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森崎博之さんと考えた北海道の新たな学び 北海道まるごとラジオ放送後記

  • 2024年4月10日

4月4日(木)の北海道まるごとラジオは札幌放送局からお送りしました。今回札幌から全国にお届けするテーマは、「新年度がスタート!新たな学びを北海道で」です。

進行は、北海道生まれの子ども2人を育てる飯島徹郎アナウンサーと、札幌出身、江連すみれ(筆者)が担当。ゲストは、北海道東川町ご出身、TEAM NACSリーダーの森崎博之さん!この16年間、700軒にのぼる農家を訪ね歩くなど、道内の農業に精通。また、3人の子どもを育てる父親として、道内での若い世代の新たな学びを応援してくれました。

地面の中を掘り進める「掘削の技術」の専門学校!

放送では、北海道ならではの学校を取り上げました。まずご紹介したのは、地面の中を掘り進める「掘削(くっさく)の技術」を学ぶことができる「学校法人ジオパワー学園 掘削技術専門学校」。今、注目の地熱発電や洋上風力発電の開発の際にも欠かせない技術で、学生たちは、地中深く掘り進め、地質の調査などの技術を高めています。

この専門学校は、札幌から東におよそ230キロ、北海道東部の白糠町にあります。まだ新しく、開校3年目。1年かけて、掘削に必要なさまざまな技術を学びます。定員80人に対して今年入学するのは15人。昨年度は14人が卒業しました。

森崎さん)ちょっと少ない…、ちょっとどころじゃない。でも、ねらい目ですね。志せばいけますね。

江連)私が学生の時はまだなかった学校ですし、そもそも掘削を専門に学ぶことができる学校があること自体が道内でもそれほど知られていないという気もしますね。

今年入学するのは、18歳から45歳のみなさん。高校を卒業してからこの学校に入る人もいれば、これまで林業に従事していた人、大学でロボット工学を学んでいた人などさまざまです。
そして、企業からも注目されています。 2023年度の卒業生に対する企業の求人の状況について、講師で学校の設立にも関わった島田邦明(しまだ・くにあき)さんに教えてもらいました。

島田さん)2023年度の求人は、約50社から来ております。複数名を希望している会社が多いので、総人数は100名を超える人数になります。ある会社は、自社に入ってくれたら、学校の授業料については別途、会社が給料以外に負担しますよと。場合によっては、入社を条件にしてもらえれば先払いで授業料を払ってもいいですよという会社もあります。

この学校では、前期で「ロータリー掘削」という基本的な技術を学びます。ドリルを回転させて掘っていく技術で、実習でつかう小型のものだと、深さ10数メートルまで掘ることができます。この技術、ただドリルを回転させて掘り進めればいいというわけではありません。 地中に硬い岩盤がある場合には、それを避けるため、進む方向を微妙に曲げながら掘っていくなど、細かくコントロールする必要があります。

森崎さん)しっかりとした知識が必要になってくることがわかりました。開発には切っても切れないというか、本当に大切なお仕事ですよね。

掘削の技術は、これまでは石油、ガスといった地下資源の開発や鉱物などの発掘などに活用されてきました。今後それらに加えて、地熱の利用や二酸化炭素を回収して地中深くに封じ込める技術、洋上風力発電の建設の現場など新たな分野での活用も期待されているそうです。

森崎さん)エネルギーっていうのはこれから注目が高まる場所ですし、そこに直結しているお仕事なんですね。すごく新しくて、実は昔からあるけど、最先端を掘り進めていっているって感じますね。

校舎の共有スペースには、掘削に関する資料や、モニターを見ながら操縦かんを操作して、掘削を体験できるシミュレーターもありました。シミュレーターを操作していたのは、角田敏之(つのだ・としゆき)さん、40歳です。この学校に来るまでは、13年間、映画やドラマなどの字幕を制作する会社につとめていました。 40歳を前に、子どもも生まれたこともあり、未来の世代につながる仕事に就きたいとこの学校に入りました。この春からは、地熱などを使って地域のエネルギーを作り出す会社で働きます。

角田さん)未来の世代に、きちんとしたものを残したいっていう思いもあって、その辺りも含めての決断でしたね。いろいろプレッシャーや不安が大きかったんですけど、1年間学校で学ぶことによって、最初のゼロからイチっていうのが、きちんと踏めたと思うんですよ。私は地熱発電、発電所の計画から運転までをやる会社に就職して、そこで地熱発電の最初から最後までをやるということになると思います。

