ページの本文へ

NHK北海道WEB

  1. NHK北海道
  2. NHK北海道WEB
  3. ほっとニュースweb
  4. アイヌの地名はどう漢字に?

アイヌの地名はどう漢字に?

  • 2023年9月15日

皆さんから寄せられた疑問に、皆さんに代わって調査しお答えする「シラベルカ」。 今回は、北海道の地名に関しての質問をいただきました。

「北海道に引っ越してきて、いろいろな場所に行きましたが、気になるのが『アイヌ語が由来の地名と、その漢字』です。どのように漢字が選ばれたのでしょうか?」
 

北海道内には、「札幌」をはじめ、アイヌ語が由来の地名が多くあります。しかし、漢字で表記されているため、難読な地名も少なくありません。北海道の歴史のなかで、アイヌ語由来の地名が、どのように漢字に変化していったのか調べてきました。(札幌局記者   竹之内凌・渡邉健) 


私たちが、まず話を聞いたのは、北海道の近現代史が専門の札幌学院大学の山田伸一教授です。道内のアイヌ語に由来する地名が漢字になったいきさつについて、教えてもらいました。

札幌学院大学  山田伸一教授
「北海道の地名は、江戸時代の終わりごろや明治の初めであれば、かなで表記されていることが多くあります。明治政府が開拓使という役所を1869年(明治2年)に置き、その役所が漢字化を進めるのですが、そのときの記録は、江別市大麻地区にある『北海道立文書館』に多く残されています」

さっそく、北海道立文書館に行って調べてみると、山田教授から教えていただいた資料が残されていました。

この資料には、開拓使が各地の役人に対して、村の名前をカナから漢字に変えるよう指示したことが記録されています。注目すべきはこの部分です。

「なるべく2字を超えないように漢字に変えなさい」と書かれています。つまり、アイヌ語の本来の地名の意味や音よりも、原則、漢字2字で表記することを優先するようにと、開拓使が指示していたのです。

別の資料には、当時、漢字に変えられた地名のリストも残されていました。カナの「ネムロ」が漢字の「根室」に変えられています。他にも、「興部」や「斜里」など、漢字2字で表記されている地名が多くあります。

札幌学院大学  山田伸一教授
「日本の古代からの地名の付け方の習慣を参考にしています。日本では奈良時代ごろから、地名は漢字で表記し、できれば2字ぐらいで、好ましい字を使うべきだという考え方がありました。
当時の政策の底流には、北海道を日本の一部にするため、地域独自のものを消したいという意識があったとみられます」

地名を漢字に変えていく中で、もとのアイヌ語の「音」が、変わってしまうこともありました。
そのひとつが、札幌市豊平区の「月寒」です。アイヌ語での音は、「チキサㇷ゚」で、「我ら(火を起こすために)こすったところ・もの」とか「道内に多く見られる広葉樹のハルニレ、赤ダモ」といった意味で、「赤ダモの木片をこすって、火を起こしたところ」と解釈されるということです。

これが転じて、この地は「ツキサップ」と呼ばれるようになりました。しかし、「月寒」の漢字が当てられてからしばらくして、読み間違える人が多くいるなどの理由から、町内会の決議により、読みも「ツキサム」に変わったということです。月寒で取材してみると、今でも「ツキサップ」はありました。月寒で70年間営業しているジンギスカン店です。

店主  千田祐司さん
「月寒の地名がアイヌ語に近い読みで”ツキサップ”なので、昔はそのように呼んでいたというのを忘れないように”ツキサップ”の文字を入れました。かつての地名を、この先も残していきたいと思います」

お客さんの声
「私は月寒小学校に通っていたので、子どものころから、昔は”ツキサップ”と呼ばれていたと聞いていました。昔はそういう呼ばれ方だったんだなと自然と受け入れてきました」

この他にも、月寒の街には多くの「ツキサップ」が残っていました。公式に地名が変わったあとも、街に息づいているようです。

札幌学院大学  山田伸一教授
「この地名はいつからこういった名前なのかや、なぜこのような名前なのかなど、地名が置き換えられた歴史的な背景について、住民だけでなく、市町村の行政の人も、立ち止まって考えたり、気にしたりしてほしいと思います」

道内の地名について調べた今回のシラベルカ。道内には、多くのアイヌ語由来の地名がありますが、今も市町村の合併により、変わってしまっているものもあります。皆さんが住んでいる街の地名にも、必ず由来があり、歴史があります。ぜひ、近くの図書館にある郷土資料などを読み、調べてみてください。

2023年9月15日

投稿はこちらから↓

シラベルカトップページ

ページトップに戻る