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棒二跡地の新計画 函館のまちづくりは

  • 2023年10月26日

2019年に閉店したJR函館駅前の老舗デパート「棒二森屋」。跡地の再開発事業が停滞していましたが、先日新たな事業計画案が発表されました。その内容は?函館駅前、そして函館市のまちづくりについて考えます。

愛された「棒二さん」

「函館駅前の顔」とも言える老舗デパートだった「棒二森屋」。1937年(昭和12年)に函館駅前で開店して以来「棒二さん」の愛称で、地元で親しまれてきました。

しかし、郊外の大型店舗との競合やネット通販の拡大などで売り上げが減少。さらに耐震改修に多額の費用がかかることもわかり、閉店が決まりました。
こうして2019年1月末、82年の歴史に幕を下ろしました。

さらに去年、一部の店舗が営業するため「函館駅前ビル」として運営されていた別館も閉店しました。
その後、跡地の再開発事業について一度計画がまとまったものの新型コロナや資材高騰などの影響を受けて見直しをよぎなくされてきました。


新たな事業計画案

こうしたなか10月6日、地権者らでつくる「函館駅前東地区市街地再開発準備組合」が新たな事業計画案をとりまとめ明らかにしました。地元の人がイベントなどに活用できる「市民広場」を中心に、左右に商業施設、ホテル、マンションとつながっています。さらに、市の公共施設が入るスペースも含まれています。

地元の人も観光客も函館駅を出てまずはここに足を運ぶという「とまり木」をイメージしているといいます。

マンションは当初の予定から変更のない25階建て。一方で、ホテルは当初の計画の21階から15階建てに。函館ならではの「食」を提供する商業施設も階数を減らすなど、事業費をできるだけ抑えたとしています。

それでも総事業費は231億円と当初の予算から約40億円増加。取り壊しは2025年4月からで、開業時期は2年ほど先延ばしの2028年10月の予定です。


函館市は精査進める

今回の計画には函館市の公共施設が入る建物も含まれているほか、市の補助金は10億円増のおよそ35億円と想定されています。
準備組合側は市の返答を11月中旬をめどに求めていて、市は引き続き工事費や事業収支、公共施設のあり方などを精査していくとしています。

函館市  大泉潤市長
「函館駅前は定住人口あるいは交流人口、そういったものの拡大についても非常に重要な場所で市全体の回復の起爆剤にもなる。求められているものが何なのか、何が市民の皆さんの満足度を高めるのか。さらに観光客の皆さんに喜んでもらえる、あるいは楽しんでわくわくしてもらえるのかということがまず最初。そういうことも踏まえて、公共施設を入れるかどうかも丁寧に検討していきたい」

役割分けた複数の拠点をまちに

函館の顔や玄関口と言われ、再開発が急がれる函館駅前。

地方創生に詳しい専門家は、課題も指摘しています。まず現実のポテンシャルと希望や期待というのをしっかりと分けたうえで、函館駅前のエリアの特徴を捉え函館市の中での「役割」をしっかり明示するというのが第1だと言います。

東洋大学大学院  根本祐二 教授
「函館に限らずどこでも、駅前だから当然みんながサポートして当たり前だという認識が一般的にはありますが違うということですね。
再開発事業はマーケットがあって受け入れられて初めて進む話ですから、そういう意味で誰もが優先してくれるだろうという話ではないことを前提にフラットな条件でここは何ができて何をすべきかを考えることが重要です。
観光向けなのか定住者向けなのかというところは非常に大きく、この地区をどう位置づけていくのか、ビジョンを見せる必要があります。それが明らかにならないとリスクを負う民間事業者も参画しにくい」

一方で、函館はほかの地方都市に比べると恵まれていると言います。「函館」という名前は広く知られている上に、歴史がブランドを守り観光地として魅力があるためです。そして自分たちが住む地域を大切に思うことはとても大事で、それがなければ再開発をする意味もないと根本教授。ただ、「熱い心」だけでは事業は成功せず「クールな頭」で考えることが必要だとも指摘しています。

では函館市全体のまちづくりはどう考えていけばよいのか。人口減少が進む地域では、役割分担を決めた拠点を複数持つ案を示しています。

「観光ビジネスをすると割り切って再開発するエリアがいくつかあれば、観光で訪れる方はそこに集中していく。日常生活の拠点も必要で、公共施設のあり方なども考えられていくわけです。市がサポートできる余力というのをどこにどう使うかの議論も必要だと思いますね。人口規模から見ても函館市では複数の拠点を持つことができます。その拠点にも大きさがあって行政機能はここ、観光客はここ、定住者はここという形でそれぞれ役割分担する。選択と集中が大事です」

2023年10月26日

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