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「後発地震注意情報」運用開始から1年 要配慮者への対応は?

  • 2023年12月12日

「千島海溝」と「日本海溝」でマグニチュード7クラスの地震が発生した場合に、その後の巨大地震への注意を呼びかける「北海道・三陸沖 後発地震注意情報」。運用開始から1年を迎える中、この情報をいかに必要な人に伝えていくかが課題とされています。道内で最も広い1万ヘクタール以上が浸水すると推定されている苫小牧市では、地域のネットワークを活用し、情報を確実に届けるための模索が続けられています。(苫小牧支局 臼杵良)

後発地震注意情報とは?

2022年12月16日に運用が始まった「北海道・三陸沖 後発地震注意情報」。北海道から岩手県にかけての「千島海溝」と「日本海溝」でマグニチュード7クラスの地震が発生した場合、国はおおむね2時間後をめどに発表し、その後の巨大地震への注意を呼びかけます。

道内では対象となっているのは63市町村。発表されたときには、自治体は住民に対し、事前の避難は呼びかけないものの、1週間程度は日常の生活を維持しながら、後発地震などが起きた場合にただちに避難できるよう備えておくことを求めます。

課題とされているのが、この情報の内容や地域での対応についてどう伝えていくかです。
中でも、避難の際に困難が予想される高齢者や障害がある人など「要配慮者」へ確実に情報を届けることが必要だと指摘されています。

情報共有で”見える化”/勇払地区

苫小牧市東部にある勇払地区。海に面し、最大で8メートルを超える津波が想定され、地区全体が浸水域になっています。現在、1700人あまりが暮らしていて、その高齢化率は40%を超えており、2023年11月、要配慮者への支援を迅速にできるようにしようと検討会が行われました。

参加したのは、市の危機管理室や社会福祉協議会の担当者、警察の駐在所員など、地域の「要配慮者」に詳しい人たちです。検討会では、まず各自が持っている要配慮者の情報を共有しました。

例えば、「Aさんは火曜日はデイサービスに行っているが、ほかの日は外に出歩かず周囲にも支援者がいない」だとか、「Bさんは息子が市内に住んでいるが関係がよくない」などといった細かい状況を、それぞれが説明しました。そして、この地区で要配慮者として市に登録している64人を4つのグループに分けました。

地図上に、「災害時に支援が必要な人」は赤、「今後、注意が必要な人」は黄色など、シールを貼って、要配慮者がどこにいるかを分かりやすく”見える化”しました。今後は、この地図をもとに、誰がどの要配慮者への声かけを担当するか話し合いを進め、緊急時の迅速な対応につなげていくことにしています。

苫小牧市危機管理室 三浦晃主査
「この勇払地区は、かなり昔から海岸の近くにお住まいの方が結構いらっしゃる地域で、そういった方の中で支援を求めている方や、支援を求めている方の中でも自力で避難できない方、そういうような方を明確化できたと思う。市民の方は様々な方がいらっしゃいますので、なるべく皆様にどうやって伝えていくのか、どうやって伝えていくのが一番いいのかっていうのを常に模索しながら、今後も活動していきたい」

見守り活動で呼びかけ実践/桜木町

海岸からおよそ1キロ離れた場所にある苫小牧市西部の桜木町。この地区も、2021年に公表された最大規模の津波では、ほぼ全域が浸水する想定となっています。こうした状況を踏まえ、2022年、町内会では独自に地域の病院と避難場所の協定を締結したほか、要配慮者に対する声かけをすでに実践し始めています。

町内会や社会福祉協議会の担当者などが中心となって、月に2回程度、高齢者などの家を訪問し、見守りを行っています。訪問先では、主に健康や生活の状況について確認してきましたが、地域の災害対策について伝えることにも力を入れ始めています。後発地震注意情報が発表された際には、この見守りネットワークを利用して必要な情報を届けることにしています。

桜木町町内会 三澤伸吉会長
「要配慮者には近所の方が声かけして、地震が起きたら避難するようにしましょうなどと話している。後発地震注意情報については、地震は続くことがあると説明し、日頃の要配慮者への声かけを防災につなげていきたい」

専門家「注意情報は再確認のよい機会に」

津波災害に詳しい専門家は、こういった地域における取り組みには意味があると指摘しています。

北海道大学大学院 高橋浩晃教授
「後発地震注意情報は、地震の発生を予測するものではなくて、あくまでも注意レベルを1段階あげてくださいねということです。ただ、非常に情報として分かりづらい面があるので、社会福祉協議会の方々などを通じて、特に避難に時間がかかる要配慮者の方にこの情報の意味を説明していただきたい」

その上で、強調したのが情報との向き合い方の重要性です。後発地震注意情報が出ても事前避難が求められるわけではありませんが、情報が発表される事態を想定して対応を検討していくことが地震や津波への備えにもつながるといいます。

北海道大学大学院 高橋浩晃教授
「津波の防災対策としては、早く避難できる態勢をつくっておくことが大事です。後発地震注意情報は、津波警報に比べると頻繁に出される可能性が高い情報となっているので、ふだんからの津波の備えを再確認する情報として位置づけるのがいいと思う」

取材後記

苫小牧市の社会福祉協議会によりますと、市内の3割の地区で後発地震注意情報が出た際の伝達方法を整えたり、検討をしたりしているということです。

その一方で、後発地震注意情報が発表された場合に、具体的にどういった行動を呼びかけるかについては多くの地区で未定だということで、今後は社会福祉協議会や町内会が個別に考えていく予定です。

一部の地区では、要配慮者が安心できるように独自に町内会館を開いて避難準備の待機場所を設けることも決まっているということで、今後、後発地震注意情報をそれぞれの場所でどのように活用し、防災力の強化につなげていくのか、取材を続けていきたいと思います。

2023年12月12日

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