キテネ食品館中塚誠社長
「今年の3月ぐらいから入荷できる卵の数が激減しました。多い時でも10パックから20パック程度しかウチには入ってこない状況です。お客さんからはいつになったら元の状態に戻るのかという問い合わせを数多くいただいているのですが、こればかりは現状では私たちにはどうすることもできないので申し訳ないです」

原因は鳥インフルエンザです。札幌市に多くの卵を供給している千歳市では複数の養鶏場で「高病原性」の鳥インフルエンザウイルスの感染が相次ぎ、4月中旬までに卵を生むニワトリおよそ120万羽が処分されました。これは道内にいる採卵用のニワトリの2割にのぼります。

今なお卵不足が続いているのはなぜなのか。道内でおよそ5割のシェアを持つ大手鶏卵生産会社が取材に応じてくれました。卵が前のように店頭に並ぶにはしばらくかかるといいます。

ホクリヨウ松岡昌哉専務取締役
「卵を産む鶏を処分した後に再導入できるのは早くても7月の下旬頃です。さらに鳥の性格上、再導入してからすぐに卵を産み始めるわけにはいかない上、生み始めの卵は小さくてなかなか商品になりません。そういったことを考慮すると実際にお店の方に徐々に供給が増え始めるのは9月に入ってからだと思います」

では、ほかの産地から卵を仕入れることはできないのか。北海道以外でも鳥インフルエンザの感染が相次いでいることや輸送コストの問題から難しいといいます。

ホクリヨウ松岡昌哉専務取締役
「今年は全国的にも1割以上卵の供給量が減っているんですよ。さらに北海道だけを見ると20パーセントを超える供給が減っているので、より北海道のスーパーなどでは卵不足が目立っている状況だと思います」

卵の生産に大きな打撃を与える鳥インフルエンザ。予防するためのワクチンは存在しないのでしょうか。動物の感染症に詳しい北海道大学大学院獣医学研究院の迫田義博教授に尋ねました。

北海道大学大学院 迫田義博教授
「ワクチンは国内に存在しますよ。農林水産省が買い上げて、施設で保管しています。ただ、これまで使用したことはありません、鳥インフルエンザというニワトリの“横綱級”の感染症が全国のどこかで今のような封じ込めが手に負えなくなったときに使うための緊急用に備蓄しているだけです」

(ワクチンの現物ある)。
鳥インフルエンザのワクチンは存在することがわかりました。しかし、迫田教授によりますと、手に負えないほどまん延した場合でなければ、ニワトリに打つことはないというのです。

これには理由があります。ワクチンは鳥インフルエンザの感染を「完全に防ぐもの」ではなく、「発症を抑えるもの」だからです。なのでワクチンを打つと、これまで養鶏場でニワトリが発症して死ぬことで察知していた感染の兆候がつかみにくくなります。その結果、かえって周囲の養鶏場へ感染拡大を許す可能性があるということです。

迫田教授
「ワクチンを接種すると、一見健康そうな鳥の数は増えると思うのですが、養鶏場における鳥インフルエンザの発生のありなしを見極めることが非常に難しくなります。日本では鳥インフルエンザの感染が確認された養鶏場のニワトリを全て処分することで、国内での感染を封じ込めていますので、簡単にワクチンを使うことはできないのです」

日本は島国のため、鳥インフルエンザの感染は渡り鳥が飛来してくる冬から春先に限られていて、この期間にすぐに発生源を特定して、感染を封じ込められているうちはワクチンを使わないほうが得策だと判断されているということでした。

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