ページの本文へ

NHK北海道WEB

  1. NHK北海道
  2. NHK北海道WEB
  3. ほっとニュースweb
  4. 憧れの小平奈緒さんを追って世界へ 帯広南商業高校・笹渕和花選手

憧れの小平奈緒さんを追って世界へ 帯広南商業高校・笹渕和花選手

  • 2024年4月3日

スピードスケートが盛んな帯広に、中学生で史上3人目となる女子500メートルの記録をマークしたスプリンターがいます。帯広南商業高校の16歳、笹渕和花選手です。将来が期待される笹渕選手は憧れの存在にオリンピック金メダリストの小平奈緒さんを挙げて、背中を追いかけています。笹渕選手は今シーズン、憧れの人が見守る中で、韓国で開かれたユースオリンピックに臨みました。憧れを力に変えて世界に挑んだ笹渕選手に迫ります。(NHK札幌放送局 西田理人)

中学生で史上3人目の快挙達成

笹渕和花選手は中学3年の時に39秒95をマーク。中学生で40秒台を切るのは、オリンピック金メダリストの小平奈緒さん、髙木美帆選手に続いて3人目でした。

笹渕和花選手
「ただただ嬉しくて『いぇーい』って感じでした。40秒台をきることは大きい壁だなって思っていたので、やっぱそこ乗り越えられた、突破できたのは、自分の中では大きかったです」

おととし・全日本距離別選手権

高校入学後はフィジカル強化

笹渕選手は、去年4月に地元の強豪・帯広南商業高校に進学。入学してからは、本格的な筋力トレーニングに初めて取り組み、下半身を中心に筋肉がつき、滑りにいい変化が生まれています。
去年10月に行われたシーズンの開幕戦、国内のトップ選手が集う全日本距離別選手権に出場した笹渕選手は、鋭いスタートを決めると、終盤のカーブも伸びのある滑りで39秒18をマーク。自己ベストをさらに伸ばして著しい成長を示しました。

笹渕和花選手
「いい結果が出るのか、楽しみな気持ちと不安な気持ちがあって、ちゃんと結果が出たのですごく嬉しかったです。トレーニングの効果で太ももからお尻にかけての筋肉がかなりついて、がっしりしてきましたし、コーナーで角度がつくようになって滑りに生きています。成長が実感できるレースでした」

原動力は憧れの存在

成長を見せる笹渕選手には、憧れの存在がいます。6年前に開かれたピョンチャンオリンピックの女子500メートルの金メダリスト、小平奈緒さんです。女子のスピードスケートで日本選手初の金メダルを獲得した小平さんは、真摯に競技に打ち込む姿からファンやライバルからも尊敬され、「氷上の哲学者」とも称されました。

笹渕選手が小学生のころ、心を動かされたのは、ピョンチャンオリンピックで金メダルを獲得した小平さんの強さだけでなく、レース後にライバルで銀メダルを獲得したイ・サンファさんと互いにたたえ合う姿でした。憧れを抱いたきっかけでした。

笹渕和花選手
「イ・サンファさんとことばをかけあっているシーンがすごく印象的で、スポーツの素晴らしいところが詰まっているなと思いました。周りの人から愛される人間性が好きで、すてきな方だなと思います。自分がスケートをこれからも続けていきたいと考えたときに、一番の大きな目標とするのは何だろうと考えたら、小平さんや金メダルということばが頭に浮かびました」

そんな笹渕選手が大切にしているものがあります。それは小平さんから小学生の時にもらったスケート靴のエッジカバーです。笹渕選手の母親が小平さんからもらった用具で、現役時代に小平さんがオランダでスピードスケートに打ち込んでいる時に使っていた用具でした。

そのエッジカバーを受け取った際、小平さんからのメッセージも同封されていました。いまでも練習の前や大きなレースの前に見返す大切なものとなっています。

笹渕和花選手
「『世界の舞台で』と書いてあったので、目指して頑張りたいなと思いました。小平さんという憧れの存在は、これからずっとスケートを続けていく上で、目標になってくると思うので、もっと努力して強くなりたいと思います」

世界の舞台へ

順調に力を伸ばす笹渕選手は今シーズン、初めて国際大会の舞台を経験しました。そのひとつが1月に韓国で開かれたユースオリンピックです。大会の会場は、小平さんがオリンピックで金メダルを獲得したリンクでした。

笹渕和花選手
「小平さんが金メダルを獲得した会場で、自分も同じ金メダル取れたらかっこいいというか、スケート人生の中でも大きな存在になるのではないかなと思います」

レース前日、笹渕選手は小平さんと一緒にリンクの上にいました。小平さんが若い世代にみずからの経験を伝える「アスリートロールモデル」として会場に訪れていたのです。笹渕選手は、500メートルで重要となるスタートについて、直接指導を受けました。今シーズン、笹渕選手のスタートは、感覚に頼っていたこともあって、うまく決まることが少なくなっていました。小平さんと一緒に、苦戦してきたスタートの足の位置などを確認して、翌日のレースに備えました。

笹渕和花選手
「スタートは教えてもらうってことがあまりなかったので、感覚でやっていました。アドバイスを元に何とか改善してという感じでした」。

笹渕選手は、金メダルを目指してユースオリンピックに臨みましたが、実は 大会前にインフルエンザにかかり、2キロほど体重も落ちて万全ではない状態でした。それでも、レース前日には、小平さんからもらったメッセージを見返して心を落ち着かせました。
そして、小平さんが見守る中で、レースに挑みました。

笹渕和花選手
「次は私がこの日本のスケートを引っ張っていくということを伝えたかったです」

レースでは、笹渕選手がスタートを自己ベストに近いタイムで決めて、100メートルを全体トップで通過しました。しかし、最後のカーブに入る前のバックストレートで「気持ちが焦ってしまった」と体勢を少し崩しました。このミスでタイムが落ちて、フィニッシュは39秒65。結果は銅メダルでした。

笹渕和花選手
「小平さんが金メダルを取った会場で滑ることができてすごくうれしかったです。悔しさもありますが、この大きな大会でメダルを取れたこともすごくうれしく思います。今後は、ただ速いだけの選手ではなく何事に対しても選手になりたい」

憧れを力に

目標としていた金メダルには届かなかった笹渕選手ですが、レース後には晴れやかな表情で「強い選手になりたい」と、さらなる高みを目指す決心を語りました。
そして、今シーズンが終わった後のインタビューでは、2年後に迫る冬のオリンピック・ミラノ・コルティナダンペッツォ大会を目指す覚悟を明かしてくれました。2年後、笹渕選手は高校3年生です。
 
そんな笹渕選手に、改めて小平さんの存在と「憧れの力」について聞いてみました。

笹渕和花選手
「ずっとスケートに取り組んできた小平さんは素敵ですし、簡単にまねできないですね。それでもやっぱり目標がないと、人は成長できないのかなと思うので、自分にとっては小平さんが一番の大きな目標。1つ1つの目標を乗り越えていくのに、すごく大きな存在かなと思います。いつか、金メダルをとりたいですね」

ページトップに戻る