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【ふるさと自慢】 美深町 「シラカバ樹液を使ったビールづくり」

  • 2023年3月3日

地域の特色が色濃くあらわれるクラフトビール。美深町ではシラカバの樹液を使ったビールづくりが行われています。樹液のほのかな甘さと、まろやかな口当たりがビールのおいしさを引き立てます。(2022年6月放送)

★肩書は放送当時のものです

シラカバの樹液はどんな味?

私は今回の撮影がきっかけではじめてシラカバ林に行きました。一面に生い茂るシラカバ林からは大自然の力強いパワーを感じました。シラカバの樹液は1年のうち数週間(雪解けがはじまる4月中旬から5月初旬)しか採取できないため、とても貴重なものです。実際に樹液を飲んでみると、さらっとしていてほのかな甘みがあります。お酒を割るときやコーヒーをいれるときにおすすめです。樹液のおかげで口当たりがまろやかになるんです。美深町の道の駅では「シラカバの樹液」を瓶詰めしたものを販売しています。ミネラル豊富なシラカバ樹液100%のドリンクをぜひお試しください。

樹液採取の体験をすることができます

例年4月下旬に開催される「美深白樺樹液春まつり」(ここ数年はコロナウイルスの影響で開催中止)ではシラカバ樹液の採取を体験することができます。シラカバ樹液を採取するときは、まず木の幹に直径2センチメートルほどの小さな穴を開けてチューブを差し込みます。そうするとチューブを伝ってポタポタと樹液が垂れてくるので、設置したバケツにためていきます。幹に穴を開ける作業や採れたての新鮮な樹液の飲み比べはこのイベントならではの体験です。
今年(2023年)は4月16日㈰ に3年ぶりの開催が予定されています。スノーモービルの体験試乗やカンジキでの森林散策、軽食・羊毛製品・特産品などを販売する出店も並びます。美深町の春の訪れを告げるイベントに、ぜひお越しください。

写真:美深白樺樹液春まつりの様子

アイヌの儀式、カムイノミ

イベントのはじまりには、毎回アイヌの神事「カムイノミ」という儀式を行っています。カムイノミとは、「カムイ(神)」「ノミ(祈る)」という意味です。下の写真のように雪面を掘って作る「炉」で火をおこし、樹液採取にあたって火の神と山の神々に感謝し祈りを捧げます。
シラカバ樹液の採取時期が終わると、開けた穴を殺菌した「木の栓」で塞ぎます(ワインの瓶をコルクで塞ぐようなイメージ)。永く自然の恵みをいただくためにも、ダメージを最小限にすることが大切です。

写真:カムイノミの様子

ビールに樹液を入れるようになったきっかけは?

私はもともと東京都内のIT企業に勤めていました。バイクに乗ることが好きなので、仕事の大きなプロジェクトを終えたのをきっかけに友人と北海道旅行をすることになったんです。そんな中、美深町に行くことになり、村上春樹氏の小説に登場するペンションに似た宿泊施設に泊まりました。そこで出会ったペンションオーナーから、シラカバ樹液の入ったクラフトビールを作りたいという夢を聞いたのがきっかけですね。ペンション経営者の方は、羊牧場や、農作物の生産、樹液の採取なども手がけています。美深町名産の「シラカバ樹液」を使ってここでしか作れないものを作る。人が減っていく町で、新しい産業を興すことにどんな効果があるのか。自分で実践したくて北海道への移住を決めたんです。
美深町は静かな町です。自然が豊かでとても素敵な場所です。時間が許すならば、短期間ではなく長期間滞在することをおすすめします。例えば、天気が悪くてその日に目当ての観光ができなかったとしても、一週間くらい時間に余裕があれば、また明日、また明日、とチャンスをうかがえます。それでも駄目だったら、また別の日に来ればいい。滞在したペンションでは、そういった田舎の楽しみ方を教えていただきました。これこそ旅の醍醐味だと思います。クラフトビールをきっかけに美深町に遊びに来てくれたら嬉しいです!

【編集後記】
慌ただしく観光するのではなく、「暮らすように旅をする」スタイルは、とても魅力的な提案だと感じました。忙しい日常からバカンスモードにスイッチを切り替え、ゆったりとした時間を過ごすのは真のぜいたく。より奥深くその地域を知り、楽しむことにつながります。大地の恵みが詰め込まれたビールを飲みつつ、美深町でスローな旅を楽しんでみてはいかがですか。
撮影に協力していただいたみなさま、ありがとうございました。

NHK旭川放送局:湊 英祐

 

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