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道路の穴はなぜあくの?

  • 2024年3月22日

春先になると北海道の道路に現れる無数の“穴”。調べてみるとそこには北国ならではの理由がありました。さらに調査を進めると、こうした穴をあけさせないための研究も進んでいることがわかりました。調査から見えてきた舗装道路を巡る最新事情をご紹介します。

危ない!増えている!?道路の“穴”

10歳のお子さんからNHK札幌放送局に質問が寄せられました。

今回、取材にあたったカメラマンの住田達です。
5年前、北海道に引っ越してきた時から私もずっと「道路の穴」の多さが気になっていました。まずは街の人たちがどう思っているのか聞きにいきました。

○札幌市在住 40代男性
「ガタンとなるんですよね。それが体ごと浮くんですよね。」
○旭川市在住 50代女性
「運転していて危ないとは思います。衝撃が結構あるので。」
○運転歴12年のタクシー運転手
「(道路の穴は)増えていると思います。間違いないです。大型バスとかが通るところは多いです。」

穴があく原因は道路のひびに入る水と寒暖差

街の人から聞かれたさまざまな声。その真相を調べるために向かったのは札幌市手稲区にある北海道科学大学。話を伺ったのは工学部都市環境学科の亀山修一教授です。およそ40年にわたって舗装の研究をしていて、道路の穴に関する国の有識者会議の座長も務めているスペシャリストです。まずは道路に穴があくメカニズムを教えてもらいました。

北海道科学大学工学部都市環境学科 亀山修一教授

①道路にある小さなひび
道路には車が走ることによってできた小さなひびがあります。

②暖かい日 ひびに水がしみこむ
気温が上がった日、雨や雪どけ水などが道路のひびにしみこみます。

③氷点下の日 ひびの水が凍る
気温が氷点下に下がると、道路にしみこんでいた水が凍ります。水は凍ると体積が増えるため、ひびが広がります。

④寒暖差を繰り返して広がったひびの上を車が通り穴があく
これを繰り返すことによって、ひび割れが大きくなっていきます。こうしてもろくなった舗装の上を車が走ることで、大きな穴がぽっかりとあいてしまうのです。

近年、穴ができやすい要因が増えている!

①温暖化による気温上昇
1つが温暖化による気温の上昇です。国の有識者会議の調査によると、冬に札幌で雨やみぞれが降る日は40年前に比べて2倍近くに増加しているといいます。道路のひびにしみこむ水が増え、結果的にひび割れが広がりやすくなっているのです。

②道路の老朽化
もう一つの理由が道路の老朽化です。北海道内の舗装道路の多くが高度経済成長期の1960~1970年代に造られたため老朽化が進み、穴があきやすい環境になってきているのです。

1971年 道路工事の様子(札幌市)

北海道科学大学工学部都市環境学科 亀山修一教授
「今、国全体でもいろんな地方自治体でも穴が多くなっているというのが問題になっています。これは一種の災害だという認識をみんなで持とうということになっています。」

ひび割れさせない!道路舗装の新素材開発

この道路状況を改善するため新素材の開発が進んでいます。札幌市白石区にある会社では、舗装に使うひび割れしにくい素材を開発しています。現在一般的に用いられているアスファルト舗装は力を加えると折れてしまいますが、新素材を使ったアスファルト舗装は同じような力を加えてもひび割れが発生しません。このしなやかさが車の走行による衝撃を吸収することで、ひび割れを抑制し、一般的なアスファルト舗装に比べて3倍も長持ちするのです。この新素材を使ったアスファルト舗装は旭川市など道内でも5年前から導入がすすんでいます。

新素材を開発する会社 内海正徳さん

内海さん
「こういう素材が広まっていけば皆さんの車の走行の安全性を確保できていくのかなと考えています。」

穴があく場所をAIで予知

さらに、穴があきそうな箇所を事前に見つけるための研究も進んでいます。室蘭工業大学大学院の浅田拓海准教授は、AIを使って穴の発生を予知する仕組みを研究しています。これによって大きな穴があく前に修繕することを目指しているのです。

AIを使って道路のひび割れを解析する浅田准教授

AI分析に用いるのは、車載カメラで撮影した動画とそれにひもづく位置情報です。調査したい場所で車を走らせながら路面状況を撮影します。それらの情報を浅田准教授が開発したシステムに取り入れることで、道路脇に積もった雪の量や路面のひび割れの形状や密度を可視化するのです。これらの技術によって、穴ができやすい要素を総合的に分析します。

この研究を行う浅田拓海准教授は大きな病院までの距離が長い北海道の道路をよくすることで命を救う一助になりたいという思いを教えてくれました。

室蘭工業大学大学院もの創造系領域 浅田拓海准教授

浅田准教授
「救急搬送に関しては、北海道では1時間以上かかるような地域もたくさんあります。道路路面というところがネックになってくると悔しいですし、そういった部分の課題を解決していきたいというふうに考えてます。」

取材後記

道路に穴があく理由を知りたいと思って始めた取材。日頃、あいた穴をふさぐために作業をしていらっしゃる方の姿は見ていましたが、まさかそもそも穴をあけないために研究している人たちがこんなにもたくさんいるとは知りませんでした。ふだん当たり前に使っている道路の安全を支えてくれている皆さんに頭が下がる思いです。

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