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観光客を呼び込むチャンス!観光業界の戦略に迫る

  • 2024年1月18日

2023年の年の瀬、旭川空港にLCC(格安航空会社)の「ジェットスター・ジャパン」が定期便の運航を始めました。旭川空港の国内線にLCCが就航するのは初めてです。地元の観光業界はコロナ禍で落ち込んだ観光客を呼び込むチャンスとみて、あの手この手の営業戦略を立てています。(旭川放送局・山中智里)

新規就航の決め手は…旭川エリアの「恵まれた環境」

2023年12月15日、旭川空港と成田空港を結ぶ1日1往復の定期便の運航が始まりました。旭川空港の国内線にLCCが就航するのは初めてとあって、地元では歓迎ムードが高まっています。

数ある地方空港の中から今回、就航の地に選ばれた旭川空港。何が決め手となったのでしょうか。片岡優社長があげたのは旭川エリアの「恵まれた環境」でした。

ジェットスター・ジャパン 片岡優 社長
「都市に滞在しながらスキー場で遊んだり、有名な観光地に行けたりするのが魅力的。非常に日本では珍しい場所だと思っている。これから新しい試みをうっていけると期待している」

旭川市は人口およそ32万人、道内第2の都市です。片岡社長は▼中心部で飲食や買い物を楽しめる都市の魅力があることと、▼近くには美瑛や富良野をはじめとした観光資源が広がること、これらのユニークな「環境」に商機を見いだしたのです。この旭川エリアが持つ魅力を積極的にPRして、新たな需要を掘り起こしたい考えです。

ジェットスター・ジャパン 片岡優社長
「これまで旭川に来なかった人、魅力を含めて旭川の街を知らなかった人たちが、新たな情報を得ることによって『1回行ってみようかな』と思えるような需要を生み出していきたい。そのためには“旭川に行けば○○があって、○○ができる”という細かくて詳しい情報を積極的に国内外に発信していく必要がある」

“閑散期”に観光客を呼び込め! 地元で期待高まる

地元の観光業界も観光客を呼び込めるチャンスとみて動いています。旭川市のホテルは飛行機での旅気分を味わえる特別な部屋を用意。

旭川エリアを訪れるリピーターを増やそうと、ジェットスターの利用客の宿泊代を割り引くキャンペーンも行っています。

OMO7旭川by星野リゾート 照井太陽 総支配人
「旭川市に泊まってもらうことも地域の活性化という点で貢献できることだと思っている。旭川に宿泊をして街を隅から隅まで楽しんでもらえるような取り組みを今後も続けていきたい」

旭川市のバス会社はユニークな取り組みを始めました。同社は昭和の時代に運行していた大型の路線バス「MR430(えむあーる・よんさんまる)」の車体を修復。国内に現存する同型のバスのうち、走行できるのはこの1台だけです。

このファン垂ぜんのレトロバスに乗れるイベントを就航日にあわせてスタートしました。全国のバスファンにLCCを利用して乗りに来てもらおうというのです。

旭川電気軌道 老竜一さん
「イベントの予約は9割以上が道外の人で、遠くは福岡や香川などからも予約をもらっている。新規就航にあわせたバスイベントを機に旭山動物園や旭川冬まつりなど旭川エリアを満喫してもらえればうれしい」

オーストラリア人観光客の傾向分析 インバウンド需要を取り込め

さらに、新規就航で期待が高まるのがインバウンド、とくにオーストラリアからの観光客の増加です。ジェットスターの親会社はオーストラリアの「カンタス航空」。観光客誘致の実績があります。

ジェットスター・ジャパン 片岡優 社長
「われわれの得意分野として、成田空港を経由してオーストラリアから北海道にたくさんのお客を運んだ実績がある。現に新千歳空港と成田空港を結ぶ便では、乗客のおよそ4割が外国人観光客だ。来シーズンには旭川便も同じ傾向になり、インバウンドの需要はますます高まると予想している」

「パウダースノー」を超えた「シルキースノー」ともいわれる上質な雪質を誇る旭川エリアのスキー場。

スキー場を運営する地元で観光振興を行う団体は、日本を訪れるオーストラリア人のうち6割近くが「14日以上」滞在することに着目しました。長期滞在するオーストラリア人観光客向けに10日間の期間のうち5日間、旭川エリアの3つのスキー場を自由に使える共通のチケットを売り出しています。

滞在中、スケジュールに縛られず、その日の天気の状況や雪質を見ながら、複数のスキー場を「はしご」して楽しめると、その魅力をオーストラリアの旅行会社などにPRしています。

大雪カムイミンタラDMO 吉田昌史 部長
「雪質が最高なスキー場を3つ集めて、そこを回ってもらう。旭川エリアで長期滞在してもらえるようになるのが今回のチケットの強みだと考えている。スキー場を目指して多くのオーストラリア人観光客が来ることで、スキー場はもちろん旭川やその周辺の街でもお金を使ってもらえる。エリアの事業者のもとにお金が落ちる取り組みをしっかりと行っていきたい。そのためには各自治体や民間事業者と力を合わせる必要がある。協力してエリアの魅力を発信していきたい」

LCCの新規就航を機に、コロナ禍で落ち込んだ観光需要を取り戻したい。真冬の旭川で観光業界の熱い思いが実を結ぶのか注目です。

取材後記

私も学生時代はLCCをよく利用しました。“お金がかかる”飛行機の旅のイメージを刷新したLCC。観光関係者は「旭川エリアを訪れる若い世代が増えるのではないか」と期待を膨らませています。一方で課題もあります。旭川市の今津寛介市長は▼旭川空港から観光地に向かうタクシーやバスなどの二次交通の充実や、▼公共交通機関や飲食店などにおける表記の多言語化が必要になると指摘しています。さらに、▼救急医療体制の構築や、▼観光客が夜遅くまで楽しめる居酒屋やレストランを増やすことも求められるとしています。こうした課題について、旭川市は周辺の自治体や民間の事業者と連携して解決していこうと考えています。ローコストが経営の肝となるLCCは利益にシビアで、「不採算路線」と判断すれば“即撤退”ということもよくあります。今後の動きから目を離さず、取材を続けていきたいです。

2024年1月18日

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