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北海道の衆議院選挙 データで“深掘り” 投票率・期日前投票・出口調査…

  • 2021年10月13日

選挙の世界では、さまざまな数字が出てきます。とくに衆議院選挙は全国一斉の国政選挙で規模が大きく、数字は分析のしがいがあります。
選挙管理委員会の記録やNHKに残っている当時の資料などをもとに、北海道の衆議院選挙をデータで“深掘り”していきます。
なお、最近の詳しい選挙結果については、「衆議院選挙 北海道の結果を振り返る 小選挙区制下で各党は」の記事をご覧ください。

“深掘り”その1 「投票率」~昭和~

戦後、衆議院選挙は1946年(昭和21年)の22回選挙から、前回・2017年(平成29年)の48回選挙まで、あわせて27回行われました。
昭和の時代は1986年(昭和61年)に行われた38回選挙までの17回、平成の時代は1990年(平成2年)に行われた39回選挙からの10回です。
その投票率をまず、“深掘り”していきます。

戦後最初の衆議院選挙は、日本国憲法が公布される半年以上も前に行われました。
当時はまだ大日本帝国憲法下で、いまの国会は「帝国議会」と呼ばれていました。
そんな時代の第22回衆議院選挙。
GHQが主導した民主化政策のもと、選挙権は、得られる年齢が「20歳以上」に引き下げられ、女性にも認められました。また、このときは「大選挙区制」で争われ、北海道の選挙区数は2。定員23に対して112人が立候補し、投票率は68.58%でした。
衆議院選挙はこのよくとしにも行われ、投票率は59.33%と落ち込みました。
日本国憲法施行にあわせて、4月に衆議院と参議院の選挙、知事選挙や市町村長選挙、地方議員選挙が集中して行われました。ただ当時、海外から引き揚げてきたばかりの有権者は、選挙への関心が低かったとみられています。
なお、この23回選挙から「中選挙区制」に戻り、北海道は5選挙区になりました。

その後、北海道の投票率は持ち直し、1952年(昭和27年)の25回選挙以降は70%台が続きます。
戦後の政治史を語る上で欠かせない吉田首相の「バカヤロー解散」。1953年(昭和28年)の26回選挙は、北海道の投票率は73.14%でした。
その後、自民党と社会党のいわゆる「55年体制」になり高度成長期を迎えた中でも、北海道の投票率は70%台が続きました。政治が熱かった時代です。
そして1976年(昭和51年)の34回選挙。
三木内閣のもと、戦後初めて、解散ではなく任期満了で衆議院選挙が行われました。
田中角栄前首相がロッキード事件で逮捕された年で、自民党は逆風の中、初めて過半数を割る大敗をきしました。
この選挙で北海道の投票率は78.25%を記録しました。これは前回までの戦後27回の衆議院選挙で、北海道の選挙区として最も高い投票率です。

時代はさらに進みます。
1980年(昭和55年)の36回選挙は初めての衆参同日選挙で、北海道の投票率は76.32%と高くなりました。選挙期間中に大平首相が亡くなり、自民党が圧勝した選挙です。
またこの6年後、2度目の衆参同日選挙として行われた1986年(昭和61年)、昭和最後の38回選挙では、北海道の投票率は74.11%となりました。
中曽根首相による、いわゆる「死んだふり解散」で行われた選挙で、こちらも自民党が大勝しました。

“深掘り”その2 「投票率」~平成~

時代は平成に入ります。
平成最初、1990年(平成2年)の39回選挙は、北海道の投票率は76.66%でした。消費税をめぐって与野党が論戦を繰り広げた選挙でした。
ただこのころ、派閥政治の要因ともなっていた「中選挙区制」を見直そうという動きが活発になります。自民党内でも賛成派と反対派に分かれて対立する中、1993年(平成5年)、社会党などの野党が提出した宮沢内閣に対する不信任決議案が、自民党の一部議員が賛成したり採決に欠席したりして可決されました。
これを受けて宮沢首相は衆議院を解散。「政治改革解散」ともいわれました。
その40回選挙は自民党が過半数を割り込んで政権を手放すことになり、38年続いた「55年体制」は崩壊しました。
「中選挙区制」で争われた最後の衆議院選挙。北海道の投票率は69.64%と、70%を割り込みました。

