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あのディープインパクトも過ごした、社台スタリオンステーションを訪ねて

  • 2023年12月7日

競走馬といえば北海道。サラブレッドのおよそ98%は北海道で生産され、歴史を彩る数々の名馬が現在も輩出され続けています。 今年の6月~9月、函館・札幌競馬場で開催されたJRA北海道シリーズでは、開催26日間で26万人以上の入場人員を記録しました。競馬場では若者やファミリー層の姿も目立ち、若い世代を中心に競馬熱が高まっています。今回、競走馬誕生の出発点となる日本屈指の種馬場(しゅばじょう)を取材しました。 

北海道道「ようこそ!あなたの知らない❝ウマの世界❞へ」
有馬記念のあとに放送!
放送:2023年12月24日(日)午後4:00~午後4:26[総合・全国]
※一部地域を除く
NHKプラス見逃し配信1週間予定

サラブレッドが誕生するには

サラブレッドは、種馬場(しゅばじょう)にいる種牡馬(しゅぼば)と呼ばれる父馬と、生産牧場で飼養される繁殖牝馬の母馬が交配(種付け)されることで誕生します。父馬となる種牡馬は優れた成績を残した馬や血統の良い馬が選定され、全国でおよそ280頭が供用されており、そのうち約90%が北海道にいます。


数々の名馬が種牡馬として繋養

胆振地方、安平町にある社台スタリオンステーション。あのディープインパクトも繋養されていました。現在はコントレイルやキタサンブラックといった名馬が繋養され、ホースマンが憧れる日本ダービーをはじめ、数々のGⅠレースを制した国内トップクラスの種牡馬が現在32頭繋養されています。


繁殖牝馬にも名馬集まる

一方、社台スタリオンステーションで交配される繁殖牝馬の数は、全体で年間およそ4000頭です。交配相手となる種牡馬の中には、200頭以上の繁殖牝馬が集まる人気の高い種牡馬もいるそうです。そして、繁殖牝馬にもまた、たくさんの名馬たちが集まっています。優秀な成績を残す可能性を秘めた期待度の高い繁殖牝馬たちなのです。

社台スタリオンステーション 三輪圭祐さん
「『ダービーを勝ちたい』『海外のGⅠを勝ちたい』という期待をかけられるようなレベルの牝馬がたくさんいます。それを私たちが受け止めて、素晴らしい産駒(子ども)を生産させられるかどうかということになるので、非常に責務としては大きいです」

いい子どもたちが生まれるように

ディープインパクトやコントレイルといった名馬たちも、種牡馬が交配の日を良い状態で迎えられていなければ生まれてこなかったかもしれません。無事に繁殖牝馬が受胎できるように、そして、いい子どもたちを送り出せるように、日々の管理には強い願いと思いが込められています。

「毎日幸せにいい状態で管理すれば、幸せな遺伝子を継いで、いい子どもたちが生まれるんじゃないかと。そういうところまで考えながら、とにかく馬を尊重して、馬の存在を、1頭1頭のらしさや良さを損なわないように考えて寄り添っているような感じです。将来の血統図を作り競馬界の歴史を作るという意味でも、かなり影響力のあるような仕事の中身になっているのかな、というのは常々思います」

ファンの思いを背負って

多くの競馬ファンが応援し、憧れた存在である社台スタリオンステーションの種牡馬たち。当然、名馬たちの産駒には大きな期待と夢が詰まっています。

「競馬ファンの人も含めてみんなが憧れ、応援した存在でしたので、そこから生まれた逸材を私たちでお預かりさせていただいているという感覚です。ちょっとでもミスをするといろんな方の夢をかなえられないという話になるので、責任感を持って毎日馬を見ていたいというのは、非常に感じています」


トップクラスの種牡馬飼育の難しさ

名馬と賞賛される種牡馬たちは気高く、そして、自身を群れの頂点とする縄張り意識が強い馬たちだそうです。そのため、馬の主張する気持ちが激しくならないよう、人と馬とが互いに尊敬する関係性を構築し、繊細な扱いが求められるそうです。

「手入れをしたりする時にも、ちゃんと相手を尊重し配慮して『いまから手入れしますよ』という認識を持ったうえで接します。とにかく土足で入り込まない。争いが起きないように、上手くなじんで接していくというのが大事なポイントで、そこが一番難しいかなと思います。さじ加減というか手の感覚に左右されるところなので、繊細に扱うというのがすごく難しいと思います」


1頭の動物として

種牡馬の価値はとても高価ですが、1頭の動物であることには違いありません。高価な宝石を管理するのとは異なり、馬は走ったり歩いたりといった運動が必要です。例えば、放牧中の怪我や事故を恐れすぎるあまり、動物としての必要な運動を止めてしまうと、内臓を悪くするなど健康を害してしまうといったことが起こるそうです。

「価値のある種牡馬ですが、1頭の動物としては特別扱いはできない。その割り切りが難しいです」


生産者との連携

日本一の馬産地、胆振・日高地方で繁殖牝馬を飼養する牧場数はおよそ680戸。全国の90%近くを占めます。こうした地域の生産牧場との連携が、サラブレッドの生産には必要不可欠と言います。予定通りにいかない馬の発情など日々変化する馬の体調について、生産牧場と常々コンタクトを取り連携することで、交配の日を迎えるそうです。

「それこそ運命共同体じゃないですけど、私たちだけの都合で生産するわけにはいきません。繁殖牝馬の所有者の方とうまく連携をとって、いい状態で管理した馬同士を出会わせることが受胎率の向上につながり、いい仔馬が生まれたりすることにつながるので、協力しながらやっていくというのがすごく大事なことかなと思います」

未来へつなげていきたい

強いサラブレッドを生産するうえで、起点となり大きなウエイトを占めることになる種牡馬の存在。現在も日本の種馬場でトップの種付頭数を誇る社台スタリオンステーションは、まさに日本のサラブレッドの歴史を担う場所です。

「いい種牡馬がいるかどうかということが、その後の競馬業界の発展や日本国内の馬産の歴史の発展を大きく左右することになります。競馬ファンの期待などに応えられるように、いつ見ても格好いい、美しく憧れてもらえるような状態を保ち続けることが使命です。そんな種牡馬が当たり前のように社台スタリオンステーションにいる、というふうに思ってもらえるよう、安定した体制を整えて未来につなげていきたいです」

日本競馬の血統に大きな影響を及ぼすほどの名馬が集う、社台スタリオンステーション。そこで日々馬と向き合うホースマンたちは、想像以上に謙虚な姿勢で、自分たちに求められる役割やその責任と向き合っていました。そして、多くの関係者やファンの期待に当然のように応え続けながら、日本競馬の馬産の歴史をより良いものに作り替えていくという、そのプロフェッショナルな意識の高さに驚かされました。いま、社台スタリオンステーションの種牡馬から輩出された子どもたちが、世界の主要レースでも活躍し、日本のサラブレッドは世界トップレベルとなっています。“名馬から名馬が誕生していく”その背景には、日本競馬の血統の“源流”とも言える役割を担う社台スタリオンステーションの存在があり、そこで働くホースマンたちによって支えられている、と実感した取材となりました。

北海道道「ようこそ!あなたの知らない❝ウマの世界❞へ」
有馬記念のあとに放送!
放送:2023年12月24日(日)午後4:00~午後4:26[総合・全国]
※一部地域を除く
NHKプラス見逃し配信1週間予定

数々の名馬を送りだしてきた胆振・日高地方の馬産地を、番組とweb記事で紹介しています。
馬産地応援ページ はじめました

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