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北のことばお兄さん あなたの疑問に答えます!⑦

  • 2024年1月12日

音更町出身の伊林です。お寄せいただいた、あなたの疑問にお答えする第7回です! 今回は▼質問に答える時、最初に「そうですね」と言うのが気になる についてです!
 (*この記事は4分半~5分程度で読めます) 

Q 質問に答える時、多くの人が最初に「そうですね」を使っているように思う。多用されると気になる。

A 専門家の研究によると、このような「そうですね」は、おおむね「間をつなぐためのことば」または「“質問に答える時の緩衝装置”として使われている」とみられています。
連発されたり、不必要な場面で使われたりすると違和感を覚える場合がありますが、つい出てしまった時には寛容な気持ちで受けとめたほうがいいのではないでしょうか。

いただいた質問の内容は、ことばの意味や使い方だけでなく心理学の領域にも関わってきます。
以下、「そうですね」についての研究事例2つ(Ⅰ斉木美紀「談話分析から見る「そうですね」」 横浜国大国語研究 第26号,2008年/Ⅱ吉村浩一「「そうですね」の会話分析の枠組み―心理学とエスノメソドロジーからの検討―」 『社会環境研究』第5号 金沢大学社会環境科学研究科,2000年)を参考に説明します。
(※NHKとしての公式見解ではなく、個人で調べた範囲での研究事例のまとめです。また、異なる考察がある可能性をご了承ください)

研究事例Ⅰでは「そうですね」に2つの使い方が存在するといいます。
▼1つは「はい」や「イエス」と同じ意味の使い方▼もう1つは「発言権維持のための間つなぎことば」としての使い方です。多用されると気になってしまうのは後者です。

そして、冒頭の“質問に答える時の緩衝装置”とはどういうことでしょうか。広い意味では「間つなぎことば」に含まれるのかもしれませんが、もう少し詳しくみてみます。

研究事例Ⅱでは、“「そうですね」が耳ざわりだと感じたのは、テレビのスポーツ中継を見ているとき”だったと記されています。例を参考に考えてみます。

試合後の選手へのインタビューで、時にこんなやり取りがありそうです(※あくまで例えです)。
この場合、聞き手は“試合終了間際によく決めた”と思っていたのに対し、選手は“(決めた時間よりも)得点はパスを出した選手のおかげ、シュートは難しくなかった”という思いがあります。
選手は質問に答えにくくなり、「そうですね」を挟んでから、ややNOのニュアンスが含まれる内容を述べています。これが“緩衝装置”としての「そうですね」ではないでしょうか。

研究事例Ⅱでは、▼公共性の高い場面で長い沈黙を避けるために、また▼質問に整合する答えを出しにくい場合に、両者の衝突や違和感を緩和するために使用されている、としています。
研究事例Ⅰでも、相手に“万が一異論・反論を唱える場合でも「そうですね」を使うことで、礼儀正しさや丁寧さを保ちつつ不服申し立てをすることができる”と説明しています。
2つの見解とも、前出のインタビュー例の「そうですね」に当てはまるのではないでしょうか。

「公共性の高い場面」で他人や初対面の相手と話さなければいけない状況は色々とあります。会議や商談、各種の面接、そしてスポーツ中継をはじめとする(生)放送もそうです。

スポーツ中継での実況と解説のやりとりに、台本はありません。ハイレベルなプレーについての質問を受けて、解説者が数秒間、視聴者にわかりやすいことばを探すこともあるでしょう。
また、試合後の選手へのインタビューでは、直前まで誰が来るかわからない場合がありますし、事前の打ち合わせは不可能。選手の心情を察することができるのは直前のわずかな時間です。
競技への深い知識とプレーを見極める目、そして選手の気持ちに寄り添う質問やことばの選び方、これらがそろって初めて良いインタビューができるのです。
もちろん担当者は良いインタビューをするため努力すべきですが、アナウンサーの仕事には、こうした難しい仕事があることも理解していただけるとうれしいです。

口ぐせや不必要な「そうですね」連発には違和感が生じることもありますが、研究事例Ⅱの筆者も「自身も知らないうちにしばしば口にしている」と記しています。
このことばに敏感な研究者でも思わず出てしまうぐらいですから、口ぐせではない場合には寛容な気持ちで受けとめたほうがいいのではないでしょうか。

少し長い説明になりましたが、ここまで読んで「そうですね」と納得していただけましたでしょうか(もちろん「イエス」の意味で…)。

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