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能登半島地震 沼田町がトイレトレーラー派遣

  • 2024年3月6日

能登半島地震の発生から2か月以上がたちますが、石川県内では能登地方を中心に依然として断水が続いていて、水洗トイレを使えない不自由な暮らしを余儀なくされている人もいます。こうしたなか、被災地で活躍しているのが水洗トイレを載せた「トイレトレーラー」です。道内の自治体で唯一、避難所にトレーラーを派遣した北空知の沼田町の職員に現地での活動の様子や北海道での備えについて話を聞きました。(旭川放送局 上松凜助)

沼田町が派遣したトイレトレーラーとは

最大震度7の揺れを観測した能登半島地震。石川県内では地震の発生直後、約11万戸で断水が確認されました。2か月がたったいまも能登地方を中心に水道の復旧は進まず、一部の避難所では水洗トイレが使えない状況が続いています。
こうした状況で懸念されるのが、避難生活で病気などが悪化したり、体調を崩したりして命が失われる「災害関連死」です。トイレが使えないとなると、用を足すのを我慢して、水分の摂取を控える人が増え、脱水症状やエコノミークラス症候群になるリスクが高まるとされています。

石川県能登町の避難所(2月1日)

助かった命を守ろうと、全国各地から被災地に駆けつけているのが水洗トイレを載せたトイレトレーラーです。導入を支援している一般社団法人「助けあいジャパン」がトレーラーを所有する自治体に派遣を呼びかけました。
道内の自治体で唯一、トイレトレーラーを所有する沼田町も呼びかけに応じ、1月20日、石川県珠洲市に職員2人とともに派遣しました。

沼田町  横山茂 町長
「沼田町が所有するトイレトレーラーの派遣要請に対して派遣を決定しました。被災した人たちがトイレトレーラーで少しでも元気になってくれることを願っています」

 

沼田町のトイレトレーラーは洋式の水洗トイレと洗面台を備えた個室が4室あります。搭載した汚水タンクがいっぱいになるまで1200~1500回、利用できるということです。

屋根には太陽光発電のパネルがあり、夜間や、避難所が停電していても室内を明るく照らすことができます。さらに、北海道の寒冷な気候にあわせて、車内全体を暖める暖房設備も備えています。

左:太陽光パネル  右:暖房の吹き出し口

 

深刻な被災地のトイレ不足

沼田町がトイレトレーラーを派遣したのは珠洲市東部・蛸島町の避難所となっている小学校です。トレーラーを送り届けた沼田町の職員、亀谷良宏さんは現地で深刻な“トイレ不足”を目の当たりにしました。

沼田町職員  亀谷良宏さん
「きれいなトイレがないため、珠洲市の蛸島小学校から車で2時間以上もかけて金沢市まで用を足しに行く人もいました。やっぱりトイレ問題、これは大問題だなと痛感しました」

トレーラーが到着した1月下旬、およそ200人が身を寄せていた避難所には和式の仮設トイレが5つしかありませんでした。

沼田町職員  亀谷良宏さん
「トレーラーが到着した瞬間、『トイレが来た!トイレだ!』と声が上がりました。みんなの喜びの笑顔が忘れられません。和式トイレで用を足した経験がない子どもたちが非常に苦労していたそうで、『家のトイレと同じだ!』ととても喜んでいました」

 

道内で分散配置 検討を

被災地で活躍するトイレトレーラー。沼田町が導入したきっかけは2018年に起きた胆振東部地震でした。道内のほぼ全域が停電した「ブラックアウト」を受けて、電気がなくても使えるトイレを備えておこうと、2019年に1700万円あまりを投じて購入しました。

胆振東部地震「ブラックアウト」
(2018年9月 札幌市)

これまでトレーラーを祭りなど地域のイベントで活用することはありましたが、被災地に派遣するのは今回が初めてです。
経験がまったくないなか、現地で活動した亀谷さんは「現場に支援を届けるためには、調整にあたる“司令塔”の存在が欠かせない」と実感しました。

沼田町職員  亀谷良宏さん
「沼田町だけで助けに行っても現地の詳しい状況は分からなかったと思います。『助けあいジャパン』が現地の運用を全部仕切ってくれて助かりました。全国から約20台のトイレトレーラーが集まって、能登半島内に分散して配置されていますが、インターネットのグループチャットを使って、常に会話しながら進めているので、うまくいっています」

被災地から戻ってきた亀谷さんは北海道でも災害時に同様のトイレ問題が起こるおそれがあるとして、行政や企業、それに個人もトイレの備えを万全にしてほしいと考えています。

沼田町職員  亀谷良宏さん
「私たちも沼田町を出発してから珠洲市に到着するまで、フェリーを使い、丸2日かかりました。北海道は広いので、本州からトイレトレーラーが派遣されるとなっても、海を渡ってくるというのはかなりの時間がかかると思います。道内でトイレトレーラーを分散配置して、この仕組み、ネットワークを広げていくことが求められているのではないでしょうか」

 

取材後記

「車を2時間以上走らせて用を足しに行く。トイレ不足は大問題だよ!」。被災地でのトイレ問題は知っていましたが、そこまで深刻とは…。衛生的なトイレがなければ、体調の悪化につながるだけではなく、避難所内で感染症が広がるリスクもあります。まさにトイレ不足は命の危険に直結する重大な問題と言えます。“せっかく助かった命を何としてでも守りたい”。今回の取材を通して、亀谷さんの使命感が伝わってきました。寒さが厳しい北海道で災害から命を守るためには、食料や暖房器具に加えて、組み立て式の簡易トイレや使い捨てのトイレも備えておく必要があると改めて思いました。この記事を目にした皆さんにも、いま一度、いざというときの備えについて考えてみてほしいです。

2024年3月6日

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