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エチオピアのゴミ問題の解決を目指せ!十勝企業の挑戦

  • 2023年5月10日

経済成長が続くアフリカのエチオピアへの進出を目指す帯広市の企業があります。
この進出、エチオピアの社会問題を解決する鍵となるかもしれません。

(NHK帯広・嘉味田 朝香)


経済成長の陰で多くの犠牲者も

エチオピアはアフリカ東部に位置し、人口はおよそ1億2000万人。アフリカで2番目に多く、急速な経済成長を続けていて、日本を含む外国企業の注目も高まっています。一方で、現在ある課題を抱えています。

それが「ゴミ問題」です。首都アディスアベバにあるゴミ処分場には、処理しきれなかったゴミがそのまま埋め立てられています。
近くに焼却炉がありますが、休止が続くこともあり、処理が追いついていないのです。
6年前には、この処分場でゴミの山が崩れて多くの人が亡くなる事故も発生しています。
周囲の環境への影響に加え、汚臭による健康被害も懸念されています。


ビジネス×社会貢献!十勝企業の挑戦

そのエチオピアに今、帯広市の廃棄物リサイクル会社が進出を目指しています。

会社の専務の田邊義康さんです。
エチオピアからの留学生と知り合ったことがきっかけで、エチオピアのゴミ問題を知りました。

田邊 義康 専務
「10年前にいったときは、埋め立て処分場はほとんどだだっ広い土地だったんですけど、去年行ってみたら、もう山になって汚臭も数キロ先まで漂うというような、あまりいい状況ではないなというのを肌で感じた」

エチオピアのゴミ問題を解決するために田邊さんは、現地でリサイクル事業の展開を目指しています。核となるのが、RPFという固形燃料です。

RPFの原材料となるのは、紙や木など、プラスチックなどの産業廃棄物。

材料を加工しやすいように砕いたあと、不要な金属を取り除き、熱を加えて圧縮して作られます。
RPFは同じ重さの石炭並みの熱量を持ち、日本では石炭の代替燃料としても使われています。燃やしてもダイオキシンなどの有害物質がほとんど発生せず、石炭よりも二酸化炭素の排出量が少ないのも特徴です。

このRPFを現地で製造することで、エチオピアのゴミの減量につなげるとともに、現地で急増するエネルギー需要にも貢献することを目指しています。


現地も期待大!しかし進出を阻む壁も

田邊さんはJICA=国際協力機構がODA=政府開発援助を使って行っている、途上国の課題を解決する技術を持った中小企業の進出を支援する事業も利用しながら、およそ10年前から現地での視察を繰り返してきました。

ことし3月には、エチオピアの公営の工業団地や、市の清掃局と産業廃棄物の取り扱いに関する覚書も交わしました。

田邊 義康 専務
「とにかく何でも埋めてしまっているゴミを減らしたいという思いがエチオピア側にはあるので、それをリサイクルして、資源として有効活用し、さらに数百キロ先の埋め立て処分場まで運ぶという運搬コストなども下げられるなど、さまざまな面で経済的なメリットがあるので、そういったことを向こうで出来たらなと思います」

田邊さんの会社では帯広市の別の廃棄物リサイクル会社と協力し、RPFの原材料となる紙や木などの廃棄物以外のゴミを堆肥として活用することも目指しています。農業国であるエチオピアでは現在、世界的な肥料の高騰も課題となっています。ゴミをリサイクルで減らしながら、さらに肥料問題の解決につなげることも期待されています。
覚書の締結の際には、現地のメディアも取材に来るなど、高い関心が寄せられているということです。

今後は、エチオピア政府などの協力を得ながら、ゴミを分別して回収する仕組みを作ったうえで、RPF製造のパイロット事業を開始したい考えです。

田邊 義康 専務
「まずはリサイクルそちらのほうをシステムとして確立させることが重要かなと思っています。そのあとに、お互いにちゃんと利益がもたらせるような仕組みがなんとかして作れたらなと」

リサイクル事業を展開し、エチオピアのゴミ問題の解決を目指すというこの挑戦。しかし、課題もあるといいます。
一つが、廃棄物の処理に対する現地の人の意識です。
エチオピアでは、廃棄物にお金をかけて適切に処分するという意識がまだ根づいていないため、そもそものリサイクルの重要性から広めていく必要があるといいます。
現地の廃棄物処理への意識を高めていけるかが、ビジネス化の成功への重要なポイントとなります。

もう一つの大きな課題が中国との競争です。
アフリカ連合の本部が置かれるなど、アフリカの外交拠点の一つともいえるエチオピアでは、中国の巨大経済構想「一帯一路」により、インフラなどを含めて多くの中国資本が投入され、中国が存在感を示しています。この中に日本の中小企業が食い込んでいかなければなりません。
しかし、現地での視察では、故障などで停止する焼却炉もあり中国の事業の持続性は必ずしも高くないということも見えてきたということです。
会社としては、事業の安定性などを示すことで、中国企業との差別化を図り、現地の信頼を得ることで、商機につなげたい考えです。

田邊さんは、壁はあるものの、ひとつひとつ越えていきながら、事業化を目指して取り組んでいきたいとしています。

田邊 義康 専務
「埋め立て地に処理できなくなったゴミが山になっているために、汚臭が数キロ先の住宅に漂っているというような状態をなくせるようにしていきたい」

途上国の社会問題の解決に貢献しながら、ビジネスとして成り立たせる。
帯広市の企業の新たな取り組みの行方が注目されます。

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