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北見を自転車の聖地に!元選手の思い

  • 2023年8月30日

北見市では近年、自転車競技選手の合宿数が増えていて、自転車熱が高まりつつあります。 その背景には、北見出身の元選手の地道な取り組みや、自転車への熱い思いがありました。
(北見放送局 新島俊輝)

注目高まる自転車合宿

ことし8月。自転車のロードレースのプロ選手たちが、北見で合宿を開催しました。夏のオホーツクの青空の下、颯爽と走る選手たち。北見を拠点に、サロマ湖周辺などで連日トレーニングを重ね、多い日には1日200キロ近くも走りました。

選ばれる理由は“元選手”

実は北見市は近年、自転車の合宿地としての注目度が急上昇しているんです。そこには当然、理由があります。それが、自転車競技の元選手で、市内の合宿所の管理をしている、中村真司さんの存在です。

北見市出身の中村さん。小学生の頃から取り組んでいたスピードスケートのトレーニングの一環として、自転車に乗っていました。19歳の時に初めて出場した地元の小さな大会で優勝したことをきっかけに、本格的に自転車競技をスタートさせました。23歳から本格的に大会に出場するようになると、引退までの11年間で国体優勝をはじめ、さまざまな大会で日本一になりました。

中村真司さん
「練習量に比例して成績が伸びていきました。それが自転車の魅力で、技術的な要素はもちろんたくさんありますが、自転車は努力に比例すると思います」

練習地として北見は最適!?

輝かしい実績を残した中村さんですが、トレーニングはすべて独学でした。地元の北見で働いていた中村さんの練習は、仕事が終わったあとの夜。真っ暗闇の中、父親が運転する車の先導で、ひたすら走っていました。

中村真司さん
「会社員をやりながらだったので、フルタイムで働いたあとの夜9時とか10時からトレーニングをしていました。父親にトレーニングの協力をお願いして、軽乗用車をトレーニング用に買って、先導してもらいながら練習を重ねました。夜の道路でトレーニングをするので、キツネやイタチに遭遇する場面も何度もありました。仲間でそういう経験をした人はいないので、北見らしい光景ですね」

引退したあとは、大学の自転車競技部の監督に就任。指導者として、オリンピック選手も輩出し、順風満帆でした。しかし2006年、当時顧問を務めていた大学のキャンパス移転に伴って自転車競技部が廃部になりました。自身の経験から、北見の練習環境の良さを感じていた中村さん。多くの自転車選手たちに北見に訪れてもらい、自転車で地元を盛り上げようと、合宿環境の整備にとりかかりました。

中村真司さん
「北見は交通量が少なくてほどよいアップダウンがある道路が多いんです。また、雨が少ないので練習のスケジュール立てやすいし、本州と比べると暑さを避けることもできます。夜は気温が下がるのでしっかり睡眠をとることができ、疲労回復にもいいなというのは、現役時代から相当魅力だと感じていました」

“選手目線”の環境整備

環境整備を始めた中村さん。力を入れたのは、トレーニングコースの設定です。自分の経験をもとに、距離や勾配などが自転車に適した14のコースを作成しました。市外から訪れた選手たちに効果的な練習をしてもらおうと、選手の体調や実力に応じて、14のコースの中から最適なものを提案してきました。

さらに自転車競技に必要な設備も整えてきました。中でも選手から好評なのは、自転車の“保管庫”です。合宿所にはスキー場が隣接しています。そこにあるロッジは夏場は使われていないことに着目した中村さん。ロッジの中にスキー板立てなどを使った手作りの自転車立てを設置しました。自転車を保管したり、雨や強風の日でも自転車を整備できるようになりました。

中村真司さん
「選手の自転車は200万円ぐらいする高価なもので、1台1台が宝物なんです。選手はできるだけ鍵をかけることができて、雨をしのげるところで自転車を保管したいと思っているのを私も知っているので、ロッジを有効活用しました。雨の中でトレーニングしたあとも室内でメンテナンスができるので、選手には喜んでもらえているのかなと思います」

このほか、練習を終えた選手たちがすぐに汗を洗い流せるよう、選手たちの練習終了にあわせて大浴場にお湯をはるなど、選手目線で環境を整えてきました。中村さんが少しずつ整備した合宿所は、選手たちにも好評です。

訪れた選手
「近年の本州は走れないくらいの暑さですが、北見はそれより涼しくて湿度も低いので、長距離を走るのに適していると思って来ています。北見合宿を終えたあとの大会では調子もよいので、トレーニングはキツいですが、欠かせない合宿になっています」

自転車の聖地を目指し

中村さんが進めてきた地道な取り組み。少しずつではありますが、道内外の競技団体に口コミで広がっていきました。2021年には、人気漫画「弱虫ペダル」の作者の渡辺航さんが率いる自転車競技チームが合宿で訪れたこともあり、注目度がさらに上昇。それまでの合宿は高校の部活動が中心でしたが、ことしはプロの選手を含む40人の選手たちが合宿で北見を訪れました。これはコロナ前のおよそ3倍の人数。中村さんの努力が実を結び、着実に増えてきています。北見を自転車合宿の聖地に。中村さんはさらに大きな夢を思い描いています。

中村真司さん
「もっと多くのチームに北見に来てもらって、最終的には北見でプロのロードレースが開催されることが目標です。地元・北見の子どもがレースを見て自転車に興味を持ってくれて、さらにプロを目指す子どもが出てきてくれたら最高です」

取材後記

私は北見に赴任して3年半になりますが、赴任した当時から、北見は坂の多い町だなと思っていました。ふだんの生活では坂が邪魔だと思うこともありますが、今回の取材を経て、自転車競技にとっては理想的な場所だということに気づかされました。
「カーリングのまち」や「焼肉のまち」として知られている北見ですが、今後はそれらに加えて「自転車のまち」として多くの選手や観光客が北見を訪れるようになり、自転車競技の聖地としてさらに盛り上がっていくことを期待しています。

2023年8月30日

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