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黒松内町の新たな特産品「あゆかん」とは?

  • 2023年1月26日

こんにちは!「ほっとニュース道央いぶりDAYひだか」道央担当リポーター、坂井里紗です。「ことしは雪が少ないな」「例年より暖かいな」なんて感じていましたが(札幌市中心部にいる坂井個人の感想です)、ここにきて一気に冷え込みが強くなり、大雪の影響も出てきて北海道の本領発揮を感じています。今回のななまるマップでは、そんな寒い時期にぴったりのあたたか~い物をご紹介します。

その名も「あゆかん」です。…と言われてもなかなかピンときませんよね。アユを使った缶詰の名前?どんなものだろうと想像しながらやってきたのは、後志の南に位置する黒松内町です。取材をしたのも、雪が降って冷え込んでいた日でした。

案内してくれたのは「あゆかん」の発案者、古本世志人さんです。2年前から地域おこし協力隊で黒松内町観光協会に所属しています。古本さん、「あゆかん」って何ですか??

黒松内町観光協会 地域おこし協力隊 古本世志人さん
「『あゆかん』の『あゆ』は魚の『鮎』。『かん』は日本酒を温めた『熱燗(あつかん)』の『燗』なんです。」

「あゆかん」=「鮎燗」。焼いたアユに熱燗をかけて飲むものだそうです。町を流れる朱太川には、暖かくなると多くのアユが産卵のためにやってきます。アユ釣りも盛んです。きれいな水とエサとなるコケに恵まれ、味も抜群!アユの味を競う全国コンテストでグランプリを受賞したこともあるんです。そんな自慢のアユを使った「鮎燗」。作り方を教えてもらえるということで、案内されたのは町内にある鮮魚店です。

「鮎燗」作りに欠かせない重要な作業を見せてくれるのは、人呼んで「田中ブラザーズ」。田中豪治(右)さんと弟の田中良治さん(左)です。

ふだんは別の場所でやるアユの下処理の作業を特別に店内で見せていただきました。去年の9月初旬に取って冷凍していたアユを流水で解凍し、はらわたやエラなどを丁寧に取り除いていきます。

そのあと、塩でもんでいきます。この下処理がとても重要だといいます。

田中商店 田中良治さん
「中に石が入っていることもあるので内臓をしっかり取っています。また塩でもむことによって川魚の独特の臭みが消えます。アユの表面についている汚れもしっかり取れるので、大事にしていますね。」

田中さん、ありがとうございました!続いては「焼く」作業です。訪れたのは町内の施設にある調理室。特別に場所を借りて見せていただいた上、「焼く」工程を体験させていただきました。

はじめに、口から串刺しにします。皮に傷がついたり穴が開いたりしないよう、まっすぐ、突き抜けない手前で止めます。

次に炭火で焼いていきます。焦がさないように、弱火でじっくりと。マスク越しでも香ばしい匂いがしてきます。おいしそう!もう食べちゃいたい!ですが、まだ完成ではありません。焼きあがったアユは3日間ほど乾燥させます。

それを真空パックに入れたのがこちら。これに熱燗をかけて楽しむんですが、ここでひと手間かけると、さらにおいしさがアップするといいます。

黒松内町観光協会 地域おこし協力隊 古本世志人さん
「真空パックに入れたアユを取り出して火であぶると、より香ばしくなっておいしくなります。」

あぶるのはちょっと焦げ目がつくまで。いい色になっていきます。

熱燗の登場です。注ぐとうまみがじゅわ~っと広がるよう。お酒に色がついているのが分かりますよね。

いよいよ「鮎燗」を飲む準備が整いました!

いただくと…たまらん!アユの味が強く引き立っていて、とっても香ばしいです。日本酒との相性もよく、奥深い味わいでした。おいしかったです!

黒松内町には産卵のためにやってきたアユを捕まえて人工ふ化させるふ化場もあります。古本さんに「鮎燗」誕生のきっかけを教えてもらいました。

黒松内町観光協会 地域おこし協力隊 古本世志人さん
「そもそもアユは、産卵したら役目を終えて死んでしまいます。『せっかく生きてきたのだから、産卵したあとのアユを利用できないか』というのが鮎燗を考案したきっかけです。お土産としていろんな人に渡してほしいという気持ちもあったので、焼いたり乾燥させたりして日持ちさせる工夫をしました。さらに、海外の人にも日本らしさを感じてほしいと思い、日本っぽいものというところでお酒を絡ませられないかなと考えました」

古本さんは「鮎燗」を通じて、多くの人に黒松内町のことを知ってほしいと願っています。

黒松内町観光協会 地域おこし協力隊 古本世志人さん
「『黒松内らしいな』とか、味に関しては『とても香ばしく香りもいい』『日本酒が今後いろんな形で楽しめるようになったよ』という感想をいただきました。黒松内町には、チーズとかベーコンとか特産品がいくつかあるんですけど、それだけじゃなくてアユも特産品の一つとしてこれから売っていこうと。まずは黒松内町を知ってもらうこと。そして黒松内町を知ってもらったあとは、実際のアユを食べに黒松内町に来てほしいなって思っています。」

黒松内町の新名物「鮎燗」については、26日(木)午後6時40分からの「ほっとニュース道央いぶりDAYひだか」でご紹介する予定です!寒さ厳しい北海道ですが、ぜひ、テレビの前であたたかいひと時を味わいませんか?

取材後記

今回案内してくださった古本さんには、去年から黒松内町のアユの情報や魅力をたくさん教えてもらっていて、やっとお会いすることができました!実は地域おこし協力隊のほかにも「朱太川漁業協同組合」の一員だったり、町で渓流釣りガイドをやっていたりととても活動的な方!前職がテレビディレクターだったこともあり、取材にも気さくに協力してくださいました。もともと自然が好きという古本さんは、町の魅力について「川も山も海もどこでもすぐに行けることができるんですよね。暮らしている人たちはみんな優しいだけじゃなくて自然に対してすごく真摯な態度で生きている人たちが多くそれがすごく素敵だなっていう風に思います」と語ってくれました。私も取材を通して、アユの釣り方やふ化事業について教えてくださった漁協の皆さんや、下処理の仕方を教えてくださった、おおらかで優しい田中ブラザーズのおふたりなど町の人たちと出会い、アユに、そして自然に敬意を払ってとても大切に接しているのが伝わってきました。古本さんたちの黒松内「愛」で作られた「鮎燗」は、昨夏、80個限定で販売したところ、2週間ほどで完売したそうです。今回はおよそ170個限定で販売されています。また、来年以降も作っていきたいということです。飲みたい!と思った方は、まずは黒松内町観光協会までお問い合わせください。「鮎燗」を通して多くの人が黒松内町の魅力を感じられたらうれしいですね!そして私も、ことしはアユを味わいに再び黒松内町に行けるといいな♪

道央いぶりDAYひだか
坂井里紗
2023年1月26日

ことし最初のななまるマップでは、開館40周年を迎えた札幌市厚別区の街なかにある「サンピアザ水族館」を取材しました。市民に長く愛される水族館の今と館長の思いをぜひご覧ください。
市民に愛されて40年!街なかの水族館

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