「中選挙区制」に代わって衆議院選挙は「小選挙区比例代表並立制」で争われることになりました。
導入時点で北海道の小選挙区の数は13。いまよりも1つ多く、旭川市は単独で1つの小選挙区を構成していました。
また、比例代表では、北海道は東京都同様に、単独で1つのブロックを構成することになりました。導入時点の「北海道ブロック」の定員は9で、いまよりも当選者は1人多くなっていました。
この制度では小選挙区と比例代表の重複立候補が可能で、候補者は小選挙区で議席を得られなくても、その“負け方”がよかったほど、つまり当選者により迫ったほど、重複立候補した比例代表で復活当選できるようになりました。

さて、この制度になって最初の衆議院選挙、41回選挙は1996年(平成8年)に行われました。
ただ、北海道の小選挙区全体の投票率は61.38%と、中選挙区時代よりも下がりました。NHKの当時の取材記録では、「中選挙区時代、自民党の候補者どうしが争い保守票を掘り起こすことで投票率が高くなっていた側面があるが、小選挙区に変わってそうした要因がなくなった」と総括しています。
その後、投票時間が2時間延長され、いまの期日前投票にあたる不在者投票の条件が緩和されましたが、2000年(平成12年)の42回選挙では北海道の投票率は65.50%と、4ポイント余りの回復にとどまりました。
この次、小選挙区の区割りの見直しが行われ、道内12選挙区になった2003年(平成15年)の43回選挙では、北海道の投票率は62.97%と再び60%台前半に下がりました。

その後、盛り上がりをみせた選挙が続きます。
与党側が郵政民営化を争点に掲げ、北海道をはじめ全国各地で“造反”対“刺客”の対決が繰り広げられた2005年(平成17年)の44回選挙は71.05%、民主党が政権交代を果たした2009年(平成21年)の45回選挙は73.65%と、北海道の投票率は70%台が2回続きました。
ただ、自民・公明両党が政権を奪還した2012年(平成24年)の46回選挙は12月の“師走選挙”となったこともあり、北海道の投票率は58.73%と一気に15ポイント近く下がりました。
そして前々回、2014年(平成26年)の47回選挙。この選挙も12月に行われ、北海道の投票率は56.35%と戦後最低を2回続けて更新しました。
前回、2017年(平成29年)に行われた平成最後の48回選挙は、選挙権を得られる年齢が「18歳以上」に引き下げられました。また、区割りの見直しも行われ、札幌市の一部の行政区が複数の小選挙区にわかれることになりました。
こうした中、北海道の投票率は60.30%で、47回選挙は4ポイント近く上回ったものの、戦後4番目の低さでした。
この48回選挙は“野党共闘”が進められ、道内12選挙区のうち7選挙区は与党と無所属を含めた野党が事実上“1対1”で対決する構図となりました。
NHKの当時の取材記録では、「『選択肢が少なく、どこに投票していいかわからない』という声も聞かれ、与野党の候補者調整が有権者の選択肢を少なくし、結果的に有権者の関心がそれほど高まらなかった可能性がある」と総括しています。
令和最初の今回の衆議院選挙。投票率がどうなるかも注目点です。

“深掘り”その3 「期日前投票」

次に、期日前投票を“深掘り”します。
期日前投票は、仕事や旅行などの用事があって投票日当日に投票できない有権者が事前に投票できる制度で、公職選挙法の改正で2003年(平成15年)12月に導入されました。衆議院選挙では、2005年(平成17年)の44回選挙から行われています。
最近の選挙では、全国的に期日前投票を利用する人が増えています。
次のグラフは、衆議院選挙で北海道全体の期日前投票者数と投票率の推移を並べたものです。

期日前投票者数は、制度導入後最初の44回選挙ではおよそ45万人でしたが、前回・2017年(平成29年)の48回選挙ではおよそ82万人に増えました。
この間、投票率は10ポイント以上下がっています。
全体の投票率が下がる中で、期日前投票は逆に増えているわけです。
これは北海道にかぎらず全国的な傾向で、期日前投票はもともと投票日当日に投票に行く層が“前倒し”で投票を済ませている状況がみえてきます。かならずしも、期日前投票があらたな投票層を“開拓”しているわけではないということです。(もちろん例外もあります)
 
ここで、投票全体に占める期日前投票の割合を計算してみます。
期日前投票がどれくらいの“重み”があるかを示す指標で、「期日前シェア」と名付けます。その推移を描いたのが次のグラフです。

