北海道の生き物はなぜ大きい?
- 2023年8月24日
今回、シラベルカに届いたのは生き物に関する質問です。
「シカやクマなど北海道の動物は本州よりサイズが大きいように感じます。同じような種類でも、なぜ北海道の動物は本州より大きいのでしょうか?」
体の大きさに関係する『ベルクマンの法則』とは…
北海道の生き物は本当に大きいのか?話を伺ったのは北海道大学総合博物館の坪田敏男館長です。
北海道大学総合博物館 坪田敏男館長
坪田館長
「いくつかの動物は北海道のほうが本州よりも大きいです。関係しているのは『ベルクマンの法則』です。北に行くほど、つまり寒冷地に行くほど、動物の体の大きさが大きくなるという法則ですね。」
例えばクマ。オスの個体で大きさを比較した場合、本州に生息するツキノワグマの体長がおよそ1.2~1.4メートルなのに対して北海道に生息するヒグマはおよそ1.8~2メートル、北極圏に生息するホッキョクグマはおよそ2.2~2.5メートルです。
また、シカに関しても同様で、屋久島に生息するヤクシカは肩の高さまでがおよそ65センチなのに対し、本州に生息するシカはおよそ85センチ、北海道に生息するエゾシカはおよそ100センチと寒い地域のほうが体が大きい傾向にあります。それ以外にもタヌキやリスなどの動物にもベルクマンの法則が当てはまると坪田館長は教えてくれました。
坪田館長
「体重に対する体表面積が小さいほど放熱がしづらい。つまり寒いところに生きていても体温を保つためには、体を大きくして体重あたりの体表面積を小さくするという傾向があるのです。」
わかりやすく説明するために身近な例を挙げると、小さな容器より大きな容器に入れたお湯のほうが冷めにくいのと同じ原理です。
耳の大きさに関係する『アレンの法則』とは…
体の大きさ以外にも哺乳類にはある法則が当てはまります。それは「アレンの法則」といい、寒冷地に生息する動物のほうが耳や鼻などの突出した部分が小さくなるという法則です。耳などの突出した部分は体表面積が大きく放熱しやすいことから、寒い地域では小さくなると考えられています。
北アフリカのサハラ砂漠などに生息するフェネック、北海道に生息するキタキツネ、北極圏に生息するホッキョクギツネを比較すると一目瞭然で、寒い地域の生き物のほうが耳が小さくなっていることがわかります。
寒い地域のほうが小さくなる生き物も
クマやシカなどの哺乳類にはベルクマンの法則やアレンの法則が当てはまりますが、哺乳類とは別の傾向がある生き物もいます。教えてくれたのは北海道爬虫両棲類研究会の德田龍弘さんです。
北海道爬虫両棲類研究会 德田龍弘副会長
德田さん
「は虫類とか両生類。そういう動物に関しては北に行けば行くほど体が小さくなるという傾向があり『逆ベルクマンの法則』と言われています。」
例えばヘビ。德田さんの調査によると、アオダイショウは本州以南では最大およそ2メートルまで成長するのに対し、北海道では最大およそ1.5メートルの大きさです。また、シマヘビは本州以南では最大およそ1.7メートルまで成長するのに対し、北海道では最大およそ1.3メートルと道内に生息する個体のほうが小さい傾向にあります。
德田さん
「は虫類や両生類などの変温動物はあまり自分で体温調節をしません。せっかく日光浴をして体温を上げたのに、体の表面積を大きくして熱が出ていってしまうと損なので、体が小さくなる傾向にあると考えられています。」
また活動期間の短さも体の大きさに影響を与えているのではないかと教えてくれました。
德田さん
「いわゆる冬がない熱帯では冬眠をする必要がなく、一年中活動することが可能です。一方で北に行けば寒い時期が長くご飯を食べる期間が短いため、同じ種類の生き物でもあまり体が大きくならないのではないかという考えもあります。」
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(札幌放送局カメラマン 栗栖朝帆)
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