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朱鞠内湖クマ襲撃事故 レジャーの安全と両立は

  • 2023年6月8日

上川の幌加内町にある朱鞠内湖の湖畔で5月、釣りに訪れた男性がクマに襲われて死亡しました。豊かな自然が魅力の観光地において、クマの出没とレジャーの安全は両立するのか。北海道の“宿命”とも言える大きな課題を前に、町や観光関係者は、いま対策を迫られています。
(旭川放送局  上松凜助)


静かな湖を震撼させた襲撃事故

原生林に囲まれた国内最大の人造湖・朱鞠内湖。イトウやワカサギ釣りが盛んで、キャンプやツーリングで訪れる人が多い幌加内町を代表する観光地です。この穏やかな湖で事故は起きました。

5月14日、釣りに訪れた興部町の男性(54)が行方不明に。男性は翌15日、遺体で見つかり、近くで体長およそ1.6メートルのオスのクマ1頭が駆除されました。 

観光地で起きてしまったクマの襲撃事故。幌加内町の細川雅弘町長は衝撃を隠せません。

幌加内町  細川雅弘町長
「明治30年にこの地で開拓が始まり、ことしで126年になるが、こういった事故は初めての出来事だ。極めて残念で、本当に痛恨の極み」


再発防止へ“情報共有を徹底”

クマが暮らす豊かな自然が魅力の観光地で、クマの出没とレジャーの安全は両立するのか。町はいま、対応を迫られています。

幌加内町  細川雅弘町長
「朱鞠内湖は幌加内町にとって、かけがえのない財産だ。二度とこういうことが起きないように、実効性のある安全対策を着々と進めていきたい」 

5月26日、町は道や観光関係者などとつくる連絡会議を開催。今後の安全対策を議論しました。そこで課題として浮き彫りとなったのが、情報共有のあり方でした。

実は事故の5日前、現場の近くで釣り客から「クマを見た」という目撃情報が、湖で渡し船を運航するNPO法人「シュマリナイ湖ワールドセンター」に寄せられていたのです。NPOは目撃情報をすぐにホームページに掲載しましたが、報告義務はないことから、幌加内町や警察などには連絡しませんでした。 

“二度と同じような事故は起こさない”。連絡会議では再発防止策が議論されました。

そのひとつが「情報共有の徹底」です。クマの目撃情報があった場合、情報を共有する範囲をこれまでの警察や猟友会などから、町の観光協会や地元の農協にまで広げます。さらに、情報発信も強化。町のSNSや観光協会のホームページもフル活用して知らせます。

また、目撃されたクマの行動に応じてどのような対応をとるべきか判断する基準、いわば“クマの対応マニュアル”を設けます。目撃情報の内容から「ヒトを恐れずに襲ってくるような危険な個体」だと判断した場合、キャンプ場などのレジャー施設をただちに閉鎖することにしています。 


カメラに電気柵設置  町が財政支援

さらに、NPO法人が湖周辺にクマが出没していないかを確認する赤外線カメラを設置。

今後は、キャンプ場周辺におよそ1キロにわたってクマを追い払う効果がある電気柵を設けることにしています。

幌加内町の細川町長はNHKのインタビューに対し、「監視カメラの設置など再発防止策を行うNPO法人などに、町としてできるかぎりの財政支援を行っていきたい」と、補助金を支給する考えを示しています。


わずか1日で…再び閉鎖

NPOが設置した赤外線カメラの数は6月5日時点で29台。警戒を続けてきましたが、クマの痕跡は確認されませんでした。「再開は可能」と判断され、▼NPOが運営する「朱鞠内湖畔キャンプ場」の「第1サイト」と、▼「朱鞠内観光汽船」が運航する遊覧船、貸しボートが日中の利用に限定して営業を再開しました。 

このまますべてのレジャー施設を再開できれば…。関係者の期待が膨らみかけたやさき、翌6日にキャンプ場周辺の林道でクマの目撃情報が。わずか1日でキャンプ場などは再び閉鎖となりました。6月8日時点で再開の見通しは立っていません。

道内各地でクマの目撃が相次いでいて、クマ出没に悩まされる自治体は幌加内町に限った話ではありません。北海道の観光地の“宿命”とも言える、クマの出没とレジャーの安全との両立。町や観光関係者たちの取り組みは始まったばかりです。引き続き現地に足を運び、取材していきます。

2023年6月8日

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