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「保健室の先生」からガーナの先生に 性教育で未来を守る

  • 2023年5月25日

アフリカのガーナで、子どもたちへの性教育に取り組む女性がいます。今、ガーナでは若年妊娠や性感染症が大きな課題となっています。子どもたちの学びの機会が閉ざされないよう奮闘する女性の思いについて聞きました。

(NHK帯広・嘉味田 朝香)


「保健室の先生」からガーナの先生へ

アフリカ西部に位置するガーナは、人口およそ3200万人で、カカオ豆の輸出など、農業が主要産業の国です。
そのガーナで性教育や、現地の子どもたちの健康の指導などに取り組んでいるのが、池田さゆりさんです。

北海道の根室市出身の池田さんは、おととし3月まで大樹町の中学校で養護教諭を務めていました。現在はJICA=国際協力機構の青年海外協力隊の隊員としてガーナで活動しています。

「保健室の先生」だった池田さんがガーナを目指したのは、保健室に来る生徒たちへの思いからでした。

池田さゆり さん
「保健室で自分の視野が狭いことによって苦しさを感じる子どもに会ってきて、自分が世界を見ることによって子どもたちになにか伝えられるんじゃないかなって」

日本から遠く離れたガーナでは、その食文化も大きく異なっています。ここで、ガーナの食事について、池田さんに教えてもらいました。

こちらは現地の給食で、白米と大豆のトマトスープ煮込みです。

ガーナでは「キャッサバ」というタピオカの原材料にもなるイモの一種を発酵させて作った「バンクー」や「フフ」と呼ばれる食べ物に、スープや魚をあわせて食べるということで、池田さんは「とてもおいしい」と話していました。


ガーナで今、性教育が必要な理由

青年海外協力隊としての活動の中でも、特に池田さんが意欲的に取り組んでいるのが性教育です。
ガーナでは、若年妊娠や性感染症が社会問題になっています。
池田さんは「ガーナでは若年妊娠で実際に学習を継続できなくなる子がいる」と話します。
大樹町で養護教諭をしていた当時、子どもたちの間で性感染症が流行し始めていたことから、池田さんは性教育に力を入れていました。その経験を現地で役立てたいといいます。

池田さんは、現地の子どもたちの学びの機会を守るために、性教育を行うとともに、新たな取り組みも始めました。それは「布ナプキン」の普及です。
ガーナでは、紙ナプキンの価格が高く、なかなか手に入りづらくなっています。そのため、生理のたびに学校を休まざるを得ない子どもも出ています。そして、それが若年妊娠や性感染症がまん延する原因の一つとなっているといいます。

池田さん
「女の子自身がお金のある男性と寝て、セックスをしてお金をもらって生理用品を買うっていうことが、信じられなかったんですが、現実にやっぱり言われていることで、生理用品の代わりになる布ナプキンを普及することによって、女子生徒が自分でお金を稼ぐことも防ぎつつ、男性の行動も抑止できるような活動にしていければなと」


JICAからも期待の声

池田さんの活動には、派遣元のJICA帯広も期待を寄せています。

JICA帯広 木全洋一郎 代表
「池田さんがやっている活動は、ガーナでタブー視されている、生理などの性に関する問題を広く認識してもらうきっかけになると思っています。彼女が任期を終わって日本に帰るときにはガーナの他の先生が同じような活動をしてくれることによって、ガーナの中でこの問題が広がって、1人でも多くの女の子がそういった問題を抱えないように生きていければと思っております」


「学びたい」を守るために

「学ぶことが好き」な子どもたちが多いというガーナ。
子どもたちが不本意な形で学びの機会を奪われることがないように、池田さんは同じ問題意識を持つ現地の先生や地域の人たちとともに活動の輪を広げています。
性教育を通じて、子どもたちの未来を守りたい。池田さんの取り組みは続きます。

池田さん
「コミュニティーへの教育、全体を通して全体の意識が上がっていけばいいな」

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