制度導入後最初の44回選挙は、期日前シェアは13.7%でした。
「投票者の8人に1人以上」が期日前投票を利用した計算です。
その後、期日前シェアは、回を重ねるたびに増えています。
2012年(平成24年)の46回選挙で20%を超え、前々回・2014年(平成26年)の47回選挙は24%以上になりました。
そして、前回・2017年(平成29年)の48回選挙は29.7%と、30%近くに増えました。前回の選挙では「投票者の3.4人に1人以上」が期日前投票を利用した計算です。投票率で考えた場合、全体が60.30%だった中で、期日前投票は17.89%でした。なお、期日前シェアは全国では20%ほどで、北海道は全国の中でも期日前投票が利用された地域でした。

一方、広い北海道、地域別に細かくみると濃淡もみられます。前回の選挙の期日前シェアを小選挙区別にみていきます。

前回の選挙では、道内12の小選挙区で投票率が最も高かったのは、空知と留萌の全域が選挙区の北海道10区で65.16%でした。わずか513票差で公明党の稲津久氏が立憲民主党の神谷裕氏に競り勝った選挙区です。
その期日前シェアは33.5%で、道南の北海道8区に続いて道内2番目に高くなりました。「投票者の3人に1人以上」が期日前投票を利用した計算です。支援組織がフル稼働して票を激しく奪い合う中で、期日前投票が投票率を押し上げたかたちでした。
前回の選挙では、期日前シェアが30%を超えたのは、北海道8区や10区をはじめ道内7選挙区にのぼりました。一方、札幌市内の選挙区では期日前シェアは軒並み低く、札幌市北区の一部と東区からなる北海道2区は22.2%と道内12選挙区で最も低くなりました。都市部の選挙区では投票率も低めで、前回の選挙では、投票率・期日前シェアのいずれも高い地方の選挙区に対していずれも低い都市部の選挙区と、傾向の違いがみられました。ちなみに4月に行われた衆議院北海道2区の補欠選挙は、投票率が30.46%にとどまる中で、期日前シェアは21.0%でした。
一方、投票率は勝敗がはっきりしている情勢の場合、下がりがちです。
前回の選挙では、道東の北海道7区は投票率が56.17%で、道内12選挙区で最も低くなりました。その期日前シェアは30.3%で30%は超えました。
期日前投票が当日投票の“先食い”だった状況がみえてきます。

回を重ねるごとに期日前投票の“重み”は増しています。
裏を返せば、有権者の投票傾向を正しく把握するためには、当日投票者の分析だけでは不十分だということです。NHKは情勢分析にあたり、投票日当日に加えて期日前投票での出口調査にも力を入れています。投票日当日の投票と事前の期日前投票では傾向が一致するケースがほとんどですが、どちらかに“波乱”の芽が隠されていないともかぎりません。
最近の選挙では、両者の投票傾向を丁寧に見極めることではじめて、正確な情勢分析が可能になっています。

なお、全国では、さらに期日前投票の利用が進んでいる地域があります。
中でも秋田県は前回の選挙で、期日前投票者数が投票者全体の半数を超えました。期日前シェアは実に52.8%でした。
国政選挙の期日前投票の割合が半数を超えるのは、全国の都道府県で初めてでした。
中には、期日前シェアが70%を超えた自治体もあったということです。
秋田県内では市町村の選挙管理委員会がショッピングセンターや大学など人が集まりやすい場所に期日前投票所を設置し、制度がかなり浸透しているということです。

“深掘り”その4 「出口調査」

NHKは、国政選挙や注目選挙で有権者の動向を探るため、投票を済ませた有権者を対象に出口調査を実施しています。
その設問の1つに「支持政党」があります。どの政党・政治団体を支持しているのかを具体的に選択肢を示して尋ねています。その結果、各党の支持率からは党としての“勢い”がわかるほか、支持する政党・政治団体のない「支持なし層」、いわゆる無党派層の状況も把握できます。
道内の小選挙区の数がいまの12になった2003年(平成15年)の43回選挙以降の衆議院選挙で、投票日当日に行った出口調査で北海道全体の「支持政党」の結果は次のようになります。

