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【ふるさと自慢】 占冠村「豊かな森の恵み メープルシロップ」

  • 2024年2月19日

上川の占冠村。総面積の94%を森林が占める、緑豊かな村です。豊富な森林資源を使って新たな特産品を作ろうと2016年に商品化されたのが、村のシンボル樹「イタヤカエデ」を使ったメープルシロップ。製造補助や販売促進を担当する占冠村農林課林業振興室の田中慧さんに紹介してもらいました。(2023年11月放送) 

占冠村のメープルシロップはどのような経緯で誕生したのでしょうか?

占冠村の豊かな森林を使って新しい特産品を作ろうと事業が始まりました。イタヤカエデは村の木として長年住民に親しまれてきた木。冬の冷え込みも道内でも有数の地で、本場カナダの気候と似ていたことも事業開始の大きな後押しとなりました。
また、村の基幹産業である林業の閑散期となる、冬場の雇用創出としての側面もありました。現在でも樹液の採取やシロップの製造作業は地元の林業従事者が関わって行なっています。

それまで村内でメープルシロップ作りは行われていなかったんですよね?立ち上げは大変だったのではないでしょうか?

それまでは村の教育事業として小規模に行われていました。しかし、実際に商品化を行うということになると採取する森の整備や使用する器具、作り方に至るまでそれまでとは違い、一度専門家を招いて基礎から学び直すことになりました。樹液を煮詰めるという作業はシンプルなようですが、とても奥の深いもの。カエデの管理や樹液の保管など多くの要素が関係してきます。それに加えて樹液が流れ出すのは1年の中でも1か月程度と短いため、限られた期間の中で質と量を安定させるのは苦労しました。試行錯誤を繰り返しながら生産体制を整え、2016年4月に初めて商品化へとこぎ着けました。

その後も改良を重ねてきたんですよね?

はい。例えば、煮詰め作業の効率を高めるために、ボイラーの改良に取り組み、2年目には製造量が大幅に増えました。ボイラーに関しては、現在でも毎年シーズンに合わせて少しずつ改良を重ねています。その後も、森林整備を通して樹液を採取するエリアを広げ、少しずつ生産量を増やしてきました。また、持続可能な生産というのがこの事業の大きな持ち味でもあるので、カエデの植栽や新たな担い手の育成なども行い、将来にわたって作り続けられるような取り組みを行なっています。

占冠村のメープルシロップはどんな味がするんでしょうか?

コクがありながらもすっきりとした甘さが特徴です。占冠村で行われているのは樹液を大鍋でゆっくりと煮詰めていく伝統的な作り方。長時間煮詰めたシロップを丁寧にろ過することで風味豊かなおいしいシロップに仕上がっています。占冠の自然を感じられるものになっていると思うので、ぜひ多くの方に食べていただきたいですね。

メープルシロップをおいしくいただくには、どんな方法がおすすめですか?

ホットケーキやトーストなどにそのままかけて食べてもおいしいです。また煮物や肉料理で使っていただくのも、味に深みが出るのでおすすめです。豊富なポリフェノールは抗酸化作用もあり、ビタミンやミネラルも含んでいて健康にもいいので、ぜひふだんの食生活に取り入れていただきたいです。

田中さん自身もメープルシロップに関わる仕事をしているんですよね?

はい。地域おこし協力隊として2020年12月に移住し、メープルシロップの製造作業やPR活動を行なってきました。在庫管理やふるさと納税事業での訴求にも力を入れてきました。また、モデルツアーなどで村外の方が森と接する機会を作る一方で、樹液煮詰め体験のワークショップや学校での出前授業など村民の方に向けたPR活動にも取り組んでいます。

今後に向けて、田中さんの抱負を聞かせてください。

メープルシロップをもっと深く知っていきたいです。採取から管理、製造へと続くプロセスをより深く学んで、より品質の高い製品になるよう努力していきたい。
また、メープルシロップ事業はこの森の豊かさの一つの表れだと思っています。占冠村の森が生み出す恵みはメープルシロップ以外にもたくさんあり、それを知ってもらうきっかけとしてこのメープルシロップ事業を今後より多くの人に知っていただければと思っています。

編集後記

林業の持続可能性を高めることに繋がる、面白い取り組みだと感じました。メープルシロップは、ことしも5月ごろに販売される予定だそうです。この機会に、占冠村を訪れて、森の豊かさを感じてみてはいかがでしょうか。(NHK旭川放送局 北西哲也)

 

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