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子どもの姿勢を良くしたい!函館市の小学校で独自の取り組み

  • 2023年5月16日

子どもの姿勢、気になったことはありませんか。

私(記者)には小学6年生と2年生の息子2人がいますが、お世辞にも2人の姿勢はいいとは言えません。椅子の上であぐらをかいたり、机に覆いかぶさるように字を書いたり、猫背で本を読んだり等々。そのたびに注意はしますが、なかなか直りません。

ゲームやスマホの普及で子どもの体力低下が以前から問題になっているとはいえ、なんとか姿勢を良くする方法はないものか・・・。そう思案していたところ、子どもの姿勢を改善しようと取り組んでいる函館市の小学校があると聞き、取材してみることにしました。 

授業が終わると・・・

函館市恵山地区にある、えさん小学校です。在校児童40人の小さな学校です。

一日の授業が終わると、子どもたちは下校の準備を始めます。そしてそのまま下校するのかと思いきや、始めたのは・・・。

体操です。その名も「えさん小体操」。学校が独自に考案し、ことし3月から体育の時間や下校前の時間に毎日行っています。

「ラジオ体操よりは楽だと思うけど、体を横に伸ばす体操が少しきついです」

なぜ体操!?

去年4月に赴任したばかりの長浦紀華校長です。

長浦校長は児童の様子を見るために毎日、教室を回っていますが、そこで授業中の子どもたちの姿勢が悪いことに気づいたといいます。確かに私(記者)が取材しているときも、姿勢がよくないと感じる子どもを多くみかけました。

いちばん多いのが猫背。そのほかにも机にひじをつく子、両足が床についていない子、首が前に出ている子、椅子に浅く腰掛けて座る子など、悪いと感じる姿勢はさまざまです。

「最初見たときに、ちょっとびっくりしました。これは子どもたちの気持ちの問題なのか、それとも体幹の問題なのか、どっちなのかなというのがずっと気になっていました」

長浦校長が背景のひとつにあると感じているのが、子どもの筋力不足です。えさん小学校では、ほとんどの児童が通学にスクールバスか車を利用しています。このうちスクールバスはそれぞれの児童の自宅近くに停車し、学校の正面玄関の前に横付けして到着します。このため、通学で歩く距離は、ほんのわずかしかありません。さらに家庭での遊びもオンラインゲームが中心のため、体を動かす機会がほとんどないのが実情だといいます。

えさん小学校 長浦紀華校長
「恵山地区では、ほとんどの子どもがスクールバスで通っていますが、スクールバスのエリアじゃない子どもも保護者の方に車で送迎してもらっているという状況です。このため、子どもが運動する時間が絶対的に少ないと感じています。そこで、まずは体育の授業以外の時間で運動できるような機会を作る必要があるのではないかと考えました。この姿勢の問題と体力や運動能力の問題は相関関係にあると考えているので、この2つの問題を同時に少しでも軽減できるようなものはないかということで、今回この体操を考案することにしました」

8割が“不良”姿勢

体操を作るにあたって専門家にも協力を仰ぎました。そのひとりが、運動生理学に詳しい北海道教育大学札幌校の神林勲教授です。

(左端が理想の姿勢。ほかの3つは悪い姿勢の例)

神林教授によると、理想的な姿勢は耳と肩、膝などが一直線になった状態。それ以外は、すべて悪い姿勢だといいます。札幌市内の小学5年生を対象にした過去の調査では、およそ8割が悪い姿勢だったということです。

「今の子たちは、すでにしゃがめないとか、手をまっすぐ上に上げられない、まっすぐ前に伸ばせない、ひじが伸びないなど、もうすでに年齢がかなり高くなった人たちに生じるようなことがすでに起きています。子どものうちからそういう状態だと、さらに成人していくともっとひどくなる可能性があります。さらに姿勢が悪いことで生活習慣病にもつながっていくことが考えられます」

そこで「えさん小体操」では、全身の筋肉をバランスよく鍛えることを重視したといいます。座ったまま肩回しやもも上げなどを行うほか、立った状態で胸を広げたり足を前に踏み込んだりと、あわせて12の動きを取り入れました。

北海道教育大学札幌校 神林勲教授
「バランスよく体を使う、筋肉のバランスをとっていくということに主眼を置いて、どんな姿勢の子でもバランスをとれるように考えて体操を作りました。それによって、エネルギーをあまり使わなくても立位姿勢や座位姿勢をキープできることにつながっていきます。その結果、いろんな面で良い影響が出てくるのではないかと考えています」

自分の命を守る

体操を続けることで期待されているのが、体力の向上です。この学校では、子どもの体力不足は死活問題になるといいます。最大の理由が、学校が海のすぐそばにあることです。津波の避難場所は学校から約400メートル離れた高台にあり、万が一津波が来た場合、子どもたちはその高台まで全力で走って逃げる力が求められるのです。

「細い道を進んだ奥のほうに階段があります。あの階段の上りきったところに避難場所の高台があるのですが、けっこうあの階段が長いんです。高台までは上り坂が中心になっているので、津波がもし来た場合、体力がなければ諦めてしまう子どももいるのではないかと思いますし、諦める気持ちはなかったとしても、速く走れなくて被害に巻き込まれてしまう可能性もあります。正しい姿勢の指導っていうのは、こうした避難のところにも関係してくると思っています」

効果を検証へ

学校は今後、神林教授らと協力して子どもの姿勢の変化を定期的に撮影し、体操が姿勢に及ぼす効果を検証していくことにしています。

えさん小学校 長浦紀華校長
「体操であれば天気に関係なく毎日、短時間で取り組めますし、家でもやろうと思えばできます。体操によって姿勢が改善され、体力の向上にもつながれば、諦めない気持ちや集中力にも関係してくると考えているので、子どもの力を高める上では体操はずっと続けていく必要があると思っています」

函館局 鮎合記者が取材した記事はこちらもどうぞ!
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