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北見から沖縄へ カーリングサポート隊の挑戦

  • 2023年6月15日

カーリングが盛んな北見市で市民に競技を広める活動をしているのが、地域おこし協力隊の「カーリングサポート隊」です。1人で活動を担ってきた男性は任期最後のことし、ウインタースポーツとは縁遠い沖縄県でカーリングの体験会を開きました。挑戦の原動力になったのは“国内トップクラス”と自負する北見で培ってきたカーリングへの情熱でした。(北見放送局記者 新島俊輝)

「カーリングサポート隊」の上地雄大さんは2年前に北見市の地域おこし協力隊の隊員になって以来、市民に競技を広める活動を1人で切り盛りしてきました。主な活動は市内のカーリングホールで行われる体験会のサポートや、SNSを使った関連情報の発信です。
協力隊の任期最後のことし、上地さんに大きな転機が訪れました。出身地の沖縄県にあるスケート場がカーリングに大きな関心を寄せていることを知り、自身の経験を生かして現地で体験会を開く決心をしたのです。新たな取り組みに乗り出した心境を上地さんはこう話しています。

カーリングサポート隊 上地雄大さん
「カーリングホールに初めて行った時、高齢者も小中学生も一緒に試合をしていて、老若男女が同等に試合できるのはすごい魅力だと思いました。プライベートでもカーリングをやって、大会にも出場してきた中で、北見のカーリングがトップクラスだと感じました。この北見のカーリングを市外に広めたいと思いました」

“カーリングのまち”の期待を背負って

ただ、カーリングの競技環境がない沖縄県で体験会を開くにはいくつもの壁がありました。その1つが道具の準備です。特にストーンはスコットランドでしか製造しておらず、購入して調達しようとすると多くの時間がかかってしまいます。
“どう確保しようか”と思案していた上地さんを後押ししたのは、北見市内の建設会社でした。この会社は3年前まで自社でカーリング場を所有していて、“ぜひ普及活動に使ってほしい”と使わなくなっていたストーンを無償で貸し出してくれました。
こん包作業の当日、建設会社には1個20キロもあるストーンを丁寧に荷造りしていく上地さんと社員の姿がありました。長い歴史を積み重ねてきた“カーリングのまち”の期待を背負って、上地さんは沖縄へ向かいました。

“未開の地”沖縄にハウス出現

5月中旬、梅雨入り直前の沖縄に降り立った上地さんは早速、体験会の会場になる南風原町のスケート場を訪れました。出迎えた施設の職員の案内でリンクに足を運ぶと、大きな青と赤の円で描かれたハウスが出来上がっていました。時間をかけて施設にアドバイスしながら準備を進めてきただけに、感無量の様子でした。
その後、みずから氷の手入れも行った上地さんによると、このリンクはよく使われる外側が低く、投げたストーンが流れてしまうスケート場ならではの特徴があるそうです。それでも、「当日はカーリングの氷にもっと近づけられるので、競技のおもしろさは伝えられる」と自信を持っていました。

翌日の体験会に向けた打ち合わせでは、初めての人でもよりカーリングを楽しめるようにストーンを投げる「デリバリー」やミニゲームの回数を増やすことを確認しました。スケート場の担当者は沖縄で初めて行うカーリングに期待を高めていました。

スケート場担当者
「体験会の広告を出した時に県民からだけでなく県外からも連絡が来て、実際に参加する人もいます。ストーンを貸し出してくれたり、細かなことでも教えてくれたり、北見から協力してもらっているので、今回の体験会にかける思いは強いです」。

沖縄初の体験会で歓声響く

体験会当日の5月13日、南風原町のスケート場には小学生から60代まで18人の参加者が集まりました。当初の定員は10人でしたが、道具の準備が順調に進んだことで人数を増やせたそうです。

初めてのカーリングに期待を膨らませる参加者を前に、上地さんは冒頭のあいさつでこう呼びかけました。

カーリングサポート隊 上地雄大さん
「北見市の楽しいカーリングを沖縄に持って来られたらいいなと考えていたのが今回実現しました。きょうは無茶やケガをせずにカーリングを楽しむ、これができれば目標達成です」

会場ではまず、初めて触れるストーンやブラシなどの道具の使い方を体験してもらいました。上地さんが北見で学んできたコツを丁寧に教え、参加者もトラブルなくスムーズに習得していきました。

そしていよいよ、チームに分かれてのミニゲームの体験です。実際の試合さながらにスキップ(司令塔)の指示に合わせてストーンを投げ、狙いどおりの場所に止まると歓声が上がっていました。全体で2時間ほどのプログラムでしたが、参加者は重いストーンを滑りやすい氷の上でコントロールするカーリングの難しさとおもしろさを体感しました。

体験会参加者の女性
「カーリングを見るのが好きで、オリンピックの中継を見ていましたが、やるのは初めてでした。力加減が難しかったですが、見ていたものを実際に体験できる貴重な機会ですごく楽しかったです」

体験会参加者の男の子
「ストーンを投げたり、スイープをしたりするのはテレビで見ているよりも難しかったです。今度やる時はストーンをうまく投げられるようになりたいです」

体験会の最後に上地さんはカーリングのルールなどを印刷したクリアファイルを参加者全員にプレゼントしました。今回の取り組みを通じて改めてカーリングの魅力を実感した上地さんは、今後も競技の普及活動に尽くしていきたいと話してくれました。

カーリングサポート隊 上地雄大さん
「カーリングを楽しくプレーする姿は北見も沖縄も変わらないんだなと思いました。カーリングは体力レベルがそこまで必要ではなく入り口が広いスポーツなので、『今までスポーツの経験がないから怖い』などと思わずに、1度ストーンを投げてみて魅力に触れてほしい。カーリングをしたことがない人が気軽に挑戦できる体験会や教室の開催は今後も続けていきたいです」

〈取材後記〉

“沖縄でカーリングを”という上地さんの大胆な挑戦には、北見市を拠点に活動するカーリング女子の「ロコ・ソラーレ」も賛同していて、今回と同じ沖縄県南風原町のスケート場で6月24日に体験会を開きます。現地ではカーリングへの関心が高まってきているそうで、スケート場の担当者は沖縄県内の競技団体の設立やチームの創設に向けて準備を進めているということです。
日本の北と南で生まれた交流から近い将来、国内のカーリングを底上げする新しい力が芽生えてくるかもしれません。

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「カーリングのすそ野拡大目指す!」

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