この春、1年の学びを終えて、14人が卒業しました。これまでの2年間、卒業生の就職率は100%で、掘削会社や地熱開発の会社の他、建設会社や地質調査会社などに就職しました。島田先生から、卒業生とこれからやってくる新入生へのメッセージです。

島田さん)地下を掘削していくのは1㎝先も実は見えない、そういう世界の中で、見えないからこそ難しさも当然あるんですけど、逆に言うとそれがための面白さもある。そういうふうに仕事って、やはり短時間ではないので、どこかに面白さを見つけながら進めていくと、時間がある程度かかるにしても、私は優秀な技術者になれると思います。

北海道ならではのカリキュラムを持つ高校をご紹介!🏫

ここからは地域に根ざしたカリキュラムを持っている高校をいくつかご紹介します。 その土地その土地で特色ある授業が行われています。

① まずご紹介するのは、静内農業高等学校!
日高地方の新ひだか町にあって、新ひだか町は馬産地として知られています。

森崎さん)北海道たくさん大好きな景色ありますけど、草原を馬がのびのびと走っている姿、好きですね~!

馬の町ということで、この高校では、生徒たちがサラブレッドを生産して飼育しています。1年生で農業と馬に関わる基礎を学びながら、繁殖ひん馬の管理や出産の準備に携わります。2年生では子馬の出産に立ち会い、3年生で、自分たちで育てた馬を、競走馬の競りで販売するところまで行います。

森崎さん)競りまでやるんだ!

サラブレッドの生産は2000年から行っていて、これまでに15頭の馬が競走馬になっています。実際にレースで活躍している馬もいます。馬の病気について勉強もしていて、卒業後は、きゅう務員、JRA、牧場など馬に関する仕事に就く人が多いということでした。

② 続いてご紹介するのは、幌加内高校! 道北、旭川の北側にある町。地元の特産品に関連したカリキュラムがあります。

江連) 農業に詳しい森崎さん、幌加内の農産品といえば?

森崎さん)そばです!そば!!!

日本一のそばの産地として有名な幌加内町。 昼と夜の寒暖差を活かしたそば作りが盛んです。そんな幌加内町にあるこの高校では、そばに関する授業が必修科目になっています。テキストは、先生と町の愛好家が作ったオリジナル。座学から、そば畑での種まき実習、そば打ちの実技実習まで、さまざまな授業があります。

江連)森崎さんはそばうったことありますか?

森崎さん)もちろんあります。10回は越えます。短くて、ぼそぼそなそばですけど、それでも自分で打ったそばは格別です。

この高校では、一年に一度、そば道 段位認定制度に挑戦していて、全員初段はとって卒業しています。卒業生の中には、ドイツの日本料理店でそば打ちをしている人もいるということでした。

森崎さん)世界を代表してますね!本当に幌加内ならではの学びですね。

③ 最後にご紹介するのは、おといねっぷ美術工芸高校です。
村は、道北、上川の北側にあり、人口が600人ほど。道内で一番人口が少ない村です。 実は、そのうちの110人がこの高校の生徒です。

森崎さん)6分の1がこの高校の生徒!

道外からも2割ほど生徒が来ていて、一番遠い人は、鹿児島から来たという人もいるようです。2年生で美術と工芸のコースに分かれ、工芸のコースでは、木材を使っておもちゃから家具まで幅広く制作します。村の資源である木に付加価値を高めたいと、工芸科を導入したということでした。生徒たちは村民運動会に参加したり、美術館の手伝いなどを通して町の人たちと交流しているそうです。

林業の担い手を育てる専門学校

番組後半では、北海道の豊かな森林を守り、育て、次の世代に引き継ぐ「山のスペシャリスト」を育てる学校「北海道立 北の森づくり専門学院」(旭川市)についてご紹介しました。
北海道は、全国の森林面積の4分の1を占めていて、林業の担い手を育てることを目的に、4年前に設立されました。林業・木材産業学科のみの2年制で、学生数は2学年合わせて65人。キャンパスでは10代から30代の学生たちがチェーンソーの使い方を学んだり、林業機械の操作をシミュレーターを使って学んだりしていました。

