函館出身の木版画家・前田政雄 画風の変遷
- 2024年4月5日
前田政雄の作品の全貌を振り返る展覧会が北海道立函館美術館で開催されています!担当者に見どころを聞きました。
ことし生誕120年を迎える函館出身の木版画家・前田政雄。
およそ190点の作品と資料を通して、初期から晩年までの彼の画業を振り返ることのできる展覧会が開催されています。
前田政雄とは
1904年、函館生まれ。
大正末期に函館から上京し、東京を中心に活動した版画家です。
彼の版画は、そのほとんどが風景を題材にしたもの。
特に、大画面で迫力のある山岳風景を得意とし、「山の版画家」とも呼ばれました。
『蔵王火口壁』1957年 木版、紙
活動の中心は東京でしたが、毎年のように北海道に帰ってきており、北海道を描いた版画も数多く残しています。
『北海道八景 五稜郭』1930年、木版、紙
『北海道八景 大沼公園』1930年、木版、紙
「前田政雄展」では画風の変遷が楽しめる!
函館美術館で開催中の「前田政雄展」では、前田の作品が時代ごとに展示されており、前田の版画の作風がどのように変わっていったのかを味わうことができます。
担当学芸員の田村允英さんに教えてもらいました。
「線」で描く力強さ
まずご紹介いただいたのは前田の初期の作品。函館公園の近くを描いた作品です。
『函館公園横通り』1927年 木版、紙
北海道立函館美術館 田村允英 学芸員
「家であったり道路であったり、輪郭線を正確にかたどろうとしています。
また、1本1本の線が彫刻刀で彫られていますから、シャープな感じで彫り込まれていて、力強さを感じられます」
「色」で描く雰囲気
つづいてご紹介いただいたのは、北アルプスの山を描いた作品。ガラッと印象が変わりましたが、この作品も版画です。
『焼岳』1948年 木版・紙
北海道立函館美術館 田村允英 学芸員
「前田が版画の業界でも名前を知られるようになった、中期の脂ののった時期の作品です。自然のおおらかな雰囲気を出すために、色だけで対象の形を捉えるような描き方になっていきました」
「線」と「色」の融合
最後にご紹介いただいたのは、道南の方にはなじみ深い、駒ヶ岳を描いた作品。
『駒ヶ岳』1959年 木版、紙
北海道立函館美術館 田村允英 学芸員
「色彩がどんどん豊かになっていっています。赤系の色と黄色系の色、青系の色というのをバランスよく配置していて、見る方にとっても色の変化が楽しめる作品です。
一方で、駒ヶ岳の輪郭はしっかりととらえています」
北海道立函館美術館 田村允英 学芸員
「初期はほんとに線でがちっと固めたような作品だったと思うんですけれども、それがだんだんと色彩豊かになって、最後にご紹介した作品なんかはその2つの特徴がうまく融合した作品かなと思っております」
「前田政雄展」は4月14日まで
版画の画風の変遷が楽しめる「前田政雄展」。会場にはそのほかにも、多色刷りに使われた版木や、前田と道内画家たちとの交流を示す資料などが展示されていて、制作の裏側を知ることもできます。今回の展覧会を機に新発見された油絵の作品も展示されています。ぜひ、実物を見に訪れてみてはいかがでしょうか?