この間北海道では、民主党が政権交代を果たした2009年(平成21年)の45回選挙を除いて、支持率トップは自民党が続いています。
自民党の支持率は、民主党が支持率トップとなった45回選挙と、その次、民主党政権下で行われ自民・公明両党が政権を奪還した2012年(平成24年)の46回選挙は30%程度でしたが、この2回以外は40%近くが続いています。
投票率は、45回選挙とその1つ前、いわゆる「郵政解散」で自民党が圧勝した2005年(平成17年)の44回選挙は70%台でしたが、この2回以外は50%台後半から60%台前半が続いていました。
44回選挙は郵政民営化をめぐる自民党内の“造反”と“刺客”の争いに関心が集まった選挙で、自民党は投票率が高まった中でも高い支持率を得ました。一方、43回選挙や前々回・2014年(平成26年)の47回選挙、前回・2017年(平成29年)の48回選挙は、投票率が44回選挙や45回選挙ほどは高まらなかった中で、自民党は一定の支持率を維持したかたちでした。

対する野党側。その第1党の支持率は自民党よりも変動が大きくなっています。
民主党の支持率は政権交代の45回選挙に向けて、回を重ねるごとに上がっていきました。44回選挙は43回選挙と比べて支持率の上昇は2ポイント程度ですが、これは投票率が43回選挙から8ポイント以上も上がる中での話です。支持層は実数で考えれば厚みを増したことになり、これは次の45回選挙で一気に膨らみます。45回選挙は政権与党の自民党を初めて抜いて、支持率トップとなりました。
一方、次の46回選挙は自民党に支持率トップの座を奪い返されます。
ただ、これは自民党支持層の厚みが増したわけではありません。45回選挙と比べて投票率は一気に15ポイント近く下がる中で、むしろ自民党支持層の厚みは小さくなったかたちでした。
ただ、民主党はこの自民党以上に支持を減らしました。
46回選挙は第3極の台頭が著しく、比例代表北海道ブロックで1議席を得た日本維新の会は公明党や共産党といった手堅い固定票を持つ老舗政党並みに支持を得ました。与党の民主党としては政権批判が高まる中、第3極への流出もあって支持を大きく減らしました。
その後、前々回・47回選挙の民主党、前回・48回選挙で民主党の流れをくむ立憲民主党や希望の党、参議院議員が継続して所属していた民進党の合算の支持率は横ばいで変わりませんでした。

実はひと口に政党支持といっても、いまは昔の選挙ほどは強固ではなく、選挙のたびに投票先を変える“そのつど支持”が少なくないという指摘もあります。
明確な争点があって政党支持を明確にしやすい選挙、衆議院選挙でいえば郵政民営化が争点となった44回選挙や政権交代が現実味を帯びた45回選挙のような選挙では、特定の政党の支持率が上がり、実際の投票でもその党が地力以上に票を集める、いわゆる“雪崩を打つ”状況になりがちです。
その逆に、政治情勢が比較的穏やかな状況での選挙では、とりあえず政権与党を投票先の消極的選択肢として選ぶという有権者は少なくありません。こうした状況下では、“そのつど支持”層は、政党支持でいえば支持なし層であるケースが多くなっています。
とくに前回の48回選挙は、47回選挙と比べて投票率が4ポイント程度上がった中で、支持なし層の割合は24%にまで増えました。投票者全体の4人に1人近くが支持なし層だったわけです。

支持なし層は、選挙でカギを握るといわれます。
最後に、支持なし層の小選挙区投票先を時系列でみていきます。
45回選挙までは、民主党への投票が際立っていました。自民党への投票もけっして少なくありませんが、それ以上に民主党が選ばれていました。
支持率では自民党に負ける中で、民主党が自民党に勝つためには、支持なし層からの得票が欠かせませんでした。45回選挙での政権交代の原動力になったのも支持なし層でした。
一方、その後は、民主党は以前ほどは支持なし層から得票できなくなりました。
自民・公明両党が政権を奪還した46回選挙。
支持なし層の投票先としては、第3極が少なくない中で、民主党よりも自民党が選ばれていました。当時、民主党の政権運営への批判が高まっていた状況で、民主党にしてみれば政権を得る際に原動力になった支持なし層は、皮肉にもこの46回選挙では逃げられたかたちになりました。
その次、前々回の47回選挙では、民主党は支持なし層の投票先トップには返り咲きましたが、一方で共産党も増えていました。
前回の48回選挙では、支持なし層の投票先トップは民主党の流れをくむ立憲民主党で、自民党を上回りました。全国では、支持なし層の投票先トップは自民党でした。
最近の選挙では、北海道では支持なし層は与党よりも野党を選ぶ傾向が続いています。
これが今回の選挙でどうなるのかー。
NHKは出口調査の結果を今後も“深掘り”していきます。

2021年10月13日

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