森崎さん)林業に特化した学校ということですね。

実は、この40年ほどで道内の林業従事者は5分の1に減少しています。長年、安い外国産材を輸入してきたことで国産材の需要が減り、山林の雇用の場が失われてきたという背景があります。一方で、北海道の人工林の7割が、植えてから40年以上が経過。多くの木々がちょうど刈り取るのに適した時期を迎えていることもあって、北海道の林業は今、チャンスを迎えているそうです。学校の教育計画を立てた、講師の統括、石原徹(いしはら・とおる)さんは、現状をこのように話します。

石原さん)長期にわたる円安傾向で外国産材の価格が上昇してきたこと。一方で先人たちが昭和の時代に植えた木が国産材としては非常に充実していますので、国産材のほうにマーケットはシフトしてきておりまして、国産材自給率も今40%を超えるところまで上昇してきています。国内での国産材のマーケットというのが、これから非常に有望であると考えられます。

森崎さん)市場的には逆転してきているんですね。

この学校の最大の特徴は授業の3分の2が実習ということです。実際に森の中に入り、機材を扱い、実践力を身に付けていきます。カリキュラムの中には、2週間、企業と雇用契約を結んで、賃金を受け取りながら就業体験をすることも組み込まれていて、就職面でのバックアップも充実させています。
実際に、この就業体験を経て、深川市にある北空知森林組合に就職したという方に話が聞けました。就職したのは、向井琳(むかい・りん)さんです。お父さんが山で猟をしていて、幼い頃から山へのなじみはありましたが、実際に就職するとなると職場の雰囲気や人間関係に不安があったそうですが・・・。

向井さん)2週間だと、いろいろな人の助けがあったので、違和感みたいなものは入ってみてあまりなかったですね。長期就業体験があったので、いきなり入って、あ、ここ違うな、っていうミスマッチとかは全然なかったので、そこは良かったかなと思います。

一方、採用した北空知森林組合では、これまで山に入る女性職員は採用したことがなかったのですが、2週間働いてもらったことで採用につながったと言います。採用を担当した参事の久村尚史(ひさむら・なおふみ)さんの話です。

久村さん)初めて現場に行く女性職員を採ったんですけど、初めは体力的に難しいかなと思ったのですが、男性職員の先輩について一生懸命歩いていますし、体力的には問題ないかなと思いますし、人柄が何と言ってもよかったので。特に森林組合は、森林所有者とのコミュニケーションといいますか、山づくりの後押しをしてあげないといけないということで、話し合いも大切なので、職員同士だけでなく、周りに対しての気配りだとか目配りができる人が欲しいので。

江連)女性で林業がやりたいと言っても、前例がないとなかなか就業に結び付きにくかったようですね。

実は、学校では、一学年30人のうち4人ほど、1割くらいは女性で、家具や木工を入り口に林業に関心をもつ人が増えているそうです。こうした、より実践的なカリキュラムによって、スムーズな就職につなげたいと学校は考えています。

森崎さん)学校のカリキュラムで賃金をもらって働きながら学べるってすばらしいシステムですね。

さらに、北海道の森林が置かれている状況を広く知ってほしいと野生動物の管理も学ぶことができ、希望者はわな猟の免許がとることができます。この学校では昨年度、希望した29人全員の就職が決まり、地域の森林組合や苗木や種を作る会社、造林企業などに進みました。今年度は、あらたに31人が入学して、林業の担い手を目指していくということです。

森崎さん)できたばかりの学校ですけれども、本当に需要にあふれた学校で、すばらしいですよね。

番組では、みなさんから「新たに始めたいこと」についてもメッセージをいただき、森崎さんからエールを送っていただきました!

森崎さん)学びって一生ですよね。一生学び。思い切ったスタートを切りたいですね。春なんだから!

飯島)改めてきょう振り返ってみて、北海道の潜在能力、ポテンシャルについてはどう感じられましたか?

森崎さん)ぶっといものを感じました。熱量半端ないです。掘削じゃないですけど、掘り出せば北海道の魅力まだまだたくさんあるんだなって。それを若い世代が学んで次世代につなげていくって、いいサイクルができあがっているなって安心しました。私は普通高校でしたけど、農業高校をはじめ、社会の即戦力、卒業したらすぐ社会の、人々の役に立てる学びってすばらしいなって思いました。自分も含めて、この北海道から日本のために頑張っていこうという力、次の世代にために頑張っていこうぜ俺たち!よいしょ~!!

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